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情報フラッシュ [ 連載記事 ]
IFRS(国際財務報告基準)第7回 IAS第12号「法人所得税」
[ トピック解説 ]
過年度遡及修正の対応

情報フラッシュ

 
発表日時 表題
平成23年4月1日 日本公認会計士協会より、業種別委員会実務指針「会計監査及び内部統制監査と金融検査との連携に関するガイドライン」(公開草案)が公表されました。
平成23年4月8日 金融庁より、「中間監査基準及び四半期レビュー基準の改訂について」(公開草案)が公表されました。
平成23年4月14日 日本公認会計士協会より、監査・保証実務委員会報告第81号「減価償却に関する当面の監査上の取扱い」の改正が公表されました。
平成23年4月20日 日本公認会計士協会より、監査・保証実務委員会報告第83号「四半期レビューに関する実務指針」の改正について(公開草案)、及び実務指針「監査報告書の文例」(公開草案)が公表されました。
平成23年4月21日 IASBとFASBが、コンバージェンス・プログラムの完了へ向けての大幅な進展を報告しました。
平成23年4月28日 日本公認会計士協会より、以下のチェックリスト及び中間報告が公表されました。
- 中小事務所等施策調査会研究報告第3号「会社法計算書類等に関する表示のチェックリスト」の公表について
- 中小事務所等施策調査会研究報告第4号「有価証券報告書に関する表示のチェックリスト」の公表について
- 【未発効の新起草方針に基づく改正版】「監査基準委員会報告書第58号『監査業務における品質管理』(中間報告)」の公表について
- 【未発効の新起草方針に基づく改正版】 「品質管理基準委員会報告書第1号『監査事務所における品質管理』(中間報告)」の公表について

トピック解説

 

 

過年度遡及修正の対応

1.概要

我が国では、従来、会計方針等の変更を行った場合において、過去の財務諸表に遡って修正処理を行わず、当期の損益計算書に「過年度修正損益」等の勘定科目を使用して修正による影響額を反映してきました。
しかしながら、IFRSでは、会計方針等の変更が行われた場合において、過去の財務諸表を新たに採用した方法で遡及処理し、これを表示することが求められています。これは、財務諸表の期間比較可能性および企業間の比較可能性を向上し、財務諸表の意思決定有用性を高めるためだと考えられます。
そこで、我が国においても国際的な会計基準とのコンバージェンスを図るために、2009年12月4日に企業会計基準24号「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」および企業会計基準適用指針24号「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準の適用指針」(以下、「過年度遡及修正基準」という。)が公表されました。過年度遡及修正基準は2011年4月1日以後開始する事業年度より適用され、我が国においても、会計方針等の変更を行った場合において、過去の財務諸表を遡及修正し、当該影響額等を注記することが必要となりました。

2.過年度遡及修正の範囲

過年度遡及修正基準は、「会計上の変更」および「過去の誤謬の訂正」に関する会計処理および開示について適用されます。また、「会計上の変更」は、「会計方針の変更」、「表示の変更」、「会計上の見積りの変更」に区分されています。

3.原則的な取扱い

過年度遡及修正基準は、「会計上の変更」または「過去の誤謬の訂正」を行った場合の会計上の取扱いとして、以下のように定めています。

[1]会計上の変更
(1)会計方針の変更

会計方針の変更には、「会計基準等の改正に伴う会計方針の変更」および「正当な理由による会計方針の変更」がありますが、いずれの場合においても、原則として、過去の財務諸表に遡って新たに採用した会計方針を適用することになります(以下、「遡及適用」という)。遡及適用を行った場合には、表示期間(当期の財務諸表及びこれに併せて過去の財務諸表が表示されている場合の、その表示期間をいう。)より前の期間に関する遡及適用による累積的影響額は、表示する財務諸表のうち、最も古い期間の期首の資産、負債及び純資産の額に反映すると伴に、表示する過去の各期間の財務諸表には、当該各期間の影響額を反映します。

ただし、会計基準等に経過的な取扱いが定められている場合においては、当該取扱いに従うことになります。また、会計方針の変更が、製造原価等に影響を与える場合においては、遡及適用について簡便的処理が認められています。

(2)表示方法の変更
表示方法の変更には、財務諸表における同一区分内での科目の独立掲記、統合あるいは科目名の変更及び重要性の増加に伴う表示方法の変更のほか、財務諸表の表示区分を超えた表示方法の変更も含まれます。いずれの場合においても、原則として、過去の財務諸表に遡って、新たな表示方法で表示する必要があります。

(3)会計上の見積りの変更
会計上の見積りの変更は、「新たに入手可能となった情報に基づく変更」であり、新しい情報によってもたらされるものであるとの考えから、その影響は将来に向けて認識するとの考えがとられています。そのため、原則として会計上の見積りの変更は、当該変更が変更期間のみに影響する場合には、当該変更期間に会計処理を行い、当該変更が将来の期間にも影響する場合には、将来にわたり会計処理を行うことになるため、過年度に開示した財務諸表の修正は不要となります。なお、過去の見積り誤りに起因する場合には、後述する誤謬の訂正に該当します。

[2]過去の誤謬の訂正
「誤謬」とは、原因となる行為が意図的であるか否かにかかわらず、財務諸表作成時に入手可能な情報を使用しなかったことによる、又はこれを誤用したことにより、財務諸表の基礎となるデータの収集又は処理上、事実の見落としや誤解から生じる会計上の見積り、会計方針の適用の誤り又は表示方法の誤りをいいます。
過去の財務諸表に誤謬が生じていた場合においては、過去の財務諸表に遡って修正を行い、表示期間の期首時点の資産・負債・純資産の額を修正再表示することが必要となります。

4.原則的な取扱いが実務上不可能な場合の取扱い

遡及適用が実務上不可能な場合とは、以下の場合をいいます。
・過去の情報が収集・保存されておらず、合理的な努力を行っても、遡及適用による影響額を算定できない場合
・遡及適用にあたり、過去における経営者の意図について仮定することが必要な場合
・遡及適用にあたり、会計上の見積りを必要とするときに、会計事象や取引が発生した時点の状況に関する情報について、対象となる過去の財務諸表が作成された時点で入手可能であったものと、その後判明したものとに、客観的に区別することが時の経過により不可能な場合
上記の場合においては、会計方針の変更および表示方法の変更の場合について、実務上不可能な場合の取扱いが、定められています。会計方針の変更が実務上不可能な場合には、できる限り遡及処理が実行可能な最も古い期間の期首または日から新たな会計方針を適用します。また、表示方法の変更が実務上不可能な場合には、財務諸表の組替が実行可能な最も古い期間から新たな表示方法を適用することになります。

5.注記事項

遡及修正処理を行った場合には、「会計方針の変更」、「表示方法の変更」、「会計上の見積りの変更」、「誤謬の訂正」ごとに注記が求められます。従来の注記事項としても、変更内容、変更理由、影響額の注記が必要でしたが、過年度遡及修正基準の適用に伴い、新たに注記すべき事項が追加されています。特に留意すべきものとしては、「未適用の会計基準等に関する注記」として、既に公表されているものの、未だ適用されていない新しい会計基準等がある場合には、財務諸表に関連した情報として、投資の意思決定に有用な情報であると考えられるため、次の事項を注記することとなりました。
・ 新しい会計基準等の名称及び概要
・ 適用予定日(早期適用する場合には早期適用予定日)に関する記述
・ 新しい会計基準等の適用による影響に関する記述

6.実務対応

有価証券報告書の作成にあたって、前事業年度に係る記載事項に関しては、前事業年度開示された監査済みの有価証券報告の記載事項をそのまま記載していましたが、過年度遡及修正基準が適用された後では、原則として前事業年度以前の記載事項についても遡及して開示事項を修正することが必要となります。たとえば、売上高の修正を行った場合には、過去の売上高のみならず、当該売上高に対応する原価、売掛金、一株当たり当期純利益など様々な箇所に変更が生じます。
そのため、「決算業務」および「開示業務」の実務負担の増大を考慮すると企業内に適切な体制を整える必要があると考えられます。
また、過年度遡及修正を行うか否かの重要性の判断基準を、金額的側面と質的側面から設定しておくことも必要と考えられます。

7.会社計算規則の一部改正

法務省より、過年度遡及修正基準の適用に伴い、2011年3月31日に会社計算規則の一部改正が公表されました。
会社法上、過去の計算書類は適法に一度確定され、剰余金の分配等の法律行為が行われます。そのため、過年度遡及修が必要となった場合には、当該事業年度より前の事業年度に係る計算書類又は連結計算書類に遡って適用したと仮定して、当該影響額を期首の資産・負債・純資産額に反映をさせることにより会計処理を行うことになります。また、金融商品取引法と同様に、変更内容、変更理由、影響額等の注記が必要となります。

開示上、前期の比較情報の開示を義務づけていない会社法では、過年度の確定済み計算書類とは異なった遡及修正済みの過年度財務諸表は参考情報として任意に提供することになります。

8.最後に

過年度遡及修正基準の適用に伴い遡及修正が必要となる事象が生じた場合においては、大きな実務負担が想定されるため、開示までの事前の準備が肝となると考えられます。
そのため、過年度の数値の修正を行う場合、それらに必要な資料等をまとめておくことが重要であり、当該資料をまとめるためには、企業内に適切な体制を整える必要があります。

また、数値等の正確性のみではなく、開示情報の修正事項が多く生じることが考えられることから、開示修正事項の網羅性についてもチェックリスト等によって留意することが望ましいと考えます。

執筆者:鈴木智之
 

連載記事

 
 

IFRS(国際財務報告基準)第7回 IAS第12号「法人所得税」

1.はじめに

今回は、IAS第12号「法人所得税」(以下、IAS第12号という。)について紹介します。我が国では、税金に関する基準として、「税効果会計に係る会計基準」をはじめに、実務対応報告や実務指針、Q&A、各種取扱い等が公表されています。

2.目的

IAS第12号の目的は、法人所得税の会計処理を定めることにあり、当期税金と繰延税金の認識、測定及び表示等の取り扱いについて定められています。

3.当期税金の認識及び測定

[1]認識

当期及び過去の期間に係る税金のうち、未納額の部分は負債として認識しなければなりません。反対に、当期及び過去の期間の納付額が、各年度の税額を超える場合には、当該超過額を資産として認識しなければなりません。また、過去の期間の税金の還付を受けるために繰戻控除を受ける場合には、税務上の欠損金に関する便益は資産として認識しなければなりません。我が国においてもIAS第12号と取り扱いは同じですが、繰戻控除については、中小企業などを除き、適用することはできません。


[2]測定

当期及び過去の期間の税金負債及び資産は、期末日において施行または実質的に施行されている税率を使用して、税務当局に納付又は還付されると予想される額で算定しなければなりません。測定についても我が国の取り扱いと同様となっています。

4.繰延税金の認識及び測定

[1]認識

IAS第12号においては、我が国の基準と同様に、税効果会計の適用にあたって資産負債法を採用し、一時差異(財政状態計算書の資産・負債の金額と税務上の資産・負債の金額との差額)に着目して繰延税金資産・負債を認識します。

(1)繰延税金資産の認識

繰延税金資産とは、将来減算一時差異・税務上の欠損金の繰越し・税額控除の繰越しに関連して将来の期に回収されることとなる税額をいいます。ここで、将来減算一時差異とは、資産又は負債の帳簿価額が将来の期に回収又は決済されたときに、その期の課税所得に減算される一時差異をいいます。例えば、減価償却費の損金算入限度の超過額などが挙げられます。

繰延税金資産については、将来減算一時差異を利用できる課税所得が生じる可能性が高い範囲内で、認識しなければなりません。これは、繰延税金資産が、将来発生する課税所得を減額する効果を有し、将来の税金を前払いする意味を持つ資産であるため、仮に将来課税所得が発生しなかった場合には、その資産性が失われてしまうためです。
繰延税金資産の回収可能性の判定にあたっては、以下の点を考慮しなければなりません。
イ)将来減算一時差異の解消が予測される期、又は繰越欠損金・繰越税額控除の繰越期限内に、課税所得をもたらす将来加算一時差異を有していること。
ロ) 将来減算一時差異の解消が予測される期、又は繰越欠損金・繰越税額控除の繰越期限内に、課税所得を稼得する可能性が高いこと。
ハ)課税所得を発生させるタックスプランニングが実行可能であること。

さらに、繰越欠損金及び繰越税額控除については、その存在が過去に十分な課税所得を生じなかったことを意味するため、上記要件に加えて、繰越欠損金は再発しそうもない特定の要因によるものであるかについても考慮しなければなりません。


(2)繰延税金負債の認識

繰延税金負債とは、将来加算一時差異に関連して将来の期に課されることとなる税額をいいます。ここで将来加算一時差異とは、資産又は負債の帳簿価額が将来の期に回収又は決済されたときに、その期の課税所得に加算される一時差異をいいます。例えば、資産の評価替えにより生じた評価差益などが挙げられます。

繰延税金負債については、のれんの当初認識等の一部例外を除き、すべての将来加算一時差異について認識しなければなりません。

繰延税金資産・負債の認識についてIAS第12号の取り扱いを見てきましたが、特に、繰延税金資産の回収可能性について、我が国では詳細に規定を設けており、過去の会社業績等に応じ5つの区分に分けて回収可能性を判断することとしています「繰延税金資産の回収可能性の判断に関する監査上の取り扱い」(日本公認会計士協会 監査委員会報告第66号)。しかし、IAS第12号ではそのような指針は設けられていないため、各企業において、繰延税金資産の認識に対する方針を定める等の対応が必要になると考えられます。


[2]測定

繰延税金資産・負債の金額は、一時差異の額に、期末日において施行または実質的に施行されている税法に基づき、将来差異が解消すると見込まれる期に適用されると予想される税率を乗じて計算されます。また、一時差異の解消が長期に見込まれる場合でも割引計算を行ってはなりません。

また、繰延税金資産の帳簿価額は各期末日時点で再検討しなければなりません。

5.表示

[1]当期税金資産・負債

当期税金資産・負債は、企業が認識された金額を相殺する法律上の権利を有し、かつ企業が純額で、または同時に決済する意思を有している場合に相殺表示します。

[2]繰延税金資産・負債

企業が繰延税金資産・負債を相殺する法律上の権利を有し、かつ繰延税金資産・負債が同一の税務当局によって、同じ納税主体に対して課された法人所得税に関するものである場合には相殺表示します。そして、繰延税金資産・負債はその一部が1年以内に解消すると見込まれる場合であっても、常に非流動項目として財政状態計算書上表示しなければなりません。一方我が国においては、繰延税金資産・負債について、関連する資産・負債の流動・非流動項目に従って、区分表示することとなっています。

6.おわりに

IAS第12号は、2010年9月に一部規定の改訂を提案する公開草案を公表し、2011年中の改訂を予定しております。このような改訂は他の規定においても進められているため、今後の進捗状況について注視していく必要があるでしょう。

以上
 
執筆者:関和輝
 

編集後記
 
 

まだ5月なのに夏のような陽気ですね。

皆様、ゴールデンウィークはどのように過ごされましたか?
私は大阪にある主人の実家に帰省しました。
テレビでは普段見慣れない番組や、関西地方のニュースを放送しているので、珍しくてよく観ていました。
ニュースを観ていると京都高雄の神護寺で国宝が虫干しのため公開されているとの話題が。
源頼朝の肖像として普段よく紹介されている有名な絵の実物が見られるなんて…。
思い立って、二日後に主人と行ってきました。
どれも手書きとは思えない程繊細な線で描かれており、数々の素晴らしい絵に目を奪われてしまいました。
とても数百年前に描かれたとは思えないような緻密さでした。
今年の公開は終わってしまいましたので、来年のゴールデンウィークに見に行かれてはいかがでしょうか?
辿り着くまでが少々大変ですが、その分京都市内にはない雰囲気を味わうことができます。

今月も明誠ニュースレターをお読みいただきありがとうございました。

 
執筆者:佐々木景子
 


       
 
 

  明誠ニュースレター vol.08
2011年5月16日発行
発行責任者:武田剛
編集スタッフ:梅原剛、清水真太郎、大森麻利子、村田博明
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