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情報フラッシュ [ 連載記事 ]
IFRS(国際財務報告基準)第12回 IAS第24号「関連当事者についての開示」
国際監査基準のクラリティ版について解説(第4回)監査基準委員会報告書第62号「独立監査人の監査報告書における強調事項区分とその他の事項区分」について
[ トピック解説 ]
「公認会計士協会の会長通牒「循環取引等不適切な会計処理への 監査上の対応等について」9月16日公表の解説
監査基準のクラリティ版の体系について
監査役と会計監査人の連携について

情報フラッシュ

 
発表日時 表題
平成23年10月14日 日本公認会計士協会は、「中小企業の会計に関する指針(平成23年版)」、「会社計算規則」の改正に対応させるため、「会計参与の行動指針」を一部改正したことを公表しました。
平成23年10月17日 日本公認会計士協会(業種別委員会)は、「財務諸表に対する意見の形成と監査報告」等 及び「監査報告書の文例」の公表を受け、「『投資信託及び投資法人における当面の監査上の取扱い』の改正について」を公表しました。
平成23年10月18日 日本公認会計士協会(IT委員会)は、IT監査において想定される監査人の理解の不足や監査手続の不十分な実施に対応するため、「ITに対応した監査手続事例〜事例で学ぶよくわかるITに対応した監査〜」を公表しました。
平成23年10月24日 日本公認会計士協会は、新起草方針に基づく品質管理基準委員会報告書、監査基準委員会報告書及び監査・保証実務委員会実務指針の改正版計38本を公開草案として公表しました。

トピック解説

 

 

「公認会計士協会の会長通牒「循環取引等不適切な会計処理への 監査上の対応等について」9月16日公表の解説

1.概要

日本公認会計士協会より、会長通牒平成23年第3号「循環取引等不適切な会計処理への監査上の対応等について」が公表されました。これは、平成23年6月に、証券取引等監視委員会事務局より公表された、「金融商品取引法における課徴金事例集」によると、開示書類の虚偽記載に対する課徴金の勧告事案が増加傾向にあり(下記 参考1)、それら事案の多くは、循環取引に代表される不適切な会計処理(以下「循環取引等」という)によるものであったことから、循環取引等が行われている場合に考えられる監査上の対応等について整理し、循環取引等が疑われる場合には、より適切な対応をとるよう要請するものです。


(参考 1)課徴金納付命令に関する勧告件数及び課徴金額 ( 「金融商品取引法における課徴金事例集」より抜粋)
年度 勧告件数(件)・課徴金額(円)
  不公正取引 開示書類の虚偽記載等
内部者取引 相場操縦
件数 課徴金額 件数 課徴金額 件数 課徴金額 件数 課徴金額
17 4 1,660,000 4 1,660,000 - - - -
18 14 682,480,000 11 49,150,000 - - 3 633,330,000
19 24 106,449,997 16 39,600,000 - - 8 66,849,997
20 29 1,980,519,997 17 59,160,000 1 7,450,000 11 1,913,909,997
21 53 766,959,998 38 49,220,000 5 6,260,000 10 711,479,998
22 45 1,943,759,994 20 42,680,000 6 21,260,000 19 1,879,819,994
23 4 321,740,000 - - 1 4,380,000 3 317,360,000
合計 173 5,803,569,986 106 241,470,000 13 39,350,000 54 5,522,749,986
(注)1:年度とは当年4月〜翌年3月をいう。ただし、23年度は5月まで。
(注)2:23年5月までに勧告が行われた事案を集計している。
(注)3:「開示書類の虚偽記載等」には、公開買付開始公告の不実施に関する事案、開示書類の不提出に関する事案を含む。

2.会長通牒本文の紹介

会長通牒本文は、1.循環取引の特徴、2.監査上の対応の困難性と監査人の責任3.循環取引等を発見できない監査上の要因、4,監査手続実施上の留意事項、以上の4つの項目より構成されています。

以下、各項目について簡潔にご紹介します。


[1]循環取引の特徴

循環取引等の具体的な特徴として以下のものが挙げられています。

・ 取引先は、実在することが多い。
・ 資金決済は、実際に行われることが多い。
・ 会計記録や証憑の偽造又は在庫等の保有資産の偽装は、徹底して行われることが多い。
・ 比較的重要性が低い新規事業や主力以外の事業、あるいは子会社において行われる場合も多い。

循環取引等は、一般に意図的かつ極めて巧妙に仕組まれ、また、正常取引を装うものが多いため、通常の監査業務の中で

これらを発見することが困難な場合が多い取引になります。

「金融商品取引法における課徴金事例集」においても、会計記録や証憑の偽造、取引先との共謀、実際の資金の決済を伴う架空取引の計上が行われた事例が数多く取り上げられています。

また、開示書類の虚偽記載は、特定の科目に偏ることなく、幅広い科目について事案が発生している事からも(参考 2)、監査人においては適切なリスク評価、及びそれらに基づいた対応が求められます。

(参考 2)課徴金納付命令勧告を行った事例に係る不適正な会計処理の類型まとめ( 「金融商品取引法における課徴金事例集」より抜粋)

1.売上高 4.  営業外・特別利益 7.  資産
・ 売上の前倒し計上
・ 売上の過大計上
・ 架空売上の計上
・ 社債の評価益の過大計上
・ 匿名組合清算配当金の過大計上
・ 引当金の不計上
・ 経営統合の際の特別利益(負ののれん)の過大計上
・ 売上債権の過大計上  
・ 棚卸資産の過大計上  
・ 棚卸資産の架空計上  
・ (長期)未収入金の過大計上
・ 前渡金の過大計上  
・ 有形固定資産の過大計上
・ 無形固定資産(のれん)の過大計上
・ 無形固定資産(ソフトウェア)の架空計上
・ 著作権の過大計上  
・ 関係会社株式の過大計上
・ 投資有価証券の過大計上
・ 破産・更生債権等の過大計上
・ 貸付金の過大計上  
・ リース資産の架空計上  
・ 繰延税金資産の過大計上
2.売上原価
・ 売上原価の過少計上
・ 売上原価の繰延べ
・ 架空仕入の計上
・ 売上原価の未成工事への付替えによる費用の繰延べ
 
5. 営業外費用
・ 貸倒損失の過少計上
6. 特別損失

・ 減損損失の過少計上
・ 減損損失の不計上
・ 関係会社損失引当金の過少計上
・ 貸倒引当金の過少計上
・ 非上場株式の評価損の過少計上
・ ソフトウェア仮勘定に係る除却損失の過少計上

・ のれんの一括償却による損失の不計上

・ 債務保証損失引当金の不計上

3. 販売費及び一般管理費
・ 費用の過少計上
・ 販売費及び一般管理費の過少計上
・ 貸倒引当金の過少計上
・ 費用の無形固定資産への付替え
8. 負債
・ 前受金の過少計上
・ 退職給付引当金の過少計上
・ 未払金の過少計上
9. 連結
・ 子会社の連結はずし

[2]監査上の対応の困難性と監査人の責任

重要な循環取引等を防止又は発見する責任は、一義的には経営者にあるものの、監査上、重要な循環取引等を発見することができなかった場合には、監査人に対して監査上の責任の有無及びその程度が問われることになることから、監査計画策定から監査意見形成までの監査の各局面において、適切な対応を行うべきであるとしています。


[3]循環取引等を発見できない監査上の要因

重要な循環取引等を発見できない監査上の要因を整理すると、以下のものが例示できるとしています。

・ 結果として不適切な問題があると認められる場合における、「兆候」の見落とし又は追求が不十分である。
・ 重要な虚偽表示のリスクの評価及び評価結果への対応が不十分。
・ 監査業務に係る審査が有効に機能していない。

[4]監査手続実施上の留意事項

循環取引等が疑われる場合の、監査手続実施上の留意事項が示されています。これらは、最近の循環取引等の事例における、正当な注意義務に疑義があった事案をもとに整理したものです。

(1)リスクの評価

リスクの評価に際し、例えば、特殊な業界慣行、新規の取引、特定個人への過度な権限集中、不正のリスク等が存在する場合は、慎重な対応が必要であるとしています。

また、過去に有名企業OB の関与や、有名企業名を用いて不正の隠れ蓑とする事例があったことから、取引先の知名度や会社規模等への過度な信頼はしない等の対応が必要であるとしています。


(2)取引実態の把握

特にソフトウェアの取引、知的財産権、権利や役務の提供、不透明な支出等に関しては、証憑類との照合のみに終始せず、取引実態の把握が必要であるとしています。例えば、ソフトウェア取引であれば、エンドユーザーへの照会が有効な場合があるとしています。


(3)残高等の確認

確認状の偽造や共謀等のリスクに留意しつつ、適切な確認先の選定、及び回答の信頼性の検討を行い、差異調整については慎重な対応を行うべきであるとしています。また、確認状の回答が得られない等の場合に行う代替手続の実施の際には、可能な限り外部証拠を入手し、例えば工事案件等の場合には、現場視察の実施を検討する等の対応が必要であるとしています。


(4) 立会・現場視察

重要な資産については、外部証拠の入手や、保管倉庫の視察の十分な実施が必要であるとしています。また、監査人が視察対象場所を選定する際は、過去に、故意に監査人が選定した現場と異なる現場に案内された事例もあるため、慎重な対応が必要であるとしています。


(5)発注先等への往査

例えば、原価の内容のほとんどが外注費で、しかも特定の外注先によるものである等の場合には、外注先への往査が有効な場合があるとしています。


(6)専門家の利用

特に、不動産取引や開発型ソフトウェアの販売取引の検証に際しては、専門家の利用が有効な場合があるとしています。また、専門家を利用する際には、当該専門家の能力、及び業務の客観性についての検討が必要であるとしています。


(7)関係会社の往査

連結子会社の監査水準は、連結財務諸表における当該子会社の重要性を勘案して適切に決定すべきとしています。また、親会社による子会社管理の内部統制の有効性の評価や、連結除外の適否に関する慎重な検討が必要な場合があるとしています。


(8)異常性分析

異常な比率、滞留品の有効期限や商品単価の異常性等を認識した場合には、会社の説明を鵜呑みにすることなく、納得いくまで追求することが必要であるとしています。


(9)異常点への対応手続

増減分析や数値間の不整合等を含む異常点への対応として、会計システムと業務システムとの金額の整合性の確認や、通常の起票部門以外の部門で起票されるような、異常な伝票の有無の確認が必要な場合があるとしています。

3.終わりに

開示書類の虚偽記載による勧告事案が増加傾向にあることから、監査人側としては、これまで以上に、職業的専門家としての正当な注意義務の履行及び適切な手続の実施に留意することが必要です。

また、企業の側も、循環取引等に対する監査手続について理解を深め、受入体制を確保することが望まれます。これら両者の協力関係の維持・継続が、今後の証券市場の健全な発展につながると考えられます。

 
執筆者:廣川 智朗
 

 

監査基準のクラリティ版の体系について

1.報告の概要

平成23年10月24日に、日本公認会計士協会は、「新起草方針に基づく品質管理基準委員会報告書及び監査基準委員会報告書の体系及び調整作業について」という報告書を発表しました。

日本公認会計士協会は、従来の日本の監査基準を、クラリティ版の国際監査基準(以下「ISA」という。)と国際品質管理基準(以下「ISQC」という。)に適合させるべく、監査基準の全面的な改定作業を行っています。改定後の監査基準は全部で39本ありますが、このうち6本はすでに2012年3月決算に係る監査(2011年9月中間決算に係る中間監査)から適用されています。残り31本は、今まで公開草案や中間報告という形で公表が行われていましたが、この度、用語の整理等の調整が終わったことから、これらを最終報告書に向けた公開草案として公表することとされたものです。

2.監査基準委員会報告の一覧

以下は、改定後の品質管理基準委員会報告書および監査基準委員会報告書の一覧です。

監査基準委員会報告書には、公表順に付されていた報告書の番号に加え、ISAとの関連を明確にするため、ISAと同じ報告書番号が付されることになりました。なお、相当するISAがない日本独自の監査基準委員会報告書の新番号は900番台とされています。


表1:監査基準委員会報告書等の一覧

No

新報告書番号

ISA,ISQC

監査基準委員会報告書名

報告書公表番号

中間報告
公表日

<品質管理基準委員会報告書>

1

1

ISQC 1

 監査事務所における品質管理

1号

H23.4.28

<200-299 監査全般にわたる基本的事項と責任>

2

200

ISA 200

 財務諸表監査における総括的な目的

51号

H22.7.30

3

210

ISA 210

 監査業務の契約条件の合意

70号

H23.10.13

4

220

ISA 220

 監査業務における品質管理

58号

H23.4.28

5

230

ISA 230

 監査調書

45号

H22.6.23

6

240

ISA 240

 財務諸表監査における不正

40号

H20.10.31

7

250

ISA 250

 財務諸表監査における法令等の検討

66号

H23.10.13

8

260

ISA 260

 監査役等とのコミュニケーション

52号

H22.7.30

9

265

ISA 265

 内部統制の不備に関するコミュニケーション

53号

H22.7.30

<300-499 リスク評価及び評価したリスクへの対応>

10

300

ISA 300

 監査計画

37号

H20.10.31

11

315

ISA 315

 企業及び企業環境の理解を通じた重要な虚偽表示のリスクの識別と評価

38号

H20.10.31

12

320

ISA 320

 監査の計画及び実施における重要性

42号

H22.2.23

13

330

ISA 330

 評価したリスクに対応する監査人の手続

39号

H20.10.31

14

402

ISA 402

 業務を委託している企業の監査上の考慮事項

67号

H23.10.13

15

450

ISA 450

 監査の過程で識別した虚偽表示の評価

43号

H22.2.23

<500-599 監査証拠>

16

500

ISA 500

 監査証拠

46号

H22.6.23

17

501

ISA 501

 特定項目の監査証拠

47号

H22.6.23

18

505

ISA 505

 確認

54号

H22.7.30

19

510

ISA 510

 初年度監査の期首残高

68号

H23.10.13

20

520

ISA 520

 分析的手続

55号

H22.7.30

21

530

ISA 530

 監査サンプリング

48号

H22.6.23

22

540

ISA 540

 会計上の見積りの監査

44号

H22.2.23

23

550

ISA 550

 関連当事者

57号

H23.1.7

24

560

ISA 560

 後発事象

59号

H23.7.1

25

570

ISA 570

 継続企業

65号

H23.10.13

26

580

ISA 580

 経営者確認書

56号

H22.7.30

<600-699 他者の作業の利用>

27

600

ISA 600

 グループ監査

41号

H22.2.23

28

610

ISA 610

 内部監査の利用

49号

H22.6.23

29

620

ISA 620

 専門家の業務の利用

50号

H22.6.23

<700-799 監査の結論及び報告>

30

700

ISA 700

 財務諸表に対する意見の形成と監査報告

60号

H23.7.1

31

705

ISA 705

 独立監査人の監査報告書における除外事項付意見

61号

H23.7.1

32

706

ISA 706

 独立監査人の監査報告書における強調事項区分とその他の事項区分

62号

H23.7.1

33

710

ISA 710

 過年度の比較情報−対応数値と比較財務諸表

63号

H23.7.1

34

720

ISA 720

 監査した財務諸表が含まれる開示書類におけるその他の記載内容に関連する監査人の責任

64号

H23.7.1

35

800

ISA 800

 特別目的の枠組みに従って作成された財務諸表に対する監査

36

805

ISA 805

 単独財務諸表、財務諸表の特定の要素、科目又は項目に対する監査

37

810

ISA 810

 要約財務諸表に関する報告業務

<900-999 監査全般にわたる基本的事項と責任>

38

900

監査人の交代

69号

H23.10.13

39

910

中間報告

71号

H23.10.13


なお、上記のうち6本の基準は既に適用が開始になっています(次項「3.適用時期」を参照)。また、上記の改定後の監査基準の適用開始に伴い、対応する従来の監査基準は廃止されることになります。

3.適用時期

上記の新しい監査基準委員会報告書の適用時期は、以下の通りとされています。


表2:監査基準委員会報告書の適用時期

カテゴリー

該当する監査基準委員会報告書等

適用時期

A

560「後発事象」
700「財務諸表に対する意見の形成と監査報告」
705「独立監査人の監査報告書における除外事項付意見」
706「独立監査人の監査報告書における強調事項区分とその他の事項区分」
710「過年度の比較情報−対応数値と比較財務諸表」
720「監査した財務諸表が含まれる開示書類におけるその他の記載内容に関連する監査人の責任」

平成24年(2012年)3月決算に係る監査、および平成23年(2011年)9月中間決算に係る中間監査から適用されている

B

カテゴリーAおよびカテゴリーC以外の監査基準委員会報告書および品質管理基準委員会報告書

平成24年(2012年)4月以後開始する事業年度に係る監査および中間決算に係る中間監査から適用

C

800「特別目的の枠組みに従って作成された財務諸表に対する監査」
805「単独財務諸表、財務諸表の特定の要素、科目又は項目に対する監査」
810「要約財務諸表に関する報告業務」

今後検討作業が進められる予定

なお、カテゴリーAの監査基準委員会報告書から、順次、本ニュースレターで内容の解説を行っています(明誠ニュースレター第10号から)。

4.最後に

今回の日本の監査基準の改訂は、国際監査基準がクラリティ版に改訂されたことによるものです。従来の日本の監査基準の内容は、クラリティ版に改訂される前の国際監査基準の内容と近くなっていました。今回、国際監査基準のクラリティ版に合わせて日本の監査基準が改訂されることで、日本の監査基準は現行の国際監査基準と内容が近づくことになります。

国際監査基準のクラリティ版への改正は、財務諸表の利用者が、実施された監査の結果をより明確に理解するために行われたものと言えます。ただし、実質的な監査の判断基準などは従来と大きく変わるところはないと思われます。

 
参考文献
・2011、日本公認会計士協会資料「新起草方針に基づく品質管理基準委員会報告書及び監査基準委員会報告書の体系及び調整作業について」
・日本公認会計士協会ホームページ http://www.hp.jicpa.or.jp/specialized_field/index.html
 
執筆者:吉田 隆伸
 

 

監査役と会計監査人の連携について

1.はじめに

近年、監査役(又は監査委員会)と監査人との相互連携について有価証券報告書に記載することが義務付けられたこと、会計監査人の報酬等の決定について監査役若しくは監査役会又は監査委員会(以下、「監査役等」という。)の同意を要するとされたこと、監査役はその職務を適切に遂行するために必要な者との意思疎通を図るよう努めなければならないとされたこと、会計監査人はその職務の遂行に関する事項を監査役等に通知しなければならないとされるなど、従来に増して両者の相互連携の強化が求められるようになりました。

本稿では平成23年8月25日に改訂された「会計監査人との連携に関する実務指針」(日本監査役協会 会計委員会)をもとに相互連携について簡単に解説します。

2.会計監査人との連携の基本

会計監査人は、計算関係書類が会社の財産及び損益の状況を適正に表示しているかどうかについて監査し会計監査報告を作成するとともに、その会計監査報告の内容を特定監査役及び特定取締役に通知することとなっています。会計監査人設置会社にあっては、会計監査人が第一次的に会計監査を行い、計算関係書類の適正性について監査意見を表明しますが、監査役の会計監査は、自らの監査結果に基づいて会計監査人の監査の方法及び結果の相当性を判断することです。会計監査人が会社外部の職業的専門家の立場で監査することに対して、監査役は会社内部の実態を熟知した企業人の視点から、会計監査人の監査の相当性を判断するとともに、会計監査人の独立性をはじめとする監査環境に留意することを通して会計監査の適正性及び信頼性の確保に努めなければなりません。そのことによって、計算関係書類の適正な開示に寄与することが監査役の会計監査の責務です。

3.会計監査人に対する監査役又は監査役会の法的権限

会社法は、監査役が上記の職務を遂行するために、次に掲げる権限を監査役又は監査役会に与えています。

(1)会計監査人の選任・解任・不再任に関する議案又は議題の同意権・請求権、及び会計監査人の解任権
(2)会計監査人に対する報酬等の同意権
(3)会計監査人から報告を受ける権限
(4)会計監査人に報告を求める権限
(5)会計監査人の会計監査報告の内容の通知を受ける権限
(6)会計監査人の職務遂行に関する事項の通知を受ける権限

4.会計監査人との連携の必要性

以下の観点から監査役は会計監査人と適切に連携する必要があります。

(1)監査役又は監査役会は、会社法によって上記のような会計監査人に対する権限を与えられていますが、会計監査人の再任の適否の検討や監査報酬等の同意をはじめとするこれらの権限を有効に行使することは、監査役の重要な善管注意義務です。
(2)コーポレート・ガバナンスの充実という要請に応える必要があります。
(3)会社法において、監査役及び監査役会は、会計監査人の計算関係書類の監査の方法と結果の相当性を判断することを求められ、かつ、会計監査人の職務の遂行が適正に実施されることを確保するための体制に関する事項についても監査報告に記載しなければなりません。
(4)職業的専門家としての会計監査人は、会計監査の適正性・信頼性を確保するために、公正不偏の態度及び独立の立場を保持することが求められており、監査役の職務は会計監査人の独立性保持を確認することであり、そのために、監査環境の状況を監視しなければなりません。
(5)会社法においては、会計監査人の任務懈怠に基づく会社に対する損害賠償責任は代表訴訟の対象とされています。

5.金融商品取引法(以下「金商法」という。)における監査人との連携

金商法においても、監査役は、有価証券報告書等の財務報告体制が適切に構築・運用されているか、財務報告の内容に重要な誤りがないか、誤解を生じさせるものでないかについて、業務監査の視点から財務報告を監査する責務を負っていため、監査人との情報・意見交換に努めなければなりません。その為、下記の観点から監査役は監査人と適切に連携する必要があります。

(1)有価証券報告書制度、四半期報告制度と監査役

監査役は、監査人による監査及び四半期レビューの実施状況を把握し、会計・監査上の懸案事項及び内部統制上の問題点の改善状況を踏まえて、取締役の職務執行を監査する必要があります。

(2)内部統制報告制度と監査役

監査役は、内部統制報告書が、財務報告に係る内部統制の評価について、すべての重要な点において適正に表示しているか否かを、監査人による監査結果などを踏まえて判断する必要があります。また、会社の財務報告が法令等に従って適正に行われることは、会社法に定める「取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制」に含まれると考えられています。したがって、監査役は、業務監査の一環として、財務報告に係る内部統制の整備等に関する取締役の職務執行に、善管注意義務に違反する重大な事実がないかどうかを監査することが必要となります。

また、財務報告に係る内部統制における会社の統制環境には、取締役の職務執行を監査する立場にある監査役の果たす機能も含まれます。さらに、財務報告に係る内部統制の評価結果及び監査結果は、会社法に基づく計算関係書類が適切かどうかとも関連しているため、監査役が会社法の規定に従い会計監査人の監査の方法と結果の相当性等を判断するに当たって、内部統制監査報告書の内容も重要となります。加えて、「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準」では、「監査人は、内部統制監査の過程で発見された内部統制の開示すべき重要な不備については、会社法監査の終了日までに、経営者、取締役会及び監査役又は監査委員会に報告することが必要になると考えられる。」とされています。

(3)法令違反等事実の通知

金商法193条の3では、公認会計士又は監査法人が「特定発行者における法令に違反する事実その他の財務計算に関する書類の適正性の確保に影響を及ぼすおそれがある事実(「法令違反等事実」)を発見したときは、当該事実の内容及び当該事実に係る法令違反の是正その他の適切な措置をとるべき旨を、遅滞なく、内閣府令で定めるところにより、当該特定発行者に書面で通知しなければならない。」として、その通知を「監査役又は監事その他これらに準ずる者」が受けることとされています。

(4)金商法における監査役の責任

監査役は、有価証券報告書の重要な事項に虚偽の記載がある場合、又は記載すべき重要な事項・誤解を生じさせないために必要な重要な事実の記載が欠けている場合には、有価証券報告書の提出時の会社役員として、取締役等とともに、株主に対して、当該虚偽記載等により生じた損害を賠償する責任を負うこととなります。また、監査役は、内部統制報告書及び四半期報告書に虚偽記載等があった場合にも上記と同様の損害賠償責任を負います。

6.連携の具体的な例示

上記を踏まえて、会計監査人との連携に関する実務指針では以下のような連携に関する例示を掲載しています。以下を参考に各社の実情に即した連携に努めることが望まれます。

(1)監査役と会計監査人との協議事項
監査役と会計監査人は、会計監査人の選任・契約更新・業務執行社員や監査役の交代時のそれぞれの監査体制する説明、提供する情報の範囲、報告の種類、伝達方法、各局面における会計監査人及び監査役の対応等について、監査の初期段階で協議を行い、両者の期待に相違が生じないようにする必要があります。

(2)連携のための会合の時期等

監査役は、会計監査人と定期的に会合をもつなど、緊密な連係を保ち、積極的に意見及び情報の交換を行い、効率的な監査を実施するよう努めなければなりません。例えば、監査契約締結時、監査計画策定時、四半期レビュー時、期末監査時には定期的に会合を持つ必要があります。また、必要なときは適宜情報の交換を行い、随時に会合を持つことが望ましいです。

(3)会計監査人の選任時の連携の例示

監査役会は、会計監査人の解任・不再任に際して、解任・不再任の事由、会計監査人の意見等を客観的かつ具体的に把握して同意の判断をします。また、新たな会計監査人を選任する場合、職業的専門組織としての信頼性を確認します。さらに、前任会計監査人との引継の状況を確認し、必要に応じて引継が十分に行われるように適切な措置を講じることが求められています。

(4)監査契約更新時又は業務執行社員もしくは監査役の交代時の連携の例示

契約更新時には、重要な事項の報告及び説明を受けるとともに、会計監査人の状況と監査体制に関する説明を受け、職業的専門組織としての信頼性を確認します。また、業務執行社員等が交代した際は、方針・選任の経緯について説明を受けるとともに、適切な引継が行われていることを確認します。一方、監査役の交代時には、監査体制について説明します。

(5)監査計画策定時の連携の例示

監査役は、会計監査人から監査計画の概要を受領し、財務報告に係る内部統制に関するリスク評価及び監査重点項目等について説明を受け、意見交換を行わなければなりません。また、監査役会の監査方針・監査計画について説明し意見交換を行って、会計監査人の理解と協力を求めるとともに、必要あるときは両者の監査計画の調整を図る必要があります。さらに、監査計画に重要な修正があったときは、相互に速やかに連絡することが必要です。

(6)四半期レビュー時の連携の例示

監査人による四半期レビューの実施状況の説明を受け、問題点やその改善状況、不正・誤謬・違法行為及び内部統制の不備等、四半期レビュー報告書の記載内容、審査状況及び結果等の説明を受けるとともに意見交換をします。四半期報告書の作成は取締役の重要な職務執行であるので、取締役の職務執行を監査する監査役は、四半期報告書を監査する監査人と適切な連携を図る必要があるため、各四半期において情報交換を行うことが重要です。

(7)期末監査時の連携の例示

会計監査人による監査の実施状況、当初の監査計画との相違点、前期からの会計・監査上の懸案事項及び問題点の改善状況並びに当期の監査重点項目、不正・誤謬・違法行為及び内部統制の不備等並びに重要性のない未修正の事項、会計監査人の監査報告書についての記載内容の説明を受けます。また、会計監査人の独立性に関する事項その他職務の遂行に関する事項の通知を受け内容の説明を求めるとともに、意見表明についての審査体制及び審査の内容・結果の説明を受け意見交換します。さらに、監査役の監査の実施状況等について会計監査人の監査の参考となる情報を提供するとともに、監査役及び監査役会の監査報告書の記載内容、監査役による財務報告に係る内部統制の監視の状況、有価証券報告書及び内部統制報告書について意見交換します。

(8)随時の連携の例示

監査役は会計監査人より報告又は通知を受けた場合、適切に対処しなければならなりません。また、会計監査人の監査に影響を及ぼすと判断した事項について、会計監査人に報告し、意見交換します。

 
出典
「会計監査人との連携に関する実務指針」、日本監査役協会 会計委員会、平成23年8月25日改訂
 
執筆者:佐藤
 


連載記事

 
 

IFRS(国際財務報告基準)第12回 IAS第24号「関連当事者についての開示」

1.はじめに

今回は、IAS第24号「関連当事者についての開示」(以下、IAS第24号という。)について紹介します。

2.目的

IAS第24号の目的は、企業の財務諸表が、関連当事者の存在及び関連当事者との取引及び未決済残高により影響を受けているかもしれない可能性について注意が払われるのに必要な開示が行われるようにすることです。例えば、関連当事者関係がある場合には、独立した第三者との間では成立しない条件で取引が行われたり、親会社の存在や指示が、子会社と第三者との取引を左右するといったこともあることから、関連当事者関係は企業の財政状態・経営成績に大きな影響を及ぼすものと考えられています。

3.関連当事者の範囲

財務諸表を作成する企業にとって、次のいずれかの関係を有する個人または企業は関連当事者となります。

【1】以下に該当する個人及びその近親者
(1)報告企業に対する支配又は共同支配を有している個人。
(2)報告企業に対する重要な影響力を有している個人
(3)報告企業又は報告企業の親会社の経営幹部の一員である個人
【2】以下に該当する企業
(1)報告企業と同一のグループの一員である企業(親会社、子会社及び兄弟会社)。
(2)報告企業の関連会社又はジョイント・ベンチャー。または、報告企業に対して関連会社又はジョイント・ベンチャーとして出資している企業。
(3)双方の企業が同一の第三者のジョイント・ベンチャーである企業。
(4)報告企業と他の企業のうち、一方の企業が第三者企業のジョイント・ベンチャーであり、他方の企業が当該第三者企業の関連会社である場合の当該他の企業。
(5)報告企業又は報告企業と関連がある企業のいずれかの従業員の退職後給付制度である企業。
(6)【1】の個人に支配又は共同支配されている企業。
(7)【1】(1)の個人が重要な影響力を有している企業又はその個人が経営幹部の一員である企業。

ここで、近親者とは、企業との取引において当該個人に与えるか又は影響されると予想される親族の一員をいい、@個人の子供及び配偶者又は家庭内パートナー、A個人の配偶者又は家庭内パートナーの子供、B個人または配偶者若しくは家庭内パートナーの扶養家族を含みます。我が国の会計基準においては、開示対象を可能な限り明確化する観点から、近親者は二親等以内の親族とされており、限定的に定義づけています。

上記以外の我が国の会計基準との差異としては、主要株主(自己または他人の名義をもって総株主の議決権の10%以上を保有している株主)及びその近親者を我が国の会計基準では関連当事者としており、IAS第24号では関連当事者の範囲として明示していないということが挙げられます。ただし、IAS第24号においても、【1】(2)の重要な影響力を有しているか否かの判断によっては、関連当事者の範囲に含まれると考えられます。

4.開示

【1】親会社に関する情報

次に該当する親会社の名称を、親子会社間で取引があったかどうかにかかわらず、開示しなければなりません。

(1)直接の親会社
(2)親会社が最終的な支配当事者と異なる場合には、最終的な支配当事者名称
(3)上記の2社いずれも公表用連結財務諸表を作成していない場合には、連結財務諸表を作成する次順位の親会社の名称
【2】経営幹部の報酬

企業は経営幹部の報酬総額及び次の項目について開示しなければなりません。

(1)短期従業員給付
(2)退職後給付
(3)その他の長期給付
(4)解雇給付
(5)株式報酬

我が国の会計基準においては、経営幹部の報酬について開示対象になっておりませんが、有価証券報告書のコーポレート・ガバナンスの状況において、記載が要求されています。

【3】関連当事者取引と未決済残高の開示

企業が関連当事者取引を行っていた場合には、少なくとも次の項目を開示しなければなりません。なお、関連当事者取引とは、報告企業と関連当事者との間の資源、役務又は債務の移転をいい、対価のないものも含みます。

(1)関連当事者との関係の内容
(2)取引の金額
(3)未決済残高(担保の有無等の契約条件、対価の内容、保証の詳細)
(4)未決済残高に対する貸倒引当金
(5)関連当事者への不良債権について期中に認識した費用

我が国の会計基準においては、関連当事者との取引のうち、重要な取引を開示対象としており、開示の公平性の観点や、実務上の要請から、関連当事者が法人の場合には、売上高の10%や総資産の1%等、個人の場合には1,000万円といった、一定の基準を超える取引のみ開示が要求されていますが、IAS第24号においては、これらの重要性に関する定めはありません。

5.おわりに

以上、IAS第24号について紹介しましたが、我が国の会計基準との差異を理解し、規定の整備等を進めていく必要があるでしょう。

 
執筆者:関和輝
 


 

国際監査基準のクラリティ版について解説(第4回)
監査基準委員会報告書第62号「独立監査人の監査報告書における強調事項区分とその他の事項区分」について

1.基準の概要

今回は、監査基準委員会報告書第62号「独立監査人の監査報告書における強調事項区分とその他の事項区分」(以下「監査基準62号」という。)について解説します。

クラリティ版の国際監査基準に対応した新しい日本の監査基準6本が、2012年3月決算に係る監査(2011年9月中間決算に係る中間監査)から適用されます。この新しい監査基準6本のうちの1本が、監査基準委員会報告書第62号「独立監査人の監査報告書における強調事項区分とその他の事項区分」であり、これは国際監査基準(ISA)706「独立監査人の報告書における強調事項の記載区分とその他事項の記載区分」に対応した基準です。

なお、監査基準62号の内容は、ISA706の内容と非常に近いものになっています。

2.監査基準62号の対象

監査基準62号は、監査報告書の追記事項について規定しています。追記事項は、財務諸表利用者の注意を喚起するために監査報告書に追記される事項で、監査基準62号では追記事項を(1)「強調事項区分」と(2)「その他の事項区分」の2種類に分けて規定しています。それぞれの内容は以下の通りです。


表1:追記事項の種類
 

強調事項区分

その他事項区分

対象

財務諸表に表示又は開示されている事項

財務諸表に表示又は開示されていない事項

目的

利用者が財務諸表を理解する基礎として重要であるため、当該事項を強調して利用者の注意を喚起すること

監査、監査人の責任又は監査報告書についての利用者の理解に関連するため、監査報告書において説明すること

3.強調事項区分について

監査基準62号では、例えば会計方針の変更、重要な偶発事象、重要な後発事象について「強調事項区分」に追記する場合があるとされ、強調事項区分の例として以下のものを挙げています。


表2:強調事項区分の例
区分 追記する内容
会計方針の変更 財務諸表に広範な影響を及ぼす新しい会計基準の早期適用
重要な偶発事象又は重要な後発事象

・ 重要な訴訟や規制上の措置の将来の結果に関する不確実性

・ 企業の財政状態に重大な影響を及ぼした、又は今後も引き続き及ぼす大きな災害

また、他の監査基準において強調事項区分を設けることが規定されているものとして、以下の基準があります。


表3:強調事項区分に記載を求めている監査基準

監査基準

追記する内容
監査基準委員会報告書第59号(560)「後発事象」

・事後判明事実に限定して監査手続を実施した場合
・訂正後の財務諸表に対する監査報告書における財務諸表の訂正理由への参照と以前に発行した監査報告書について記載する場合

(これらはその他区分に記載される場合もある)
監査基準委員会報告書第65号(570)「継続企業」 継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められる場合
(注) 上記(  )内の数値は新報告書番号。以下同じ。

強調事項区分は、監査意見の種類に関わらず記載されることがあるとされ、また、限定意見等を表明することを意味するものではないし、経営者が行う開示に代わるものでもないとされています。

さらに、監査人は、監査報告書に強調事項区分を設ける場合、以下に従って記載しなければならないとされています。


(1) 当該区分を監査報告書の意見区分の次に設ける。
(2) 「強調事項」又は他の適切な見出しを付す。
(3) 当該区分に、財務諸表における記載箇所と関連付けて、強調する事項を明瞭に記載する。
(4) 強調事項は監査人の意見に影響を及ぼすものではないことを記載する。

4.その他事項区分について

監査基準62号では、「その他事項区分」に追記する場合の例として以下のものを挙げています。


表4:その他事項区分の例

区分

追記する内容

一組の財務諸表が異なる会計基準に基づき複数作成されている場合

企業が他の適用される財務報告の枠組みに準拠した財務諸表を別に作成している旨、及び監査人が当該別の財務諸表に対して監査報告書を発行している旨

監査報告書の配布又は利用制限がある場合

監査報告書が特定の利用者のみを対象としており、当該監査報告書が特定の利用者以外に配布又は利用されてはならない旨


また、他の監査基準においてその他事項区分を設けることが規定されているものとして、以下の基準が挙げられています。


表5:その他事項区分に記載を求めている監査基準

監査基準

内容

監査基準63号(710)「過年度の比較情報−対応数値と比較財務諸表」

・対応数値方式において、前年度の財務諸表が前任監査人により監査されている場合

・対応数値方式において、前年度の財務諸表が未監査の場合 等

監査基準64号(720)「監査した財務諸表が含まれる開示書類におけるその他の記載内容に関連する監査人の責任」

監査した財務諸表が含まれる開示書類におけるその他の記載内容に修正が必要であるが経営者が修正に同意しなかった場合


なお、「その他の事項」区分は、財務諸表で表示及び開示することが要求されていない事項であることを明瞭に示す内容が記載されます。

5.監査役等とのコミュニケーション

本基準において、監査人は、監査報告書に強調事項区分又はその他の事項区分を設けることが見込まれる場合、その旨について、監査役若しくは監査役会又は監査委員会(以下「監査役等」という。)に報告しなければならないとされています。

これにより、監査役等が監査報告書に記載される特定の事項の性質について認識することができ、また、監査役等は必要に応じて監査人から追加的な説明を受ける機会を得ることができるとされています。

6.最後に

ISA706に対応して、2012年3月決算に係る監査(2011年9月中間決算に係る中間監査)から新しい日本の監査基準が適用されることで、監査報告書の様式が変更されます。これは、財務諸表の利用者が、実施された監査の結果をより明確に理解するために行われるものと言えます。ただ、追記事項が記載される判断や評価については、今までと実質的に変わるところはないものと考えられます。

 
参考文献

2009、IFAC、ISA706、Emphasis of Matter Paragraphs and Other Matter Paragraphs in the Independent Auditor’s Report
2010、内藤文雄・松本祥尚・林隆敏編著、「国際監査基準の完全解説」、中央経済社
2011、日本公認会計士協会資料「監査基準委員会報告書の新起草方針の概要」
2011、日本公認会計士協会、監査基準委員会報告書第62号「独立監査人の監査報告書における強調事項区分とその他の事項区分」

日本公認会計士協会ホームページ http://www.hp.jicpa.or.jp/specialized_field/index.html
 
執筆者:吉田隆伸
 

編集後記
 
 

季節は秋のはずなのに、半袖で過ごせるような暖かい日が続いていましたね。
ここ数日は涼しくなり、ようやく秋の到来…と思いきや、気づけば家の近くの桜並木の葉が綺麗な赤や黄色に染まっていて、季節は進んでいるんだなと嬉しくなりました。
皆さんは秋を満喫していますか?
私はスポーツ観戦、手作り市めぐり、主人の実家から大量に送られてきた柿の消費…と、秋を満喫しています。


あと半月で12月です。「師も走る」忙しい12月を元気に乗り切るためにも体調を崩さぬよう気をつけてお過ごしください。

 
執筆者:佐々木景子
 


       
 
 

  明誠ニュースレター vol.13
2011年11月15日発行
発行責任者:武田剛
編集スタッフ:梅原剛、清水真太郎、大森麻利子、村田博明
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