明誠グループニュースレター

情報フラッシュ [ 連載記事 ]
IFRS(国際財務報告基準)第15回IAS第27号「個別財務諸表」及びIFRS第10号「連結財務諸表」(前編)
国際監査基準のクラリティ版について解説(第7回) 「監査役等とのコミュニケーション」「内部統制の不備に関するコミュニケーション」について
[ トピック解説 ]
会社法制の見直しに関する中間試案の概要
COSOの内部統制フレームワークの公開草案について
不適切な会計処理が発覚した場合の監査人の留意事項について

情報フラッシュ

 
発表日時 表題
平成24年1月20日 日本公認会計士協会が「税効果会計に関するQ&Aの改正について」(公開草案)を公表しました。
平成24年1月15日 日本公認会計士協会が「監査・保証実務委員会研究報告「不適切な会計処理が発覚した場合の監査人の留意事項 について(公開草案)」を公表しました。
平成24年1月13日 企業会計基準委員会が「改正法人税法及び復興財源確保法に伴う税率変更等に係る四半期財務諸表における税金費用の実務上の取扱い」を公表しました。

トピック解説

 

 

会社法制の見直しに関する中間試案の概要

1.初めに

2011年12月7日に開催された法制審議会会社法制部会第16回会議で、会社法制の見直しに関する中間試案(以下、見直し案)が取りまとめられました。この見直し案では、企業統治の在り方や親会社に関する規律等について見直しが検討されています。

2.会社法の見直しに関する中間試案の概要


企業統治の在り方 検討内容
[1] 取締役会の監督機能 イ)社外取締役の選任の義務付け
ロ)監査・監督委員会設置会社制度の創設
ハ)社外取締役および社外監査役に関する規律の見直し
[2] 監査役の監督機能 イ)会計監査人の選解任等に関する議案等及び報酬等の決定権の、監査役等への移行
ロ)監査の実効性を確保するための仕組み
[3] 資金調達の場面における企業統治の在り方 イ)支配株主の異動を伴う第三者割当による募集株式の発行時の株牛総会決議の有無等
ロ)株式併合の際の反対株主への株式買い取り請求権の付与等
ハ)仮装払込みによる募集株式の発行等の際の取締役等の責任の見直し
ニ)新株予約権無償割り当てに関する割当て通知の時期の見直し
親会社に関する規律 検討内容
[4] 親会社株主の保護 イ)多重代表訴訟の創設
ロ)親会社による子会社の株式等の譲渡の際の株主総会決議の有無
[5] 子会社少数株主の保護 イ)親会社と子会社の取引において子会社が不利益を受けた場合における、親会社等の責任の明文化
ロ)情報開示の充実
[6] キャッシュ・アウト(現金を対価とする少数株主の締出し) イ)特別支配株主が他の株主に株式売渡請求をできる制度の創設
ロ)全部取得条項付種類株式の取得に関する規律の創設等
[7] 組織再編における株式買い取り請求等 イ)現状の株式買取請求権における問題点解消のための見直し
[8] 組織再編等の差止請求 イ)組織再編についての、株主の差止請求の明文化
[9] 会社分割等における債権者の保護 イ)詐欺的な会社分割における債権者の保護
ロ)不法行為債権者の保護
その他 省略

3.会社法見直しについての解説

上記 の見直しのうち、今回のニュースレターでは[1]取締役会の監督機能、 [2]監査役の監督機能及び [4]親会社株主 イ)多重代表訴訟について解説し ます。


[1]取締役会の監督機能について
イ)社外取締役の選任の義務付け

見直し案では一定の会社について社外取締役の選任を義務付けることを検討しています。これは、社外取締役が取締役会において議決権を行使することによって経営全般の監督機能を果たすことや、社外取締役による株式会社の利益相反への監督機能が期待されていることによるものです。

一方で、監査役会設置会社にはすでに社外監査役が存在し、役割が重複することから社外取締役会の選任に義務化は過剰な規制であるという指摘がなされています。また、社外取締役の設置の義務化は、人税確保の面からも会社に対し過剰な負担を強いるという指摘もなされています。

ロ)監査・監督委員会設置会社制度

現在の会社法では、上記のように社外取締役を有効に活用できる機関設計とは言えないとの指摘がなされています。以下は、現行法で認められている監査役会設置会社や委員会設置会社における社外取締役の活用の際の問題点を表に示したものです。


  監督機能の役割を担う機関 監督機関の社外取締役・監査役の要件 問題点
監査役会設置会社 監査役会 社外監査役が半数以上 社外監査役に加えて社外取締役も選任することの重複感・負担感
委員会設置会社 監査委員会
社外取締役が過半数以上 指名委員会及び報酬委員会を置くことへの抵抗感

上記の問題点を解消し、社外取締役を有効に活用できるようにするために、見直し案では従来の機関設計とは別に監査・監督委員会設置会社を認めることを検討しています。監査・監督委員会設置会社では、業務執行と監督の分離を図る(社外取締役は自ら業務執行をせず監査を担う)とともに、経営者の選定・解職等の決定への関与を通じて監督機能を果たすことが期待されています。見直し案にて示されている監査・監督委員会の構成・権限等を以下の表にまとめます。


構成 取締役3人以上で組織され、過半数が社外取締役
兼任の制限 監査・監督委員は,監査・監督委員会設置会社若しくはその子会社の業務執行取締役若しくは支配人その他の使用人又は監査・監督委員会設置会社の子会社の会計参与若しくは執行役を兼ねることができな い
権限 委員会設置会社の監査委員会及び各監査委員が有する権限と同様。

その他、見直し案においては監査・監督委員である取締役を選任する際にはその他の取締役とは別に,株主総会の決議が必要である等、独立性を保持するための仕組みが検討されています。また、社外取締役が個別の業務執行の決定に逐一関与することなく、監査・監督により専念できるよう、会社法第362条4項の規定に関わらず「重要な財産の処分及び譲受け」や「多額の借財」等を一定の範囲で取締役会から取締役に委任できるようにしています。


ハ)社外取締役・社外監査役の規律等の見直し

これまで監督機能の向上のための社外取締役の設置について見てきましたが、より監督機能が機能するように社外取締役の要件についても見直しが検討されています。これまでの会社法の要件では、取締役の親族や、親会社の取締役等は法的に社外取締役になることを禁じられておらず、独立性の点で監督機能が十分に果たされていないのではないかという指摘がなされていました。このため、見直し案では社外取締役の要件について、

ア 社外取締役の要件に,株式会社の親会社の取締役若しくは執行役又は支配人その他の使用人でないものであることを追加するものとする。
イ 社外取締役の要件に,株式会社の取締役若しくは執行役又は支配人その他の使用人の配偶者又は2親等内の血族若しくは姻族でないものであることを追加するものとする。
といった要件等を加えることを検討しています。この場合には社外取締役の人材確保の観点から、社外取締役の要件にかかる対象期間を就任する前の10年間とすることとしています。

また、監査役会設置会社における社外監査役についても、監査・監督委員会設置会社における社外取締役との間に、権限等に相違はあるものの役割として共通する部分もあることから、同様の要件の見直しが検討されています。


[2]監査役の監督機能
イ)会計監査人の選解任や報酬

現在の会社法における会計監査人の選解任や報酬の決定と、取締役・監査役等の関係を表にまとめると以下のようになります。(○を付したものが決定権を持つ機関)


  監督機能の役割を担う機関 取締役・取締役会 監査役 監査委員会
監査役設置会社 選解任・不再任の議題・議案の決定 同意権及び議案等の提案権  
報酬等の決定
同意権  
委員会設置会社 選解任・不再任の議題・議案の決定  
報酬等の決定   同意権

会計監査人の選解任等に関する議案等及び報酬等を,会計監査人による監査を受ける立場にある取締役又は取締役会が決定する現行の仕組みは,会計監査人の独立性の観点から問題があり,これらの決定権を監査役若しくは監査役会又は監査委員会に付与すべきであるとの指摘がされています。また、監査役による監査の実効性を高めるために、監査を支える体制や監査役による使用人からの情報収集に関する体制に係る既定の充実・具体化を図るとともに、その運用状況の概要等を事業報告の内容に追加することとしています。


[4]イ)親会社株主の保護(多重代表訴訟)

現行法上、株主は株主代表訴訟によって取締役・監査役等の役員等に対して法的責任を追及するために提起することが可能(会社法第847条)ですが、一方で保有する株式の子会社の役員等に任務懈怠があった場合はその責任を直接追及することはできません。このように現行法上では、親会社の取締役等と子会社の取締役等との間の人的関係により,子会社の株主である親会社が子会社の取締役等の責任追及を懈怠するおそれが存在することになります。こうした点から、親会社株主が子会社役員等の責任を直接追及する訴えを提起請求できる多重代表訴訟の制度が検討されているのです。

 
【参考文献】

会社法制の見直しに関する中間試案

会社法制の見直しに関する中間試案の補足説明
旬刊経理情報 2012年2月1日号 p30-40
 
執筆者:石川裕也
 

 

COSOの内部統制フレームワークの公開草案について

1.はじめに

2011年12月19日に、米国のトレッドウェイ委員会支援組織委員会(Committee of Sponsoring Organizations of the Treadway Commission, 以下COSO)はこれまでに公表している内部統制フレームワーク(以下オリジナルフレームワーク)を見直し、企業がより効果的・効率的な内部統制システムを構築し、また機動的で信頼性・明瞭性の高い企業運営ができるためのガイダンスとなるように「内部統制の統合的フレームワーク」の公開草案(以下、本報告書)を公表しました。

以下では、当該フレームワークの概要、改訂のポイントを解説します。

2.オリジナルフレームワークの概要

[1]背景

1992年にCOSOが公表した現行の内部統制フレームワークは全世界で幅広く受け入れられ、内部統制の構築・運用・評価を行うための基本となるガイドラインとして認識されるようになりました。しかし、公表から20年が経過し、企業や企業環境はIT技術の増大やビジネスモデル・組織構造の複雑化などにより大幅に進化し続けています。したがってCOSOは現行のフレームワークを見直し、より現状に即したフレームワークの最新化を目指して本報告書を公表しました。

[2]概要

本報告書では、内部統制の定義及びフレームワークの目的に変更はありません。すなわち、内部統制は業務の有効性と効率性、報告の信頼性、関連法規の遵守という3つの目的を保証するためにデザインされたプロセスのことを指します。また、内部統制の構成要素である@統制環境Aリスク評価B統制活動C情報と伝達Dモニタリング活動に関してもオリジナルフレームワークからの変更はありません。しかし、本報告書ではこの内部統制の構成要素について次に説明する17の原則を新たに追加しています。

3.改訂のポイント

ここでは、今回の改訂の主要ポイントについて解説を行います。

[1]追加された17の原則について

前述したように、本報告書では内部統制の構成要素の変更はありませんが、それぞれの構成要素に関連する基礎的な概念として以下の17の原則が追加されました。なお、本報告書ではこの17の原則の追加をPrinciples-based approach(原則主義的考え方)の採用として取り扱っています。

<統制環境>

統制環境の構成要素は、組織の気風を決定し、組織内のすべての者の統制に対する意識に影響を与えるものであり、内部統制の他のすべての構成要素の基礎となる基盤となるものです。統制環境に関する原則は以下の5つです。

1.組織体は、誠実性と倫理観に対するコミットメントを表明する。
2.取締役会は、経営者から独立していることを表明し、かつ、内部統制の整備及び運用状況について監視を行う。
3.経営者は取締役会の監督の下、内部統制の目的を達成するために組織構造、報告経路、および適切な権限と責任を構築する。
4.組織体は内部統制の目的に合わせて、有能な個人を惹きつけ、育成し、かつ、維持することに対するコミットメントを表明する。
5.組織体は、自らの目的を達成するに当たり、内部統制に対する責任を個々人に持たせる。
<リスク評価>

リスクを管理するための基盤作成の為に、経営者は企業内外で起こりうる環境の変化で企業の目的達成に対して障害となるものを検討しなければなりません。リスク評価に関連する原則は以下の4つです。

6.組織体は、内部統制の目的に関連するリスクの識別と評価ができるように、十分な明確さを備えた内部統制の目的を明示する。
7.組織体は、自らの目的の達成に関連する組織全体にわたるリスクを識別し、当該リスクの管理の仕方を決定するための基礎としてのリスクを分析する。
8.組織体は内部統制の目的の達成に関連するリスクの評価において、不正の可能性について検討する。
9.組織体は、内部統制システムに重大な影響を与え得る変化を識別し評価する。
<統制活動>

統制活動とは、経営者や部門責任者などの命令・指示が適切に実行されることを確保するために定める方針・手続をいい、一連の取引につき企業内の様々な階層で実施されます。統制活動に関連する原則は以下の3つです。

I組織体は、内部統制の目的に対するリスクを許容可能なレベルまで低減するのに役立つ統制活動を選択し整備する。
J組織体は、内部統制の目的の達成を支援する(IT)技術に関する全般的統制活動を選択し整備する。
K組織体は、期待されていることが何であるかを明確にした方針、および、その方針を有効にさせるような関連手続きにおいて規定した統制活動を展開する。
<情報と伝達>

情報と伝達とは、必要な情報が識別・把握・処理され、企業内外や関係者相互間に正しく伝えられることを確保することをいいます。特に、必要な情報が関係する組織や責任者に、適宜、適切に伝えられることを確保する情報・伝達の機能が不可欠です。そのため、企業内の全ての関係者がその責任と役割を理解する必要があります。情報と伝達に関連する原則は以下の3つです。

L組織体は、内部統制の他の構成要素が機能することを支援する、関連性のある質の高い情報を獲得し、もしくは、作成して利用する。
M組織体は、内部統制の他の構成要素を機能させるために必要な、内部統制の目的と内部統制に対する責任を含む情報を組織内部に伝達する。
N組織体は、内部統制の他の構成要素の機能に影響を与える事項に関して、外部の関係者との間での情報伝達を行う。
<モニタリング活動>

モニタリングとは、内部統制の有効性・効率性を継続的に評価するプロセスをいいます。モニタリングにより、内部統制は常に監視・評価され、是正されることになり、内部統制の不備に関する情報が適時に伝達され、重要な不備に関しては取締役会やその他上級経営者に伝達されることになります。モニタリング活動に関連する原則は以下の2つです。

O組織体は、内部統制の構成要素が実在し機能していることを確かめるため、日常的評価および/または独立的評価を選択し、適用及び実施する。
P組織体は、しかるべき立場にある上級経営者および取締役会を含む是正措置を講じる責任を負う者に対して、適時に内部統制の不備を評価し、伝達する。

追加された17の原則は効率的な内部統制システムを構築するために必要な要件を明確化するものであり、企業にとって適切な手続きを設計、運用するのを助ける原則として位置付けられています。


[2]その他の改訂点について

本報告書では以下に掲げる点を本報告書とオリジナルフレームワークの主な改訂点として取り扱っています。

(1)内部統制の目的に含まれる「報告」に関する考え方の拡大

オリジナルフレームワークでは内部統制の目的として「財務報告の信頼性」と表記していましたが、本報告書では「報告の信頼性」と変更しています。これは、近年、財務報告のみではなく非財務報告についての報告や内部報告についても重要性が高まっていることを踏まえ、財務報告以外の報告の信頼性も内部統制の目的の範囲としているということを意味しています。

(2)拡大するIT技術との関連性を反映

オリジナルフレームワークの公表以来、IT技術は目まぐるしい進化を遂げ、現在ではほとんどすべての企業がIT技術を信頼して使用しています。より洗練されたIT技術を使う事により、多くのシステム、組織、プロセス、技術にまたがるリアルタイムの活動が可能となりました。この変化は内部統制の全ての構成要素の実践のあり方に影響を与えています。

(3)ガバナンスに関する概念の強調

本報告書では取締役会や委員会に関するガバナンスに関する論点を拡大しています。

(4)不正防止に対する期待を検討することの強調

オリジナルフレームワークでは不正防止に関する論点があまり強調されていませんでしたが、本報告書では不正や、潜在的な不正に関する論点が拡大されています。

4.最後に

今回の公開草案で改訂されたフレームワークはガバナンスに関する理解の変化や、進化するIT技術への対応、また国際化やビジネスモデルの複雑化に対応するものですが、改訂の本質は例えば具体的なIT技術等を列挙しその対応策を掘り下げて検討する方法を提示するようなものではなく、今後、時間が経過しても指針としての役割を果たせるような一般的なガイドラインを提示するものになっています。このフレームワークの最終版は2012年の秋に公表される予定です。

 
参考文献

2011、Committee of Sponsoring Organizations of the Treadway Commission、Internal Control-Integrated Framework
2011、Journal of Accountancy、COSO Releases Draft of Updated Internal Control Framework

2011、週刊 経営財務、COSOの「内部統制フレームワーク」の全面改訂公開草案の概要、箱田 順哉・八田 進二
 
執筆者:山口 亮
 

 

不適切な会計処理が発覚した場合の監査人の留意事項について

1.はじめに

日本公認会計士協会は、1月15日、「不適切な会計処理が発覚した場合の監査人の留意事項について」の公開草案を公表しました。この草案は、近年の不適切な会計処理の発覚の増加を受けて作成されたものです。最近新聞紙面をにぎわせているオリンパス株式会社、大王製紙株式会社の事例より、不適切な会計処理が発覚した場合の留意点を挙げ、監査人が押さえるべき対応について同公開草案について触れていきます。

2.不適切な会計処理とは

この研究報告では、不適切な会計処理の定義を「意図的であるか否かにかかわらず、財務諸表作成時に入手可能な情報を使用しなかったことによる、又はこれを誤用したことによる誤り」としており「過年度遡及会計基準」における「誤謬」と同義です。

ただし、意図的な虚偽表示を行った場合や経営者不正の場合には、監査人は、虚偽表示の範囲の検討や判断をより慎重に行う必要があるとされています。

3.2つの不適切な会計処理のケースに見る留意点

冒頭で挙げた2社の不適切な会計処理の発覚後の対応について、時系列に沿って確認してみます。

まず、オリンパスの事例では、10月中旬に不適切な会計処理の可能性が発覚。11月上旬には社外の専門家から成る第三者委員会を立ち上げ、12月上旬に同委員会の報告を受け取っています。12月中旬に第二四半期報告書及び過年度の訂正報告書を提出、内部統制報告書についても、訂正を行っています。また、12月上旬に第三者委員会の報告を受けて、取締役、監査役の責任を明らかにする特別調査委員会等を組織し、複数の委員会からの報告を受け取った1月、一部取締役、監査役に対し、損害賠償請求を行っています。

また、大王製紙の事例では、9月中旬に不正借り入れの問題に絡んで会長が辞任、下旬には社内の取締役を含んだ特別調査委員会を設置、10月下旬に報告を受けています。会社は、11月下旬、会社法違反(特別背任)の疑いで元会長を告発、12月中旬に第二四半期報告書及び過年度訂正報告書を提出、同社も内部統制報告書を訂正しました。また、証券取引所の要請を受けて、改善報告書の提出も行っています。

上記のように、不適切な会計処理の発覚後、会社は3カ月ほどの間に、第三者委員会や特別調査委員会を設置し調査に協力、外部公表用報告書の作成、責任の追及等を行い、その都度、適時開示と監督官庁への報告、相談を行うこととなります。ここでポイントとなるのは、対応にかけられる期間の短さ、連絡、対応する相手の多さです。このような多方面への短期間での対応を行うためには、事前にスケジュール、対応先、対応方法を押さえておく必要があります。また、上記対応は、会社同様、監査人も関与する必要があり、会社が適時の適切な対応ができるよう、適切に助言することが必要となる場合もあります。そのため、監査人は、不適切な会計処理が発覚した場合のスケジュール及び対応を整理し、把握することが求められています。

4.不適切な会計処理発覚後の監査スケジュールの留意点

不適切な会計処理が発覚した場合、その対応のために許される時間は会社、監査人ともに限られており、事前にスケジュールを把握しておくことが非常に重要です。

上場会社は金商法上の有価証券報告書等の提出期限後1 カ月以内に有価証券報告書の提出ができない場合、証券取引所の定める上場廃止事由に該当します。

また、会社法上は、会計監査人設置会社では計算書類の全部を受領した日から4週間の監査期間が確保されていますが、不適切な会計処理が発覚した場合、実務上は時間的制約の中で通常以上に多くの監査上の対応を迫られることが多いと考えられます。

5.監査人として想定される対応先

同報告が想定される対応先として挙げているのは、内部調査委員会・第三者調査委員会、証券取引所、監査役等、金融庁長官、各財務局の5者です。以下、それぞれについて確認します。

[1]内部調査委員会・第三者調査委員会

平成22年に日弁連より「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」が公表されてから、第三者委員会を設置する事例が増えています。

監査人は、第三者委員会と意見交換することが適当です。また、第三者委員会の調査報告書に、監査に関する記載に事実誤認がないことを確認し、ある場合には修正を申し入れる必要があります。


[2]証券取引所

上場会社において不適切な会計処理のおそれ等が発生した場合、有価証券報告書等の訂正報告書を提出する過程で、証券取引所の定めに従った適時開示が必要です。監査人は不適切な会計処理のおそれ等の発覚に伴う一連の適時開示に関しては、事前確認し、事実関係に齟齬をきたしている場合や誤解を与える記載がある場合は修正を依頼する必要があります。


[3]監査役等

監査人は、その職務を行うに際して取締役の職務の執行に関し不正の行為又は法令若しくは定款に違反する重大な事実があることを発見したときは、遅滞なく、これを監査役(監査役会あるいは監査委員会)に報告しなければならないとされています。また、監査人が監査上の重要な発見事項について、監査役と行うコミュニケーションは、当研究報告では、書面で行うことが適切としています。


[4]金融庁長官

監査人が上場会社の法令違反等事実を発見した場合には、法令違反の是正その他の適切な措置をとるべき旨を、遅滞なく、当該特定発行者に書面にて通知しなければならないと規定されています。

また、これらの手続を行っても、会社による適切な措置がとられていない場合、重大な影響を防止する必要がある等と認めた場合には、あらかじめ、当局に申し出をする旨を特定発行者に書面にて通知した上で、当該事実に対する意見を当局に申し出なければなりません。さらに、当局に申し出を行った場合には、特定発行者に対して当該申し出を行った旨を書面にて通知しなければならないとされています。


[5]各財務局

不適切な会計処理が発覚した場合は、速やかに会社を所管する財務局に連絡し、事前相談を行い、対応を協議します。また、上記各方面への対応についても、その都度財務局と連絡を取り合って行うこととなります。

6.開示書類の訂正に係る監査人の対応

[1]開示書類の訂正

過去の財務諸表に関して不適切な会計処理が発覚した場合には、過年度遡及会計基準に従い、過去の財務諸表を修正再表示しなければなりませんが、重要性が乏しい場合には、当該不適切な会計処理の影響を当期の営業損益又は営業外損益として認識する処理が行われることになると考えられます。また、上場会社においては、当該不適切な会計処理の影響が重要であるときは、過去の財務諸表に係る訂正報告書を提出し、訂正後の情報を当期の財務諸表に係る比較情報に反映させることになります。

過去の財務諸表の自発的な訂正を行うか否かは、会社が判断を行います。会社が財務諸表を訂正した場合は、監査人は訂正後の財務諸表に対して監査報告書を発行することとされていますが、実務上、監査人は訂正内容に重要性が乏しく監査意見に影響がない場合には、監査報告書を再発行しないことがあります。一方、会社が訂正報告書を提出しないと判断した場合には、監査人は、金額的重要性と質的重要性の観点から、不適切な会計処理が過去と当期の財務諸表に及ぼす影響を評価します。

過去の財務諸表にかかる監査報告書の監査意見に影響を及ぼすと判断した場合、監査基準委員会報告書560「後発事象」に定める「事後判明事実」に該当すると考えられ、監査人は相応の対応が必要となります。


[2]訂正報告書に係る監査計画

監査計画を策定するに当たっては、訂正箇所だけでなく、それ以外の部分に対して実施する監査手続も考慮する必要があります。また、監査人は、不適切な会計処理の影響が網羅的に把握され、適切に会計処理されているかどうかを確かめるための監査手続及びその適用の範囲を策定しなければなりません。


[3]調査報告書の利用

また、監査人は第三者委員会の調査報告書を利用することができますが、その場合は監査基準委員会報告書14号「専門家の業務の利用」又は監査基準委員会報告書第15号「内部監査の実施状況の理解とその利用」を参考に利用するか否か、利用の範囲、程度を検討します。


[4]監査手続が終了しない場合

必要十分な監査手続ができないままに監査報告書の提出期限が迫った場合は、その時点までに入手できた監査証拠を基に意見不表明又は除外事項を付した限定付適正意見を表明することになります。また、過去の財務諸表に及ぼす不適切な会計処理の影響を把握できないなどの理由により、経営者が財務諸表を作成できない場合は、そもそも監査対象が存在しないことから、監査報告書は発行しません。この場合には、経営者が財務諸表を提示しなかったために監査報告書を発行しなかったという事実関係を明確化するために、書面により双方で確認しておくことが適当であると考えられます。


[5]内部統制監査報告書の要否

一方、内部統制報告書制度においては、内部統制報告書の訂正報告書に対して監査証明は要求されていません。したがって、不適切な会計処理が生じたことにより会社が訂正報告書を提出した場合には、監査人は財務諸表に係る監査報告書の再提出の要否を検討すれば足りることとなります。

7.おわりに

不適切な会計処理の発覚後は対応に多忙を極めるため、対応を失念する、スケジュールの作成を誤って対応が間に合わなくなる、などの事態も考えられます。不適切な会計処理は、予期せず突如発覚することが通常ですから、発覚のおそれはない、と考えているときにこそ、対応の留意点について把握しておくことが必要と考えられます。

 
【参考文献】
「不適切な会計処理が発覚した場合の監査人の留意事項について」日本公認会計士協会
適時開示情報(オリンパス株式会社・大王製紙株式会社)
 
執筆者:本田
 


連載記事

 
 

IFRS(国際財務報告基準)第15回 IAS第27号「個別財務諸表」及びIFRS第10号「連結財務諸表」(前編)

1.はじめに

今回は、次号と2回にわたり、IAS第27号「個別財務諸表」(以下、IAS第27号という。)及びIFRS第10号「連結財務諸表」(以下、IFRS第10号という。)について紹介します。なお、連結財務諸表に関する規程は、現在は、IAS第27号「連結財務諸表及び個別財務諸表」に定められていますが、2011年5月にIFRS第10号が公表され、連結財務諸表部分を新基準に移行しました。なお、IAS第27号とIFRS第10号は2013年1月1日以降に開始する事業年度から適用されることとなっています。

2.目的

IAS第27号及びIFRS第10号の目的は以下の通りです。

[1]IAS第27号の目的は、企業が個別財務諸表を作成する際の、子会社、共同支配企業及び関連会社に対する投資の会計処理及び開示の要求事項を定めることにあります。

[2]IFRS第10号の目的は、企業が他の企業を支配している場合の連結財務諸表の表示と作成に関する原則を定めることにあります。また、この目的を達成するために、以下のことを規定しています。

(1)他の企業を支配している企業に、連結財務諸表の作成を要求すること。
(2)支配についての原則を定義し、連結の基礎としての支配を定めること。 投資者が投資先を支配していて投資先を連結しなければならないかどうかを識別するために、支配についての原則を適用する方法を示すこと。
(3)連結財務諸表の作成に関する会計処理上の要求事項を示すこと。

3.連結財務諸表と個別財務諸表

IAS第27号において、連結財務諸表と個別財務諸表は以下のように定義されています。

[1]連結財務諸表とは、連結集団の財務諸表であり、親会社及びその子会社の資産、負債、資本、収益、費用及びキャッシュ・フローを、単一の経済的実体として表示するものをいう。
[2]個別財務諸表とは、親会社又は投資先に対する共同支配又は重要な影響力を有する投資者が表示する財務諸表であり、その投資が取得原価で又はIFRS第9号「金融商品」に従って会計処理されるものをいう。

4.支配

連結財務諸表を作成するにあたり、連結の範囲を決定する事は非常に重要であり、判断が難しいところでもあります。IFRS第10号においては、投資先を支配しているかどうかを判定し、自らが親会社であるかどうかを決定するために、支配についての定義を示しています。

投資先を支配していると結論付けるためには、投資企業が次の3つの要素をすべて有していなければなりません。

[1]投資先に対するパワー(パワー)
[2]投資先への関与による変動リターンに対するエクスポージャー又は権利(リターン)
[3]投資者のリターンの額に影響を及ぼすようにパワーを行使する能力(パワーとリターンの関係)

以下、パワー、リターン及びパワーとリターンの関係について説明していきます。なお、上記の3つの要素のうち1つ以上に変化があったことを示す事象や状況がある場合には、投資先を支配しているかどうかを再検討しなければなりません。

5.パワー

投資者は、関連性のある活動(投資先のリターンに重要な影響を及ぼす活動)を指示する現在の能力を与える既存の権利を有している場合には、投資先に対するパワーを有していることになります。ここで、関連性のある活動となり得る活動の例としては、財又はサービスの販売及び購入や資金調達構造の決定又は資金の調達などがあり、関連性のある活動についての意思決定の例としては、投資先の運用上の主要な意思決定を行うこと等が挙げられています。

なお、パワーは、一般的には株式等の資本性金融商品によって付与される議決権という権利を通じて生じていますが、複数の契約上の取り決めによって生じている場合もあります。投資先にパワーを与える可能性のある権利の例としては、上述した議決権のほかに、関連性のある活動を指示する能力を有する投資先の経営幹部の選任、職務変更又は解任を行う権利等が挙げられています。

パワーを有しているか否かの判定に当たっては、投資者本人だけでなく、他の株主等の状況を検討する必要があり、IFRS第10号では、[1]過半数に満たない議決権による支配及び[2]潜在的議決権において、この検討が必要とされています。

[1]過半数に満たない議決権による支配

議決権の過半数未満を有する投資者は、他の議決権保有者の保有の規模及び分散状況との比較における投資者の議 決権保有の相対的な規模等を考慮しなければなりません。IFRS第10号では、本件について複数事例を提供しており、その うちの1つを紹介します。

(事例) 投資者は投資先の議決権の48%を取得しており、残りの議決権は数千人の株主が保有し、単独で1%超の議決権を有する者はいない。株主には、互いに協議や集団的意思決定を行うための取り決めはない。このような状況においては、投資者は保有する議決権の絶対的規模と、他の株主が保有する相対的規模に基づき、パワーの要件を満たす十分な支配的な議決持分を有していると結論付けられる。
[2]潜在的議決権
支配の判定に際し、投資者は自らの潜在的議決権と他の者が保有している潜在的議決権とを考慮して、パワーを有しているかどうかを決定する必要があります。ここで潜在的議決権とは、投資先の議決権を獲得する権利であり、新株予約権やオプションなどがあります。なお、潜在的議決権は、それらが実質的(権利を行使する実際上の能力を有すること)である場合にのみ考慮されます。

6.リターン

投資者は、その関与により生じる投資者のリターンが投資先の業績の結果によって変動する可能性がある場合、投資先への関与による変動リターンに対するエクスポージャー又は権利を有していることになります。リターンには、正の値のみ、負の値のみ、又は正と負の両方の場合があります。

7.パワーとリターンの関係

投資者は、パワー及びリターンを有するだけでなく、リターンに影響を及ぼすようにパワーを行使することができる能力を有している必要があります。そのため、意思決定権を有する投資家が本人であるのか代理人であるのかを決定しなければならず、代理人と判断された場合には、委任された意思決定権を行使する場合でも、投資先を支配していないと判定されます。意思決定者が代理人であるか否かについては、以下の要因のすべてを考慮しなければなりません。

[1]投資先に対する意思決定権の範囲
[2]他の当事者が保有する権利
[3]意思決定権者の報酬水準
[4]投資先に対して保有している他の関与により生じるリターンの変動性に対するエクスポージャー

8.連結範囲の評価に関する我が国の会計基準との差異

連結範囲の評価に関する我が国の会計基準との差異としては、以下のようなものが挙げられます。

[1]パワー、リターン、パワーとリターンの関係という3つの要素について考慮が必要となる。
[2]議決権比率などの具体的な数値基準が規定されていない。
[3]他の株主の議決権(潜在的議決権も含む)も考慮する必要がある。

[4]関連性のある活動を識別する必要がある。

9.おわりに

今回は、IAS第27号とIFRS第10号の目的や定義、特に支配の概念について説明しました。連結の評価については我が国の会計基準との差異が多いため、基準を十分に理解し、自社規程を整備していく必要があると思われます。後編となる次号は、IAS第27号とIFRS第10号の会計処理等について説明したいと思います。




 
執筆者:関和輝
 


 

国際監査基準のクラリティ版について解説(第7回)
「監査役等とのコミュニケーション」「内部統制の不備に関するコミュニケーション」について

1.基準の概要

今回は、監査基準委員会報告書260「監査役等とのコミュニケーション」と265「内部統制の不備に関するコミュニケーション」について解説します。

クラリティ版の国際監査基準(ISA)に対応した新しい日本の監査基準39本が公表されており、このうち6本はすでに今年度から適用されています。残りのほとんどは来年度(2013年3月決算に係る監査)から適用されますが、今回はその中から2つの監査基準を紹介します。

1つは「監査役等とのコミュニケーション」、もう1つは企業の内部統制の不備についての伝達等ついて規定した「内部統制の不備に関するコミュニケーション」です。

これらは、それぞれISA260「ガバナンスに責任を負う者とのコミュニケーション」、ISA265「ガバナンスに責任を負う者および経営者に対する内部統制の欠陥の伝達」に対応しています。

2.監査役等とのコミュニケーション

監査基準「財務諸表監査における不正」では、財務諸表の不正について、経営者や監査人の責任と、監査における要求事項等を規定しています。


(1) コミュニケーションの役割

当基準では、財務諸表の監査における監査人と監査役等との双方向のコミュニケーションを重視しています。双方向のコミュニケーションは以下のために重要とされています。

@監査人と監査役等が、監査に関する事項を理解し、効果的な連携をもたらすような関係を構築すること
A監査人が、監査役等から監査に関連する情報を入手すること
B監査役等が、財務報告プロセスを監視する責任を果たし、それによって、財務諸表の重要な虚偽表示リスクを軽減すること

そして、監査人は、本基準が要求する事項について、監査役等とコミュニケーションを行う責任があるとされています。


(2)コミュニケーションを行うことが要求される事項

監査人は、以下の事項について、監査役等とコミュニケーションを行わなければなりません。


表1:コミュニケーションを行う事項
No

伝達事項

伝達内容

1 財務諸表監査に関連する監査人の責任
  • 監査人は、経営者が作成する財務諸表に対して監査意見を形成し、表明する責任を有すること
  • 財務諸表監査は、経営者又は監査役等の責任を代替するものではないこと
2 計画した監査の範囲とその実施時期 監査の計画範囲とその実施時期(例えば、以下の事項)
  • 不正又は誤謬による、重要な虚偽表示に係る特別な検討を必要とするリスクへの監査人の対応
  • 監査に関連する内部統制についての監査人の監査アプローチ
  • 監査に適用される重要性の概念
3 監査上の重要な発見事項
  • 会計方針、会計上の見積り及び財務諸表の開示を含む、企業の会計実務の質的側面のうち重要なものについての監査人の見解
監査人は、会計実務が、適用される財務報告の枠組みのもとで受入可能であるが、企業の特定の状況においては最適なものではないと考える場合は、その理由を監査役等に説明しなければならない。
  • 監査期間中に困難な状況に直面した場合は、その状況
  • 監査の過程で発見され、経営者と協議したか又は経営者に伝達した重要な事項
  • 監査人が要請した経営者確認書の草案
  • 監査の過程で発見され、監査人が、職業的専門家としての判断において財務報告プロセスに対する監査役等による監視にとって重要と判断したその他の事項
4 監査人の独立性
  • 監査チーム及び必要な範囲の監査事務所の他の構成員、監査事務所等が、独立性についての職業倫理に関する規定を遵守した旨
  • 監査事務所等と企業の間の関係及びその他の事項で、監査人の職業的専門家としての判断により、独立性に影響を与えると合理的に考えられる事項など

(3) 伝達方法等

監査人は、監査役等とのコミュニケーションを適時に行わなければならないとされています。また、監査人は、監査役等とのコミュニケーションが、監査の目的に照らして適切に実施されたかどうかを評価し、その内容等について、監査調書に記載する必要があります。

3.内部統制の不備に関するコミュニケーション

監査基準「内部統制の不備に関するコミュニケーション」では、財務諸表監査において識別した内部統制の不備に関して、監査役等及び経営者と適切にコミュニケーションを行う際の実務上の指針を規定しています。


(1) 重要な不備等の伝達

監査人は、監査の過程で識別した重要な不備を、適時に、書面により監査役等に報告しなければなりません。

また、監査人は、適切な階層の経営者に、以下について適時に報告しなければなりません。

  1. 重要な不備(経営者に直接報告することが適切ではない場合を除く。)
  2. 監査の過程で識別したその他の内部統制の不備のうち、適切な階層の経営者の注意を促すに値すると監査人が

    判断したもの

なお、監査人が過年度の監査で、監査役等及び経営者に重要な不備の報告を行ったとしても、是正措置が未だ講じられていなければ、再び伝達する必要があります。この場合、監査人は、経営者や監査役等に、重要な不備が是正されていない理由を質問することがあります。

 

(2) 伝達内容

監査人は、重要な不備を報告する際、以下を記載しなければなりません。

  1. 不備の内容とそれによって見込まれる影響の説明
  2. 監査役等及び経営者が、当該報告の前提を理解するための十分な情報
  3. 監査人は、特に以下について説明しなければなりません。
    • 監査の目的は、財務諸表に対する監査人の意見を表明することにある旨
    • 監査には、財務諸表の作成に関連する内部統制の検討が含まれるが、これは、状況に応じた適切な監査手続を立案するためであり、内部統制の有効性に対して意見を表明するためではない旨
  4. 報告する事項は、監査人が、監査の過程で識別し監査役等に報告するに値するほど重要と判断した不備に限定 される旨

4.最後に

上記の基準は、監査人と、経営者及び監査役等との双方向の伝達(コミュニケーション)の重要性を指摘し、その方法や伝達内容について規定を置いています。また、今回の改訂で、内部統制の不備の伝達に関するコミュニケーションについて、独立した基準を設けたのも特徴的な点です。

なお、上記の監査基準はクラリティ版の国際監査基準に対応して改訂されたものですが、実質的な内容は従来の日本の監査基準と変わるところはないと考えられます。

 
参考文献

2009、IAASB、ISA260 Communication with Those Charged with Governance
2009、IAASB、ISA265 Communicating Deficiencies in Internal Control to Those Charged with Governance and Management
2010、内藤文雄・松本祥尚・林隆敏編著、「国際監査基準の完全解説」、中央経済社
2011、日本公認会計士協会資料「監査基準委員会報告書の新起草方針の概要」
2011、日本公認会計士協会、監査基準委員会報告書第260号「監査役等とのコミュニケーション(公開草案)」
2011、日本公認会計士協会、第265号「内部統制の不備に関するコミュニケーション(公開草案)」

日本公認会計士協会ホームページ http://www.hp.jicpa.or.jp/specialized_field/index.html
 
執筆者:吉田隆伸
 

編集後記
 
 

立春から10日、春とは程遠い、厳しい寒さが続きます。みなさまいかがお過ごしでしょうか。

昨日はバレンタインデー。街中にチョコレート売り場が設置されていましたね。プランタン銀座(東京都中央区)が女性約400名を対象に行ったアンケートによると、今年もチョコレートの予算は前年並みで、本命チョコ、義理チョコ、自分用のチョコとみなさんしっかり購入する予定だったそうです。

ただし変化があったのは本命チョコに添えるプレゼント。前年より1,000円ダウンしているそうですが、それでも7,400円と高額。本命チョコと合わせると10,000円を超え、女性がバレンタインにかける意気込みが伝わってきます。

不況と就職難が決まり文句になる昨今ですが、女性の購買意欲は健在のよう。ビジネスチャンスもまだまだ各方面で望めるのでは、と期待できる結果でした。

それでは、また来月号でお会いしましょう。

 
執筆者:本田
 


       
 
 

  明誠ニュースレター vol.16
2012年2月15日発行
発行責任者:武田剛
編集スタッフ:梅原剛、清水真太郎、大森麻利子、村田博明、山口 亮
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