明誠グループニュースレター

情報フラッシュ [ 連載記事 ]
IFRS(国際財務報告基準)第10回 IAS第18号「収益」
国際監査基準のクラリティ版について解説(第2回)
監査基準委員会報告書第60号「財務諸表に対する意見の形成と監査報告」について
[ トピック解説 ]
「上場会社における業績予想開示の在り方に関する研究会報告書」の公表について
租税調査会研究報告第23号「事業体に対する課税形態と実務上の問題点について」
IT委員会研究報告「XBRLデータに対する合意された手続」(公開草案)の公表について

情報フラッシュ

 
発表日時 表題
平成23年7月1日 金融庁(企業会計審議会)は、国際監査・保証基準審議会(IAASB)が行うクラリティ・プロジェクトにより改正された国際監査基準との整合性等を検討し、報告基準における差異を調整するため、「中間監査基準及び四半期レビュー基準の改訂に関する意見書」を公表しました。
平成23年7月1日 日本公認会計士協会(監査基準委員会)は、クラリティ・プロジェクトの動向を踏まえた新起草方針に基づく監査基準委員会報告書の改正の一環として、「財務諸表に対する意見の形成と監査報告」等計6本の改正版を公表しました。
平成23年7月8日 日本公認会計士協会(監査・保証実務委員会)は、「四半期レビューに関する実務指針」の改正及び「監査報告書の文例」を公表しました。
平成23年7月15日 金融庁から公表された「中間監査基準及び四半期レビュー基準の改訂に関する意見書」の内容を踏まえ、「財務諸表等の監査証明に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」が公布・施行されました。
平成23年7月20日 中小企業の会計に関する指針作成検討委員会は、企業会計基準・会社計算規則・税法等の関連諸規定の改正に伴い、「中小企業の会計に関する指針(平成23年版)」を公表しました。
平成23年7月26日 日本公認会計士協会(中小事務所等施策調査会)は、直近の法令や実務指針等の改正に対応するため、「四半期報告書に関する表示のチェックリスト」を更新しました。
平成23年8月5日 日本公認会計士協会(租税調査会)は、近年の事業体の多様化に伴い法人税等の事業体課税の取扱いが複雑になっていることに鑑み、「事業体に対する課税形態と実務上の問題点について」を公表しました。
平成23年8月5日 有価証券をもって対価とする公開買付けの場合の発行(交付)条件に関する事項が新たに追加された「企業内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」が公布・施行されました。
平成23年8月10日 日本公認会計士協会(監査・保証実務委員会)は、「財務報告に係る内部統制の監査に関する実務上の取扱い」の改正を公表しました。
平成23年8月10日 東京証券取引所は、公益財団法人日本証券経済研究所より受領した「上場会社における業績予想開示の在り方に関する研究会報告書」の内容を公表しました。
平成23年8月15日 日本監査役協会(監査法規委員会)は、監査役監査基準等の改正に対応させるため、「監査役監査実施要領」の改定を公表しました。
平成23年8月30日 日本監査役協会(会計委員会)は、監査役監査基準等の改正に対応させるため、「会計監査人との連携に関する実務指針」の改正を公表しました。
平成23年8月31日 金融担当大臣談話「IFRS適用に関する検討について」の公表を受けて、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令」が公布・施行されました。

トピック解説

 

 

「上場会社における業績予想開示の在り方に関する研究会報告書」の公表について

1.「上場会社における業績予想開示の在り方に関する研究会報告書」の公表について

7月、東京証券取引所(以下東証)は「上場会社における業績予想開示の在り方に関する研究会報告書」を発表しました。

業績予想開示は記者クラブの要請という、実務先行で始まった開示であり、これまでその意義が明確にされていませんでした。そのため、捉え方によって異なる観点からの様々な指摘がなされており、業績予想開示の意義を明らかにし、現状の問題点を整理する必要がありました。同報告書は、昨年12月に金融庁が公表したアクションプランにおいて、業績予想開示のあり方を検討することが盛り込まれていたことを契機として、東証が外部研究機関に検討を委嘱していたものです。同報告書において示されている業績予想開示のあり方は、直ちに業績予想開示のルールを変えるものではありません。しかし、今後の業績予想の開示に大きな影響をもたらすものですので、趣旨を十分に理解することが必要です。

2.現在の業績予想開示について

業績予想開示は、決算発表時に決算短信のサマリー情報に記載されます。予想される指標は売上高、営業利益、経常利益、当期純利益、一株当たり当期純利益及び配当項目について、それぞれ特定数値を示すこととなっており、予想対象期間についても6カ月と12カ月とすることが原則とされています。

一方で、例外的な取扱いも定められています。例えば、業績予想について、特定の数値でなくレンジ形式(一定の範囲を示す方法)での開示ができること、中間期の6か月予想の記載の省略ができることなどです。しかし、いずれも条件が限られている上、事前に取引所に相談を行うことが必要であるため、例外的取扱いを採用する会社は稀です。

業績予想開示は取引所が主体となって要請を行うものであり、法制化されていません。しかし、取引所の強い対応によって、業績予想開示は法定開示に準じて取り扱われているのが現状です。2010年3月期の東証の上場会社における決算発表では約97%が通期の見通しを特定数値で開示しています。このような状況が、上場企業全体の開示レベルの底上げにつながったとの指摘もあります。

3.業績予想開示の意義

では、業績予想開示はなぜ求められているのでしょうか。

投資家の投資判断に有用な情報を開示することは、上場会社と情報利用者との情報格差の解消につながります。そのような情報の中でも、業績予想開示は、業績の見通しに関して最も詳細かつ正確な情報を持つ上場会社自身が、投資家に対してその見通しを示すものであり、重要な情報であると言えます。

業績予想は投資家にとって重要な情報であるため、その情報が社内にとどまる場合は、一部の人間だけが情報を得る可能性があり、インサイダー取引の懸念が生じることになります。その情報をタイムリーに開示すれば、インサイダーの問題は発生しません。

企業としても、業績予想開示を行うことにより、資本コストの低下の可能性もあります。予想利益の精度が低い上場会社ほど、資本コストが高い傾向にあるという調査結果も報告されています。

業績予想はアナリストが行うべきとの意見もありますが、会社の業績予想には、経営者自身の将来に対する考え方を織り込まれることなども多く、アナリストには同様の業績予想の作成が困難な部分もあります。また、アナリストレポートには、すべての個人が自由にアクセスできるわけではありません。

上記の理由から、業績予想を開示する意義は大きいと考えられます。

4.業績予想開示の問題点

しかしながら、現在の業績予想開示については、いくつかの問題点が指摘されています。

[1]業績予想開示の強制による弊害

前述のように、業績予想を開示していない上場会社はごく少数ですので、開示が義務であると誤解されるおそれがあります。もともと社内に合理的な業績予想がないのに、無理をして作成・開示すると、不合理な業績予想の開示となり、証券市場をミスリードする可能性があります。また、開示が求められる数値の項目や期間が、社内で経営管理上用いているものと異なる場合には、新たに数値を算出しなければならないため、企業に必要以上の負担がかかることが想定されます。


[2]業績予想達成のための近視眼的な経営や利益操作

業績予想は必ず達成されるべきであるという誤った理解がなされることがあります。機関投資家に対して行った調査では、「業績予想は企業の市場に対するコミットメントである」と考えている機関投資家もいることが示されています。

このような市場の期待から、経営者が短期間の業績予想の達成に固執するあまり、近視眼的な経営に陥る可能性があります。これは、業績予想に対して、実際の業績が届かなかった場合の市場の反応が顕著であるアメリカにおいて、1980年代から指摘されている問題点です。2003年、米国企業401人のCFOを対象にして行ったアンケートでは、四半期の利益目標を達成するために、「裁量的な費用(研究開発費、広告宣伝費、管理費等)を減らす」と答えたのは約80%、「多少の企業価値を犠牲にしても新規プロジェクトを延期する」としたのは約55%でした。つまり、多くの企業が短期的な利益目標達成のために長期的な企業価値を犠牲にすると回答したということです。

また、業績予想達成のため、会計方針の変更などによる利益調整がなされる可能性もあります。

さらには、投資家に業績予想情報が浸透・利用されていることを背景にして、経営者が株価操作などの不正な目的で恣意的な業績予想数値を公表したり、修正の開示時期をコントロールしたりする可能性があります。

5.望ましい業績予想開示とは

上記の業績予想開示の意義と問題点を踏まえ、同報告書では、「業績予想開示の望ましい方向性」として、開示内容、開示時期、予想対象期間の3点について、柔軟性を認める方針を示しています。また、業績予想の正しい理解と情報の充実のため、補足情報の付加が望ましいとしています。


[1]開示内容

報告書では、売上高及び利益の予想は投資家にとって有用性が高いとした上で、予想数値に一定の幅が出るケースや、予想が難しい項目があるなどの場合には、「諸外国において、見込みをレンジ形式で示すなど一定の幅を持った表現が多く使われていたり、開示される項目が上場会社により異なっていたりすることは参考となる」としています。この表現から、原則として売上高及び利益を特定数値での開示を行うものと考えられますが、従来よりもレンジ形式の開示を大幅に認める方向であると予想され、また一部の開示項目の省略や、企業の状況に応じた開示項目を追加することが考えられます。


[2]開示時期

開示時期について、投資の判断にあたって重要な情報格差を生じさせないために、業績予想が作成されている場合は、決算発表時に開示することが重要であると述べています。しかし、決算発表の時点で業績予想ができない上場会社については、「その後、業績予想を有した時点で開示をすることが重要であると考えられる」としています。このように、開示の時期についても決算発表時にこだわらない姿勢を示しており、大きな変化であると言えます。また、インサイダー取引防止の観点から、開示時期については、一部の者だけに業績予想を伝達してしまった場合には、適時に開示されるべきであるとしています。


[3]予想対象期間

報告書では、対象期間は1年とすることが考えられるとしています。しかし、これに限らず、「例えば、1年という期間では見通しを有することが難しい状況であって、それより短い期間であれば見通しを有することができるのならばその期間の数値を開示するなど、各社の状況に応じた期間を対象として開示する例があることも参考になると考えられる」と述べています。従って、原則的には1年としながら、これよりも短い期間に係る業績予想開示の容認も示しています。


[4]将来予測情報の提供、補足情報等の充実

同報告書では、業績予想数値の開示に際し、数値を一人歩きさせないため、その試算の前提とした諸条件や、その根拠あるいは変動の可能性等について説明することが重要としています。

さらに、直接的な業績予想の数値以外についても、投資判断に役立つ情報については、開示することが有用とし、その例示として、経営方針、経済・市場認識、他の経営指標、設備投資計画や人員計画を挙げています。また、「上場企業の創意工夫により、投資者の投資判断に有用な情報について重要性を踏まえた自由度の高い開示が行われることも望ましいと考えられる」と述べ、これまでの定型的な開示とは大きく異なる開示の方法の可能性を示しています。

また、第三者による信頼性の付与がなされていないことについて、誤解を招かないよう留意する必要があると付け加えています。


以上が方向性の内容であり、大幅な柔軟化及び従来にはない定性的情報の充実の方向性を示しています。この方針が実際に適用されれば、何を開示し、何を開示しないかの判断が企業に任されることとなり、開示の内容だけでなく、開示の方法からも、各企業の将来に対する見通しやメッセージが示されるでしょう。今回の報告書では具体的な開示の内容、時期についてはまだ示されていません。しかし、同様に金融庁のアクションプランに盛り込まれていた、四半期報告制度や内部統制報告制度の見直しについてはすでに実施されていることから、業績予想開示に係る見直しについても、近く実施されるものと予想されます。各企業においても、投資家に対して何を伝えるべきか、意識しておくことが必要と考えます。

 
執筆者:本田
 

 

租税調査会研究報告第23号「事業体に対する課税形態と実務上の問題点について」

1.はじめに

共同事業を行うための事業体は、時代の要請に応じる形で多様化しており、最近では、平成10年の特定目的会社を皮切りに、投資法人、特定信託、投資事業有限責任組合、有限責任事業組合、合同会社制度などが創設され、税務上の取扱いが複雑になっていました。これを受けて、2011年8月2日、日本公認会計士協会より租税調査会研究報告第23号「事業体に対する課税形態と実務上の問題点について」が公表されました。本研究報告では、事業体に対する課税形態の概要、任意組合等・匿名組合に係る実務上の問題点、信託に係る実務上の問題点などがとりあげられています。

本稿では、事業体課税の基本的な考え方とその問題点に絞って考えていきたいと思います。

2.事業体課税の基本的な考え方と課税形態

現行の法人課税は、原則として、事業体が法人格を有するかどうかにより課税を判断しています。事業体が法人格を有する場合、法人格を法人税法上の納税義務者とすることで法的な安定性を持つ制度になっています。納税義務のある法人として、まず、伝統的に公益法人等、協同組合等、普通法人があげられます。また、最近創設された事業体については、特定目的会社、投資法人、合同会社、法人課税信託における受託者などが納税義務者として新たに加えられています。

これに対して、民法上の任意組合、匿名組合、投資事業有限責任組合、有限責任事業組合、受益者等課税信託、集団投資信託等の事業体は、法人格を有せず、法人税を納める納税義務者でなく、その活動によって生じる所得は、実質的な権利・義務の帰属主体である各構成員に対して直接課税されます(構成員課税)。

3.法人課税の特徴

現行の法人課税は、第一に、法人税の納税義務者は原則として国内法人とされ、法人格を有する事業体に帰属する所得に対して、その事業体の構成員とは別個に法人税が課税されます。第二に、課税される所得は、営利事業から獲得した利益で、それは株主に分配されるか、将来の事業投資のため法人に留保されると想定されています。第三に、事業体からその構成員に分配されるのは、法人税等支払後の利益のみであり、損失は分配されません。また、構成員に分配された利益は、当該構成員の事業の内容とは関係なく配当とされます。

4.構成員課税の特徴

もう一つの代表的な事業体に対する課税方法である構成員課税(パス・スルー課税)は、法人課税と内容が大きく異なります。第一に、事業体は法人格を有さないため法人税の納税義務者になれず、権利・義務や財産の帰属主体である各構成員に対して直接課税されます。第二に、構成員全員が業務執行を行う共同事業性が求められています。第三に、事業体から構成員に分配されるのは、利益だけでなく損失も分配されます。また、構成員では、事業体で生じた所得の性質をそのまま引き継ぐことになります。

5. 法人課税の例外的な取扱い

法人税は、一部の事業体について、法人課税の例外的な取扱いをしています。

[1]特定目的会社・投資法人

資産の流動化という特定の目的のために、平成10年「特定目的会社による特定資産の流動化に関する法律」により、特定目的会社が創設されました。

特定目的会社は、資産の流動化の促進のため導管的な性質を重視して、配当可能所得の90%超を配当で支払っている等の一定の要件を満たしている場合には、所得金額を限度として、当該事業年度に係る支払配当の額を当該事業年度の所得の計算上、損金の額に算入する取扱いがなされています(ペイ・スルー課税)。また、「投資信託及び投資法人に関する法律」に規定する投資法人でも同様の取扱いがなされています。

この課税上の取扱いは、支払配当の額を損金不算入とする法人課税の特例とされ、また、特定目的会社等は法人格を有し、構成員である投資家への所得の引継ぎが配当所得に転換されていることから同じ導管性を持つ構成員課税とも異なるものとなっています。

[2]公益法人等・人格のない社団等

昭和25年に公益法人等に対して、昭和32年に人格のない社団等に対しては、法人とみなして、経済的に営利事業を営む法人と同等の収益活動を行っている実情を鑑み、その収益事業から生じた所得に対してからのみ法人課税が行われています。

[3]信託

信託法に定める信託は、一定の目的のために財産の管理又は処分及びその他の目的の達成のために、必要な行為をすべきものです。

この一定の目的を達成するために、委託者兼当初受益者が受託者に対して財産の信託を行うのです。このとき、当該財産にかかわる法的な権利・義務の形式的な帰属主体は、受託者となります。

また、課税関係は、法的な権利・義務の形式的な帰属主体が受託者であるため、信託した財産にかかわる課税されるべき所得についても、受託者に形式的に帰属します。この点に関して法人税法では、平成18年に実施された信託法の改正に合わせ、平成19年度税制改正において、課税の公平・中立を確保するとともに多様な信託の類型に対する適切な対応や租税回避を防止する観点から、信託を3つの類型(@信託を受益者が受領時に課税される信託、A信託を法人とみなして課税する信託、B受益者に収益が発生したときに課税する信託)に分類して課税関係を定めています。


〈事業体に対する課税形態について〉


事業体の種類

納税義務者としての法人格の有無

課税形態

権利・義務(資産・負債・収益・費用)の帰属主体

構成員への所得の引継ぎ

税法上の所得の計算

損失の分配

利益の留保(課税の繰延)

普通法人
持分法人

法人格あり

法人課税+配当所得課税(支払配当金損金不算入)

法人

配当所得に転換

ネット

不可

法人課税信託

受託者を納税義務者として信託段階で法人課税

受託者

公益法人等

法人格あり

法人課税(収益事業から生じた所得に課税)

法人

(可)

人格のない社団

法人とみなす

社団

特定目的会社、投資法人

法人格あり(分配部分は無し)

法人課税+ペイ・スルー課税(支払配当金損金算入)

法人

配当所得に転換

ネット

不可

不可

特定目的信託、投資信託

受託者を納税義務者として信託段階で法人課税(分配部分は無し)

受託者

匿名組合

無し

分配時のみ構成員課税

営業者

原則、雑書得に転換

原則、ネット

可(制限あり)

不可

集団投資信託、退職年金等投資信託

無し

受領時に構成員課税

受託者

主たる投資運用の内容を法令に従い引き継ぐ所得

ネット

不可

 

任意組合、投資事業有限責任組合、有限責任事業組合

無し

収益発生時に構成員課税(信託は受益者課税)

組合員の共有

主たる事業の内容を引き継ぐ所得(不動産、事業、山林又は雑書得)

グロス

可(制限あり)

受益者等課税信託

無し

受益者とみなす

6. わが国の税制の問題点

平成18年5月1日施行の会社法によって、社員(出資者)全員が有限責任社員となり、原則として、業務執行を行う人的会社として合同会社(以下「LLC」という。)が、新しく持分会社の一つとして創設されました。このLLCの特徴は、社員全員の一致で、内部組織に関する事項について、定款で自由に決めることができること、損益分配は、出資比率に関係なく定款により柔軟に決めることが認められており、民法上の組合に似た共同事業性を有しています。米国では、LLCの課税は、その性質から法人課税と構成員課税(パス・スルー課税)の選択となっていますが、日本では、合同会社が法人税法上、法人格を有することから法人課税となっており、これが、実態に即した課税とはいえないとの指摘があります。

また、個人事業主の法人成りについても同じことが言えます。実態は個人であっても、法人形態を選択することによって、法人成りをしていない個人企業と税負担が異なってしまいます。わが国では、実態が同じであっても、異なる事業形態を選択することによって税負担が異なり、税の中立性が保てなくなってしまう問題が生じています。

7. おわりに

共同事業を行う事業体の形態は多種多様に整備されており、多くの選択肢が用意されています。上記で述べた通り、わが国では事業体の選択が課税形態の選択と直結しています。それ故に、各々の事業体の目的、組成・運営コスト、税務上のメリット・デメリット等を理解し最適な事業体を選択する必要があります。

また、本研究報告では上記以外にも様々な事業体に対する課税形態の問題点を指摘している。近年、次々に新しい事業体が生まれ、急速に事業体が多様化したことで、課税ルールの整備が追い付いていなかったこともあり、今後の課税ルールの整備についても注目していきたい。

 
執筆者:松浦政文
 

 

IT委員会研究報告「XBRLデータに対する合意された手続」(公開草案)の公表について

1.はじめに

平成23年7月11日に、日本公認会計士協会よりIT委員会研究報告「XBRLデータに対する合意された手続」(公開草案、以下「同研究報告」という。)が公表されました。

同研究報告は、今後のXBRLの利用拡大による、XBRLデータに対する監査・保証業務への期待の高まりに備え、XBRLデータに対する合意された手続について検討したものです。

2.XBRLを取り巻く現在の状況

XBRLとは、eXtensible Business Reporting Languageの略で、各種財務報告用の情報を作成・流通・利用できるように標準化されたXMLベースの言語です。

XBRL形式により提供される財務情報は、利用者が、そのまま表計算ソフトに取り込み、迅速に分析や加工を行ったり、外国語への自動翻訳や会計基準の表示、自動通貨換算等が容易に行えることから、近年、世界レベルで、その実用化に向けた取組みが進められています。

米国SECのEDGARにおけるXBRL採用、IFRS財団によるIFRS開示用XBRLタクソノミの開発など、XBRLの採用が世界各国で進められており、各国の会計士協会を中心に、XBRLデータに対するチェックのガイドラインや基準の策定が始まっています(下表参照)。


わが国では、平成20年4月1日以後開始する事業年度から、EDINETで提出される有価証券報告書の連結財務諸表及び個別財務諸表本表がXBRLにより作成されるようになり、XBRLデータは、利用者が自由にダウンロードして利用することが出来るようになっています。

今後、注記や、附属明細表等、財務諸表本表以外の記載事項についてもXBRL化が検討されており、それらが実現すれば、従来の開示情報に比べ、利用者の用途に応じ加工が可能など、二次利用性が非常に高くなり、情報としての価値が格段に向上することが予想されます。


現在、EDINETで提出されているXBRLデータは、監査・保証業務の対象ではありませんが、今後、開示情報のXBRL化が進むにつれ、XBRLデータに対する当該業務への期待が高まっていくことが予想されます。同研究報告も、公認会計士又は監査法人による将来のXBRLデータに対する監査・保証業務を考えるに当たり、合意された手続について検討し、その成果を公表したものとして位置付けられています。


(参考 各国の検討状況 同研究報告Wを基に作成)

実施団体

検討状況

米国公認会計士協会(AICPA)

 

Assurance Services Executive Committee (ASEC) XBRL Assurance Task Forceを設置し、「XBRLデータの網羅性、正確性、一貫性に関する合意された手続の実施」を公表(2009年4月)。

公開草案「XBRL形式情報のための原則と規準の提案」を公表(2011年6月)。

米国公開会社会計監督委員会(PCAOB)

STAFF QUESTIONS AND ANSWERSのひとつとして、「XBRLの自主的開示における検証業務」を公表(2005年5月)。

英国勅許会計士協会(ICAEW)

「XBRLによって作成された財務諸表を含むXBRLデータに関する合意された手続の公開草案」を公表(2010年8月)。

国際会計士連盟(IFAC)国際監査・保証基準審議会(IAASB)

「XBRL: the EMERGING LANDSCAPE」と題し、近年興味関心の高まっているXBRLについてのQ&Aを公表(2010年1月)。

XBRL International Inc(XII)

International Assurance Committee(国際保証委員会)を設置し、IFAC IAASB、各国会計士協会の行う基準書の作成について、技術的な側面からの支援を行うこととした。

3.XBRLデータに対する合意された手続

同研究報告におけるXBRLデータに対する合意された手続について、XBRLに直接関連する項目を中心にご紹介いたします。


[1]合意された手続を決定するために考慮すべき基準

XBRLデータに対する合意された手続を決定するために考慮すべき基準として、XBRLデータを作成するための基準があります。

XBRLデータ提出会社は、XBRLデータを作成するための基準に基づいてXBRLデータを作成することが求められます。同研究報告では、当該基準の例示として以下のものを挙げています。

(同研究報告 V 4. より抜粋)

分類

 説明

XBRL Internationalが公表するXBRL仕様

XBRLの基本仕様。XBRLデータを作成する場合に準拠が必要

・XBRL 2.1 Specification

XBRL Internationalが公表するXBRLの拡張仕様

XBRLの拡張技術に関する仕様。当該技術を使用する場合に準拠が必要

・XBRL Dimensions 1.0

XBRL Internationalが公表するベスト・プラクティスのガイダンス

XBRLデータの作成に関する推奨のルール。規制当局等の要求がある場合に準拠が必要

・Financial Reporting Taxonomies Architecture (FRTA)
・Financial Reporting Instance Standards (FRIS)

規制当局等が公表するXBRL作成ガイドライン

規制当局等が独自に定める追加的なXBRLデータ作成のルール

・金融庁が公表するXBRL関連ガイドライン
・IFRS Taxonomy Guide
・Global Filing Manual (GFM)

権威ある機関等によって公表された指針等

会計基準設定主体、公認会計士協会、XBRL関連組織等が独自に公表する指針等


[2]合意された手続の範囲

XBRLは多様な構成要素から成り立っています。XBRLデータは、各構成要素の情報が組み合わさった結果の情報が利用されるだけではなく、各構成要素の情報のみを個別に取り出して利用されることも想定されます。従って、各構成要素のレベルで適切に情報が設定されていることが必要になりますので、それらが合意された手続の対象範囲となりえます。

XBRLの構成要素として、同研究報告では、以下の項目を挙げています。

(1)使用されるタクソノミ

タクソノミは、インスタンス文書に登場する項目の内容・構造・扱われ方などを定義するもので、一般的には、財務諸表等の様式に関する電子的な雛形、項目辞書体系と考えると理解しやすいと言われています。XBRLデータを作成するに当たっては、ベースとなる、適切な種類、バージョン、業種のタクソノミを選択する必要があります。

尚、インスタンス文書とは、財務諸表の金額データ等を実際に含む、XML形式のデータファイルのことを言います。

(2)使用される開示項目

XBRLデータを作成するに当たり使用されるタクソノミの要素のことを言います。

(3)開示項目の属性設定

タクソノミの各開示項目に設定される属性情報のことを言います。

(4)開示項目の各種リンク設定

タクソノミの各開示項目には、表示名称や根拠条文等の当該開示項目に関する情報及び表示位置、加減算関係等の他の開示項目との関係がリンクとして設定されます。

(5)入力された値と表示単位

インスタンス文書に入力される金額や表示単位等を言います。

(6)インスタンス値の設定

企業は、インスタンスの入力値に対して、XBRLデータの対象情報と整合した適切な情報を設定する必要があります。

(7)追加的情報

企業名やXBRLの構造等、対象情報以外に、規制当局等の要求により設定される追加的な情報を言います。


[3]XBRLデータに関するアサーション

XBRLデータは各構成要素のレベルで適切に情報が設定されている必要があり、アサーションは各構成要素の適正性に関して設定される必要があります。

経営者は、対象情報を基にXBRL作成基準に準拠してXBRLデータを作成するため、対象情報との整合性及びXBRL作成基準への準拠性が重要なアサーションとして設定されます。

XBRLデータに関するアサーションとしては、例えば以下のようなものが挙げられます。

(1)完全性

すべてのXBRLデータの対象情報が、過不足なく、適切な粒度でXBRLデータに含まれていることを言います。

(2)項目選択の妥当性

XBRLデータの対象情報が、適切な開示項目により表現されていることを言います。

(3)正確性

XBRLデータの対象情報が、インスタンス文書及びタクソノミにおいて適切な値、属性及び関係リンク等により表現されていることを言います。

(4)一貫性

XBRLデータの対象情報が、一貫した開示項目、値、属性及び関係リンク等により表現されていることを言います。

(5)構造の妥当性

XBRLデータが、適切な構造により作成されていることを言います。


[4]合意された手続の実施方法

XBRLデータに対する合意された手続の実施方法として、例えば、人手によるチェックが必要な手続による方法、ソフトウェアにより自動チェックが可能な手続による方法とがあります。人手によるチェックが必要な手続は、主に会計又は業務的観点からのエラーを発見するために実施され、自動チェックが可能な手続は、主に技術的観点からのエラーを発見するために実施されます。

手続の実施には、XBRLデータを可視化できる機能、バリデーション(妥当性確認)機能等を備えた専用のソフトウェアツールが必要です。EDINETなどのXBRLデータ提出先のシステムや、XBRLデータ作成者が利用するXBRLデータ作成ソフトウェア又は作成支援サービスなどもバリデーション機能を有しています。

同研究報告では、手続の実施方法として以下の4つの項目を挙げています。

(1)タグ情報の目視によるチェック
(2)XBRLデータを財務諸表の表示形式等に変換した結果のチェック
(3)XBRLデータの各構成要素の設定情報を出力した結果のチェック
(4)ソフトウェアによる自動チェック

4.おわりに

財務情報のXBRL化が進むにつれ、利用者はもとより、企業や監査人等、財務情報を取り巻く環境が大きく変わることが予想されます。

同研究報告の公表を機に、今後のXBRL化の進捗状況や、実用に向けた今後の研究には、引続き注意深く見守る必要がありそうです。

 
執筆者:廣川智朗
 



連載記事

 
 

IFRS(国際財務報告基準)第10回 IAS第18号「収益」

1.はじめに

今回は、IAS第18号「収益」(以下、IAS第18号という。)について紹介します。

2.目的と範囲

収益に関する会計上の主要な論点は、どの時点で収益を認識するか決定することです。そして収益は、将来の経済的便益が企業に流入する可能性が高く、これらの便益を、信頼性を持って測定できる時に認識されます。IAS第18号は、これら基準が満たされ、収益が認識される状況を明らかにし、基準を適用する上での実務指針を提供することを目的としています。

このような目的のもと、IAS第18号は、【1】物品の販売【2】役務の提供【3】利息、ロイヤルティ及び配当から生ずる収益の会計処理を適用範囲としています。

3.定義

IAS第18号によると、収益とは、持分の増加をもたらす一定期間における企業の通常の活動過程で生じる経済的便益の総流入であり、株主からの拠出に関連するもの以外のものをいいます。

4.収益の測定と識別

収益は、受領した又は受領可能な対価の公正価値により測定しなければならないとされています。ここで公正価値とは、独立第三者取引において、取引の知識がある自発的な当事者の間で、資産が交換され又は負債が決済される価額をいいます。

また、収益の認識基準は、通常それぞれの取引に個々に適用されますが、取引の実質を反映させるため、状況によっては単一取引であっても個別に識別可能な構成部分ごとに適用され、反対に、その経済的実質が一連の取引として考えないと理解できないような複数の取引である場合には、その複数の取引を一体として収益の認識基準が適用されるとしています。

我が国においては、収益の測定と識別に関する包括的な基準はありませんが、企業会計原則において、『売上高は、実現主義の原則に従い、商品等の販売又は役務の給付によって実現したものに限る』とされ、収益の認識は実現主義による事が示されています。ここで実現主義とは、財貨又は役務を移転し、これに対する現金または現金等価物を取得した際に収益を認識することをいいます。

5.物品の販売

物品の販売からの収益は、以下の条件のすべてが満たされたときに認識しなければなりません。

【1】物品の所有に伴う重要なリスクと経済的便益を買手に移転したこと。
【2】販売された物品に対して、通常所有とみなされるような継続的な管理上の関与及び実質的な支配を保持していないこと。
【3】収益の額を、信頼性をもって測定できること。
【4】その取引に関連する経済的便益が企業に流入する可能性が高いこと。
【5】その取引に関連する原価を信頼性をもって測定できること。

条件【1】について、企業が所有に伴う重要なリスクと経済的便益を買い手に移転せず、留保する状況の例としては、売手が特定の販売からの収益を受け取るために、買手がその物品の販売による収益を得ることが条件となっている場合や、買手が販売契約に明記された理由により購入を取り消す権利を有しており、企業にとって返品の可能性が不確実である場合があります。

また我が国においては、物品の販売による収益の認識について、一般的に出荷基準によって行われていますが、IAS第18号が適用された場合、出荷基準が認められず、検収基準によって収益を認識しなければなりません。したがって、取引先からの検収情報の入手や、通常業務では出荷基準によって計上し、月次や四半期ごとに検収基準で計上した場合との差異を調整するなどの対応が必要となると考えられます。

6.役務の提供

役務提供に関する取引の成果を、信頼性を持って見積もることが出来る場合、その取引に関する収益を、期末日現在の取引の進捗度に応じて認識しなければなりません。信頼性を持って見積もることが出来る場合とは、以下の条件のすべてが満たされる状態をいいます。

【1】収益の額が信頼性を持って測定できること。
【2】その取引に関する経済的便益が企業に流入する可能性が高いこと。
【3】その取引の進捗度を、期末日現在において信頼性を持って測定できること。
【4】その取引について発生した原価及び取引の完了に要する原価を、信頼性を持って測定できること。
ここで、取引の進捗度を見積もる方法としては、実施した作業の調査、総提供役務に対する提供済役務の割合及び見積原価に対する累計発生原価の割合といったものがあります。
他方で、上記の4つの条件のいずれかを満たさず、取引の成果を信頼性を持って見積ることが出来ない場合には、収益は原価が回収可能と認められる範囲内で認識されます。

7.利息、ロイヤルティ及び配当

利息、ロイヤルティ及び配当をもたらす企業資産を第三者が利用することによって生じる収益の認識は、取引に関連する経済的便益が企業に流入する可能性が高く、かつ収益の額を、信頼性を持って測定できることを前提として、それぞれ以下の基準により認識しなければなりません。

【1】利息:実効金利法を用いて認識しなければならない(IAS第39号「金融商品:認識及び測定」第9項及びAG5〜8項参照)。
【2】ロイヤルティ:契約の実質に従い、発生基準により認識しなければならない。
【3】配当:支払いを受ける株主の権利が確定した時に認識しなければならない。

我が国においては、企業制度委員会報告第14号「金融商品会計に関する実務指針」において、市場価格のある株式の株式配当金については、『原則として、各銘柄の配当落ち日をもって、前回の配当実績又は公表されている1株当たり予想配当額に基づいて未収配当金を見積り計上する』とあり、IAS第18号と同様の会計処理と考えられます。また、利息の認識については、「金融商品に係る会計基準」「金融商品会計に関する実務指針」において、償却原価法についての記載があり、利息法による償却原価法が実効金利法に相当するため、IAS第18号と同様の会計処理と考えられます。

8.おわりに

IAS第18号以外に、収益に関連する基準書としては、IAS第11号「工事契約」、IAS第20号「政府補助金」、IFRIC第13号「カスタマー・ロイヤルティ・プログラム」といったものが公表されています。また現在、IFRSと米国会計基準とのコンバージェンスを目的としたMoUプロジェクトが進められており、収益認識についても、あらゆる業種に適用可能な共通の収益認識モデルの設定を目的としたプロジェクトが進められています。収益の測定や認識は重要なものであるため、企業実態に合った基準書を理解し、規定等の整備を進めていく必要があると考えます。

 
執筆者:関和輝
 


 

国際監査基準のクラリティ版について解説(第2回)
監査基準委員会報告書第60号「財務諸表に対する意見の形成と監査報告」について

1.基準の概要

今回は、監査基準委員会報告書第60号「財務諸表に対する意見の形成と監査報告」について解説します。

国際監査基準がクラリティ版に改訂されたことにより、日本の監査基準も改訂が行われています。そして、クラリティ版の国際監査基準に対応した新しい日本の監査基準6本が、2012年3月決算に係る監査(2011年9月中間決算に係る中間監査)から適用されます。この新しい監査基準6本のうちの1本が、監査基準委員会報告書第60号「財務諸表に対する意見の形成と監査報告」です。これは国際監査基準のISA700「財務諸表に対する監査意見の形成と報告」に対応するものなります。

なお、監査基準委員会報告書第60号(以下「監査基準60号」という。)の内容は、ISA700の内容と非常に近いものになっており、両者の差異はほとんどありません。

2.「財務諸表に対する意見の形成と監査報告」の対象

監査基準60号は、@監査人が財務諸表に対する監査意見を表明する際の判断や評価、およびA監査報告書の様式や記載内容について規定しています。

また、監査基準60号は、監査対象が完全な一組の一般目的の財務諸表である場合を規定しています。そのため、特別目的の枠組みに従って作成された財務諸表などについては、別の監査基準において規定されます。財務諸表の種類と対応する監査基準、及び対応するISAを整理すると以下の表のようになります。


表1:財務諸表の種類に対応する監査基準とISA

財務諸表の種類

日本の監査基準

対応するISA

一般目的財務諸表

監査基準60号「財務諸表に対する意見の形成と監査報告」

ISA700「財務諸表に対する意見の形成と報告」

特別目的財務諸表

(日本の基準は未公表)

ISA800「特別な考慮事項−特別目的の枠組みに準拠して作成された財務諸表の監査」

単独の財務諸表等

(日本の基準は未公表)

ISA805「特別な考慮事項−個別財務表および財務表の個々の構成要素、勘定または項目の監査」


また、監査基準60号は、監査意見の形成に関する指針を規定していますが、特に、監査人が表明する意見が「無限定意見(適正表示の枠組みでは「無限定適正意見」)」である場合を規定しています。

従って、「除外事項付意見」を表明する場合や、監査報告書に強調事項等を設ける場合については、別の監査基準において規定されます。監査意見の内容等に対応する監査基準を整理すると以下の表のようになります。


表2:監査意見等に対応する監査基準とISA

意見等の内容

日本の監査基準

対応するISA

無限定意見を表明する場合

監査基準60号「財務諸表に対する意見の形成と監査報告」

ISA700「財務諸表に対する意見の形成と報告」

除外事項付意見を表明する場合

監査基準61号「独立監査人の監査報告書における除外事項付意見」

ISA705「独立監査人の報告書における監査意見の修正」

監査報告書に強調事項を設ける場合等

監査基準62号「独立監査人の監査報告書における協調事項区分とその他の事項区分」

ISA706「独立監査人の報告書における強調事項の記載区分とその他事項の記載区分」


従って、監査基準60号は、一般目的の財務諸表に対する意見形成、特に無限定意見を表明する場合の指針を規定した基準と言えます。

3.意見の形成

監査基準60号では、監査人は意見の形成に当たり、不正か誤謬かを問わず、財務諸表に全体として重要な虚偽表示がないということについての合理的な保証を得たかどうかを判断しなければならないとされています。また、その際に以下を考慮しなければならないとされています。


[1]十分かつ適切な監査証拠を入手したかどうかについての監査人の結論
[2]未修正の虚偽表示が、個別に、又は集計した場合に重要であるかについての監査人の結論
[3]財務諸表が適用される財務報告の枠組みに準拠して作成されているかについての評価
[4]適用される財務報告の枠組みにより要求される事項に基づく以下の事項の評価
@重要な会計方針の、財務諸表における開示の適切性
A重要な会計方針の、財務報告の枠組みへの準拠性及び適切性
B会計上の見積りの合理性
C財務諸表において表示される情報の目的適合性、信頼性、比較可能性及び理解可能性
D重要な取引や会計事象の開示の適切性
E財務諸表の名称や使用されている用語の適切性
[5]適正表示の枠組みの場合は、財務諸表が適正に表示されているか否かの評価
[6]適用される財務報告の枠組みに関する記述の適切性

上記の意見形成に際しての考慮事項は、今回の改訂により、監査基準60号とISA700はほとんど同じ内容になりました。ただし、実質的な内容は、従来と変わりはないと考えられます。また、日本基準とISA700の両方において、監査人は、財務諸表がすべての重要な点において、適用される財務報告の枠組みに準拠して作成されていると判断した場合は、無限定意見を表明しなければならないとされています。

4.監査報告書の様式

監査基準では、監査報告書は一定の様式に従って作成されることが求められています。従来の日本の監査基準と、監査基準60号における監査報告書の様式の主な相違点は以下の通りです。


[1]記載形式

新しい監査報告書では、記載内容に応じた「見出し」が表記されます。これはISA700と記載形式を合わせたことによるものです。表3は監査報告書の記載形式を要約したものです。


表3:監査報告書の形式

監査報告書の記載形式

<財務諸表監査>
(導入部)監査対象の組織体名、各財務諸表等
「財務諸表に対する経営者の責任」
「監査人の責任」
「監査意見」
<法令等が要求するその他の事項に対する報告>
「利害関係」

(注)「 」で示したものは、監査報告書において見出しとして表記されるものを示している。

[2]経営者の責任について

新基準では、財務諸表に対する経営者の責任の区分において、財務諸表の作成責任に加え、財務諸表を作成し適正に表示するための内部統制を整備及び運用する責任の記載が求められるようになりました。

従来の基準では、財務諸表監査の監査報告書の中には、内部統制を整備・運用する経営者の責任の記載はありませんでした。


[3]監査人の責任について

新基準では、監査人の責任の区分において、監査人は、財務諸表の重要な虚偽表示のリスク評価に基づいて監査手続を選択・適用する旨が記載されます。また、リスク評価の際には、財務諸表の作成と表示に関連する内部統制を検討する旨も記載されます。

従来の基準では、監査は試査を基礎として実施される記載があり、監査の限界を表していたのに比べて、記載内容が大きく異なるものと言えます。

5.最後に

ISA700に対応して、2012年3月決算に係る監査(2011年9月中間決算に係る中間監査)から新しい監査基準が適用されることで、監査報告書の様式が変更されます。監査報告書の様式の変更は、財務諸表の利用者が実施された監査の内容をより明確に理解するために行われるものと言えます。ただし、監査意見を表明するための判断や評価については、今までと実質的に変わるところはないものと考えられます。

 
参考文献
2009、IFAC、ISA700 Forming an Opinion and Reporting on Financial Statements
2010、内藤文雄・松本祥尚・林隆敏編著、「国際監査基準の完全解説」、中央経済社
2011、日本公認会計士協会資料「監査基準委員会報告書の新起草方針の概要」
2011、日本公認会計士協会、監査基準委員会報告書第60号「財務諸表に対する意見の形成と監査報告」 日本公認会計士協会ホームページ http://www.hp.jicpa.or.jp/specialized_field/index.html
 
執筆者:吉田隆伸
 

編集後記
 
 

またまた台風の予感。今年はホント、台風が多いですね。大被害が出なければいいですね。 トンボの姿や虫の声に、少しずつ秋の訪れを感じる今日この頃。
一雨ごとに厳しい暑さもようやく弱まりつつあり、東京も少しずつ秋の気配が漂い始めてきました。あまりの暑さにバテてしまいそうな日もあったのに、夏が過ぎゆくのが、少しだけ寂しい気もします。とは言ってもまだまだ暑いですが・・・

秋は美味しいものがたくさん。10月にはいろいろおいしい食べ物の収穫期を迎えます。
この夏一番の思い出は、この初夏に産まれ日々成長する子どもとの時間。最近耳にしたある有名人の「子育てとは親育てである」との名言。まったくそのとおりだと実感しています。来年は、よちよち歩きを始めた子どもと楽しい夏の思い出を作ってみたいと思います。

 
執筆者:梅原剛
 


       
 
 

  明誠ニュースレター vol.11
2011年9月15日発行
発行責任者:武田剛
編集スタッフ:梅原剛、清水真太郎、大森麻利子、村田博明
※このニュースレターに含まれる文章、画像の無断転載はご遠慮ください。