明誠グループニュースレター

情報フラッシュ [ 連載記事 ]
IFRS(国際財務報告基準)第13回 IAS第20号「政府補助金の会計処理及び政府援助の開示」
国際監査基準のクラリティ版について解説(第5回)監査基準委員会報告書第59号「後発事象」について
[ トピック解説 ]
「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」を適用した場合の税務処理について
税理士法改正への反対署名
平成23年度税制改正における消費税法等の改正について

情報フラッシュ

 
発表日時 表題
平成23年11月8日 金融庁、日本商工会議所、企業会計基準委員会、中小企業庁が組織する検討委員会は、「中小企業の会計に関する基本要領(案)」を公表しました。
平成23年11月11日 金融庁は、金融商品取引法等の改正を公表しました。資産流動化スキームの規制緩和などが盛り込まれ、一部は既に施行されています。
平成23年11月11日 日本公認会計士協会は、業種別委員会実務指針「特定目的会社に係る監査上の実務指針」(公開草案)を公表しました。 業種別委員会報告第31号「特定目的会社の計算書類等の様式及び監査報告書の文例」の大幅な変更により、新設するものです。
平成23年11月14日 IFRSとGAAPの財務報告の要求事項の改善とコンバージェンスを行っているIASBとFASBは、顧客との契約から生じる収益(及び関連するコストの一部)の改訂後の基準案を作成、公表しました。
平成23年11月16日 会社法施行規則および会社計算規則が改正されました。特別目的会社に関する子会社の取扱い等が改められています。
平成23年11月30日 EUの欧州委員会は監査法人改革の法案を公表しました。同一の監査法人の監査期間は最長で6年とするほか、金融機関や上場会社に対しては入札による監査法人選定の義務付けなどが盛り込まれています。
平成23年11月30日 本年度の税制改正法が成立し、法人税率が5%引き下げられることとなりました。しかし、3年間は減税相当額を増税するため、実際に下がるのは2015年度からとなります。

トピック解説

 

 

「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」を適用した場合の税務処理について

1.はじめに

2011年10月21日に国税庁から『法人が「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」を適用した場合の税務処理について(情報)』が公表されました。本稿では、「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」(以下、過年度遡及会計基準)の概要を確認しつつ、過年度遡及会計基準を適用した場合の税務処理について解説していきたいと思います。

2.過年度遡及会計基準の概要

[1]会計上の取扱い

2009年12月4日に企業会計基準委員会から企業会計基準第24号「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」及び企業会計基準適用指針第24号「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準の適用指針」が公表されています。過年度遡及会計基準は2011年4月1日以後開始する事業年度の期首以後に行われる会計上の変更及び過去の誤謬の訂正から適用されることとされており、次の区分に応じ、会計上の原則的な取扱いが示されています。


区分 原則的な取扱い
会計上の変更 会計方針の変更 遡及処理する(過年度の財務諸表に遡及適用する)
表示方法の変更
遡及処理する(過年度の財務諸表を組替える)
会計上の見積りの変更 遡及処理しない
過去の誤謬の訂正 遡及処理する(過年度の財務諸表を修正再表示する)

[2]遡及適用及び修正再表示の方法

「会計方針の変更」に基づく遡及適用が行われた場合及び「過去の誤謬の訂正」に基づく修正再表示がされた場合には、過年度の期間に関する累積的影響額を、表示する財務諸表のうち最も古い期間の期首の資産、負債及び純資産の額に反映されることとされています。

3.税務処理への主な影響

[1] 当期における申告調整

法人税法上、法人税の確定申告は「確定した決算」に基づき行うこととされています。したがって、過年度遡及会計基準に基づく遡及処理が行われた場合でも、その過年度の確定申告において誤った課税所得の計算を行っていたのでなければ、過年度の法人税の課税所得の金額や税額に対して影響を及ぼすことはありません。

ただし、上記2[2]の方法により遡及適用及び修正再表示を行う結果、利益剰余金の前期末残高と当期首残高が不一致となることから、当期の法人税申告書において所要の調整を行うことが必要となります。

すなわち前期に提出した確定申告の利益積立金額の期末残高と、当期における法人税申告書の別表五(一)の期首残高が一致しないことになり、その差額を法人税申告書の別表五(一)の期首利益積立金額において調整することでその不一致を調整する必要があるということです。

また、「表示方法の変更」に基づく財務諸表の組替えが行われた場合には、所得金額に影響を及ぼさないため、前述のような対応を考える必要はありません。「会計上の見積りの変更」については、遡及処理をしないこととされているため、会計上の見積りの変更の対象となった当期以前の確定申告書には影響がありません。したがって、この場合にも前述のような対応を考える必要はありません。


[2]仮装経理に基づく過大申告があった場合の「修正の経理」

法人税法上、法人の提出した確定申告書に記載された所得の金額が、粉飾決算など事実を仮装して経理したことにより過大となっている場合には、当該法人が仮装経理をした事業年度後の各事業年度において当該事実に係る「修正の経理」をし、かつ、「修正の経理」をした事業年度の確定申告書を提出するまでの間、税務署長は更正をしないことができるとされています。

この「修正の経理」について、過年度遡及会計基準の導入前には、仮装経理をした法人が、「前期損益修正損」等として経理することにより修正の事実を明らかにすることと一般に取り扱われていましたが、過年度遡及会計基準の導入後においては、通常、修正再表示の処理が行われることになります。

4.税務上の対応

[1]当期における申告調整

上述した通り、当期において申告調整が必要となるのは「会計方針の変更」に基づく遡及適用が行われた場合及び「過去の誤謬の訂正」に基づく修正再表示がされた場合です。ここでは、前者の調整について解説していきます。

例として棚卸資産の評価方法を先入先出法から総平均法に変更した場合について会計と税務の処理を検討していきます。

この会計方針の変更に伴い、遡及処理を行ったところ、前期末の棚卸資産は遡及適用前の550(先入先出法)から遡及適用により500(総平均法)に減少したため、会計上、当期首の棚卸資産及び利益剰余金を、それぞれ50減額する処理を行いました。その結果、会計上の当期首の棚卸資産は500(総平均法)となります。

他方、税務上の当期首の棚卸資産は、前期の確定した決算における550(総平均法)となります。

会計上の計算と税務上の計算を比較すると、会計上の当期の原価が50少なく計上されることになるため、当期の別表四において、原価50を減算することになります。

また、遡及処理を行った結果、当期の別表五(一)の「繰越損益金」の期首金額欄に50少なく表示された金額を記載することになりますが、税務上の利益積立金額の当期首金額には変動がありませんので、当期の別表五(一)の期首金額欄において、この50を過年度遡及による影響額として調整することが必要となります。


[2]仮装経理があった場合の修正経理

例として前期において仮装経理により過大申告を行っていた会社が、これを会計上の誤謬として修正再表示により是正した場合に法人税法上の「修正の経理」として認められるかを検討します。

この修正再表示による処理は、当期首において過年度の収益の過大計上や費用の過少計上の修正及びこれに伴う当期首の利益剰余金の修正の結果を表示するものであり、修正の事実を明らかにしているといえます。そのため、修正再表示による処理は、粉飾を防止し、真実の経理の公開を確保しようとする「修正の経理」と同一視することができます。

したがって、仮装経理を修正再表示により是正した場合は「修正の経理」として認められ、所定の手続きにより法人税額の還付又は控除が受けることができます。


[3]過年度事項の修正の内容を記載した書類の添付

例えば3[1]のように当期に会計方針を変更し遡及適用をしたうえで、当期の確定申告書を提出する場合は、これらの処理の適否が確認できるよう、過年度事項の修正の内容が当期の計算書類に記載されていない場合には、「過年度事項の修正の内容を記載した書類」を確定申告書に添付する必要があります。

 
【参考文献】
法人が「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」を適用した場合の税務処理について
週刊税務通信No.3182
過年度遡及処理の会計法務税務 中央経済社
 
執筆者:佐藤 沙織
 

 

税理士法改正への反対署名

1.はじめに

現行、税理士法3条4号において、「公認会計士(公認会計士となる資格を有する者を含む。)は税理士となる資格を有する。」と規定されています。そのため、公認会計士は税理士登録することにより税理士と称して税務業務を行うことができます。

しかし、平成23年6月30日に日本税理士会連合会が発表した同年4月21日付けの同連合会税理士法改正特別委員会の「税理士法に関する意見(案)」で、「税理士になる公認会計士については、税法に属する科目のうち税理士試験において必須科目である所得税法又は法人税法のいずれか1科目の合格が必要である。」という税理士法改正案が提案され、平成23年度中の法律改正を目途に向け準備が進められています。

2.反対意見について

日本公認会計士協会は、税理士法に関する意見(案)に対して、2010年9月に反対意見を表明しています。 その内容の概要は以下の通りです。

(1)立法趣旨に反する

税理士法制定時に「税理士となる資格を有する者としては、まず弁護士、公認会計士が適当であると考えられ・・・」と説明されており、「税理士になる公認会計士については、税法に属する科目のうち税理士試験において必須科目である所得税法又は法人税法のいずれか1科目の合格が必要である。」という税理法改正案を提案することは、税理士法制定時の立法趣旨に反しているといえます。


(2)能力面

税理士会では、「税理士になる公認会計士については、税法に属する科目のうち税理士試験において必須科目である所得税法又は法人税法のいずれか1科目の合格が必要である。」とする能力担保措置の必要性を主張していますが、公認会計士試験では租税法が試験科目に加えられています。租税法では、法人税・消費税・所得税の3科目が課されます。また、公認会計士試験合格者は監査法人等における2年間の業務補助または会社等における実務従事及び1〜3年間の実務補習が義務付けられ、最後の試験である修了考査の受験資格を得ますが、修了考査では「税に関する理論及び実務」の試験科目で、法人税・所得税・消費税・相続税・固定資産税などが課されます。また、公認会計士は実務補習を実施して国際租税や組織再編等を含む高度な法人税や所得税・相続税等の税務の研修、CPE(継続的専門研修)制度を通じて、税務の専門家として資質の維持向上を図っています。

つまり、公認会計士はある一定の税務の試験に合格したうえで税理士に登録し、さらに継続的に税務の研修を受けており、能力担保がされているといえます。税務実務には当然に豊富な税務知識が必要となりますが、現在の実務においては適切に業務が遂行されており、企業の成長や国際競争力の強化に貢献しているといえます。もちろん、現在までに国際税務業務を遂行したことによって事件事故等も発生していません。


(3)公認会計士が提供できる税務サービス

税理士試験を合格した税理士は、合格した税法科目についてのみ税務サービスの提供が許されているわけではなく、すべての税務サービスを提供することができます。これは、専門化としての資質が一定水準以上であることが試験により確認され、その後の研修や実務を積むことによって、国民の期待する税務サービスの提供が可能であると考えられるからです。

(2)で述べたように、公認会計士は専門家としての資質について制度的に能力担保されていますが、国民が公認会計士に期待するサービスは、税理士法に関する意見(案)で提案される能力担保措置による税法の科目合格に基づくサービスではなく、公認会計士として培ってきた専門知識、実務経験に基づく税務サービスです。公認会計士はそれぞれの専門分野を生かして多種多様な税務サービスを提供することが可能であり、その税務サービスの提供に制限を課すことは国民の期待に反するものであるといえます。

(4)参入障壁

日本税理士会連合会が税理士法改正案を提案したのは、公認会計士による税理士業界への参入を防止するという理由もあると考えられます。公認会計士はJ-SOX(内部統制監査制度)の導入により増加させることが決定され、2006年からは公認会計士試験制度の簡略化も相まって、それまでの公認会計士合格者は1,000人台から2,500〜3,000人に増加しました。そのため、公認会計士有資格者が増加し、多くの人が税理士登録すれば税理士業界の競争が激しくなります。

しかし、これは新たな参入障壁を設け、市場における競争を制限し、既得権者の利益を擁護しようとするものであり、現 在の社会が求める「資格者であっても参入障壁を低くし、適切な競争原理を機能させることにより、サービス需要者の多様なニーズに応え、選択の幅を拡大すべき」という要求とは相容れないものであります。

3.国際税務業務の重要性

日本の公認会計士が行う国際業務には、日本企業の海外関連サービス(海外支店子会社の会計監査・税務申告業務、国際的なタックスプランニングに関するアドバイス、海外進出に関するコンサルティング)や外国企業の日本進出の支援(税務・会計サービスの提供、財務諸表の監査)などがあります。この中でも、国際税務業務は国際租税分野における事業体課税、連結納税、組織再編税制などの多岐にわたります。しかし、これらの税務業務を行うためには、税理士登録が必要となります。

ここで、諸外国の資格制度について説明します。

日本と同じように税務を専門とする職業が法律により制定化されているのは日本をはじめ、韓国・ドイツなどと数少なく、その他の国はそのような制度はなく、公認会計士や弁護士が税務サービスを行っています。そのため、税理士制度がない国にあっては、税務領域が会計及び法律と密接な関係を有することから、公認会計士や弁護士が税務業務の担い手となっているのです。

現在、日本では日本独自の会計基準が存在しますが、日本企業の会計基準を策定するASBJ(企業会計基準委員会)とIFRS(国際会計基準)を策定するIASB(国際会計基準審議会)が日本の会計基準とIFRSの主要な差異をなくす取り組みであるコンバージェンスを行っています。将来的には日本ではIFRS強制適用が見込まれており、日本の会計基準は存在しなくなります。グローバルに展開する企業において、現在は日本の会計・税務基準と諸外国の会計・税務基準が異なるため、海外の会計専門家は日本の公認会計士や税理士に日本の会計・税務基準に関する事項を依頼しますが、IFRSを強制適用しますと、日本の会計基準はなくなり税務基準だけが存在することとなります。そこで、日本の公認会計士が税理士登録をしないと国際税務業務ができないとなりますと、海外の会計専門家は日本の税務基準に関する事項を日本の公認会計士に依頼することができないため、日本の公認会計士の地位が低下することにもなります。

4.おわりに

以上で述べたように、公認会計士に税理士資格の取得制限を設けることは好ましくありません。 わが国における公認会計士と税理士のあり方として重要なことは、両者の制度を隔離することではなく、サービスの利用者の立場に立った制度整備であると考えております。

 
参考文献
・日本公認会計士協会政治連盟「政連ニュース第351号」
・日本公認会計士協会ホームページ http://www.hp.jicpa.or.jp/specialized_field/index.html
 
執筆者:桑原 由佳
 

 

平成23年度税制改正における消費税法等の改正について

1.はじめに

本稿では、平成23年度税制改正における消費税法等の改正において、特に影響が大きいと思われる@仕入税額控除制度における95%ルールの見直し、A事業者免税点制度における免税事業者の要件の見直しの2点を中心に平成23年度税制改正における消費税法等の改正について解説していきたいと思います。

2.仕入税額控除制度における95%ルールの見直し

[1].改正前の概要

消費税は、原則として全ての財貨・サービスの国内における販売、提供などを課税対象とし、生産、流通、販売などの全段階において、他の事業者や消費者に財貨・サービスの販売、提供などを行う事業者(法人及び個人事業者)を納税義務者とし、その売上げに対して課税されます。消費税においては、こうした仕組みを採る関係上、各取引段階において二重、三重に消費税が課されないよう、課税の累積を排除するために、事業者の納付税額の計算に当たっては、その前段階で課された消費税額を控除する制度(以下「仕入税額控除制度」といいます。)が設けられています。

各事業者が申告・納付する消費税額は、原則として、その課税期間中に発生した売上げに係る消費税額から仕入れ等に係る消費税額を控除(以下「仕入税額控除」といいます。)して計算することになります。また、仕入れ等に係る消費税額が売上げに係る消費税額を上回る場合には、控除不足額の還付が行われます。

仕入税額控除制度は、上記のように課税の累積を排除する観点から設けられた制度ですので、仕入れ等に係る消費税額については、あくまで課税売上げに対応するもののみが仕入税額控除の対象となるというのが原則としての考え方です。このため、非課税売上げである取引を行う事業者であっても、その取引を行うために消費税が課税される財貨・サービスの仕入れ等が一般的に行われますが、本来、当該非課税売上げに対応する仕入れ等に係る消費税額は仕入税額控除の対象とはなりません。

しかしながら、例えば、預金利子などの非課税売上げは、その営む事業の内容如何にかかわらずほとんどの事業者にあると考えられますが、他方でこれに伴う課税仕入れ等はほとんどないのが通常です。こうしたことから、事業者の事務負担等に配慮し、事業全体の売上高に基づく課税売上割合(非課税売上げも含めた売上高全体に占める課税売上高の割合をいいます。以下同じです。)を基に、仕入控除税額の計算をすることができるという簡便法が設けられています。具体的には、専ら課税売上げを行う場合として、課税売上割合が95%以上である場合には、その課税期間中の仕入れ等に係る消費税額が課税売上げに対応するものか否かの厳密な区分を行うことを要せず、全額を仕入税額控除の対象とすることができることとされています(以下「95%ルール」といいます。)。

他方、課税売上割合が95%未満の場合は@個別対応方式若しくはA一括比例配分方式のいずれかの方法により下記のように仕入控除税額の計算が行われます。

@個別対応方式
課税売上げのみに要する課税仕入れ等の税額 課税売上げと非課税売上げに共通に要する課税仕入等の税額 × 課税売上割合

A一括比例配分方式
その課税期間中の課税仕入れ等に係る税額の合計額 × 課税売上割合
[2].改正の内容

仕入税額控除制度のうち95%ルールについては、上記のとおり事業者の事務負担等に配慮する観点から導入された制度であるにもかかわらず、事務処理能力の高い大規模な事業者も含めて一律にその適用を認める現行制度の問題に対する指摘が、近年、各方面からなされていました。こうしたことを背景として、平成23年度改正においては、課税の適正化の観点から95%ルールを適用する事業者の範囲をある程度小規模な事業者に限定する見直しを行うこととされました。

具体的には、95%ルールの適用対象者をその課税期間の課税売上高が5億円以下の事業者に限ることとし、他方で当該課税売上高が5億円を超える事業者については、課税売上割合が95%以上であっても、仕入控除税額の計算に当たっては、上記の個別対応方式か一括比例配分方式のいずれかの方法で計算することとなります。

なお、この改正は、平成24年4月1日以後に開始する課税期間から適用されます。

3.事業者免税点制度における免税事業者の要件の見直し

[1].改正前の概要

消費税は、国内において財貨・サービスの販売・提供などを行う事業者(個人事業者及び法人)の売上げに対して課税されますが、小規模事業者の事務負担や税務執行面に配慮して、一定規模以下の事業者の納税義務を免除する事業者免税点制度が設けられています。

すなわち、その課税期間の基準期間(法人については前々事業年度、個人事業者については前々年。以下同じです。)における課税売上高が1,000万円以下の事業者については、原則として、その課税期間中に国内において行った課税資産の譲渡等につき、納税義務が免除されます。

このように、基準期間という過去の一定の期間における課税売上高によって納税義務の有無を判定することとしているのは、消費税が転嫁を予定している税であることから、事業者自身がその課税期間の開始前に判定できることが必要であり、当該課税期間開始前に確定している直近の実績である基準期間における課税売上高を基にその判定をすることとされているものです。

[2].改正の内容

個人事業者のその年又は法人のその事業年度の「基準期間における課税売上高」が1,000万円以下である場合において、当該個人事業者又は法人(課税事業者を選択しているものを除きます。)のうち、個人事業者のその年又は法人のその事業年度に係る「特定期間(法人については前事業年度開始の日から6月の期間、個人事業者については前年の1月1日から6月30日の期間。以下同じです。)における課税売上高」が1,000万円を超えるときは、当該個人事業者のその年又は法人のその事業年度については、事業者免税点制度が適用されないこととなりました。

この適用にあたって、事業者は、本来の課税売上高の金額に代えて、その特定期間における給与等と退職手当等の支払額の合計額をもって「特定期間における課税売上高」とすることができるとされています。よって、本来の課税売上高と給与等と退職手当等の支払額の合計額のうちいずれか少ない方の金額をもって1千万円の判定を行い、判定の結果、特定期間における課税売上高が1千万円を超えるときは、速やかにその旨の提出をしなければならないこととなっています。

なお、この特例制度は、基準期間における課税売上高が1,000万円以下である事業者に対して事業者免税点制度を不適用とする特例ですので、当該基準期間における課税売上高がもともと1,000万円超である場合には当該特例制度の適用はなく、現行どおり、原則に基づき、事業者免税点制度の適用がないということになります。

なお、この改正は、平成25年1月1日以後に開始する事業年度について適用されることとなっており、特定期間は早ければ平成24年1月1日から始まることとなります。

4.その他の改正

(1) 罰則の見直し

・不正還付の未遂犯を罰することとされました。

・故意の申告書不提出による脱犯が創設され、確定申告書をその提出期限までに提出しないことにより消費税 を免れた者は、5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰則に処し、又はこれを併科することとされました。

(2)還付申告書を提出する事業者に対し、任意に提出を依頼していた「仕入控除税額に関する明細書」につき、その記載事項が見直されるとともに還付申告書への添付を義務付けることとされました。
(3)更正等による仕入控除税額及び中間納付額の還付に係る還付加算金の計算期間について、確定申告書の提出期限の翌日から更正等の日の翌日以後1月を経過する日までの日数は、当該計算期間に算入しないこととされました。
(4)輸出物品販売場における免税制度で使用する輸出免税物品購入記録票等の様式について、購入物品の記載欄の行数を増やすことができることとする等、制度の適正な執行を担保できる範囲内で、実態に即して弾力的に変更できるよう所要の改正が行われました。
(5)通関手続きをAEO通関業者に委託して行う貨物の輸出又はAEO製造者の製造した貨物の輸出に際し、外国貨物として指定保税地域等相互間で行う運送等について、消費税が免税とされる輸出類似取引の範囲に加えることとされました。
(6)PFI法の改正により創設された公共施設運営権について、調整対象固定資産の範囲に含めるほか所要の改正が行われました。
(7)非課税とされる身体障害者用物品について、個別商品の改廃等が行われました。

5.おわりに

上記で解説しました2点の改正は、消費者が負担した消費税額の一部が事業者の手元に残ってしまういわゆる益税問題の解消を図ったものと考えられます。現内閣は消費税の増税を公言しており、今回の改正は将来の増税を見据えた消費税に関する課税の適正化の一環であると考えられます。仮に消費税率が上がれば今回の改正の影響はさらに増すものと考えられ、今後の動向にも注視していく必要があると思われます。

 
【参考文献】
「平成23年度税制改正の解説」財務省
 
執筆者:松浦 政文
 


連載記事

 
 

IFRS(国際財務報告基準)第13回 IAS第20号「政府補助金の会計処理及び政府援助の開示」

1.はじめに

今回は、IAS第20号「政府補助金の会計処理及び政府援助の開示」(以下、IAS第20号という。)について紹介します。

2.適用範囲

IAS第20号は、政府補助金(IAS第41号「農業」の対象となるものを除く)のほか、資産に関する補助金や収益に関する補助金を範囲としております。これらの定義は以下の通りです。

(1)政府補助金:政府による援助であって、企業の営業活動に関する一定の条件を過去において満たしたこと、または将来において満たすことの見返りとして、企業に資源を移転する形態をとるもの。
(2)資産に関する補助金:補助金を受ける資格を有する企業が固定資産を購入・建設又はその他の方法で取得することを条件とする補助金。
(3)収益に関する補助金:資産に関する補助金以外の政府補助金。

なお、我が国においては、国庫補助金等について、企業会計原則注解24や法人税法等において一部取扱規定が示されていますが、IAS第20号のように、包括的な規定は設けられておりません。また、国庫補助金は国から会社が固定資産の建設のために贈与されることが一般的であるため、IAS第20号における資産に関する補助金に近いものといえます。

3.認識及び会計処理

政府補助金は、公正価値により測定される非貨幣性資産による補助金を含めて、@企業が補助金交付のための付帯条件を満たすことA補助金が受領されることについて合理的な保証が得られるまでは認識してはなりません。

(1)資産に関する補助金

資産に関する補助金は、受領した補助金を繰延収益として計上し、対象資産の減価償却を通じて取り崩す方法(繰延収益方式)、又は受領した補助金額を対象資産の取得価額から直接控除する方法(直接減額方式)のいずれかによって、財政状態計算書において表示しなければなりません。

なお、我が国の会計基準においては、直接減額方式または補助金額を任意積立金として積み立てる方法(積立金方式)のいずれかが認められています。

(2)非貨幣性資産による補助金

補助金を非貨幣性資産(例えば、土地又はその他の資源)の形で受領した場合には、公正価値又は名目価額で評価します。

(3)収益に関する補助金

収益に関する補助金は、その補助金が補償対象とする企業の関連コストを、企業が費用として認識する期間にわたって、規則的に収益として認識しなければなりません。一方、すでに発生した費用又は損失に対する補償として、又は企業に対し緊急的な財政支援のために受領した補助金で、将来の関連コストを伴わないものは、受領した期の収益として認識します。

(4)政府補助金の返還

返還しなければならなくなった政府補助金は、会計上の見積りの変更として処理しなければなりません。資産に関する補助金の場合、資産の帳簿価額を増額するか(直接減額方式の場合)又は繰延収益の残高から返還額を控除することによって(繰延収益方式の場合)、補助金の返還額を認識しなければなりません。また、収益に関する補助金の場合、当該補助金について認識された繰延収益の未償却部分から取り崩さなければなりません。

4.開示

IAS第20号を適用した場合には、以下の事項を開示しなければなりません。

(1)政府補助金について採用された会計方針及び財務諸表においける表示方法
(2)政府補助金の内容と範囲、及び他の形態の政府援助で企業が直接便益を受けたものの表示
(3)認識した政府援助に付随する未履行の条件及びその他の偶発事象

なお、我が国の会計基準においては開示に関する規定は設けられておりません。

 
執筆者:関和輝
 


 

国際監査基準のクラリティ版について解説(第5回)
監査基準委員会報告書第59号「後発事象」について

1.基準の概要

今回は、監査基準委員会報告書第59号(560)「後発事象」(以下「本基準」という。)について解説します。クラリティ版の国際監査基準に対応した新しい日本の監査基準6本が、2012年3月決算に係る監査(2011年9月中間決算に係る中間監査)から適用されます。この新しい監査基準6本のうちの1本が本基準「後発事象」であり、これは国際監査基準(ISA)560「後発事象」に対応した基準です。

なお、本基準の内容は、ISA560の内容と非常に近いものになっています。

2.「後発事象」の対象

本基準は「後発事象」と「事後判明事実」についての取扱いを定めています。

「後発事象」の内容は、従来の監査基準と変わりません。ただ、「事後判明事実」の概念は本基準から導入されました。これは、国際監査基準の内容に合わせて導入されたものです。


表1:本基準の対象

種類

内容

後発事象

期末日の翌日から監査報告書日までの間に発生した事象

事後判明事実

監査報告書日後に監査人が知るところとなり、監査報告書日現在に気付いていたとしたら監査報告書を修正する原因となった可能性のある事実


表1のように、期末日の翌日から監査報告書日までの間に発生した事象は後発事象、監査報告書日後に監査人が知った事象は事後判明事実となります。

また、後発事象は、(1)修正後発事象と(2)開示後発事象の2つに分かれます。これは従来と取扱いは変わりません。それぞれの内容は以下の通りです。


表2:後発事象の種類
種類 内容 必要となる対応
修正後発事象 期末日現在において既に存在している状況に関する証拠を提供する事象 財務諸表の修正
開示後発事象 期末日後において発生した状況に関する証拠を提供する事象

財務諸表における開示(注記)

3.対応方法の区分

本基準は、財務諸表日(会計期間の最終日)からの時系列に従って、監査上の対応が定められています。


図1

(1)期末日の翌日から監査報告書日までの間に発生した事象

監査人は、期末日の翌日から監査報告書日までの間に発生し、財務諸表の修正又は財務諸表における開示が必要なすべての事象を識別したことについて、監査手続を実施しなければなりません。

なお、この監査手続には、以下のものが含まれます。

@後発事象を識別するために経営者が実施している手続を理解すること
A経営者に、財務諸表に影響を及ぼす可能性のある後発事象が発生したかどうか質問すること
B期末日後に取締役会、監査役会又は監査委員会、株主総会が開催されている場合、その議事録を通読すること
C利用可能な場合は、企業の翌年度の直近の月次等の期中財務諸表を通読すること

以上の結果、財務諸表の修正又は財務諸表における開示を必要とする事象を識別した場合には、それらが財務諸表に適切に反映されているかどうかを確かめることになります。


(2) 監査報告書日の翌日から財務諸表の発行日までの間に監査人が知るところとなった事実

監査人は、監査報告書日後に、財務諸表に関していかなる監査手続を実施する義務も負わないとされています。

しかし、監査報告書日の翌日から財務諸表の発行日までの間に、もし監査報告書日現在に気付いていたら監査報告書を修正したかもしれない事実を知った場合には、監査人は以下の手続を実施することになります。

@経営者及び監査役等と当該事項について協議すること
A財務諸表の修正又は財務諸表における開示が必要かどうか判断すること
B財務諸表の修正又は財務諸表における開示が必要な場合、当該事項について財務諸表でどのように扱う予定であるか経営者に質問すること

なお、経営者が財務諸表の修正又は財務諸表における開示を行う場合には、監査人はさらに追加の手続を実施することになります。


(3) 財務諸表が発行された後に監査人が知るところとなった事実

監査人は、財務諸表が発行された後は、当該財務諸表に関していかなる監査手続を実施する義務も負いません。

しかし、財務諸表が発行された後に、もし監査報告書日現在に気付いていたら監査報告書を修正したかもしれない事実を知った場合には、監査人は以下の手続を行います。

@経営者及び監査役等と当該事項について協議すること
A財務諸表の訂正が必要かどうか判断すること
B財務諸表の訂正が必要な場合、当該事項について財務諸表でどのように扱う予定であるか経営者に質問すること

なお、経営者が財務諸表を訂正する場合、監査人はさらに追加の手続を実施することになります。

5.最後に

後発事象について新しい監査基準が適用されますが、後発事象についての判断や評価については、今までと実質的に変わるところはないと考えられます。また、今回の基準により、監査報告書日後に判明した事後判明事実についても監査手続が定められました。

なお、重要な後発事象については、従来と同じく監査報告書に追記される場合があります。さらに、事後判明事実についても、事後判明事実に限定して監査手続を実施した場合など一定の場合には、監査報告書に追記されることになります。

 
参考文献

2009、IFAC、ISA560 Subsequent Events
2010、内藤文雄・松本祥尚・林隆敏編著、「国際監査基準の完全解説」、中央経済社
2011、日本公認会計士協会資料「監査基準委員会報告書の新起草方針の概要」
2011、日本公認会計士協会、監査基準委員会報告書第59号「後発事象」
日本公認会計士協会ホームページ http://www.hp.jicpa.or.jp/specialized_field/index.html

 
執筆者:吉田隆伸
 

編集後記
 
 

日の沈む時間も早くなってしまい、もうすっかり冬の季節になりました。ここのところ、朝吐く息が白く、地元青森で過ごした日々を懐かしく思います。

冷え込みの厳しい時期ですが、みなさんはいかがお過ごしですか?12月は、仕事納め、大掃除、忘年会で大忙しでしょうか。

今年一年を振り返ると、なんとか自分自身の目標は達成できたのではと感じています。来年の目標は、ボストンで英語力とコミュニケーション能力を向上させること、そして、人脈を広げることです。来年も一歩一歩着実に目標を達成できるよう前向きに頑張っていきたいです。

来年も何かとご迷惑をおかけするかもしれませんが、ご指導ご鞭撻のほど、どうぞ宜しくお願い致します。

新年には、また元気な姿でみなさまとお会いできますことを楽しみにしております。

それでは、よいお年をお過ごしください。

 
執筆者:清水 真太郎
 


       
 
 

  明誠ニュースレター vol.14
2011年12月15日発行
発行責任者:武田剛
編集スタッフ:梅原剛、清水真太郎、大森麻利子、村田博明
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