明誠グループニュースレター

情報フラッシュ [ 連載記事 ]
IFRS(国際財務報告基準)第20回 IAS第36号「資産の減損」
国際監査基準のクラリティ版について解説(第12回)「会計上の見積りの監査」「関連当事者」について
[ トピック解説 ]
企業グループとしての温室効果ガス算定・報告システムの構築
「比較情報の取扱いに関する研究報告(中間報告)」の公表について
「退職給付に関する会計基準」及び「退職給付に関する会計基準の適用指針」の公表について

情報フラッシュ

 
発表日時 表題
平成24年6月29日 企業会計基準委員会は「包括利益の表示に関する会計基準」等を公表しました。
平成24年6月25日 金融庁は「次世代EDINETタクソノミ(案)の公表について」を公表しました。
平成24年6月22日 日本会計士協会は「四半期レビューに関する実務指針」の改正を公表しました。
平成24年6月15日 日本会計士協会は「財務報告に係る内部統制の監査に関する 実務上の取扱いの改正を公表しました。
平成24年6月15日 日本会計士協会は「監査基準委員会報告書580『経営者確認書』」の改正を公表しました。
平成24年6月11日 日本会計士協会は「ITを利用した情報システムに関する重要な虚偽表示リスクの識別と評価及び評価したリスクに対応する監査人の手続についてに関するQ&A」を公表し、これまで有効だったIT委員会研究報告第31号と同第32号を廃止しました。
平成24年6月7日 日本会計士協会は「外国事業体課税に関する最近の論点整理と今後の方向性」を公表しました。
平成24年6月7日 日本会計士協会は「恒久的施設及び帰属主義への移行に関する論点整理」を公表しました。

トピック解説

 

 

企業グループとしての温室効果ガス算定・報告システムの構築

1.はじめに

日本公認会計士協会は4月10日、研究報告として「企業グループとしての温室効果ガス算定・報告システムの構築」を発表しました。この研究報告では、「温室効果ガス排出量算定・報告マニュアルVer.3.2)」(平成23年4月環境省、経済産業省、以下算定・報告マニュアルという)をベースに、算定、報告システムの概要及び留意点について解説しています。

2.温室効果ガス算定・報告システム構築の必要性

温室効果ガス(Greenhouse Gas、以下GHG)の排出量は、アジアを中心とする発展途上国の急激な経済発展とともに、世界的に大きく増加しています。

日本国内では、「エネルギーの使用の合理化に関する法律」及び「地球温暖化対策の推進に関する法律」に基づく排出量の報告範囲の拡大、管理統括社の選任義務付けなどが定められました。また、気候変動開示基準委員会にみられる財務報告等における気候変動情報の開示を促す活動が加速している上、調査期間などが提供する企業情報やインデックス等に排出量情報が利用されるようになってきています。

研究報告では、カーボンマネジメント(GHG排出量を、経済的影響を含めて全体的かつ戦略的に評価・管理し経営に役立てる活動)は企業の存続発展のための必要条件となるとしています。

3.GHG算定・報告システムの基本的要素と構築方法

研究報告では、GHG算定・報告システムの構築にあたり、内部統制報告制度の6つの基本的要素について、全社的レベル及び業務プロセスそれぞれの事項の確認と不備の改善が求められるとしています。

また、構築プロセスについては、経営者及び体制構築責任者の指示の下、以下の4点について全社的なレベル及び業務プロセスのレベルそれぞれにおいて構築するとされています。

  • 事前の現状調査
  • 基本的計画及び方針の決定
  • 方針に基づくルールの整備
  • 整備ルールの確認

4.GHG排出量の算定方法の全体像

GHG排出量は、一般的にエネルギー使用量に排出係数を乗じて算定しますが、使用するエネルギーの種類により、算定式は異なります。

[1]エネルギー起源CO2の算定方法

(1)都市ガスの使用に伴うCO2排出量

都市ガスに関しては、一般に貯蔵タンクを持たないことから、購入量と使用料は一致します。このため、実務上は都市ガス会社から報告される都市ガス購入量に基づいて使用料を認識することが一般的です。

(2)都市ガス以外の燃料の使用に伴うCO2排出量

都市ガスや電気の場合とは異なり、液体燃料や固形燃料に関しては「在庫」が存在することから、購入量と使用料は必ずしも一致しません。流量計等での実測値から使用料を計算する方法も考えられますが、一般的に内部管理のための計量器は必ずしも計量法に基づく精度管理が要供されていないため、これが要求されている計量器で測定される購入量をベースに計算し、在庫分を考慮する方法が信頼性が高いと考えられます。

(3)他人から供給された電気の使用に伴うCO2排出量

他人から供給された電気の使用量も、通常は一般電気事業社からの検針の内容や請求電力量に基づいて認識されるため、信頼性は高いと考えられます。また、CO2排出量の算定は、国の算定・報告・公表制度では、電気事業者から電気の供給を受けている場合、国から毎年公表される「算定対象年度の前年度の値」を用いるとされています。

[2]非エネルギー起源CO2とCO2以外のGHGの算定方法

(1)活動量ベースの算定式

非エネルギー起源のCO2と、CO2以外のGHG(CH4,N2O,SF6,HFCs,PFCsを指すことが一般的、以下5ガス)についても、基本的には活動量と排出係数を乗じて排出量を算定した上で、活動別に積算します。算定・報告マニュアルでは、GHGごとの排出量の値などが記載されています。

(2)実測ベースの算定式

排出係数が一律に定められていると、効率の良い事業活動を行っている企業のGHG排出量が過大に算定されてしまいます。そこで、実測等による算定が選択できる場合が多く、算定・報告マニュアルでも、算定方法の例示がなされています。

5.GHG算定・報告プロセスにおける誤り例と原因

[1]誤り例

(1)境界(バウンダリ)の設定

境界(バウンダリ)は、「組織境界」と「活動境界」に大別されます。「組織境界」は会社あるいはサイトの単位でその排出量を算定・報告対象に含めるかどうかの境界であり、「活動境界」は特定の排出活動(例えば、燃料の使用、廃棄物の焼却、セメントの製造、VOC回収焼却など)に起因する排出量を算定・報告対象に含めるかどうかの境界をいいます。
境界の設定では、ルールに対する認識不足や運用の不徹底等により、境界がルール通りに設定されず、本来は境界内に含められるべき組織や活動が漏れること、又は境界外として取り扱われるべき組織や活動が含まれる可能性があります。

(2)排出源・監視点の特定

設定した組織境界内の算定・報告対象となる活動の特定に続いて、排出量を直接測定する排出源や活動量の監視点を特定します。この排出源や監視点の漏れが誤りにつながる可能性があります。

(3)算定

算定においては、排出量や活動量の網羅性が重要となります。また、網羅的であっても、明確な測定ルールに準拠していない方法で測定された活動量は誤りとして扱われます。さらに、人為的ミスにより誤った数値がスプレッドシートやITシステムに反映される可能性もあります。

また、活動量に係数を乗じて排出量を算定するときに、係数を乗じる前に測定した活動量の換算が必要な場合があります。例えば、都市ガスの燃焼によるCO2排出量を求める際に適用される係数は、標準状態(0℃、一気圧)を前提としているため、ガス購入量は都市ガスの供給圧力と測定時温度を基準として標準状態への換算が必要となります。

(4)集計・報告

集計の式に誤りがあり、集計値が過大あるいは過小に算定される可能性があります、また、報告先によって複数の排出量を管理している場合、報告先を誤認して、Aという制度における算定報告書において、Bという制度に基づいて算定・集計した排出量を記載する誤りも生じえます。

[2]誤りの原因
誤りの事象は様々であるものの、共通する原因は以下の3つに集約されると考えられます。

(1)適切なルールの欠如

可能な限り明確かつ具体的で適切なルールの策定と定期的な見直しは、企業グループ内で統一された排出量の算定・報告を行うための大前提となります。また、自主ルールは科学的知見や一般的な慣行に照らして適切であるべきです。

(2)ルール認識不足や運用の不徹底

ルールの誤認識や理解不足、改定を認識しない過去のルールに基づく運用の継続は、特に担当者が幅広い職務を分掌している場合に生じやすくなります。新ルールの作成や既存ルールの大幅改定に際しては、一方的な通知だけでなく、担当者会議の場を活用して説明すべきと考えられます。 また、ルールの適切な運用は、直接の算定担当者以外の者のレビュー及び承認体制の構築で確保されます。

(3)事務処理ミス

一連の事務プロセスにおいて、人間の作業や判断が介在する業務では事務処理ミスが生じる可能性があります。ITシステムを利用して人間の作業や判断が介在するポイントを最小限にする、事務処理ミスを速やかに発見する事務処理体制の構築は有効な対策となると考えられます。

6.GHG算定・報告システムの整備のポイント

[1]全社的なレベル

全社的なレベルにおいては、内部統制報告制度における全社的なレベルの内部統制に準じて、経営者の主導の下、制度、体制を整備し、責任の所在を明確にすることが重要です。


[2]業務プロセスのレベル

以下のコントロールの手順や作業をルール化することが重要と考えられます。

  • ルールの見直しと伝達
  • 個別ルールの整備と本社への報告・承認
  • サイトへの監査の実施
  • 著増減分析の実施
  • 担当者に対する教育
  • レビューと承認
  • ITシステムの整備・運用

6.おわりに

GHG排出量の適切な把握・開示は企業経営における迅速な意思決定及び利害関係者の信頼性の確保のため、今後重要となると考えられます。現時点でカーボンマネジメントを十分に経営に取り入れている企業は多くないと考えられますが、その具体的な方法は、内部統制報告制度や財務諸表作成・開示制度の一環として行っている企業活動と大きく異なるものではなく、一部を準用することも可能と考えられます。全く新しい概念を一から取り入れる、と構えすぎずに、現在行っている業務の見直しから準備を行っていくことがGHG算定・報告システム構築の近道かと考えられます。

 
執筆者:本田
 

 

「比較情報の取扱いに関する研究報告(中間報告)」の公表について

1.はじめに

日本公認会計士協会(会計制度委員会)から、平成24年5月15日付で会計制度委員会研究報告第14号「比較情報の取扱いに関する研究報告(中間報告)」が公表されました。平成24年3月期で既に適用されている、企業会基準第24号「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」、企業会計基準適用指針第24号「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準の適用指針」、及び新たに平成24年3月期に係る有価証券報告書から適用になる「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」等において比較情報の作成が規定されており、本研究報告はその実務上の取扱いを示したものです。

以下、本研究報告について解説していきます。

2.概要

本研究報告はQ1からQ10までのQ&A形式により構成されており、Q1で比較情報に関する基本的な考え方が示され、Q2からQ10において具体的な実務上の取扱いが示されております。

3.内容

[1]比較情報に関する基本的な考え方

比較情報は、当期の財務諸表の一部を構成するものと理解され、当期の財務諸表についての財務諸表利用者の理解と意思決定に資するよう、期間比較のために前期の数値を必要な限りで修正・記載したものであると考えられます。そのため、比較情報の開示に関する基本的な考え方は、当期に係る財務諸表の開示が基礎になると考えられますが、比較情報の開示の要否については、財務諸表利用者の判断等に資するかどうか慎重に判断する必要があると考えられます。


[2]連結財務諸表への移行に伴う比較情報の開示

前期まで個別財務諸表のみを開示していた会社が、当期より連結財務諸表も開示する場合、当期の連結財務諸表に対応する比較情報は存在しないため、比較情報の開示を要しないとされています。この点は四半期についても同様です。


[3]初めて連結財務諸表を作成する場合の会計方針の変更

連結財務諸表を初めて作成する場合、比較対象となる前期に係る連結財務諸表が作成されていないため、連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項の変更(会計方針の変更)の記載は必要ありません。ただし親会社において会計方針の変更が行われた場合は、当該会計方針の変更に関する注記が連結財務諸表上必要になります。この点は四半期についても同様です。


[4]非連結子会社から連結子会社になった場合の比較情報の開示

連結範囲の変更は会計方針の変更に該当しないため、非連結子会社の重要性が高まったことにより新たに連結する場合でも、比較情報たる前期の連結財務諸表は修正されません。また年度の途中から重要性が高まった場合でも、非連結子会社に対する支配は期首から継続しているため、当該連結子会社の期首からの損益を連結財務諸表に取り込むことになります。この考え方は四半期でも共通です。


[5]連結子会社の事業年度の変更

連結子会社の事業年度等に関する事項の変更は会計方針の変更に当たらず、当該変更があった場合には、連結財務諸表規則ガイドラインに従って所定の事項を注記する必要があります。同様に親会社又は子会社の決算日が変更された場合も会計方針の変更に当たらず、当該変更があった場合には、その旨、変更の理由及び当該変更に伴う連結会計年度の期間を注記する必要があります。


[6]親子会社の決算日の変更に伴う会計処理及び比較情報の開示

前述したように、決算日の変更は会計方針の変更に該当しませんが、四半期報告制度や次年度以降の比較情報の有用性を鑑みれば、会計方針の変更の取扱に準じて、親会社の第1四半期決算から決算日を統一することが適当と考えられます。

また年度末においてやむを得ず決算日を統一する場合も考えられますが、その場合は当該統一の理由を記載したうえで、下記イ.の方法のみが採用できることになります。


(1)決算日変更の具体的なケース

1)子会社の決算日の変更

子会社が親会社の決算日と統一するため、例えば決算日を従来の12月から親会社と同じ3月に変更した場合、子会社の事業年度が15か月(×1年1月〜×2年3月)になり、3か月分(×1年1月〜×1年3月)の損益が連結財務諸表に取り込まれることになります。この場合、当該損益は以下の方法で処理されます。

ア.利益剰余金で調整する方法
この場合、第1四半期の連結株主資本等変動計算書上の利益剰余金の増減において、「決算期の変更に伴う子会社剰余金の増減高」等の科目として表示することになります。
イ.損益計算書を通して調整する方法
この場合、第1四半期の四半期連結財務諸表上、当該損益が反映されることになります。

2)親会社の決算日の変更

親会社が子会社の決算日と統一するため、例えば決算日を従来の3月から子会社と同じ12月に変更した場合、親会社の事業年度9か月(×1年4月〜×2年12月)に対して子会社の事業年度が12か月となり、子会社の3か月分(×1年1月〜×1年3月)の損益が連結財務諸表に取り込まれることになります。この場合は上記1)と同様の考え方で処理されることになります。

上記の変更があった場合には、決算日が異なる旨及びその内容、また重要性が乏しい場合を除いて実施した会計処理等の概要を注記する必要があります。


[7]会計方針の変更と表示方法の変更の区別

会計方針の変更と表示方法の変更の区別は、資産及び負債並びに損益の認識又は測定についての変更があるかどうかによって判定され、変更があれば会計方針の変更、なければ表示方法の変更になるとされています。


[8]比較情報の開示の要否

特別損益項目において、前期は別掲表示していた科目を当期は重要性が乏しくなったためその他に含めている場合、表示方法の変更に該当するため、過去の財務諸表の組替として別掲されていた当該科目を「その他」に組替え、表示方法の変更の注記を行うことになります。

次に前期は独立表示していた特別損益項目が当期は発生しなかった場合、過去の財務諸表の組替は行わず、当期は「-」と表示することが適当です。

また前期は別掲表示していた特別損益項目を当期は重要性が乏しくなったため営業外損益に含めた場合には、表示方法の変更にはあたらず、過去の財務諸表の組替を行う必要はないとされています。


[9]注記に関する表示方法の変更

例えば販売費及び一般管理費について注記で内訳を開示している場合で、前期までその他としていた科目が当期において重要性が高まったことにより別掲する場合も、表示方法の変更に該当すると考えられるため、過去の注記を組替え、重要性が乏しい場合を除いて表示方法の変更に関する注記を行うとされています。


[10]注記に関する比較情報
(1)後発事象に関する注記

前期の開示後発事象として開示された事象は、当期の財務諸表に反映されているのが通常であり、また比較情報は当期の財務諸表の開示が基礎となるものであるため、前期の後発事象に関する注記を当期に比較情報として開示する必要は乏しいと考えられますが、前期の開示を公正・補正、又は経緯そのものを示すようなものについては、その性質に応じて後発事象、追加情報、偶発債務等として引き続き開示する必要があるとされています。

(2)ストックオプションに関する注記

ストックオプションに関する注記のうち、当期に費用計上額及び科目名が開示される場合、比較情報として前期の費用計上額及び科目名が開示されますが、当期に費用計上額及び科目名の開示を行わない場合、前期の費用計上額及び科目名の開示の要否については、財務諸表利用者の判断等に資するかどうかを考慮して慎重に判断する必要があります。

(3)企業結合等が行われた場合の注記

前期に行われた企業結合等については、非経常的な特定の取引という性質から、基本的に比較情報として当期に開示する必要はないと考えられていますが、ストックオプションと同様に、財務諸表利用者の判断等に資するかどうかを考慮して慎重に判断するべきであると考えられています。

4.最後に

上記の通り、比較情報の取扱いについて考え方と具体的な取扱いが示されました。3月決算の会社であれば当期の第1四半期以降の会計実務上及び監査実務上、当研究報告を適宜参照して表示の検討等を行うことが望ましいと考えられます。

 
執筆者:鳥山昌悟
 

 

「退職給付に関する会計基準」及び「退職給付に関する会計基準の適用指針」の公表について

1.はじめに

企業会計基準委員会は5月17日、「退職給付に関する会計基準」及び「退職給付に関する会計基準の適用指針」(以下、本会計基準等)を公表しました。この発表により、「退職給付に係る会計基準・同注解」や、一部改正など、一連の会計基準、適用指針(以下、改正前会計基準等)は改正されます。

主な改正点は、@未認識数理計算上の差異及び未認識過去勤務費用の処理方法、A退職給付債務及び勤務費用の計算方法及びB開示の拡充の3点です。以下、改正点を確認します。

2.未認識数理計算上の差異及び未認識過去勤務費用の処理方法

[1]貸借対照表上での取扱い

これまで、未認識数理計算上の差異及び未認識過去勤務債務について、貸借対照表に計上せず、これに対応する部分を除いた、退職給付債務と年金資産の差額を負債として計上することとしていました。しかし、一部が除かれた積立状況を示す額を貸借対照表に計上する場合、積立超過のときに負債(退職給付引当金)が計上されたり、積立不足のときに資産(前払年金費用)が計上されたりすることがあり得るなど、退職給付制度に係る状況について財務諸表利用者の理解を妨げているのではないかという指摘がありました。

そのため、本会計基準等では、未認識数理計算上の差異及び未認識過去勤務費用を、税効果を調整の上で貸借対照表の純資産の部のその他の包括利益累計額で認識することとし、積立状況を示す額をそのまま負債又は資産として計上することとなりました。


[2]損益計算書及び包括利益計算書上での取扱い

一方、未認識数理計算上の差異及び未認識過去勤務費用の費用処理方法については変更しておらず、改正前会計基準等と同様に平均残存勤務期間以内の一定の年数で規則的に費用処理します。

このため、数理計算上の差異及び過去勤務費用の当期発生額のうち、費用処理されない部分についてはその他の包括利益に含めて計上し、その他の包括利益累計額に計上されている未認識数理計算上の差異及び未認識過去勤務費用のうち、当期に費用処理された部分についてはその他の包括利益の調整(組替調整)を行うこととなります。


[3]個別財務諸表における当面の取扱い

個別財務諸表においては、当面の間、改正前会計基準等の取扱いを継続することとされています。公開草案の段階では、個別財務諸表についても改正を適用することを提案していたが、修正されましたのでご留意ください。

3.退職給付債務及び勤務費用の計算方法

[1]退職給付見込額の期間帰属方法の見直し

改正前の会計基準等では、退職給付見込額の期間帰属方法として、期間定額基準を原則とし、一定の場合にのみ、次の方法の選択適用を認めていました。

  • 給与基準
  • 支給倍率基準
  • ポイント基準

本会計基準等では、退職給付見込額の期間帰属方法として、次の方法の選択適用を認めています。

  • 期間定額基準(退職給付見込額について全勤務期間で除した額を各期の発生額とする方法)
  • 給付算定式基準(退職給付制度の給付算定式に従って各勤務期間に帰属させた給付に基づき見積った額を、退職給付見込額の各期の発生額とする方法)

なお、給付算定式基準による場合、勤務期間の後期における給付算定式に従った給付が、初期よりも著しく高い水準となるときには、当該期間の給付が均等に生じるとみなして補正した給付算定式に従わなければならないとされています。


[2]割引率の見直し

改正前会計基準等では、割引率の基礎となる期間について、退職給付の見込支払日までの平均期間を原則とするが、実務上は従業員の平均残存勤務期間に近似した年数とすることもできるとされていました。

本会計基準等では、国際的な会計基準との整合性を図るため、割引率は、退職給付支払ごとの支払見込期間を反映するものでなければならないものとしています。例えば、退職給付の支払見込期間及び支払見込期間ごとの金額を反映した単一の加重平均割引率を使用する方法や、退職給付の支払見込期間ごとに設定された複数の割引率を使用する方法が含まれます。


[3]予想昇給率の見直し

改正前会計基準等では、退職給付見込額の見積りにおいて合理的に見込まれる退職給付の変動要因には「確実に見込まれる」昇給等が含まれるものとされていました。しかし、本会計基準等では、退職給付見込額の見積りにおいて合理的に見込まれる退職給付の変動要因には「予想される」昇給等が含まれるものとしています。

4.開示の拡充

本会計基準等では、退職給付債務や年金資産の増減の内訳など、国際的な会計基準で採用されているものを中心に開示項目を拡充しています。具体的に求められる注記事項は11項目に及び、簡便法を採用した場合の注記も別途の開示が定められています。

なお、適用初年度において、本会計基準等により求められる新たな注記事項について遡及処理は行われず、過去の期間に対する財務諸表の組換えは行わないとされています。

5.その他の改正

複数事業主制度のうち、自社の拠出に対応する年金資産の額を合理的に計算することができないケースでは、要拠出額をもって費用処理されますが、改正前会計基準等は、複数事業主間において類似した退職給付制度を有している場合について、このケースにあたらないものとみなしていました。本会計基準等では、一律にあたらないものとはみなさず、制度の内容を勘案して判断することとしています。

長期期待運用収益率の設定の際に考慮すべき事項は、改正前会計基準等における取扱いを引き継いでいますが、長期期待運用収益率の算定は、退職給付の支払に充てられるまでの期間等を考慮して設定することを明らかにしています。なお、これは従来の考え方を改めるものではなく、取扱いの明確化にすぎないため、会計方針の変更には該当しないとされています。

6.名称等の変更

退職給付引当金を「退職給付に係る負債」、前払年金費用を「退職給付に係る資産」、過去勤務債務を「過去勤務費用」、そして期待運用収益を「長期期待運用収益率」とすることとしました。

なお、個別財務諸表においては、当面の間、この取扱いの改正を適用せず、改正前会計基準等の名称を使用することとされていますので、ご留意ください。

7.おわりに

今回の改正は、国際会計基準へのコンバージェンスを主眼に据えた2ステップの改正のうち、第一段階として、公開草案発表時の2010年に国際会計基準委員会の方針が固まっていた部分を検討、改正したものです。草案公開後の2011年6月には国際会計基準委員会から新たな改正が発表されており、この改正等を織り込んださらなる検討が第二段階としてなされると考えられます。なお、草案時には、ステップ2として、数理計算上の差異の会計処理、重要性基準と回廊アプローチ、過去勤務債務の会計処理についての検討が示されています。

今回の改正に適時に対応するとともに、退職給付のデータを整理しておくことが有用と考えられます。

 
【参考文献】
旬刊経理情報No.1317,「退職給付に関する会計基準」等の解説,前田啓,2012.6.20号
 
執筆者:本田
 

連載記事

 
 

IFRS(国際財務報告基準)第20回 IAS第36号「資産の減損」

1.はじめに

今回は、IAS第36号「資産の減損」(以下、IAS第36号)について紹介します。

2.目的・適用範囲

IAS第36号の目的は、企業が資産に回収可能価額を超える帳簿価額を付さないことを保証するための手続を定めることにあります。IAS第36号は、棚卸資産や繰延税金資産、IFRS第9号「金融商品」の範囲内の金融資産などを除いたすべての資産の減損の会計処理に適用しなければなりません。

3.減損の兆候の識別

企業は、各報告期間の末日現在で、資産が減損している可能性を示す兆候があるか否かを評価しなければなりません。減損の兆候は外部の情報源と内部の情報源に分けられ、少なくとも次の兆候を考慮しなければなりません。

【1】外部の情報源
(a)資産の市場価値の著しい低下
(b)技術、市場、経済及び法的環境の著しい変化
(c)市場金利または投資についてのその他の市場収益率の上昇
(d)企業の純資産の帳簿価額がその企業の株式の市場価値を超過している。
【2】内部の情報源
(a)資産の陳腐化または物的損害が入手できる。
(b)資産の使用状態または使用予測の著しい変化
(c)資産の経済的成果が予想より悪化、または悪化するであろうという内部報告情報
上記の検討の結果、減損の兆候が識別された場合、回収可能価額の測定を行います。

4.回収可能価額の測定

IAS第36号において回収可能価額は、資産または資金生成単位の売却費用控除後の公正価値と使用価値のいずれか高い金額と定義されています。ここで、売却費用控除後の公正価値とは、取引の知識がある自発的な当事者の間で、独立第三者間取引条件による資産の売却から得られる金額から処分金額を控除した額をいい、使用価値とは、資産または資金生成単位から生じることが期待される将来キャッシュ・フローの現在価値のことをいいます。

回収可能価額の測定は、原則として個別資産ごとに行う必要がありますが、不可能な場合には、当該資産が属する資金生成単位の回収可能価額を算定しなければなりません。資金生成単位とは、概ね独立したキャッシュ・イン・フローを生成させるものとして識別される資産グループの最小単位をいいます。

5.のれん及び全社資産

【1】のれん

企業結合により生じたのれんについては、企業結合による経済的便益が期待される資金生成単位または資金生成単位グループに配分する必要があります。

のれんが配分された資金生成単位の減損テストを行うにあたっては、まず、のれんが資金生成単位に関連するものの、合理的かつ継続的に当該単位に配分できない場合には、当該単位について減損の兆候がある場合は常にのれんを除く資金生成単位と回収可能価額とを比較して減損の有無を検討します。一方、のれんが配分された資金生成単位については、毎年、兆候がある場合にはその都度、のれんを含む当該単位の帳簿価額と回収可能価額とを比較し、当該単位の帳簿価額が回収可能価額を上回っている場合には減損損失を認識する必要があります。

【2】全社資産

全社資産とは、のれん以外の資産で、検討の対象である資金生成単位と他の資金生成単位の双方の将来キャッシュ・イン・フローに寄与する資産をいいます。例えば本社の建物や土地が該当し、他の資産または資産グループから独立したキャッシュ・イン・フローを発生させないことから、帳簿価額を資金生成単位へ十分に配分することが出来ないという特徴があります。したがって、全社資産は、処分を決定しない限り、個別に回収可能価額を決定することができません。

全社資産の帳簿価額の一部が合理的かつ継続的に配分できる場合には、配分された全社資産の帳簿価額を含む資金生成単位の帳簿価額と回収可能価額とを比較し、減損損失の有無を検討します。一方、配分が出来ない場合には、まず全社資産を除く資金生成単位の帳簿価額と回収可能価額とを比較し、次に全社資産の帳簿価額の一部が合理的かつ継続的に配分できる最小の資金生成単位グループを識別し、全社資産の帳簿価額の一部を含む当該グループの帳簿価額とその回収可能価額とを比較します。

6.減損損失の認識

測定された回収可能価額が資産または資金生成単位の帳簿価額を下回る場合には、その差額を減損損失として認識しなければなりません。

資金生成単位の減損損失を認識する場合は、まず、当該資金生成単位に配分されたのれんの帳簿価額を減額し、残額を当該単位内の各資産の帳簿価額に基づく比例配分によって配分します。ただし、各資産に減損損失を配分するに当たっては、@売却費用控除後の公正価値(算定可能な場合)、A使用価値(算定可能な場合)、Bゼロのうち最も高い金額が切り下げ後の簿価の下限となります。以上の処理を行った結果、配分できなかった減損損失が存在する場合には負債を認識します。

7.減損損失の戻入れ

企業は、各報告期間の末日現在で、過去にのれん以外の資産について認識した減損損失がもはや存在しないかまたは減少している可能性を示す兆候があるか否かを評価しなければなりません。当該事象を識別した場合で、減損損失計上当時の見積りに変更があった場合には、回収可能価額を再測定し、減損損失がなかったと仮定した場合の(償却または減価償却控除後の)帳簿価額を限度として減損損失の戻入れを行います。

 
執筆者:関和輝
 


 

国際監査基準のクラリティ版について解説(第12回)
「会計上の見積りの監査」「関連当事者」について

1.基準の概要

今回は、監査基準委員会報告書540「会計上の見積りの監査」と550「関連当事者」について解説します。

クラリティ版の国際監査基準(ISA)に対応した新しい監査基準の多くが2013年3月決算に係る監査から適用されていますが、今回はその中から2つの監査基準を紹介します。

1つは、会計上の見積り及び関連する開示について規定した「会計上の見積りの監査」、もう1つは、関連当事者との取引等に関する監査について規定した「関連当事者」です。

これらは、それぞれISA540「公正価値の会計上の見積りおよび関連する開示を含む会計上の見積りの監査」、ISA550「関連当事者」に対応しています。

2.「会計上の見積りの監査」

本基準は、監査人に、財務諸表において認識又は開示されている会計上の見積りが合理的であるかどうかについて、十分かつ適切な監査証拠を入手するよう求めています。そのために、監査人に対する要求事項が定められています。


(1) 定義

会計上の見積りとは、正確に測定することができないため金額を概算することをいい、見積りが要求される金額だけでなく、見積りの不確実性が存在する場合に公正価値によって測定される金額のことも含みます。


(2)評価した重要な虚偽表示のリスクへの対応

監査人は、財務諸表の重要な虚偽表示のリスクを評価する際に、会計上の見積りの不確実性の程度を評価します。そして、監査人は、評価した重要な虚偽表示のリスクへ対応するために、会計上の見積りの性質を考慮に入れ、以下の手続の一つ又は複数の手続を実施しなければなりません。


表1:重要な虚偽表示のリスクへの対応手続
No

監査手続

1 監査報告書日までに発生した事象が、会計上の見積りに関する監査証拠を提供するかどうかを判断する。
2 経営者が会計上の見積りを行った方法とその基礎データを検討する。この手続においては、以下の事項を評価しなければならない。
(1)使用された測定方法は、状況に応じて適切であったかどうか。
(2)経営者が使用した仮定は、適用される財務報告の枠組みにおける測定目的に照らして合理的であるかどうか。
3 適切な実証手続とともに、経営者が会計上の見積りを行った方法に関連する内部統制の運用評価手続を実施する。
4 経営者の見積額を評価するため、監査人の見積額又は許容範囲を設定する。監査人は、監査人の見積額又は許容範囲を設定するために、以下の事項を実施しなければならない。
(1)監査人が経営者とは異なる仮定又は方法を利用する場合には、監査人の見積額又は許容範囲の設定において関連する変数を考慮に入れていることを確かめ、経営者の見積額との重要な差異を評価するのに十分な程度に、経営者が使用する仮定又は方法を理解する。
(2)監査人が許容範囲を使用するのが適切であると判断した場合には、利用可能な監査証拠に基づいて、許容範囲内のすべての結果が合理的であると考えられるまで許容範囲を絞り込む。

(3) 特別な検討を必要とするリスク

財務諸表の重要な虚偽表示のリスクを評価したときに、見積りの不確実性が高いと識別された会計上の見積りがあるときは、これに特別な検討を必要とするリスクがあるかどうかを判断します。そして監査人は、特別な検討を必要とするリスクがある会計上の見積りに関して、以下の事項が、適用される財務報告の枠組みに準拠しているかどうかについて、十分かつ適切な監査証拠を入手しなければなりません。

@財務諸表において会計上の見積りを認識するかどうかに関する経営者の意思決定
A選択された会計上の見積りの測定根拠

3.「関連当事者」

本基準は、関連当事者との関係及び関連当事者との取引に関して、財務諸表監査における実務上の指針を提供しています。監査人は、企業が、財務報告の枠組みにおいて要求される事項に準拠して、関連当事者との関係、取引又は残高を適切に処理又は開示しないことから生じる重要な虚偽表示のリスクを識別し評価するとともに、評価したリスクに対応するための監査手続を実施する責任があります。


(1) 定義

関連当事者とは、以下のいずれかに該当する当事者をいいます。

@適用される財務報告の枠組みにおいて定義される関連当事者
A適用される財務報告の枠組みに関連当事者についての事項が定められていない場合、又は最小限の事項しか定められていない場合には、以下のいずれかに該当する者等
  • 個人又は他の企業が、直接又は間接に、財務諸表作成会社を支配しているか又は重要な影響を及ぼしている場合の当該個人又は他の企業
  • 財務諸表作成会社が、直接又は間接に、支配しているか又は重要な影響を及ぼしている他の企業

(2) 評価した重要な虚偽表示のリスクへの対応

監査人は、関連当事者との関係及び関連当事者との取引に伴う重要な虚偽表示のリスクについて十分かつ適切な監査証拠を入手するため、以下のリスク対応手続を立案し実施しなければなりません。そして、財務諸表が関連当事者との関係及び関連当事者との取引によって影響を受ける場合、監査人は入手した監査証拠に基づいて、財務諸表に関連当事者に関する適正な表示が行われているかなどを判断します。


表2:重要な虚偽表示のリスクへの対応手続
No

監査手続

1 経営者が従来識別していない又は監査人に開示していない関連当事者との関係又は関連当事者との重要な取引の識別
2 企業の通常の取引過程から外れた関連当事者との重要な取引の識別
3 関連当事者との取引が独立第三者間取引と同等の取引条件で実行された旨が財務諸表に記載されている場合は、その内容の確認
4 識別した関連当事者との関係及び関連当事者との取引の処理及び開示の評価
5 経営者確認書の入手
6 監査役等とのコミュニケーション
7 監査調書への記載

4.最後に

今回の監査基準の改訂により、従来の基準の内容から現行の国際監査基準の内容に一層近づくこととなりました。例えば、現行の国際監査基準の内容に合わせて、「関連当事者」に監査役等とのコミュニケーションや監査調書に関する規定が盛り込まれることになりました。既に実務では対応済みではありますが、監査基準の変更箇所には慎重に対応していくことが求められます。

 
参考文献

2010、内藤文雄・松本祥尚・林隆敏編著、「国際監査基準の完全解説」、中央経済社

 
執筆者:吉田隆伸
 


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  明誠ニュースレター vol.21
2012年7月10日発行
発行責任者:武田剛 プロダクトマネジャー:村田博明
制作:株式会社ゼラス 佐々木景子
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