情報フラッシュ [ 連載記事 ]
IFRS(国際財務報告基準)第2回 IAS第1号「財務諸表の表示」
不正な財務報告 第2回 事例2 〜計上時期の操作〜
[ トピック解説 ]
データ監査ツールについて
年末調整

情報フラッシュ

 
発表日時 表題
平成22年9月30日 IASB(国際会計基準審議会)は、深刻な超インフレーション下におけるIFRS第1号(国際財務報告基準の初度適用)を修正する公開草案を、一般のコメント募集のために公表しました。
平成22年10月7日 IFRSの独立した基準設定主体であるIASBは、IFRS第7号「金融商品-開示」の改正を公表しました。これは、オフバランスシート活動に対する包括的な再検討の一環として行われたものです。
平成22年10月28日 IASBは、金融負債の会計についての要求事項を公表しました。これは、IFRS第9号「金融商品」に追加され、IAS第39号「金融商品:認識及び測定」を置き換えるIASBのプロジェクトのうち、分類と測定のフェーズが完了したことになります。これは、金融資産の分類と測定を取り扱うIFRS第9号が2009年11月に公表されたことに引き続くものです。


トピック解説

 
 

データ監査ツールについて

財務諸表監査、内部統制監査、不正調査においてデータを分析する手法は必須の手続きになりつつあります。今回のニューズレターではデータを分析するデータ監査ツールについてご説明します。

1.何が目的か

データ監査ツールの利用目的は、データを分析することにより、データに含まれる異常値を発見することです。データに含まれる異常値を抽出することで、不正や入力誤りがないか検討します。昨今では財務報告の信頼性を高めるために、不正や入力誤りがないことを検討することが求められています[1]。会社や監査法人はデータ分析ツールを利用して不正や入力誤りのリスクに対応することで、その要求にこたえることができます。

2.何を分析するか

データ監査ツールは会社の不正や入力誤りのリスクに応じて様々なデータを分析します。データを分析するにあたり、対象となるデータとは、企業のもつ情報システムで管理されているあらゆる財務・業務データのことをいいます。例えば、売上、入金、仕入、支払などの取引情報や、顧客情報、従業員情報などのマスタ情報です。データ監査ツールで分析するために、会社のシステムからデータを取出します。このような方法は「データ・ダウンロード監査技法」[2]と呼ばれ、一般的となってきています。

3.なぜ専用ツールが必要なのか

データ監査をシステムの知識なしで、システム部門の助けを借りずに実施するのは非常に困難です。しかし、専用ツールさえあれば、複雑なデータベースに対する問い合わせ命令を記述する必要がなく、ツールに備わった機能を用いた簡単な操作だけでデータを分析できます。データをさらっと目で追っていく、あるいは、読むだけで十分かと思う人もいるかもしれませんが、これらの方法は、データの数が増えたときには何かを発見することは困難です。また、EXCELのVLOOKUP関数やACCESSのクエリを用いて結合やマッチングをする事によって同様の分析は可能ですが、使い方が複雑で監査従事者が習得するのは容易ではありません。そこで、専門的な機能を備えたデータ分析専用のデータ監査ツールの利用が効果的になります。

4.使えるデータ監査ツール

データ監査ツールとして、いろいろなソフトウェア製品が販売されています。では、データ監査を始めるに当たってどのソフトを選べばよいでしょうか。製品の機能を比べると、どれも似通っています。また、多くのツールが米国製なので、日本語対応されていないことがあります。「FRAUDMAGAZINE」[3]には、データ監査ツールとして、主にACL、IDEA、Active Data for EXCELという製品が紹介されています。

5.分析機能

データ監査の手続きは、必要なデータの選択、収集、分析、監査結果のレポーティングの流れに沿って実施されます。分析時における主な手法を下記に挙げます。どれも主なデータ監査ツールに共通して備わっている機能です。ご覧いただくと分かるように、実際には単独の機能で目的を実現するというよりも、それぞれの手法を組み合わせる必要が出てきます。


[1] 結合/マッチング

あるファイルにあるデータが別のファイルにあるかどうかを照合できます。例えば、仕訳帳と、禁止された仕訳をまとめたファイルの2つのファイルを用意しておきます。そして、両方のファイルに共通して存在するデータを取出すことで、禁止された仕訳が存在することが判明します。

[2] 要約

特定の項目ごとに数値を合計します。例えば、仕訳帳から勘定科目ごとの金額を集計し、試算表を再計算できます。

[3] 年齢調べ

特定の日からの経過日数に応じて一定間隔の日数幅ごとに数値を集計します。例えば、クライアントが作成した売掛金年齢調べ表の再計算を実施し、計算間違えがないか検証できます。

[4] 階層化

指定した一定間隔の金額幅ごとに金額と件数を集計します。

[5] 重複チェック

数値に重複がないかチェックします。例えば、仕訳帳の伝票番号の重複をチェックすることで二重入力を検出します。

[6] 欠番チェック

順番に抜けがないかチェックします。例えば、仕訳帳の伝票番号の欠番をチェックします。

[7] ソート

数字や文字を順番に並べ替えます。例えば、仕入先マスタの仕入先番号をソートすることで異常な空のデータやダミー番号があるかどうかをチェックします。

[8] ベンフォード分析

数字の異常な重複を検出する分析です。ベンフォードの法則に反するデータを抽出することで、特定の数字の異常な重複の原因を調査します。

[9] ランダムサンプリング

大量のデータの中から、無作為に指定した件数のサンプルを抽出します

6.具体的な分析例

「顧客信用ランクの期間比較による分析」

多くの銀行などは顧客ランクを顧客の融資限度額の計算に利用しています。そのような環境では、従業員が顧客ランクを不正に操作し、過剰な融資が行われるリスクがあると考えられる場合があります。リスクに対応するために監査ツールを用いることで、過去のある時点の顧客ランクと現在のランクの推移を表示し、優良なランクに格上げされた顧客を抽出できます。その後は、該当するランク変更に対して適切な経路で承認されたか調査します。

具体的な手順として、まず比較を行う過去時点の顧客データを複数用意します。顧客データには顧客番号、顧客ランクが必要です。過去時点の顧客ファイルにある顧客番号をキーにして「結合」機能を用いることで、監査ツールは現在の顧客ファイルに共通する顧客番号を検索し、その顧客ランクを見つけ出します。結果として、顧客番号、過去の顧客ランク、現在の顧客ランクといったデータをもつデータファイルを作成できます。この作業を連続して実施することで、複数の時点の推移を表示できます。特に「結合」機能のオプションにより、現時点で削除された顧客、新たに登録された顧客を分析に加えることができます。

7.まとめ

経営者には、不正及び誤謬を防止し発見する責任があります。 その責任は、適切な内部統制を 確立・維持することにより遂行されます。監査人としても、内部統制監査の過程でデータ監査ツールを用いることができれば、より有効な手続きを効率的に実施することができると期待されています。

参考文献
[1] 監査基準委員会報告書第35号「財務諸表の監査における不正への対応」
[2] 情報システム委員会研究報告第13号「データ・ダウンロード監査技法」
[3] Rich Lanza, Fraud data interrogation tools:COMPARING BEST SOFTWARE FOR FRAUD EXAMINATIONS

[4] Michelle Shein and Richard Lanza, Fraud Detection with ActiveData for Excel E-Book
執筆者:畠中
 


 

年末調整

1.概要

年末調整は、給与所得者について、毎月(日)の給料や賞与などの支払の際に源泉徴収をした税額と、その年の給与の総額について納めなければならない確定税額(年税額)とを比べて、その過不足額を精算する手続です。ほとんどの給与所得者は、この年末調整によって、その年の所得税の納税が完了し、確定申告の手続をとる必要がなくなります。

年末調整は、給与の支払者に対し「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出している人の全員について行います。年間の給与の収入金額が2,000万円を超える人、一部を除く中途退職者、非居住者等は対象となりません。

年末調整は、その年の最後の給与の支払時に行う事になっていますので、通常は12月に行うことになりますが、中途退職者で年末調整が必要な人や年の途中で非居住者となった人については、退職時や非居住者となった時に年末調整を行わなければなりません。

年末調整は、基本的には次のように行います。具体的な留意点等については、次項で説明します。

(1) 諸控除額の確認

扶養控除等(異動)申告書の受理と内容の確認
配偶者特別控除申告書の受理と内容の確認

保険料控除申告書の受理と内容の確認

住宅借入金等特別控除申告書の受理と内容確認

(2) 課税所得金額の計算

給与総額、源泉徴収税額の集計
給与所得控除後の給与等の金額の計算
課税所得金額の計算

(3) 年税額計算及び還付、徴収、納付

年調年税額の計算
過不足額の精算
税額の納付


2.諸控除額の確認

[1]諸控除額の確認

年末調整の年税額の計算に当たっては、まず、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」などに基づいて各種の控除額を確定しなければなりません。各種の控除を受けうるために必要な申告書とその申告書を提出する事により受けられる控除は次の表の通りです。

申告書

控除

給与所得者の扶養控除等(異動)申告書

配偶者控除、扶養控除、障害者控除、寡婦控除、寡夫控除、勤労学生控除、基礎控除

給与所得者の配偶者特別控除

配偶者特別控除

給与所得者の保険料控除申告書

生命保険料控除、地震保険料控除、社会保険料控除(申告分)、小規模企業共済等掛金(申告分)

給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書

(特別増改築等)住宅借入金等特別控除


[2]所得控除額の計算

各控除項目の控除額の計算は以下の通りです。

区分

項目

計算

1

配偶者控除額

一般の控除対象配偶者は380,000円
老人控除対象配偶者は480,000円
同居特別障害者である一般の控除対象配偶者は730,000円

同居特別障害者である老人控除対象配偶者は830,000円

 

扶養控除額
(右の合計)

一般の扶養親族の数×380,000円
特定扶養親族の数×630,000円
同居老親等以外の老人扶養親族の数×480,000円
同居老親等の数×580,000円
同居特別障害者である一般の扶養親族の数×730,000円
同居特別障害者である特定扶養親族の数×980,000円
同居特別障害者である同居老親等以外の老人扶養親族の数×830,000円

同居特別障害者である同居老親等の数×930,000円

 

基礎控除額

380,000円

2

配偶者特別控除額

最高380,000円

3

障害者、寡婦、寡夫又は勤労学生の控除額
(右の合計)

一般の障害者の数と一般の寡婦、寡夫又は勤労学生に該当するごとに1として計算した数との合計数×270,000円
特別障害者の数×400,000円

所得者本人が特別の寡婦の場合350,000円

4

社会保険料の控除額

支払った保険料の全額

 

小規模企業共済等掛金の控除額

支払った保険料の全額

 

生命保険料の控除額

最高100,000円

 

地震保険料の控除額

最高50,000円


[3]扶養控除等(異動)申告書の受理と内容の確認

年末調整の事務を始めるにあたっては、まず、この申告書が提出されているかどうかを確かめる必要があります。確認の留意点は以下の通りです。

イ)扶養親族の数などに異動があった人の移動申告が忘れずに行われているか
ロ)申告された控除対象配偶者、扶養親族、障害者等が控除の対象に該当するか
ハ要件を満たすか否かは、合計所得金額については年末調整を行う日の現況により見積り、年齢は12月31日の現況により判定する
ニ)合計所得金額には、所得税が課税されない所得、源泉分離課税の利子所得、確定申告をしない事を選択した上場株式等の配当所得や譲渡所得など、計算に含めないものがある


[4]配偶者特別控除申告書の受理と内容の確認

配偶者特別控除とは、所得者が生計を一にする配偶者(合計所得金額が76万円未満の人に限る)で控除対象配偶者に該当しない人を有する場合に、その所得者本人の所得金額の合計額から38万円を限度として、配偶者の合計所得に応じて一定額を控除するというものです。留意点は以下の通りです。

イ)他の所得者の扶養親族とされる人、青色事業専従者として給与の支払いを受ける人及び白色事業専従者は含まれない
ロ)夫婦の双方がお互いに配偶者特別控除の適用を受ける事は出来ない

ハ)合計所得金額が1000万円を超える人は、この控除を受ける事は出来ない

[5]保険料控除申告書の受理と内容の確認

次のような点に留意して、控除額を確認したうえで正しく控除する必要があります。
(1)生命保険料控除

イ)生命保険料控除の対象となる生命保険料は、一定の生命保険契約等に基づいて支払った保険料や掛金で、所得者本人が支払ったものに限られる。
ロ)個人年金保険契約等に基づいて支払った保険料や掛金(個人年金保険料)とそれ以外の一般の生命保険料とに区分される
ハ)個人年金保険契約等は、その区分に応じて所定の要件等を満たしているか確認する必要がある
ニ)保険契約等に基づき剰余金の分配や割戻金の割戻しを受けているときは、その金額を差し引く必要がある

ホ)一般の生命保険料は9,000円を超えるものについて、個人年金保険料はすべてについてその保険料を支払った事の証明書類の添付が必要となる

(2)地震保険料控除

地震保険料控除の対象となる地震保険料は、所得者本人又は本人と生計を一にする親族が所有している家屋・家財のうち一定のものを保険や共済の目的とし、かつ地震等損害によりこれらの資産について生じた損失の額をてん補する保険金又は共済金が支払われる損害保険契約等に係る地震等損害部分の保険料又は掛け金で所得者本人が支払ったものに限られます。留意事項は以下の通りとなります。

イ)剰余金の分配や割戻金の割戻しを受けたり、その剰余金や割戻金を保険料の払い込みに充てたりした場合には、その金額を差し引く必要がある

ロ)保険料の金額の多少に関係なく、その保険料を支払ったことの証明書類が必要となる
(3)社会保険料控除

社会保険料控除には、健康保険や厚生年金保険、雇用保険などの保険料や掛け金のように毎月の給与から差し引かれているものや国民健康保険や国民年金などの保険料や保険税、掛け金のように所得者本人が直接支払っているものがあり、本人が直接支払っている物については、保険料控除申告書に基づいて控除する事になります。留意事項は以下の通りとなります。

イ)所得者本人と生計を一にする親族が負担することになっている社会保険料を本人自身が支払った場合には、その支払った金額は、本人の社会保険料として控除できる
ロ)国民年金の保険料、国民年金基金の掛け金については、支払った保険料の多少に関係なく、その保険料等を支払ったことの証明書類が必要となる。その他は不要となる

ハ)他から転職してきた人については、前職分の社会保険料等も含める

(4)小規模企業共済等掛金

小規模企業共済等掛金には、毎月の給与から差し引かれるものと本人が直接支払っているものがあり、その全額が控除されます。本人が直接支払ったものについては、保険料控除申告書に基づいて控除する事になり、支払った事の証明書類を添付する必要があります。

[6]住宅借入金等特別控除申告書の受理と内容確認

住宅借入金等特別控除制度は、一定の要件を満たした居住用家屋の新築、取得または増改築に適用されるもので、区分ごとに要件や控除額の計算が異なります。詳細は、国税庁のホムページ等を参照してください。

(特定増改築等)住宅借入金等特別控除を受けようとする最初の年分については、確定申告により、控除の適用を受ける必要があります。しかし、その後の年分については、年末調整の際に、各人から提出された「住宅借入金等特別控除申告書」に基づいて控除する事になります。

住宅借入金等特別控除申告書には、税務署長の発行した「年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除証明書」及び金融機関等が発行した「住宅取得資金に係る借入金の年末調整残高等証明書」の添付が必要となります。

3.年税額の計算

一人ひとりの所得税控除額と税額控除額の確認を行った後に、最終的な年税額の計算をする事になります。各項目の留意点は次の通りとなります。

[1]給与の総額等の集計

給与の支払を受ける一人ひとりについて、本年分の毎月の給与とその給与から徴収した税額をそれぞれ集計して、年末調整の対象となる給与の総額と徴収税額の合計額を算出します。留意点は以下の通りとなります。
(1)本年中に支払の確定した給与は、未払いとなっている場合でも本年の年末調整の対象となる。
(2)現物給与の内課税の対象になるものについては、集計に含める。
[2]給与所得控除後の給与等の金額の計算

本年分の給与の総額を「給与所得控除後の金額の算出表」にあてはめて、「給与等の金額」欄に対応する「給与所得控除後の給与等の金額」欄の金額を求めます。

[3]扶養控除額等の合計額の計算

先に確認した所得控除額について、各人の所得税源泉徴収簿の「扶養控除等の申告」欄の記載に従って合計額を求めます。

[4]課税給与所得金額の計算と算出年税額の計算

給与所得控除後の給与等の金額から所得控除額の合計額を差し引き、差引課税給与所得金額を求めます。課税給与所得金額に1,000円未満に端数があるときは、切り捨てます。課税給与所得金額に応じ、「所得税の速算表」に従って、算出年税額を求めます。

[5]年調年税額の計算

算出年税額から住宅借入金等特別控除額を控除し、年調年税額を求めます。この時100円未満は切り捨てます。マイナスとなる場合は、年調年税額欄に0円と記入します。


4.税額の計算から納付まで

[1]過不足額の精算

源泉徴収税額の合計額が年調年税額よりも多い場合は、その過納額を本人に還付します。少ない時はその不足額を本人から徴収します。年末調整による過不足額の精算方法には、以下の2つの方法があります。

イ)本年最後に支払う給与についての税額計算を省略し、その給与に対する徴収税額はないものとして精算する方法
ロ)本年最後に支払う給与についても、通常の月分の給与として税額計算を行った上で精算する方法
[2]税額の納付

過不足額を計算した結果、過納額が生じた場合には、その過納額を年末調整を行った月分として納付する「給与、退職手当及び弁護士、司法書士、税理士等に支払われた報酬・料金に対する源泉徴収税額」から差引きます。還付しきれない場合は、翌月以降の上述の源泉徴収税額から差し引きます。それでも還付できない時には届出を行う事により還付を受けることができます。

不足額は、年末調整する月分の給与から徴収し、なお不足額が残るときは、その後に支払う給与から順次徴収することになります。

参考文献
平成22年分 年末調整のしかた  国税庁
執筆者:武田
 

連載記事

 
 

IFRS(国際財務報告基準)第2回 IAS第1号「財務諸表の表示」

1.はじめに

連載第2回目となる今回は、IAS第1号「財務諸表の表示」(以下「IAS第1号」という。)について紹介します。

2.IAS第1号「財務諸表の表示」

[1]IFRSによる財務諸表作成の考慮事項

IAS第1号では、財務諸表を作成するに当たっての全般的な考慮事項として、以下の項目が挙げられています。

(1)適正表示とIFRSへの準拠
財務諸表は、企業の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況を適正に表示する必要があります。IFRSに準拠して財務諸表を作成する企業は、注記においてIFRSに準拠している旨を明示的かつ無条件に記載しなければなりません。
(2)継続企業の前提
財務諸表は継続企業を前提として作成されるため、経営者は、企業が継続企業として存続する能力を有しているかについて評価しなければなりません。なお、継続企業の前提に、重要な疑義を生じさせる事象又は状況により重要な不確実性が認められる場合には、その不確実性を開示する必要があります。
 (3)発生主義会計
キャッシュ・フロー計算書を除き、発生主義会計を適用して財務諸表を作成しなければなりません。
 (4)重要性と合算
重要な項目は、類似した項目であっても財務諸表に個別に表示しなければなりません。また、類似しない項目は、重要性がない場合を除き、別個に表示しなければなりません。なお、我が国の現行制度に示されている、「資産の総額の100分の1を超える資産については、個別掲記しなければならない」等の表示の指針となる具体的な数量基準はないため、実務上、表示についての判断が求められます。
 (5)相殺
資産と負債、収益と費用はIFRSにおいて認められている場合を除き、相殺することはできません。
 (6)比較情報
原則として、財務諸表のすべての金額については、比較情報として前期の金額を開示しなければなりません。
 (7)表示の継続性
財務諸表の表示・分類については、継続して適用する必要があります。


[2]IFRSにおける完全な1組の財務諸表

IAS第1号では、IFRSにおける完全な1組の財務諸表は、以下のものから構成されているとしています。

(1)財政状態計算書

財政状態計算書は、日本基準の貸借対照表に該当します。表示項目はIAS第1号54項に掲げられていますが、これは、最低限区分表示されるべきものであり、企業の財政状態を理解するのに適切である場合には、項目、見出し及び小計を追加しなければなりません。資産及び負債は、流動・非流動に区分して表示することが求められていますが、流動性を基にした表示が信頼でき、より目的と適合する情報を提供する場合には、区分を設けずに表示することが出来ます。

(2)包括利益計算書

包括利益計算書は、日本基準の損益計算書に類似しています。表示項目はIAS第1号82項に掲げられていますが、これは、最低限区分表示されるべきものであり、企業の経営成績を理解するのに適切である場合には、項目、見出し及び小計を追加しなければなりません。この他、包括利益計算書には、以下の特徴があります。

イ)2種類の利益

包括利益計算書では、収益から費用を控除した当期純利益にその他の包括利益を加えた包括利益を表示する必要があります。その他の包括利益は、在外企業の財務諸表の為替換算差額や売却可能金融商品の評価差額等、当期の損益として認識されない資産・負債の増減であり、IAS第1号では5項目が列挙されています。

ロ)2種類の様式

包括利益計算書の様式には、単一の包括利益計算書を表示する一計算書方式と、当期純利益の構成要素を示す損益計算書と当期純利益から開始しその他包括利益の構成要素を示す包括利益計算書の2つの計算書に分けて表示する二計算書方式があり、いずれかを選択適用することになります。

ハ)廃止事業の損益の開示

包括利益計算書において、廃止事業からの損益は他と区分して表示しなければなりません。廃止事業とは、すでに処分されたか、売却目的として保有する資産として分類された企業の構成要素であり、一定の要件を満たすものをいいます。

ニ)特別損益の表示の禁止

包括利益計算書、損益計算書(二計算書方式の様式を採用する場合)及び注記において、収益又は費用の項目について異常項目として表示することは禁止されています。

(3)持分変動計算書

持分変動計算書は、日本基準の株主資本等変動計算書に該当します。損益取引及び資本取引に起因する持分の構成要素の変動が表示されます。

(4)キャッシュ・フロー計算書

キャッシュ・フロー計算書については、IAS第7号「キャッシュ・フロー計算書」において定められています。日本基準と同様にキャッシュ・フローの区分は、営業活動、投資活動、財務活動の3区分とされています。また、表示方法については、営業活動によるキャッシュ・フローは直接法と間接法のいずれかを採用できますが、投資活動及び財務活動によるキャッシュ・フローについては直接法のみとされています。廃止事業に関するキャッシュ・フローの開示が求められており、各活動別に廃止事業に係る正味のキャッシュ・フローを開示しなければなりません。

(5)注記

IFRSの特徴として、注記の多さが挙げられます。IFRS任意適用第1号企業である日本電波工業株式会社の有価証券報告書を見ると、前年度(日本基準)と比較し、注記のページ数が24ページから36ページに増えています。IFRSは原則主義を採用しているため、どのように経営者が判断して会計処理を行ったのかを詳細に記載することが求められます。実務担当者は作業量の増加に対応できるように、顧問の会計事務所や監査法人と事前に協議を重ねておく必要があるでしょう。

(6) 会計方針の遡及適用を行う場合、財務諸表の項目の修正再表示を行った場合、あるいは財務諸表での組替を行った場合における、最も古い比較対象期間の期首の財政状態計算書
 
執筆者:関
 


 

不正な財務報告 第2回 事例2 〜計上時期の操作〜

不正な財務報告は大きく分けて、イ. 架空収益 ロ. 計上時期の操作 ハ. 不適切な資産評価 ニ. 負債や支出の隠ぺい ホ. 不適切な開示・公開に分類されます。第1回では、イ. 架空収益についての事例を紹介しました。今回は、引き続き ロ.計上時期の操作についての事例を紹介します。


[1]内容

我が国において、収益は、実現主義の原則に従い「財貨の移転又は役務の提供の完了」と「それに対する対価の成立」の二要件を充たした時点で計上されます。一方、費用は、ある期間において発生主義の原則に基づき認識された費用のうち、その期間の収益に対応するものだけが計上されます。

しかし、収益や費用の計上に関するこれらの取扱いが無視され、そして、計上時期が意図的に適正な時期から別の時期に調整され利益操作がなされる場合があります。このような操作が、計上時期の操作です。


[2]事例

(1)住宅関連事業会社M社の場合

住宅関連事業会社M社は、「すでに入居者がいる別の住宅に監査法人を案内する」「完成した別の物件の表札を差し替える」等の手段を用いて、未完成の住宅をすでに完成しているかのように装ったり、住宅を顧客に引き渡したことにして売上を前倒し計上するという計上時期の操作を5年にわたって行っていました。 これは、グループ全体が経営不振となり産業再生機構の支援を仰いでいる中、業績向上を迫られ目標達成への強い思いから行われたようですが、監査法人からの指摘により判明しました。


(2)空調総合メーカーD社の場合

空調総合メーカーD社のサービス部門において、本来であれば翌事業年度にその全部または一部の工程を実施する予定の工事について、当事業年度において工事全部が終了したものとして売上を前倒し計上する会計処理が行われていました。 これはサービス本部長の予算達成への圧力が強く、各地域のサービス部門の責任者等に対し、予算達成に向けたプレッシャーが強く課せられていたことが原因といえます。ある事業年度において、その予算達成が特に困難であった地域のサービス部門で売上の前倒し計上が始められ、他の地域サービス部門でも行われるようになり、10年間にわたり前倒しによる売上計上が続けられていました。 しかし、長年にわたりサービス本部において不正な会計処理が行われている旨の匿名の手紙がサービス担当役員宛に届けられたことにより社内調査が行われ、不正な会計処理の事実が判明しました。


次回は、ハ. 不適切な資産評価及び ニ. 負債や支出の隠ぺいについての事例を紹介致します。
 
執筆者:成田、田中
 

編集後記
 
 

明誠News Letter Vol.1の発刊から1ヶ月経ちました。Vol.1を発刊した時は、「次は1ヶ月後だから少し余裕があるな。」などと思っていましたが、あっという間にVol.2です。News Letterの制作はとても大変ですが、Vol.1の発刊後、沢山の方から感謝や激励のメールで暖かな反応をいただき、モチベーションを維持したままVol.2を発行することができました。
さて、あれだけ暑かった夏でしたが、冬になるとやっぱり寒くなるものですね。色んな場面で暖かいものを求めるようになってきませんか?
寒くなってきて、押し入れからコタツを引っ張り出している方もいらっしゃるのではないでしょうか。コタツって天国ですよね。しかし、我が家ではコタツはご法度です。入ってしまうと、もう何もやりたくなくなってしまうので・・・
なので、我が家では昔ながらの灯油ストーブが大活躍をしています。みなさんのお家ではどんな暖房器具が活躍していますか?

これから寒さが厳しくなってきますが室温調整などを上手に行い、体調を崩さないようにご自愛ください。
 
執筆者:村田
 


       
   

  明誠ニュースレター vol.02
2010年11月15日発行
発行責任者:武田剛
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