明誠グループニュースレター

情報フラッシュ [ 連載記事 ]
IFRS(国際財務報告基準)第6回 IAS第10号「後発事象」
不正な財務報告 第6回 〜財務不正の発見3〜
[ トピック解説 ]
「リース会計に関する論点の整理」について

情報フラッシュ

 
発表日時 表題
平成23年3月15日 日本公認会計士協会は、金融商品取引業者における顧客資産の分別管理に関する業種別委員会報告第40号及び研究報告第7号を公表しました。
平成23年3月18日 企業会計基準委員会は,実務対応報告第5号「連結納税制度を適用する場合の税効果会計に関する当面の取扱い(その1)」を公表しました。
平成23年3月23日 日本公認会計士協会は、東北地方太平洋沖地震による災害に関する監査対応に関する会長通牒を公表しました。
平成23年3月25日 企業会計基準委員会は、四半期財務諸表に関する会計基準の見直しとそれに伴う関連する適用指針等の改正として、企業会計基準第12号、第20号、企業会計基準適用指針第4号、第14号、第15号、第16号、第19号、第21号の改正を公表しました。
企業会計基準委員会は、連結財務諸表における特別目的会社の取扱い等の明確化のため、企業会計基準第22号、同適用指針第15号及び第22号、実務対応報告第20号の改正を公表しました。
平成23年3月28日 金融庁は、財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令(案)を公表しました。
平成23年3月29日 日本公認会計士協会は、以下の委員会報告等の改正を公表しました。
−監査・保証実務委員会報告第75号「監査報告書作成に関する実務指針」、同42号「租税特別措置法上の準備金及び特別法上の引当金又は準備金並びに役員退職慰労金引当金等に関する監査上の取扱い」、同63号「諸税金に関する会計処理及び表示に係る監査上の取扱い」
−監査委員会報告第61号「債務保証及び保証類似行為の会計処理及び表示に関する監査上の取扱い」、同77号「追加情報の追記について」、同78号「正当な理由による会計方針の変更」
−倫理委員会報告第1号「監査人の独立性チェックリスト」及び「独立性に関する指針」
−業種別委員会報告第30号「自己資本比率の算定に関する合意された手続による調査業務を実施する場合の取扱い」
金融庁は、財務計算に関する書類その他の情報の適正性を確保するための体制に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令を公表しました。
平成23年3月30日 日本公認会計士協会は、監査・保証委員会実務指針「中間財務諸表と年度財務諸表との会計処理の首尾一貫性」の公開草案を公表しました。
企業会計基準委員会は、「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の改訂に関する意見書」を公表しました。
平成23年3月31日 日本公認会計士協会は、IT委員会研究報告「電子記録債権残高の検証手続上の留意点」の公開草案を公表しました。また、「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準及び「包括利益の表示に関する会計基準」等に対応するため、「外貨建取引等の会計処理に関する実務指針」、「研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する実務指針」、「金融商品会計に関する実務指針」、「研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関するQ&A」、「金融商品会計に関するQ&A」及び「税効果会計に関するQ&A」の改正を公表しました。
金融庁は、四半期連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を介し得する内閣府令等を公表しました。また、内部統制報告制度に関してQ&Aの改訂及び事例集を公表しました。
法務省は、会社計算規則の一部を改正する省令を公表しました。

トピック解説

 

 

「リース会計に関する論点の整理」について

1.はじめに

企業会計基準委員会(ASBJ)は、平成22年12月27日に、「リース会計に関する論点の整理」を公表しました。これは、国際会計基準審議会(IASB)と米国財務会計基準審議会(FASB)が、平成22年8月に公開草案「リース」(以下「IASB及びFASBのED」という。) を公表したことを受けて、我が国のリースに関する会計基準に関して、今後、会計基準のコンバージェンスを検討していくにあたり、IASB及びFASBのEDの提案について、関係者の理解を促進し、受け入れ可能なものであるか又は改善を要する論点があるかを早期に検討するために、広く関係者からの意見を募ることとしたものです。今回は、借手と貸手の会計処理を中心とした基本的な論点について紹介していきます。

2.定義

我が国の会計基準では、リース取引を「特定の物件の所有者たる貸手が、当該物件の借手に対し、合意された期間にわたりこれを使用収益する権利を与え、借手は、合意された使用料を貸手に支払う取引」としています。リース取引の定義を満たすものはリース契約、レンタル契約、賃貸借契約などの名称にかかわらず、リース取引として取り扱うこととされていますが、定義に関する特段の指針は設けられていません。

IASB及びFASBのEDでは、「特定資産(原資産)を使用する権利が、一定期間にわたり、対価と交換に移転される契約」をリースと定義し、また、契約の実質に基づきリースに該当するかの判断をするための詳細な規定を設けることを提案しています。

3.借手の会計処理(使用権モデル)

[1]我が国における現行の取扱い

リース取引をファイナンス・リース取引とオペレーティング・リース取引に分類し、基本的に、資産の所有に伴うリスクと経済的便益のほとんどすべてが実質的に借手に移転している場合には、ファイナンス・リース取引、そうでない場合にはオペレーティング・リース取引とされます。また、ファイナンス・リース取引については売買と同様の会計処理を行い、オペレーティング・リース取引については賃貸借と同様の会計処理を行うこととされ、異なる2つの会計処理を使い分けることとされています。


[2]IASB及びFASBのEDにおける提案
(1)リース取引における借手は、すべてのリース取引について、契約におけるリース物件(以下「原資産」という。) を使用する権利とその対価を支払う義務に基づき資産と負債を認識し、会計処理をするという単一モデルが提案されています (以下「使用権モデル」という。)。この使用権モデルでは、リース取引開始日に、借手は、貸借対照表上で次の資産と負債を認識し、リース料の現在価値に基づき測定することになります。
1)使用権資産(リース期間にわたって原資産を使用する権利を表す資産)
2)リース料支払債務(原資産を使用する権利と交換にリース料を支払う義務を表す負債)
また、損益計算書上では、上記 1).に係る償却費や 2).に係る利息費用などを認識することになります。

<設例1>使用権モデルに基づくリース取引開始日の会計処理(リース会計に関する論点の整理より抜粋)
前提条件
・リース期間 5 年
・原資産の経済的耐用年数 7 年
・リース期間に係る更新オプションや解約オプションはなく、残価保証もない。
・年間リース料 6,171千円(後払い)。当初直接費用なし。
・リース料(総額)の現在価値 24,639千円(割引率 8%)

リース取引開始日 (単位:千円)
(借) 使用権資産 24,639 (貸) リース料支払債務 24,639

(2) 借手の財務諸表の表示については、使用権モデルを前提に、リース取引から生じる資産、負債及びキャッシュ・フローを他と区別して表示し、 費用については区分表示又は注記による開示が提案されています。

[3]今後の方向性

リースに係る借手の会計処理について、使用権モデルに基づき、リース契約における借手の権利と義務を資産及び負債として貸借対照表上で認識していくとする基本的な考え方は、ファイナンス・リース取引かオペレーティング・リース取引かによって大きく異なる会計処理となっている現行の会計基準に比べて、比較可能性の向上など一定の財務報告の改善につながると考えられます。また、会計基準のコンバージェンスを図る観点からも、我が国においてもこの使用権モデルの考え方を基礎として会計基準を開発していくことが考えられます。

4.貸手の会計処理(履行アプローチと認識中止アプローチ)

[1]我が国における現行の取扱い

借手と同様、リース取引をファイナンス・リース取引とオペレーティング・リース取引に分類しています。ファイナンス・リース取引については売買取引と同様の会計処理を行い、オペレーティング・リース取引については賃貸借と同様の会計処理を行うこととされ、リース取引について2つの異なる会計処理を使い分けることとされています。

[2]IASB及びFASBのEDにおける提案

(1) 貸手の会計処理について、借手と同様、リースから生じる資産及び負債を認識する使用権モデルを適用することとしつつ、その適用の方法として、次の2つのアプローチを使い分ける複合モデルを提案しています。


1)履行義務アプローチ

リースにより、貸手が原資産を使用する権利を借手に与える結果、リース料を受け取る権利という新たな資産(リース料受取債権)と、原資産をリース期間にわたって使用することを借手に認めるという義務を表す新たな負債(リース負債(履行義務))が貸手に生じると考えるアプローチをいいます。このアプローチの場合、原資産は、貸手の経済的資源でありリース契約から生じる資産及び負債とは別個のものと考えるため、リースによって認識は中止されません。


2)認識中止アプローチ

リースにより、リース取引開始日に貸手が借手にリース期間にわたる原資産の経済的便益を移転したと考えるアプローチをいいます。貸手はこれと引き換えに、借手からリース料を受け取る無条件の権利を受け取ります。原資産のうち、借手に移転した権利に係る経済的便益について認識の中止を行い、借手に移転していない権利に係る経済的便益について残存資産として認識することとなります。


<設例2>履行義務アプローチ又は認識中止アプローチに基づくリース取引開始日の会計処理(リース会計に関する論点の整理より抜粋)
前提条件
・原資産の原価(帳簿価額)20,000 千円
(うち、認識中止部分に係る配分後の帳簿価額 18,953千円、残存部分に係る配分後の帳簿価額 1,047千円)
・その他の条件は〈設例1〉の前提条件と同じ

(履行義務アプローチ)
リース取引開始日 (単位:千円)
(借) リース料受取債権 24,639 (貸) リース負債(履行義務) 24,639

リース料の現在価値で、リース料を受け取る権利とリース期間にわたって借手に使用を認める義務を新たな資産と負債として認識します。ただし、原資産の認識は中止されません。


(認識中止アプローチ)
リース取引開始日 (単位:千円)
(借) リース料受取債権 24,639 (貸) リース収益 24,639
(借) リース費用 18,953 (貸) 原資産 18,953

リース料の現在価値で、リース料を受け取る権利と売上高(リース収益)を認識するとともに、配分後の原資産の帳簿価額で借手に移転した部分に係る原資産の認識を中止し、売上原価(リース費用)を認識します。この結果、リース取引開始日に5,686千円(24,639千円 - 18,953千円)の利益が認識されます。

(2) IASB及びFASBのEDでは、上記2つのアプローチについて、原資産に伴う重要なリスク又は便益に対するエクスポージャーを貸手が留保しているか否かに基づき使い分けることとしていますが、具体的には次のような定めを設けています。
1)予想リース期間中又は予想リース期間後の原資産に伴う重要なリスク又は便益に対するエクスポージャーを貸手が留保している場合、履行義務アプローチを適用する。
2)予想リース期間中又は予想リース期間後の原資産に伴う重要なリスク又は便益に対するエクスポージャーを貸手が留保していない場合、認識中止アプローチを適用する。

(3)貸手の財務諸表の表示については、履行義務アプローチと認識中止アプローチを使い分ける複合モデルを前提に、各アプローチにより発生した科目を他の科目と区別して表示することが提案されています。さらに履行義務アプローチでは、資産の二重計上を招くことが懸念されるため、貸借対照表上で、原資産、リース料受取債権、リース負債(履行義務)を総額で表示し、それらの合計(純額)を表示する「結合表示」という方法が提案されています。
[3]今後の方向性

リース取引の形態は多岐にわたり、その経済的意味合いはそれぞれ異なることから、貸手の会計処理について複数の会計処理を使い分ける考え方は、リース取引の経済的実態を反映するものであると考えられます。この観点から、IASB及びFASBのEDで提案されている履行義務アプローチと認識中止アプローチとを使い分ける複合モデルは一定の合理性があるとし、これらのアプローチを基礎として、リース取引の多様性を踏まえ検討していくことが考えられます。また、いずれのアプローチを適用するかの判断は、貸手の収益認識の時期を決定する重要な規準であるとも考えられるため、平成22年6月に公表されている、収益認識に関する新たな会計処理を提案する公開草案「顧客との契約から生じる収益」で提案されている収益認識の時期に関する取扱いとの整合性についても検討していくことが考えられます。

5.更新オプション及び解約オプション

我が国の会計基準では、解約不能のリース期間と、借手が更新オプションを行使して再リースを行う意思が明らかな場合における再リース期間をリース期間とするとされています。

[1]IASB及びFASBのEDにおける提案

更新オプション等について、その影響をリース期間に反映し会計処理することが提案されています。具体的には、「発生しない可能性よりも発生する可能性の方が高くなる(すなわち、発生の可能性が50%超となる)最長の起こり得る期間」 を見積り、リース期間として決定することとされています。
[2]今後の方向性

リース期間の算定に際して、これらのオプションを考慮し、解約不能な期間に加え解約可能な期間についてもIASB及びFASBのEDで提案されているような一定の見積りによってリース期間に含めることについては、借手にとって債務性に乏しい負債の認識につながる可能性があるとする懸念もあります。そこで、更新オプション等の取扱いに関する代替案として、見積りに際してより高い蓋然性の閾値を設ける、最も発生の可能性の高い期間とする、解約不能期間に限るなど、さまざまな方法について、我が国においても、今後さらに検討を要すると考えられます。

6.購入オプション

我が国の会計基準では、借手及び貸手ともに、購入オプションは行使されるまで会計処理されないこととされています。

[1]IASB及びFASBのEDにおける提案

購入オプションは使用する権利を終了させる手段であることを理由に、当該オプションが行使された時点で会計処理することとされ、更新オプション等の取扱いと異なり、購入オプションの行使価格はリース料ではなく、リース料の現在価値の算定に含めないことが提案されています。

[2]今後の方向性

我が国の会計基準では、IASB及びFASBのEDにおける提案と同様、購入オプションは行使されるまで会計処理されないこととされています。しかしながら、リース契約に含まれるオプションをリースに係る資産及び負債に含めて認識する提案を前提とするのであれば、更新オプション等の取扱いと同様の結果となるように会計処理することが適切であり、この考え方を踏まえて検討を行っていくことが考えられます。

7.まとめ

借手の会計処理については、すべてのリース取引について、使用権モデルに基づき使用権資産及びリース料支払債務として貸借対照表に計上することにより、比較可能性の向上など、一定の財務報告の改善につながると予想されます。

一方で、貸手の会計処理については、二つのアプローチによる複合モデルが提案されており、そのいずれを適用するかの判断において、借手の会計処理や他の収益認識に係る会計処理及びそれらの前提となる考え方と不整合があるような状況は、貸手の会計処理の合理性や客観性について疑念を生じさせるおそれがあるため、極力排除していくべきであると考えられます。なかでも、二つのアプローチの収益認識時点に大きな差があるということ、原資産の認識を中止するかしないかの差があるということは、財務数値に影響を及ぼす重要なポイントであり、恣意的な会計処理の選択余地を残さないよう、慎重に検討していく必要があると考えられます。

執筆者:町出知則
 


連載記事

 
 

IFRS(国際財務報告基準)第6回 IAS第10号「後発事象」

1.はじめに

今回は、IAS第10号「後発事象」(以下、「IAS第10号」という。)について紹介します。我が国では、監査・保証実務委員会報告第76号「後発事象に関する監査上の取り扱い」において後発事象に関する取り扱いが示されています。

2.目的

IAS第10号の目的は、企業は後発事象について、どのような場合に財務諸表を修正しなければならないか及び、財務諸表の公表が承認された日及び後発事象に関して企業が行わなければならない開示について定めることにあります。

3.定義

後発事象とは、報告期間の末日と財務諸表の公表が承認される日までに生じた事象で、企業にとって有利な事象と不利な事象の双方をいい、次の二つに分類されます。

[1]修正後発事象:報告期間の末日において存在していた状況について証拠を提供する事象
[2]非修正後発事象:報告期間後に発生した状況を示す事象

なお、ここでいう「財務諸表の公表が承認される日」は、財務諸表が取締役会による検討と承認のあと、株主等に公表され、株主総会の承認ののち監督機関に提出されるような場合には、財務諸表が取締役会によって承認された日となると考えられます。このような財務諸表の公表を承認するプロセスは、経営組織、法的要請及び財務諸表の作成と最終決定の手続によって異なるため、各国の法令等に当該プロセスに関する規定が定められている場合にはそれに従うことになると考えられます。

また、財務諸表の公表に向けた承認日及び誰がその承認を行ったかを開示しなければならないとされています。

我が国では、後発事象の対象期間は、財務諸表の公表が承認される日までではなく、監査報告書日までとされています。また、財務諸表の公表に向けた承認日及び誰がその承認を行ったかについての開示事項は、我が国では開示事項とされていません。そのため、IAS第10号が適用された場合には、法令等による規定や組織体制等を踏まえて当該開示事項を決定する必要があると考えます。

4.修正後発事象

修正後発事象については、財務諸表において認識された金額を修正しなければなりません。IAS第10号においては、修正後発事象の例として以下が挙げられています。

[1]報告期間の末日において、現在の債務を有していたことを証明することになる訴訟事件の解決
[2]報告期間の末日において、ある資産がすでに減損していたことを示す情報の入手
[3]報告期間の末日前に行われた資産の購入又は売却に係る購入原価又は売却価額の報告期間後の決定
[4]報告期間の末日以前の事象の結果として、法的又は推定的債務を報告期間の末日に有していた場合の、支払金額の報告期間後の決定
[5]財務諸表が誤っていたことを示す不正又は誤謬の発見

5.非修正後発事象

非修正後発事象については、財務諸表において認識した金額に対して、反映するように修正してはならないとされています。例としては、報告期間の末日と財務諸表の公表が承認される日との間に発生した投資の市場価値の下落が挙げられています。

非修正後発事象が重要である場合には、当該事象の性質及び財務的影響の見積り(見積りが困難である場合にはその旨)を開示しなければならないとされています。

6.配当

IAS第10号では、企業が報告期間後に配当の宣言を行う場合、当該配当金を報告期間の末日時点の負債として認識してはならないとされています。配当が、報告期間の末日後であり、財務諸表の公表の承認前に宣言される場合には、IAS第1号に従って財務諸表の注記で開示されることになります。

7.継続企業の前提

IAS第10号では、ある企業の経営者が報告期間後に、その企業の清算または営業の停止をする方針を決定するか、もしくはそうする以外に現実的に代替案がないと判断した場合には、その企業は、継続企業の前提で財務諸表を作成してはならないとされています。継続企業の前提により財務諸表が作成されていない場合には、その旨、当該財務諸表作成の前提、及び企業が継続企業と認められない理由を開示しなければなりません。

一方我が国では、継続企業を前提としない財務諸表についての規定はなく、継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められる場合には、その旨を注記することになっています。IAS第10号が適用された場合、清算貸借対照表のような形で企業の財政状態を表現することになると考えられます。

8.終わりに

以上、IAS第10号について紹介してきましたが、IAS第10号と我が国との差異については、IAS第10号が適用された場 合を考え、対応を検討しておく必要があると考えます。

以上
 
執筆者:関和輝
 

 

不正な財務報告 第6回 〜財務不正の発見3〜

1.財務諸表の不正の防止

財務諸表の不正を防止・制御するためには、統制を確立して保持し、内部監査等によるハイリスクな行動の管理が大切なことはもとより、以下に示す要因を減らすことが財務諸表の不正の防止・抑制に大いに役に立つと言われています。

[1]不正を働くような既存のプレッシャーを減らす

前回取り上げた不正事例の様に、業績達成のプレッシャーや社内での地位へのこだわり等から不正に走るケースがあります。 その他、積極的な不正というよりも、経理部門業務の障害となる状況、例えば、経理人員が少ない状況などが財務諸表の不正へとつながることもあります。 そのため、以下のようにプレッシャーを減らすことが大切です。

・達成不可能な財務上の目標を設定しない。
・業務上の障害となるものを排除する。
・例外条項のない明確で均一の経理手続を確立する。
[2]不正を行う潜在機会を減らす

会社内での重要な機能が一人の人間にゆだねられていたり、経理手続が適切な監督・指揮のもとで行われていないような場合、注文書や受領書、残高確認書の偽造等が行われやすくなります。 このような不正を行う機会を減らすためには、以下のような体制を築くことが大切です。

・正確な内部会計記録を保持する。
・商取引と販売先、販売担当者、その他金融に係る人々の関係を注意深く監視する。
・会社資産を安全にするセキュリティ・システムを構築する。
・重要な機能を分担する。
・新しい従業員の身元確認等、正確な個人記録の維持に努める。
・グループ内での強力な監督・指導の関係を促進する。
[3]不正の正当化を減らす―従業員の個々の誠実さを強化する

不正を一度正当化すると、それはまわりの人間までも巻き込んだ長期にわたる不正の正当化につながることがあります。

そのため、経営陣は会計における誠実さを奨励して手本を示し、自ら唱導することが大切です。そこで、以下のような方法により、不正を正当化しない状況を常に保つことが必要です。

・誠実な行動、不誠実な行動を会社の方針において定義し、経理手続におけるあいまいな部分を排除する。
・規則を破った場合と造反者への処罰を明確にする。

2.最後に

財務諸表の不正は、孤立した環境下では起こりません。 組織内で動機と機会を持つ人々が不正を働く可能性があるのです。 そして残念なことに最高経営責任者や財務担当役員が積極的に不正に係っている場合もあります。 経営陣自らが誠実さの手本となり、会社の倫理気風を措定することが何よりも重要です。 また、内部または取引先からの「通報」がしやすい環境を整えることも不正を防止・抑止するためには大切です。


参考文献
・帝国データバンク「第2回不適切な会計処理が発覚した上場企業動向調査」
・最近の粉飾−その実態と発見法  井端 和男著
・上場ベンチャー企業の粉飾・不正会計失敗事例から学ぶ  門脇 徹雄 VBS研究会VC分科会 編著
・不正検査士マニュアル
・不適切な取引に関する調査報告書等
 
執筆者:成田、田中
 


編集後記
 
 

春の香りが感じられる今日この頃です。
3月11日(金)に発生した東北地方太平洋沖地震から1ヵ月が経過しました。私の田舎も津波の影響で甚大な被害を受けましたが、地元の方々は前向きに頑張っているようです。これも、世界中の方々の様々な支援が、被災地の方々に勇気を与えているからだと思います。
今回の震災で、私自身、何ができるのか考えて行動することが多くなりました。

復興にはまだまだ時間がかかると思います。ひとりひとりの思いやりが、希望や勇気を与え日本に大きな力を与えます。早く、日本中のみなさんが笑って過ごせる日を期待しています。
みなさんも、未来を信じて、今できることを精一杯取り組んでみませんか?
 
執筆者:清水真太郎
 


       
 
 

  明誠ニュースレター vol.07
2011年4月18日発行
発行責任者:武田剛
編集スタッフ:梅原剛、清水真太郎、大森麻利子、村田博明
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