明誠グループニュースレター

情報フラッシュ [ 連載記事 ]
IFRS(国際財務報告基準)第19回 IAS第34号「中間財務報告」
国際監査基準のクラリティ版について解説(第11回)「分析的手続」「監査サンプリング」について
[ トピック解説 ]
「我が国の消費税の現状と今後の方向性について(中間報告)」の公表について
法令違反等事実又は不正の行為等が発覚した場合の監査役等の対応について
源泉所得税改正および復興特別所得税関係(源泉徴収関係)Q&Aについて

情報フラッシュ

 
発表日時 表題
平成24年5月14日 日本公認会計士協会は経営研究調査会研究報告第48号「企業グループとしての温室効果ガス算定・報告システムの構築」を公表しました。
平成24年5月16日 日本公認会計士協会は会計制度委員会研究報告第14号「比較情報の取扱いに関する研究報告(中間報告)」を公表しました。
平成24年5月16日 日本公認会計士協会は「年金資産の消失事案を受けての監査及び会計の専門家としての提言」をプレスリリースしました。
平成24年5月17日 企業会計基準委員会は企業会計基準第26号「退職給付に関する会計基準」及び企業会計基準適用指針第25号「退職給付に関する会計基準の適用指針」を公表しました。
平成24年5月21日 日本公認会計士協会は「業種別委員会報告第37号『消費者金融会社等の利息返還請求による損失に係る引当金の計上に関する監査上の取扱い』の改正について」を公表しました。
平成24年5月24日 日本公認会計士協会は「租税調査会研究報告第7号「自己株式等の資本取引に係る税制について」の改正について」を公表しました。
平成24年5月25日 日本公認会計士協会は業種別委員会研究報告第9号「年金資産の運用に関連する会計監査業務等の状況に係る研究報告」を公表しました。

トピック解説

 

 

「我が国の消費税の現状と今後の方向性について(中間報告)」の公表について

1.概要

日本公認会計士協会(以下、「協会」という。)より、租税調査会研究報告第24号「我が国の消費税の現状と今後の方向性について(中間報告)」が公表されました。本研究報告では、平成24年2月17日に、社会保障給付財源の確保と財政再建の同時達成を意図して「社会保障・税一体改革大綱」が閣議決定されたことを受け、社会保障費とその財源としての消費税とのバランスの問題や、我が国の消費税制度の現状や問題点、今後の消費税制度の在り方について、協会により検討された結果がまとめられています。

構成については、導入部において、1.問題の所在と研究のアプローチを明らかにし、2.制度の概要、歴史、3.消費税引き上げ幅の程度、4,逆進制への対応、5.中小企業特例の課題、6.制度上の課題、7.諸外国との制度の比較、8.地方財源との関連、9.今後の方向性について、検討を行っています。また、本研究報告の取りまとめにあたり、協会は、常に公平・中立的な立場を維持したとしています。

以下、主な内容について簡潔にご紹介します。

2.消費税引き上げ幅の程度

平成23年6月30日に政府与党が取りまとめた「社会保障・税一体改革成案」において、「社会保障給付の規模に見合った安定財源の確保に向け、まずは、2010年代半ばまでに段階的に消費税率(国・地方)を10%まで引き上げ、当面の社会保障改革にかかる安定財源を確保する」と提案されています。

協会は、近年の財政赤字の拡大、及び国債残高増加の大きな要因として、租税負担率が減少している事、及び社会保障支出が増加している事の2点を挙げ、社会保障支出を増税によって賄うことに一定の理解ができるとしています。その上で、増加する社会保障費の更なる財源として、消費税増税を検討することについては、外国資本の国内誘致の観点等から、法人税については国際的に競争力のある税率にする必要があること、消費税率、及び税収構成における消費税の割合が、諸外国に比べて低いことなどを総合的に勘案した場合に、一定の合理性があるとしています。

一方で、財政健全化に関しては、近年の一般会計歳出の増加は、5%分の消費税増税に相当する金額を超える金額であり、消費税と社会保障経費の関係だけで解決できる問題ではなく、社会保障関係費以外の歳出抑制を含めた、更なる施策が必要であるとしています。

3.逆進性への対応

消費税の増税にあたり、消費税の性質の一つである、逆進性に留意すべきとしています。

逆進性とは、所得に占める消費税の負担が、高所得者ほど低減し、低所得者ほど増大するという性質を言います。従って、消費税増税を行えば、可処分所得の大半を生活必需品の購入に充てる、低所得者層の日常生活への支障が懸念されることから、消費税増税を検討するに当たり、低所得者層が受ける当該影響の緩和策を用意する必要がある、としています。

本研究報告において、かかる緩和策として、イ.複数税率(軽減税率)、ロ.給付付き税額控除の2点を挙げています。


イ.複数税率(軽減税率)

複数税率は、消費税率として基準となる標準税率を定めると同時に、課税対象となる商品・取引の内容に応じて、標準税率より低い消費税率を設定することを言います。軽減税率は、主に生活必需品等に適用されることが想定されます。

導入のメリットとしては、生活必需品等に負担の少ない軽減税率が適用され、逆進性対策の効果を直接働かせることが出来ることや、購入者にとっても分かりやすい制度である、という点が挙げられます。

一方、導入のデメリットとしては、軽減税率の適用を受けようと国会議員への陳情が発生するなど、政治問題化する恐れがあることや、節税・租税回避行動が過度に生じることによる税収面へのマイナスの影響、及びそれらを取り締まる為の行政コスト発生の懸念などが挙げられます。これらのデメリットについて、イギリスやカナダなど複数税率を採用する諸外国で実際に確認された事例が、本研究報告の中で触れられています。


ロ.給付付き税額控除

給付付き税額控除とは、低所得者層の所得税について、最低限の生活を維持するために必要な支出に係る消費税相当額を所得税から控除し、控除しきれない場合には還付するというものです。当該制度の実施例としては、カナダのGoods and Services Tax Credit(GST控除制度) が挙げられます。

導入のメリットとしては、複数税率とは異なり、高所得者層への消費税負担に影響を与えることなく、低所得者層のみの消費税負担を軽減する点で、効率的に逆進性への対応が可能となること、対象者の範囲をどのように決定するかによって、柔軟な制度の設定が可能になること、事業者による利害が絡まない為、複数税率で懸念される政治問題化が想定しにくいこと、などが挙げられます。

一方、デメリットとして、給付付き税額控除の対象外となる者でも、自らの所得を偽ることにより、給付付き税額控除を受けるなどの不正受給横行のおそれが指摘されています。

給付付き税額控除には、以上のような性質があることから、その導入に際しては、対象者を正確に把握する仕組み、すなわち個人の所得の正確な把握を可能とする仕組みとして、納税者を特定する番号が必要になると言われています。納税者が提出する税務申告書と、納税者の取引の相手方が提出する法定調書とに当該番号の記載を義務付けることにより、効率的に名寄せ・突合し、個々人の正確な所得の把握、及び給付付き税額控除対象者の適正な把握が行われます。

4.我が国の逆進性への対応の検討状況について

「社会保障・税一体改革大綱」においては、軽減税率は導入せず「社会保障・税番号制度の導入をにらんで、給付付き税額控除の導入に向け検討を進める」とされています。

一方で、平成24年2月14日、「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」(マイナンバー法案)が閣議決定され、平成26年6月に国民個人に「番号」、法人等に「法人番号」を交付し、平成27年1月以降、番号を利用する分野のうち、社会保障分野、税務分野及び防災分野のうち可能な範囲で「マイナンバー」の利用を開始する予定であるとしており、給付付き税額控除が導入される場合には、納税者を特定する番号として「マイナンバー」を利用することが考えられます。


協会は、マイナンバー制について、より正確な所得情報に基づいた適切な所得の再配分の実現のためには、制度の検討は避けて通れないものであるとしつつ、マイナンバーによる所得把握は、ともすれば行き過ぎたものへとつながり、プライバシー問題へと発展する可能性があることや、事務処理コストの増大が予想されること、本来少数者であるはずの低所得者対策として大規模なコンピューター投資を実施するという費用対効果の問題などの懸念点を挙げ、国民的議論が必要であるとしています。

5.消費税を巡るその他の課題

その他消費税を巡る課題として、以下の内容を挙げています。


イ. 中小企業特例(事業者減免点制度や簡易課税制度)は、益税を生じさせる為、税率の引き上げが実現した場合、益税の規模が大きくなることから、事業者減免点の引き下げ、または廃止を検討すべき。


ロ. 免税事業者及び非課税売上事業者は、仕入税額控除ができない部分については、事業者の経営を圧迫する要因となる為、消費者に対する価格の表示方法も含め、転嫁に関する配慮をする必要がある。


ハ. 日本国内に事務所等を有しない海外の事業者から、オンライン取引でデジタルデータを購入するといった、クロスボーダーのオンライン取引においては、役務の提供を行う者の役務提供に係る事務所等の所在地で国内外の判定が行われることから、同様の財を有形で購入した場合と消費税の課税形態が異なることになる。課税の公平及び中立性の観点から問題であり、今後消費税法の整備が必要である。

6.まとめ

協会は、引き続き増加が見込まれる社会保障費と財政再建問題を考慮すれば、消費税の増税は避けることができないものと考えられる、としています。その上で、歯止めのない引上げにつながらないよう、財源に無理のない社会保障制度の設計、及び消費税の内容を含めた財政再建の明確なスケジュールの立案について、継続的な議論を可能とする制度的仕組みを考えるべき、としています。

消費税制度を巡っては課題も少なくなく、今後も、国民的議論を踏まえ、検討を進めていく必要があります。

 
執筆者:廣川 智朗
 

 

法令違反等事実又は不正の行為等が発覚した場合の監査役等の対応について

1.経緯

近年、上場会社において不適切な会計処理の発覚が増加しており、企業不祥事等に対する関心が高まっています。監査役若しくは監査役会又は監査委員会(以下「監査役等」という)は、会計監査人又は監査人(以下「監査人」という)が、監査証明を行うにあたって法令違反等事実を発見した場合、あるいはその職務を行うに際して不正の行為等があることを発見した場合には、監査人から当該事実について通知又は報告を受ける立場にあります(金融商品取引法第193条の3及び会社法第397条)。監査役等がこの通知又は報告を受ける場合は、事態が極めて深刻な状況となっていることが予想され、まさに有事の対応として監査役等は迅速で的確な対応が求められるとし、日本監査役協会より平成24年4月20日付けで、監査役等がとるべき対応及びその留意点に関する指針(以下「当指針」という)が公表されました。

これに先立ち、日本公認会計士協会より平成24年3月22日付けで「不適切な会計処理が発覚した場合の監査人の留意事項について」(監査・保証実務委員会研究報告第25号)が公表され、会社の不適切な会計処理が発覚した場合の監査人側の対応について指針が明らかにされているとともに法令違反等事実及び不正の行為等に対する監査人のとるべき手続が取りまとめられています(ニュースレターVol.16[トピック解説]参照)。

2.通知等を受領した監査役等の対応について

監査人が、法令違反等事実を発見し、金融商品取引法第193条の3に基づき、法令違反の是正その他適切な措置をとるべき旨を監査役等に通知したにもかかわらず、法定期限内に会社として適切な対応が行われない場合には、監査人は、財務計算に関する書類の適正性の確保に重大な影響を及ぼすおそれを防止するために必要があると認められるときは、金融庁長官に対して法令違反等事実の通知をしなければならないとされています。

当指針は、上記の通知又は報告に加え、前段階として、監査人から不適切な会計処理の端緒となり得る事実、不適切な会計処理につながるおそれのある事実や端緒等を含め、報告又は連絡等(以下「通知等」という)を受けた監査役等がとるべき対応及びその留意点について、以下のように注意喚起し、不適切な会計処理に関与していた、あるいはその事実に気づきながらも何ら措置を講じていなかった監査役等も、同指針に準拠した行動をとる必要があることを明示しています。


[1]企業統治の一翼を担う非業務執行役員としての監査役等

監査役等は、会社経営を主導する役員が関与した不正行為など業務執行側が重大な利益相反に陥っている状況下において、企業が健全性に照らして誤った行動を行わないよう、業務執行の意思決定に直接関与しない役員(非業務執行役員)として、しがらみなく正していくことが期待されるとしています。


[2]迅速且つ自発的な対応

会社として求められる適切な対応は以下の通りです。

イ.不適切な会計処理のおそれがある場合:可及的速やかに事実関係等を究明する。
ロ.不適切な会計処理が存在する場合:取引所及び当局等とも相談の上、適時に開示を行う。

これらの対応が迅速且つ自発的に行われない場合には、自浄作用が発揮できない、ガバナンスが機能していない会社であることを意味し、会社の信用は失墜し、企業価値が日々毀損され、損害が拡大してゆくという事態に陥るとしています。


[3]外部専門家の意見聴取

事実究明や正しい意見及び評価を得るために必要がある場合には、躊躇なく、弁護士及び会計士等の外部専門家に相談若しくは調査依頼すべきとしています。

[4]聖域なき対応、社外監査役等との情報の共有、取締役会への報告等

会社として求められる対応が早急に行われるよう、業務調査権限やその他の権限を、いわば聖域なく行使する必要があります。

(1).情報共有

他の監査役等と情報共有することを基本とし、特に社外監査役等を交えることで、客観的立場からの発言が期待されます。

(2).適切な監督機能の発揮

事案に関与している業務執行取締役等の影響などにより、会社側としての対応が不十分な場合においては、期限を設定して報告を求める等、業務執行側が適切な対応を行っているかについても関心を持ち、その対応が中立性等の観点から適切でないと認められる場合には、取締役会に対して、監督機能を適切に発揮するよう求める必要があります。取締役会への出席義務及び報告義務を踏まえ、監査人から受けた通知等の内容の取締役会への報告のあり方、取締役会との連携のあり方等について、監査役会等で事前に協議しておく必要があります。

(3).抜本的措置の検討

監督機関である取締役会との協働にあたっては、外部弁護士等に依頼した調査委員会の立上げを含め、事実関係究明及び損害の拡大防止に向けた抜本的措置を検討する必要があるとしています。


[5]監査人との連携

監査人からの不適切な会計処理に関する通知等について、法定監査期限の直前に受領しても、対応できる期間が限られます。また、監査人から金融庁長官に対して法令違反等事実に関する通知がなされた場合、会社に認められる対応の期間は原則2週間と短いものとなります。

会社として適切な対応を取ることができる十分な時間を確保するため、四半期報告に係る監査人からの報告聴取等の機会を有効に活用し、不適切な会計処理の兆候等の有無について監査人に確認するなど、コミュニケーションに努め、日常的に監査人との連携を図る必要があります。


[6]監査役等としての責務の自覚

不適切な会計処理のおそれがある場合は、企業にとって極めて重大な危機時であり、その責務を果たすべく、上記[1]〜[5]を念頭にしっかりと対応することが期待されている点を強調し、監査人から不適切な会計処理に関する通知等を受けたにもかかわらず、適切な対応をとらなかった場合、監査役等自身が善管注意義務違反に問われかねないことは十分に認識する必要があるとしています。

3.最後に

当指針は、不適切な会計処理の防止を主目的としたものでありますが、通知等を受けた監査役等の対応、留意点の明示により、監査役等が監査人と経営者の関係を調整する役割を果たすことも期待されているものと考えます。監査人の立場からは、監査役等への通知等は警告を促すという意味で容易に行いやすいとも思われますが、その重大性や会社の対応等いかんでは、金融庁長官への通知を要することとなり、法的責任問題が露見するなどを踏まえると(もちろん適切な対応をするべきですが)、当初の通知等の段階から大胆かつデリケートな判断を迫られるものと位置付けられているようです。

不適切な会計処理による企業不祥事等が注目される中、健全な経済社会を支えていくためには、監査役等と監査人、また経営者も交え、コミュニケーションの場においてそれぞれの役割を意識することが重要と考えます。また、重要事項の情報共有により、特に不正会計防止の観点で議論し、大事に至らないようリスク管理体制を整えておくことも必要と言えるでしょう。

 
執筆者:町出知則
 

 

源泉所得税改正および復興特別所得税関係(源泉徴収関係)Q&Aについて

1.源泉所得税改正

[1]概要

国税庁より、平成24年3月31日付で租税特別措置法等の一部を改正する法律(平成24年法律第16号)が公布されました。


[2]内容
(1)給与所得

1)制度の概要

給与所得の金額は、原則、その年中の給与等の収入金額から給与所得控除額を控除した残額とされており、給与所得控除額は、給与等の収入金額に応じた一定の算式により算定されます。

2)改正内容

給与等の収入金額が1,500万円を超える場合の給与所得控除額については、245万円の定額となります。一般に給与所得控除は給与所得者の必要経費に相当するものといわれていますが、給与所得者の必要経費が常に給与等の収入の増加に応じて比例的に増加するとは考えられないこと、また、諸外国においても給与所得控除額に上限を設けている例があることから、このような改正が行われます。

この改正は、平成25年分以後の所得税について適用されます。


(2)退職所得

1)制度の概要

退職所得の金額は、その年中に支払を受ける退職手当等の収入金額から、その人の勤続年数に応じて計算した退職所得控除額を控除した残額の2分の1に相当する金額となります。

退職所得は、長期間にわたる勤務の対価の後払い的性格や、退職後の生活資金としての所得であること等を考慮し、退職金収入(退職所得控除後)に対して2分の1のみを課税する方法が採用されていますが、この2分の1課税を利用して、当初から在職期間の短い役員等が給与を繰り延べ、退職金として受け取ることにより、所得金額を低く抑えるといった租税回避行為が指摘されていました。

2)改正内容

特定の役員等に対する退職手当等(役員等勤続年数が5年以下である人が支払を受ける退職手当等のうち、その役員等勤続年数に対応する退職手当等として支払を受けるもの)に係る退職所得の金額の計算については、退職所得控除額を控除した残額の2分の1とする措置が廃止されました。これにより、特定役員退職手当等に係る退職所得の金額は、特定役員退職手当等の収入金額から退職所得控除額を控除した残額となります。ここで、特定の役員等とは、以下の通りとなります。

イ 法人の取締役、執行役、会計参与、監査役、理事、監事及び清算人並びにこれら以外の者で法人の経営に従事している一定の者
ロ 国会議員及び地方公共団体の議会の議員
ハ 国家公務員及び地方公務員

これにより、1)で述べた租税回避行為を是正することができ、キャリア組の公務員の渡りや、大企業の役員の関連会社への転籍などによる退職金の重複支給に対する課税強化を図ることができます。

この改正は、平成25年分以後の所得税について適用されます。


(3)源泉所得税の納期限

1)制度

給与等の支給人員が常時10人未満である源泉徴収義務者は、「納期の特例」の承認を受けることで給与等や退職手当等、一定の報酬等(以下「給与等及び退職手当等」といいます。)から徴収した源泉所得税を年2回(7月10日、翌年1月10日)にまとめて納付することができます。また、「納期の特例」の承認を受けている源泉徴収義務者が7月から12月までの間に支払った給与等及び退職手当等から徴収した源泉所得税については、届出書を提出し一定の要件を満たすことで納期限を翌年1月20日とする「納期限の特例」の制度が設けられています。

2)改正内容

「納期の特例」の承認を受けている源泉徴収義務者が7月から12月までの間に支払った給与等及び退職手当等から徴収した源泉所得税の納期限が、翌年1月20日とされました。これに伴い、「納期の特例」適用者に係る「納期限の特例」の制度は廃止されました。

この改正は、平成24年7月1日以後に支払うべき給与等及び退職手当等について適用されます。


(4)申告書の保存

1)制度

源泉徴収義務者が給与所得者等から提出を受けた扶養控除等の申告書については、以前は特に法令の規定はありませんでしたが、改正により、源泉徴収義務者においてその申告書の提出期限の属する年の翌年1月10日の翌日から7年間保存することが法令に明確化されました。

この改正は、平成25 年1月1日以後に提出すべき申告書等について適用されます。


[3]注意点
(1)給与所得の計算については、毎月の給与における源泉徴収税額にも影響が出るものでありますので、今後ご留意ください。

2.復興特別所得税関係

[1]概要

平成23年12月2日に東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法(平成23年法律第117号)が公布されました。

これにより、所得税の源泉徴収義務者は、平成25年1月1日から平成49年12月31日までの間に生ずる所得について源泉所得税を徴収する際、復興特別所得税を併せて徴収し、源泉所得税の法定納期限までに、その復興特別所得税を源泉所得税と併せて国に納付しなければなりません。


[2]内容
(1)源泉徴収すべき所得税及び復興特別所得税の額

源泉徴収すべき復興特別所得税の額は、源泉徴収すべき所得税の額の2.1%相当額とされており、所得税の源泉徴収の際に併せて源泉徴収することとされています。

対象となる所得は以下のものがあげられます。

  • 利子、配当所得
  • 給与所得
  • 退職所得
  • 公的年金等
  • 報酬、料金等
  • 非居住者等の所得

源泉徴収すべき所得税及び復興特別所得税の額は、支払金額等×合計税率で計算され、合計税率は所得税率×102.1%となります。具体例を下記に示します。

所得税率(%) 5 7 10 15 16 18 20
合計税率(%) 5.105 7.147 10.21 15.315 16.336 18.378 20.42

(2)給与等に係る所得税及び復興特別所得税の源泉徴収

給与等については、平成25年分以後の源泉徴収税額表に基づき、所得税と復興特別所得税の合計額を徴収し、1枚の所得税徴収高計算書(納付書)で納付します。


(3)年末調整

給与等から源泉徴収する税額は、所得税と復興特別所得税の合計額となっておりますので、年末調整も所得税と復興特別所得税の合計額で行います。


[2]注意点

給料に対して課税される所得税に復興特別所得税が加わることは認識している方も多いかと思いますが、株式の配当や士業へ支払う報酬等に関しても復興特別所得税が課されますので、平成25年1月1日以降支払う源泉徴収額の計算上ご留意ください。

また、給料等を支払う時期についても注意が必要です。

平成24年の未払給与を平成25年1月に支払う場合、平成24年に支払が確定している所得となりますので、平成24年分の所得となります。 したがって、実際の支払が平成25年1月1日以後になったとしても、復興特別所得税を源泉徴収する必要はありません。

平成24年12月分の給与を平成25年の1月に支払う会社も多いかと思います。この場合、発生ベースでは平成24年12月の給与だとしても、会社で定められている支給日が収入とすべき時期となりますので、原則平成25年1月の給与所得となり、復興特別所得税の課税対象となりますのでご留意ください。

 
執筆者:繻エ由佳
 

連載記事

 
 

IFRS(国際財務報告基準)第19回 IAS第34号「中間財務報告」

1.はじめに

今回は、IAS第34号「中間財務報告」(以下、IAS第34号という。)について紹介します。

2.目的

IAS第34号の目的は、中間財務報告書の最小限の内容を定め、かつ中間期間に係る完全な財務諸表又は要約財務諸表に適用される認識及び測定の原則を定めることにあります。

3.定義

IAS第34号では、中間期間を1事業年度全体よりも短い財務報告の期間、中間財務報告書を中間期間について、完全な1組の財務諸表又は1組の要約財務諸表のいずれかを含んでいる財務報告書と定義しています。

4.中間財務報告書の内容

前述したとおり、中間財務報告書は完全な1組の財務諸表又は1組の要約財務諸表のいずれかを作成・公表する必要があります。

完全な1組の財務諸表はIAS第1号で定義されており、次の構成要素を含んでいます。

【1】財政状態計算書
【2】包括利益計算書
【3】持分変動計算書
【4】キャッシュ・フロー計算書
【5】注記
【6】会計方針の遡及適用、財務諸表の修正再表示又は表示項目の組替を行った場合における最も古い比較対象期間の期首の財政状態の計算書

次に1組の要約財務諸表は、IAS第34号において、最小限、次のものを含んでいなければならないとされています。

財務諸表の種類 表示対象期間

比較対象期間

要約財政状態計算書 当中間期間末 前年度末
要約包括利益計算書 当中間期間及び期首から当中間期間末までの累計期間 前中間期間及び前期首から前中間期間末までの累計期間
要約持分変動計算書 期首から当中間期間末までの累計期間 前中間期間末までの累計期間
要約キャッシュ・フロー計算書 期首から当中間期間末までの累計期間 前中間期間末までの累計期間
精選された説明的注記    

ここで、「要約」とは、少なくとも直近の年次財務諸表内に掲記された見出し及び小計並びに説明的注記が付されていることを意味し、要約財務諸表が誤解を招くものとなる時は追加の表示項目や注記を設けなければなりません。

5.重要な事象及び取引

企業は、中間財務報告の注記では、直近の年次財務報告の注記で報告された情報の比較的重要でない更新を行う必要はありませんが、直近の年次財務報告期間の末日後の企業の財政状態の変動及び経営成績を理解する上での重要な事象及び取引に関する説明を注記に含めなければなりません。IAS第34号では、重要な事象及び取引に関する例として、資産の減損による損失の計上及びその戻入れ、有形固定資産項目の取得及び処分、訴訟の解決、関連当事者間取引などを挙げています。

6.その他の開示

前述した重要な事象及び取引の注記に加えて、以下の項目を注記に含める必要があります。

【1】中間財務諸表において直近の年次財務諸表と同一の会計方針と計算方法を採用している旨、又は、それらを変更している場合には、その変更の内容及び影響の説明
【2】営業活動の季節性又は循環性に関する説明
【3】資産、負債、資本、純利益又はキャッシュ・フローに影響を与える事象で、その性質、大きさ、頻度から異常性のある事象の内容及び金額
【4】前年度末又は当年度の前中間期間に報告された見積りの変更の内容と変更金額
【5】負債性金融商品及び資本性金融商品の発行、買戻し及び償還
【6】普通株式とその他の株式の各々に対する配当金
【7】セグメント情報
【8】中間期間後の後発事象で中間財務諸表に反映されていないもの
【9】企業結合やリストラクチャリングなど、中間期間における企業の構成の変化の影響

7.認識及び測定

企業は中間財務諸表の作成にあたり、前年度末以降に会計方針を変更したものを除き、年次財務諸表と同一の会計方針を適用しなければなりません。また、企業の報告の頻度(年次、半期又は四半期)によって、年次の経営成績の測定が影響されないよう、中間報告のための測定は、期首からの累計を基準として行わなければなりません。

また、中間財務諸表の作成にあたっては、年次財務諸表と同様に合理的な見積りに基礎を置くことが多いとされていますが、一般的に中間財務諸表は、年次財務諸表よりも見積りの範囲は広くなるとされています。

 
執筆者:関和輝
 


 

国際監査基準のクラリティ版について解説(第11回)
「分析的手続」「監査サンプリング」について

1.基準の概要

今回は、監査基準委員会報告書520「分析的手続」と530「監査サンプリング」について解説します。

クラリティ版の国際監査基準(ISA)に対応した新しい監査基準の多くが2013年3月決算に係る監査から適用されており、今回はその中から2つの監査基準を紹介します。

1つは監査手続のうちの分析的手続について規定した「分析的手続」、もう1つは監査手続の実施において監査サンプリングを利用する場合について規定した「監査サンプリング」です。

これらは、それぞれISA520「分析的手続」、ISA530「監査サンプリング」に対応しています。

2.「分析的手続」

本基準では、実証手続として分析的手続を利用する場合と、監査の最終段階において、全般的な結論を形成するために分析的手続を利用する場合について規定しています。


(1) 分析的手続の定義

分析的手続とは、財務データ相互間又は財務データと非財務データとの間に存在すると推定される関係を分析・検討することによって、財務情報を評価することをいいます。分析的手続には、他の関連情報と矛盾する、又は監査人の推定値と大きく乖離する関係等についての必要な調査も含まれます。

 

(2)実証手続としての分析的手続の実施

単独で又は詳細テストとの組合せにより、実証手続として分析的実証手続を立案して実施する場合には、監査人は以下の事項を行わなければなりません。


表1:実証手続として実施する場合の要求事項
No

内容

1 特定のアサーションに関して評価した重要な虚偽表示のリスクと対応する詳細テストを考慮に入れ、これらのアサーションに対して特定の分析的実証手続が適切かどうかを判断する
2 利用可能な情報の情報源、比較可能性及び性質と目的適合性並びに作成に係る内部統制を考慮に入れて、計上された金額又は比率に対する監査人の推定に使用するデータの信頼性を評価する
3 計上された金額又は比率に関する推定を行い、当該推定が、個別に又は集計して重要な虚偽表示となる可能性のある虚偽表示を識別するために十分な精度であるかどうかを評価する
4 計上された金額と監査人の推定値との差異に対して、追加的な調査を行わなくても監査上許容できる差異の金額を決定する

(3) 全般的な結論を形成するための分析的手続

監査人は、監査の最終段階において、企業に関する理解と財務諸表が整合していることについて、全般的な結論を形成するために分析的手続を立案し、実施しなければなりません。この分析的手続の結果から得られた結論は、財務諸表の個別の構成単位等について監査中に形成された結論を裏付けることが意図されており、監査人が意見表明の基礎となる結論を導くのに役立つとされています。

3.「監査サンプリング」

本基準は、監査サンプリングによって内部統制の運用評価手続と詳細テストを実施し、評価する場合の統計的・非統計的サンプリングの利用に関する実務上の指針を提供しています。

 

(1) 監査サンプリングの立案

監査人は、監査サンプリングの立案に当たって達成すべき目的と、その目的を達成するための監査手続の最適な組合せを判断します。そのため、以下の事項を考慮します。

【1】監査手続の目的と、サンプルを抽出する母集団の特性
【2】サンプリングリスクを許容可能な低い水準に抑え軽減するための、十分なサンプル数
【3】母集団内のすべてのサンプリング単位に抽出の機会が与えられるような方法

 

(2) 監査手続の実施

監査人は、抽出した各サンプルに対して、目的に照らして適切な監査手続を実施します。

なお、監査人は、抽出したサンプルが監査手続の適用対象として適当でない場合、代わりのサンプルを抽出して手続を実施します。代わりのサンプルを抽出することが必要である場合の例としては、支払承認の証拠を入手するために実施するテストにおいて、サンプルとして書き損じ等のため無効にされた小切手が抽出される場合が挙げられています。

また、監査人は、抽出したサンプルに適切な監査手続等を実施できない場合があります。これは例えば、抽出したサンプルに関連する証拠書類が紛失している場合などです。この場合は、当該サンプルを、運用評価手続においては内部統制からの逸脱として、詳細テストにおいては虚偽表示として扱うことになります。

 

(3) 結果の評価

監査人は、識別したすべての内部統制の逸脱又は虚偽表示の内容と原因を調査して、それらが監査手続の目的と監査の他の領域に及ぼす影響を評価します。

監査人は、運用評価手続におけるサンプル抽出において内部統制からの逸脱を認めた場合には、母集団の中から共通の特徴をもつ項目をすべて識別して、これらについて監査手続を拡大して実施することを決定するなどの対応をとります。

また、監査人は、詳細テストにおけるサンプル抽出において虚偽表示を認めた場合には、サンプルで発見した虚偽表示額から母集団全体の虚偽表示額を推定することになります。

4.最後に

上記の2つの新しい基準は、従来の基準といくつかの相違点があります。例えば、新しい基準の「分析的手続」では、分析的手続の定義として、他の関連情報と矛盾する、又は監査人の推定値と大きく乖離する関係等についての必要な調査も含まれることになりました。ただし、これらは実務において既に考慮されており、新しい基準と従来の基準との本質的な相違は無いと考えられます。

 
参考文献

2010、内藤文雄・松本祥尚・林隆敏編著、「国際監査基準の完全解説」、中央経済社
2011、日本公認会計士協会資料「監査基準委員会報告書の新起草方針の概要」
2011、日本公認会計士協会、監査基準委員会報告書520「分析的手続」

2011、日本公認会計士協会、監査基準委員会報告書531「監査サンプリング」
日本公認会計士協会ホームページ http://www.hp.jicpa.or.jp/specialized_field/index.html
 
執筆者:吉田隆伸
 


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  明誠ニュースレター vol.20
2012年6月7日発行
発行責任者:武田剛 プロダクトマネジャー:村田博明
制作:株式会社ゼラス 佐々木景子
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