情報フラッシュ [ 連載記事 ]
IFRS(国際財務報告基準)第1回 概要と現状
不正な財務報告 第1回 事例1 〜架空収益の計上〜
[ トピック解説 ]
事業再生ADRについて
グループ法人税制

情報フラッシュ

 
発表日時 表題
平成22年9月1日 東京証券取引所自主規制法人上場管理部から座談会「〜市場を揺るがす不適切な第三者割当〜第三者割当における諸問題と抑止策を考える」が公表されました。
平成22年9月3日 日本公認会計士協会より会計制度委員会報告第6号「連結財務諸表における税効果会計に関する実務指針」及び同第10号「個別財務諸表における税効果会計に関する実務指針」の改正が公表されました。
平成22年9月16日 東京証券取引所自主規制法人より「上場管理業務について〜不適切な第三者割当の未然防止に向けて〜」が刊行されました。
平成22年9月17日 企業会計基準委員会よりIFRSとのコンバージェンスに向けた2011年末までのスケジュールを記載したプロジェクト計画表の更新が公表されました。
平成22年9月28日 日本公認会計士協会より経営研究調査会研究報告第43号「非営利組織の不正調査に関する公表事例の分析」について公表されました。


トピック解説

 
 

事業再生ADRについて

1.はじめに

最近、事業再生ADRについて、新聞等のニュースで見聞きすることが多くなっています。当法人のクライアントの1社も事業再生ADR手続を成立させ、上場を維持しながら事業再生を行っています。他社の事例では、さいか屋、アイフルなどが事業再生ADRを利用しましたし、ウィルコムや日本航空は、会社更生手続を開始する前に事業再生ADRを申請しています。

事業再生ADRは、私的整理(任意整理)の一種ですが、法的整理や通常の私的整理と比べて、多くのメリットがあると考えられます。今回は事業再生ADRについて、その概要を紹介した後、以下の3点に焦点をあてて検討します。

イ.事業再生ADRのメリット
ロ.事業再生ADRの手続の流れ
ハ.事業再生ADRを利用するときのポイント

2.事業再生ADRの概要

事業再生ADRは、事業再生に係るADR(Alternative Dispute Resolution:裁判外紛争解決手続)のことで、事業再生を裁判外で行う私的整理の一種です。事業再生の円滑化を目的として、2007年に産業活力再生特別措置法が改正されて創設されました。事業再生の方法には、民事再生や会社更正といった裁判所を利用する法的整理と、裁判所を利用しない私的整理があり、それぞれに長所と短所があります。法的整理は、裁判所が関与するため公平性が担保されるという長所があります。ただし、手続に時間がかかることや、金融債権だけではなく営業債権も対象となるため取引先に迷惑をかけてしまうという短所があります。

これに対して、私的整理は、債権者との交渉によって柔軟な再建方法をとることができ、商取引を円滑に続けられるという長所があります。しかし、法的な強制力がないために、いわゆるゴネ得のような債権者が生じかねず、交渉がなかなかまとまりにくいという短所があります。事業再生ADRは、これらの2つの方法の短所をうまく克服し、両方法の長所を合わせたような再生手続になっています。すなわち、事業再生ADRは、特定認証紛争解決事業者という第三者機関が仲介しながら私的整理を行う方法で、公平性を確保しながら、柔軟で迅速な再建手続ができるようになっています。

3.事業再生ADRのメリット

事業再生ADRのメリットには、主に以下の3点があります。

イ.特定認証紛争解決事業者が仲介するため、調整が容易である
ロ.金融債権のみが対象のため、取引先に迷惑をかけない
ハ.上場維持をしたまま手続ができる

1つ目のメリットとして、特定認証紛争解決事業者が仲介するため、調整が容易である、ということがあります。
私的整理は、原則として相対交渉で手続が進められるため、当事者間の力関係が交渉に反映されてしまうなど、手続の不公平さや不透明さが問題となることがありました。しかし、事業再生ADRでは、特定認証紛争解決事業者という公正な第三者が関与するため、手続に公平性が確保されていて、交渉がまとまりやすいというメリットがあります。

2つ目のメリットとして、金融債権のみが対象のため、取引先に迷惑をかけない、ということがあります。事業再生ADRでは、対象債権者として金融機関が想定されているため、金銭債権が債務免除等の対象となり、営業債権には原則として影響が及ぶことがありません。そのため、事業価値が毀損されにくく、事業再生が成功した場合の事業継続におよぼす影響も最小限にとどめることができると言えます。

3つ目のメリットは、上場維持をしたまま手続ができる、ということがあります。事業再生ADRを申請しても上場廃止になることはなく、上場維持をしたままで再生手続を行うことができます。これは法的整理に比べて大きなメリットと言えます。法的整理が必要と判断された場合、原則として一定期間を経て上場廃止が余儀なくされるからです。

ただ、注意しなければならないのは、事業再生ADRを行うにしても、上場を維持するためには、上場廃止基準に抵触しないように行わなければならないということです。事業再生ADRでは、手続開始から4ヶ月ほどのスピードで再生計画案が承認され、ADRが成立しています。それでも、2期連続の債務超過になることを回避するのは、時間との戦いになるでしょう。また、DESや増資による株式の希薄化等においても上場廃止基準に抵触しないよう十分注意を払う必要があります。

4.事業再生ADRの流れ

事業再生ADRの手続は、おおまかに以下の順序で進んでいきます。
最初に特定認証紛争解決事業者に事業再生ADRの申請を行います。申請をすると、特定認証紛争解決事業者が申込みを受理するかどうかの審査を行います。この審査が最初のハードルと言えます。

申請時には事業再生計画案を提出しなければなりませんが、これには事業計画、資金計画、金融支援の内容、株主責任、経営者責任等の記載が必要です。当然、事業計画、資金計画、金融支援の内容等については実行可能性が高いものでなければなりません。

一定の審査を経て申込みが受理されれば、対象債権者に対して、債権の回収や倒産手続等の申立を控えることを依頼するための「一時停止の通知」を発送します。

その後、原則として3回の債権者会議を開いて、債権者に事業再生計画案の説明を行い、事業再生計画案の決議を行います。事業再生計画案が債権者会議で全債権者から同意が得られれば、私的整理が成立することになります。
なお、事業再生計画案が成立しなければ、特定調停や法的整理へ移行することになります。

5.事業再生ADRを利用するときのポイント

事業再生ADRを利用するときのポイントには、主に以下の3点があります。

イ.金融機関との事前交渉をしっかりと行う
ロ.専門家を利用する
ハ.必ずしも事業再生ADRが成功するわけではないことを想定しておく

1つ目のポイントは、金融機関との事前交渉をしっかりと行っておくことです。実務的には、事業再生ADRの申請を行う段階で、事前に金融機関と個別に交渉を行い、多数の金融機関からおおよその合意を得ていくことが望ましいと言えます。

事業再生計画案が決議される債権者会議では、対象債権者の全員の同意が必要とされています。また、事業再生ADRの申請が正式に受理され、一時停止の通知が発送されてから3回の債権者会議が終わるまで4ヶ月程度しかないことを考えれば、申請時にいかに事前の交渉ができているかが勝負となります。

2つ目のポイントは、専門家を利用することをしっかりと検討しておくことです。事業再生ADRのために必要な、実現可能な事業再生計画案の策定、資産査定、債務免除やDESの際の法的処理や会計処理、税務上の問題等に対応するために、公認会計士、税理士、弁護士等を含む外部機関を利用することを検討しておきます。事業再生計画案には債務超過の解消期限など詳細な規定があるほか、金融機関から事業再生計画案の内容について要求や質問がなされる場合があります。実現可能で公平・公正な事業再生計画案を作成するためにも、専門家の利用は不可欠です。

その意味では、事業再生ADRでは、特定認証紛争解決事業者への費用はもちろん、専門家の利用により生じる費用負担も考慮に入れておくことが必要です。

3つ目のポイントは、必ずしも事業再生ADRが成功するわけではないことを想定しておく、ということです。事業再生ADRは多くの長所があるものの、その申請には一定の要件が必要です。例えば、一定の期間に経常黒字化が見込まれる事業再生計画案の実現可能性や、債権者が破産手続によるよりも事業再生ADRを実施した方が多い回収を見込める可能性があることなどが求められています。さらに、事業再生ADRはあくまで私的整理であるため、手続を進めていく中で、全債権者との合意に至らずに再生計画の成立を断念せざるを得ない場合もあります。

その意味では、事業再生ADRを利用する際には、制度の特徴を他の再生手続とよく比較し、実現可能性について深く検討する必要があると言えるでしょう。

 

参考文献
「事業再生ADRの実践」  事業再生実務者協会・事業再生ADR委員会編  商事法務  2009.11.24
旬刊経理情報「事業再生ADRの法務・会計上の留意点」  石毛和夫著  中央経済社  2009.12.10

 
執筆者:吉田
 


 

グループ法人税制

1.改正の背景及び趣旨

2010年度税制改正により、グループ法人税制が導入されます。グループ法人税制とは、100%所有・被所有の関係にあるグループ法人を一体としてとらえて統一的に課税を行うという考え方に基づき、該当する企業グループに強制的に適用される税制です。これにより、持ち株会社制などの多様なグループ法人のあり方に対応した課税の中立性や公平性が確保されます。企業の機動的なグループ再編のため、1997年には独占禁止法の改正による純粋持株会社の解禁、2001年には組織再編税制の導入、2002年には連結納税制度の導入と、次々に法改正が行われてきました。今回のグループ法人税制の導入に伴い、連結納税制度はグループ法人税制の内包的位置付けになりました。

2.グループ法人税制の概要

[1]グループ内法人間の資産の移転に係る譲渡損益の繰り延べ
完全支配関係にある内国法人間では、2010年10月1日以降、資産の移転に係る一定の譲渡損益が繰り延べられることになります。繰り延べられた譲渡損益は、イ.譲受法人が譲渡資産の譲渡、償却、除却等により、グループ外への移転、グループ内での処分をした場合、及び ロ.譲渡法人と譲受法人の完全支配関係の資本の解消が生じた場合に損金又は益金として処理されます。これにより、グループ内の資産を税負担なく移転することが可能となり、グループとしての効率的な資産運用が図られます。以下の通り、主に長期利用を目的とした資産(帳簿価額が 1,000万円以上のもの)が対象資産となっています。
(1) 土地(帰属する権利を含み、固定資産に該当するものを除く)
(2) 有価証券(譲渡法人または譲受法人のいずれかにおいて売買目的とされるものを除く)
(3) 金銭債権
(4) 固定資産
(5) 繰延資産
通常、連結財務諸表において、連結グループ内の譲渡損益は会計上消去され繰り延べられるため、会計上は連結財務諸表固有の一時差異として、繰延税金資産もしくは、繰延税金負債として認識されます。しかし、今回のグループ法人税制の導入により、100%グループ内の資産の移転に係る譲渡損益については税務上も譲渡損益が消去されるため、連結財務諸表上、当該譲渡損益に係る繰延税金資産もしくは、繰延税金負債は認識しないことになります。
[2]  寄附金・受贈益
100%グループ内の寄附金・受贈益については、2010年10月1日以降、イ.寄附を行った支出法人は全額損金不算入、ロ.寄附を受けた受領法人は全額益金不算入となります。従来も、連結納税制度を適用している連結法人間では同様の処理を行っていましたが、それが100%グループ内の企業に拡大されました。このような寄付が行われた場合には、イ. 支出法人の株主は、支出法人の株式価値を支出した寄付金の損金不算入相当額だけ減額処理し、ロ.受領法人の完全親法人は、受領法人の株式価値を受贈益の益金不算入額相当額だけ帳簿価額の増額処理を行わなければなりません。
この改正により、連結財務諸表上認識していた イ.支出法人における寄付金の損金不算入限度額超過部分の永久差異、及び ロ. 受領法人における受贈益全額の永久差異の認識は行われないことになります(個別財務諸表では認識します)。また、この制度を利用した相続税の軽減防止を図るため、個人と法人の間の完全支配関係への適用は除外されています
[3]  中小法人向けの特例措置の不適用
資本金または出資金の額が5億円以上の大規模法人に完全支配されている会社については、2010年4月1日以後に開始される事業年度から、中小法人向けの以下の特例措置が適用されなくなります。この改正は、大規模法人の事業部門の分社化法人と一般法人とを同一の税負担とすることを目的としています。
(1) 法人税の軽減税率
(2) 特定同族会社の留保金課税の非適用
(3) 欠損金の繰戻し還付
(4) 貸倒引当金の法定繰入率
(5) 交際費の損金不算入制度の定額控除制度
[4] 完全支配関係がある内国法人間の資本関連取引
完全支配関係がある内国法人間の資本関連取引については、2010年4月1日以降は適格現物分配として取り扱われることになります。
平成13年の金庫株の解禁、会社法への制度改正により、グループ内での資本取引、自己株式取得等大きな影響を与えてきましたが、それを踏まえたうえでの、実際の取引等に即した改正を目的としています。
(1)適格現物分配に該当する場合の変更措置
適格現物分配に該当する場合、イ. 現物分配法人は、適格現物分配により移転する資産を帳簿価額で譲渡処理し、譲渡損益を計上しません。一方、被現物分配法人は移転資産を移転前に付されていた帳簿価額で計上します。ロ. 適格現物分配法人の適格現物分配取得資産は、益金不算入となり、利益積立金を増額する事になります。また、源泉徴収の適用対象外になります。
(2)受取配当等の益金不算入制度
2010年4月1日以後に開始する事業年度から、完全支配関係にある内国法人からの配当等を受ける場合、全額益金不算入となるため、負債利子控除は不要となります。これは、従来、連結納税法人の間で行われてきた処理です。
(3)グループ内法人の株式譲渡
2010年4月1日以後は、発行体が自己株式取得後、自己株式をグループ内への譲渡又は消却した場合、譲渡損益の計上はしないことになります。

3.連結納税制度、税効果会計の改正

グループ法人税制の導入に伴い、連結納税制度、税効果会計が修正されました。修正された項目は以下の通りです。
(1) 連結納税適用開始時、連結子会社欠損金を特定連結欠損金として繰越控除の対象措置
(2) 特定連結欠損金の連結子会社の所得範囲内での繰延資産計上が可能に
(3) 連結納税制度承認申請期限を事業年度開始の6ヶ月前から3ヶ月前に変更
(4) 連結納税制度承認効力発生日を完全支配関係が生じた日以後の最初の月次決算の翌日とする特例措置

4.最後に

グループ法人税制導入に伴い、実務上は繰延資産譲渡時の通知義務の発生、決算時においてのグループ法人間内での寄附の有無の各株主への通知開示義務の発生、2010年4月1日以後開始事業年度の確定申告書への、自社と完全支配関係のある法人系統図等の添付書類の追加等、これまでに存在しなかった管理面での負担やグループ内の資産、資本状況の管理等の社内体制の整備などが不可欠になります。
また、冒頭で述べた連結納税制度の改正以外にも、イ. 連結納税制度は所得通算可能であるのに対して、グループ法人税制は所得通算が不可能であること、ロ. 連結納税制度や基本的な資本の概念の見直し等、法人を取り巻く税環境の変化等を考慮して、企業グループの税負担の低減のために適切な意思決定をすることが重要になります。
 
執筆者:近藤
 


連載記事

 
 

IFRS(国際財務報告基準)第1回 概要と現状

1.はじめに

現在日本では、IFRSに関する書籍が多く出版され、来たるべきIFRS適用に向けて企業も対応を開始するなど、IFRSに対する関心が深まってきています。連載1回目となる今回は、IFRSの概要と構成、そして日本におけるIFRSの今後の取り扱いについて述べていきます。

2.IFRSの概要

IFRSは、International Financial Reporting Standardsの頭文字を取ったものであり、「国際財務報告基準」と呼ばれています。IFRSの作成機関は、2001年にIASC(国際会計基準委員会)を改組する形で設立されたIASB(国際会計基準審議会)という民間の非営利機関となっています。
現在IFRSを採用・許容している国は100国を超えており、最近では、ブラジルが2010年12月31日以降に終了する事業年度、カナダ・インド及び韓国は2011年にIFRSの適用を予定しています。このように世界中で導入が相次いでいるIFRSは、「会計基準のグローバルスタンダード」としての位置付けが一段と高まってきているといえるでしょう。

3.IFRSの構成

IFRSは基準と解釈指針から構成されていますが、作成機関であるIASBが設立時に、IASCの基準と関連する解釈指針を採用したことで、設定時期によって呼び方の異なるものが二つずつあります。すなわち、IFRSはIASBの設定したIFRSとIASCの設定したIAS(国際会計基準)及びIFRIC(国際財務報告解釈指針委員会)とその前身であるSIC(解釈指針委員会)の公表した解釈指針から構成されています。これらを個別基準のIFRSと区別するため、広義のIFRSとして複数形の”s”を付し「IFRSs」と表記されることもあります。
2010年10月時点においては、9個のIFRS基準書及び29個のIAS基準書が有効な基準として公表されており(IFRS第9号「金融商品」は2013年より適用。現在、早期適用可能)、解釈指針は17個のIFRIC及び11個のSICが公表されています。
IASBが新たに開発した会計基準はIFRS○○として公表されますが、IASについては、改訂がなされてもIAS○○として公表されます。ただし、IASが大幅に改訂された場合には、そのIASを廃止し、新たにIFRS○○として公表されることになります。

4.日本におけるIFRSの今後の取り扱い

日本においては、自国の会計基準とIFRSとの重要な差異について解消を行っていくコンバージェンス(収斂)という作業が2011年6月末を目途に行われていますが、2009年6月に企業会計審議会から公表された「我が国における国際会計基準の取扱いについて(中間報告)」(以下「中間報告」という。)により、IFRSを自国の会計基準とするアドプション(採用)の流れが加速しはじめてきています。この中間報告では、[1]IFRSの強制適用の可否は、2012年を目途に判断し、2015年または2016年に適用開始すること、[2]国際的な財務・事業活動を行っている等の要件に該当する企業においては、2010年3月期の財務諸表からIFRSの任意適用を認めることが適当といった内容が示されています。なお、2009年12月に公表された「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令」によって具体的な任意適用要件が示され、任意適用第1号企業として、2010年5月に日本電波工業株式会社がIFRSに基づいた財務諸表を発表しています。
企業の担当者は、遅くとも2015年または2016年までにはIFRSに対応することができればよいと考えるかもしれません。しかし、仮に2015年からIFRSが強制適用されることになった場合、IFRS第1号「国際財務報告基準の初度適用」の規定により、2014年の財務諸表及び、2014年期首の開始財政状態計算書に対してもIFRSを適用し作成しなければなりません。したがって、早期にIFRSの知識を習得し、IFRSに対応した企業インフラの再構築をする必要があると考えられています。
 
執筆者:関
 


 

不正な財務報告 第1回 事例1 〜架空収益の計上〜

2010年4月の帝国データバンクの発表によると、「2009年度に不適切な会計処理が発覚した上場企業の数」は16社にのぼり、過去最多となった2008年度の22社からは減少したものの、以前として高水準が続いているようです。2009年3月期から内部統制報告書の開示が義務付けられているものの、不適切な会計処理や不正行為は後を絶ちません。
そこで、今回から6回にわたり、不正な財務報告に関する内容及び事例ならびにその発見及び防止について解説致します。
不正な財務報告は大きく分けて、イ.架空収益 ロ. 計上時期の操作 ハ.不適切な資産評価 ニ.負債や支出の隠ぺい ホ. 不適切な開示・公開に分類されますが、今回はイ.架空収益についての事例を紹介します。

(1)内容
架空収益とは、実際には商品の販売やサービスの提供が行われない架空取引による売上計上で、循環取引や、条件付き売上といったものがあります。 循環取引とは、売上を膨らませるために商品の売買や役務の提供を複数の企業間で転売していく経済的実態のない取引です。 条件付き売上とは、販売の予約はされているもののまだいくつか条件が満たされておらず、所有権や所有に係るリスクが購入者に移転していないものを売上計上するものです。
(2)事例
1)冷凍食品会社K社の場合
最初の取引業者から商品を仕入れた冷凍食品会社K社は、仕入れ値に数パーセントを上乗せした金額で商品を別の取引会社に転売し、数社を経てまたK社に戻ってくるという、伝票上だけで商品を回して売上を計上する循環取引により、収益の水増しを行いました。 この循環取引に係った取引先は32社にものぼります。
これは、K社の元取締役が自己の判断ミスにより大量在庫を抱えたことの発覚を先送りするために、実質的に破たんした会社への金融支援を目的に始めたものでした。 その後、取引の流れを止めると相手会社が倒産するため止められない悪循環に陥り6年間にわたり循環取引を行っていましたが、取引先の一つがK社の違法取引について監査法人に通報したことにより判明しました。

2)ITサービス事業会社N社の場合
ITソリューションビジネスを展開するN社に、「カリスマ営業マン」として引き抜きにより入社した元従業員Kは、新規事業部門をまかされることとなりました。 「売上を計上することで社内における力を示したかった」というKは、販売先名義の注文書、受領書等の証憑類を自ら作成し、販売先の印影を偽造したり販売先担当者のサインを自ら行ったりしてこれらの書類等を偽造し、現実には当該販売先から注文がなかったにもかかわらずこれがあったかのように装い、会社の年商の6分の1に近い額の架空収益を計上していました。 Kは、残高確認書に対する回答を偽造するなどしてこれらの取引が架空取引であることの発見を遅らせていました。 しかしこの架空取引案件の取引先のひとつから、取引の存在を認識していない旨の通知が会社にあったことから内部調査が行われ、会社が長期化している売上債権の顧客先に訪問等を行いKの行った架空売上が判明しました。

次回は、ロ.計上時期の操作についての事例を紹介いたします。
 
執筆者:成田、田中
 

編集後記
 
 
明誠News Letterは監査法人設立6年目にして、ようやく発刊の運びとなりました。当法人が存続する限り、何十年でも続けたいと願っています。新しい事と言えば、8月に間伐ボランティア、今月は荒川のごみ拾いと、みんなで体を動かして来ました。タイトルの下の写真は、間伐の時に撮ったものです。個人的には今年から英会話を本気で勉強し始め、海外でのカンファレンスに参加し、持病の治療で本格的な中国医療を経験しました。中国針はかなりの痛みで、毎回うめき声を上げながら治療を受けています。先日吸い玉という治療を受けたところ、直径7センチほどの濃い紫色の痣が背中に10数か所も出来て、痛々しい背中になって妻に驚かれました。明誠としても個人的でも、まだまだ様々な事にチャレンジしていこうと思います。
 
執筆者:武田剛
 


       
   

  明誠ニュースレター vol.01
2010年10月15日発行
発行責任者:武田剛
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