明誠グループニュースレター

情報フラッシュ [ 連載記事 ]
IFRS(国際財務報告基準)第21回IAS第37号「引当金、偶発負債及び偶発資産」
国際監査基準のクラリティ版について解説(第13回)「継続企業」「経営者確認書」について
[ トピック解説 ]
年金資産の運用に関連する会計監査業務等の状況
IT委員会研究報告第42号の公表について

情報フラッシュ

 
発表日時 表題
平成24年7月30日 東京証券取引所は「四半期決算短信の様式・記載要領」を公表しました。
平成24年7月24日 日本公認会計士協会は「新起草方針に基づく監査基準委員会報告書等の概要」を公表しました。
平成24年7月23日 日本公認会計士協会はIT委員会報告第4号「公認会計士業務における情報セキュリティの指針」及びIT委員会研究報告第34号「IT委員会報告第4号「公認会計士業務における情報セキュリティの指針」Q&A」の改正(公開草案)を公表しました。
平成24年7月2日 金融庁は「国際会計基準(IFRS)への対応のあり方についてのこれまでの議論(中間的論点整理)」を公表しました。

トピック解説

 

 

年金資産の運用に関連する会計監査業務等の状況

1.はじめに

今年に入りAIJ投資顧問により運用されていた年金資産の大半が消失していることが発覚し、社会的な問題となりました。公認会計士協会は、当該事件を受けて平成24年5月25日に業種別委員会研究報告第9号「年金資産の運用に関連する会計監査業務等の状況に係る研究報告」(以下、研究報告)を公表しています。この研究報告では年金資産の運用の概要や、当該運用に対して既に行われている公認会計士又は監査法人による監査又は内部統制の検証業務について解説しています。

2.年金資産の運用の概要

厚生年金基金及び企業年金基金(以下「年金基金」という。)の年金資産は、厚生年金保険法及び確定給付企業年金法の規定により[1]信託銀行[2]生命保険会社[3]投資顧問会社[4]自家運用による金融機関等との契約により運用されます。

上記の各運用方法の契約形態、運用形態、運用商品を表にまとめると以下のようになります。

年金資産の委託先 契約形態 運用形態 運用商品
[1]信託銀行 年金信託契約   合同運用口(株式、国債、社債、外貨建資産・・・)
年金特定金銭信託契約   株式、債券、投資信託、海外籍ファンドなど
[2]生命保険会社 団体年金保険 一般勘定 厚生年金基金保険、確定給付企業年金保険など
特別勘定(第一特約:合同運用)
特別勘定(第二特約:個別運用)
[3]投資顧問会社 投資一任契約 年金特定金銭信託契約により信託銀行に口座を設ける 株式、債券、投資信託、海外籍ファンドなど
[4]自家運用 年金基金が直接投資 株式、債券、投資信託など

3.企業年金に関する会計監査等の実施状況

(1) 年金基金(厚生年金基金及び確定給付企業年金(基金型))に対する会計監査制度の構築

厚生年金基金及び確定給付企業年金(基金型)は、厚生年金保険法や確定給付企業年金法等により決算報告等に監事の意見をつけて、代議員会の議決を得た後、厚生労働大臣に提出しなければならないとされている等、年金基金について一定のガバナンスの仕組みが存在します。一方で公認会計士等による会計監査制度は利用されていません。


(2) 年金基金の運用商品に対する会計監査制度の状況

年金資産の運用に当たっては運用の基本方針を策定して分散投資することが求められています。また、確定給付企業年金(規約型)においても事業主には管理運用業務について忠実義務、資産の運用に当たっては分散投資義務があります。年金基金の運用商品に対する会計監査制度の状況についてまとめると以下のようになります。

[1]信託銀行
信託銀行の会計監査の対象は銀行勘定のみとされており、年金信託契約の合同運用信託は会計監査の対象とはなっていません。ただし一部の合同運用口について任意の監査を実施している場合もあります。
[2]生命保険会社
生命保険会社の商品については、一般勘定は生命保険会社が運用リスクを負っており、生命保険会社自体の会計監査の対象に含まれます。また、生命保険会社の保険契約における第一特約や第二特約は企業年金基金側が運用リスクを負うことになりますが、生命保険会社の財務諸表には特別勘定も含まれていることから、これも会計監査の対象に含まれていると考えられます。
[3],[4]投資顧問会社、自家運用
投資一任契約や自家運用において投資信託で運用する場合、公募投信は金融商品取引法による会計監査が義務付けられていますが、私募投信については法定監査の義務付けはなく、海外籍ファンドやその他の形態のファンドにおいても、国内外の法律等による監査の義務付けがないものもあります。

研究報告では今後会計監査の活用が考えられる年金資産の運用商品として、信託銀行の年金信託契約の合同運用口や投資一任契約や自家運用における私募投資信託を挙げています。


(3)投資顧問会社に対する会計監査

投資顧問業を営む金融商品取引業者が、金融商品取引法・会社法等の法定監査の対象でない場合には、必ずしも会計監査は行われているわけではありません。また、会計監査を実施しているとしても、投資顧問会社自体は年金資産を直接預かるものではないため、投資顧問会社の会計監査は投資顧問会社の財務諸表に対する独立監査人としての意見表明であり、企業年金資産に関連する財務諸表に対する意見表明ではないため、企業年金の運用資産に対する会計監査という観点では直接的ではありません。

しかしながら、資産運用を委託している投資顧問会社の監査証明が付された財務諸表を閲覧することが可能となれば年金基金にとっては当該投資顧問会社の事業報告書に記載される業務の概況を把握することができ、年金資産の運用方針の決定等の一助になるかもしれないと研究報告では指摘しています。


4.会計監査以外の保証業務の状況

年金基金の決算報告(財務諸表)についての会計監査は制度化されていません。会計監査以外に年金基金の年金資産の状況に信頼性を確保させるための方法としては以下のような方法が挙げられます。


(1)グローバル投資パフォーマンス基準準拠

年金資産等の資産運用を受託する運用会社は、自らの投資運用の成果(パフォーマンス)を公表しています。この投資パフォーマンス実績の公正な表示と完全な開示(fair representation and full disclosure)を確保するために、「グローバル投資パフォーマンス基準(Global Investment Performance Standards、以下「GIPS基準」という。)」が定められています。GIPS基準は世界共通の基準であり、各国で広く受け入れられており、これにより投資家は国や地域を問わず資産運用会社間のパフォーマンスを容易に比較することができるようになりました。

資産運用会社がGIPS基準に準拠していることを表明することに加え独立した第三者による検証を受けることにより、投資家は、資産運用会社の投資パフォーマンスが完全かつ公正に提示されていると確信することができ、提示されたパフォーマンス情報により高い信頼性を持つことができると期待されます。

公認会計士協会では、公認会計士等がGIPS基準に基づいて同基準に規定された「検証」を行うための実務指針を公表しており(業種別委員会実務指針第36号「グローバル投資パフォーマンス基準準拠の検証に関する実務指針」)、公認会計士協会の会員が検証報告書を発行しています。ただし、検証は、
a.(資産運用)会社がコンポジット構築に関するGIPS基準の必須事項のすべてに会社全体として準拠しているかどうか
b.(資産運用)会社の方針と手続が、GIPS基準に準拠してパフォーマンスを計算し、提示するよう設計されているかどうか
について意見を述べるものであり、個々の投資パフォーマンス自体に保証を与えるものではないことに留意が必要です。

研究報告では、年金基金の理事等は、年金資産の運用を投資顧問会社に投資一任する際に当該会社がGIPS基準への準拠表明を行っているかどうか、さらに第三者の検証を受けているかどうかを受けているかどうかを受託者管理の一つの指針にすることも考えられるとしています。


(2)受託業務に係る内部統制の保証報告書

公認会計士協会では、業務を外部に委託している企業(委託会社)の財務諸表の作成又は財務報告に係る内部統制の評価及びそれらの監査に利用するため、委託会社に業務を提供する会社(受託会社)の内部統制に関して、公認会計士等が委託会社とその監査人が利用するための報告書を提供する保証業務に関する実務上の指針(監査・保証実務委員会実務指針第86号「受託業務に係る内部統制の保証報告書」)を提供しています。研究報告では、年金基金の理事等は、年金資産の運用を信託銀行や生命保険会社に委託する場合、又は投資顧問会社に投資一任する場合には、当該受託会社が、年金資産の運用・管理に係る業務(受託業務)について、実務指針第86号等に基づく公認会計士等による保証報告書を含む、受託業務に関する報告書を作成しているかどうか確認することを受託者管理の一つの指針として挙げています。(ただし、当該報告書を利用する場合には、利用の目的、範囲などを十分に理解している想定利用者により利用されなければならないこと、及び、一般的に、保証業務の実施過程において受託会社監査人が不正を発見することがあるが、当該保証業務は不正の発見を保証するものではないことに留意する必要がある。)

 

参考文献

・業種別委員会研究報告9号 年金資産の運用に関連する会計監査業務等の状況に係る研究報告
 
執筆者:石川裕也
 

 

IT委員会研究報告第42号の公表について

1.はじめに

日本公認会計士協会は、すでに公表されているIT委員会実務指針第6号「ITを利用した情報システムに関する重要な虚偽表示リスクの識別と評価及び評価したリスクに対応する監査人の手続について」(以下IT6号)に対するQ&Aとして、IT委員会研究報告第42号を公表しました。IT6号は、クラリティ版として改定された新監査基準に対応するため、IT委員会報告第3号(以下IT3号)に代わるものとして公表されたものです。IT委員会研究報告第31号及び同第32号(以下旧Q&A)はIT3号に対するQ&Aであったことから廃止され、新たなQ&AとしてIT委員会研究報告第42号(以下新Q&A)が公表されました。

今回の新Q&Aの公表にはこのような背景があることから、本記事では旧Q&Aとの差異に着目しながら新Q&Aについてご紹介いたします。

2.主な変更点の概要

新Q番号 旧Q番号 相違点
Q2 Q5 ITに対するリスク評価手続きが省略できる条件として、旧Q&Aでは「ITの利用が限定的かつ一定の条件を満たす場合」とされていましたが、新Q&Aでは、「ITの利用に伴う重要な虚偽表示に関する潜在的なリスクが十分に低い場合」とされています。
Q4 Q17 翌期以降に利用される情報システムについても評価を行い、重要な影響を与える可能性のある不備については、是正を求めることが重要であることが、新Q&Aでは追記されています。
Q11 Q18 パッケージソフトウェアに対し、ベンダーがリモートアクセスできる環境である場合、ベンダーのアクセス状況についての統制を評価することが、例として新Q&Aでは追記されています。
Q13 Q8

業務処理統制を評価する上で、システムの機能や手順を完全に再現しなくても、入力に対し期待通りの出力がなされることを確認することで検証ができる場合があることが、新Q&Aでは追記されています。

また、業務処理統制として、自動化された業務処理統制のほかに、ITから自動生成される情報についても検証することが、例として新Q&Aでは追記されています。
付録1 IT委員会研究報告第32号 IT概要把握シートが廃止され、IT判定チェックリストが改定されています。

3.変更内容の詳細

[1]ITに対するリスク評価手続きが省略できる条件

新Q&AのQ2では、ITに対するリスク評価手続きが省略できる条件についての変更がありました。旧Q&Aで述べられていた「ITの利用が限定的かつ一定の条件を満たす場合」とは、具体的にはIT3号において、

(1)企業におけるITの利用が限定的であり
(2)安定度が高く
(3)情報システムに前年度との間で重要な変更がない場合
という条件がすべて成立する場合とされていました。しかし新Q&Aで述べられている「ITの利用に伴う重要な虚偽表示に関する潜在的なリスクが十分に低い場合」に該当するかは、IT6号5項によりますと、
(1)ITの利用度
(2)情報システムの安定度
(3)情報システムの前年度との重要な変更
(4)過年度の監査におけるITに関連する内部統制の不備
を総合的に判断して判定すればよいこととなっています。

[2]翌期以降に利用される情報システムについての評価

IT6号では触れられていませんが、新Q&Aでは翌期以降に利用される情報システムについての評価の重要性について述べられています。本番化前の情報システムは当期の財務諸表に影響を与えることはありません。しかし、これに監査を行い重要な不備を指摘することは、翌期以降の財務諸表へのリスクを低減させることにつながります。


[3]ITから自動生成される情報

新Q&AのQ13では、業務処理統制の例として自動計算等が新しく例示されました。これはIT委員会研究報告第35号での「自動化された会計処理」に該当します。IT3号では自動計算等の扱いについて明示されていませんでしたが、IT6号では31および33項において、「利息、減価償却、外貨換算等の自動計算」「計算、分類、見積、その他、会計処理を手作業に代わりアプリケーションが行う手続」として例示されています。


[4]IT委員会研究報告第32号の廃止

IT委員会研究報告第32号は、リスク評価手続の一部省略の可否を判断するツールとしての「IT判定チェックリスト」と、そのチェックリスト作成を効率的に行うための前段階のツールとしての「IT概要把握シート」の2つを提供するものでした。「IT判定チェックリスト」は改定されて新Q&Aの付録1として公開されています。また「IT概要把握シート」につきましては、監査基準委員会研究報告第1号の様式3-12として、書式は異なりますが同様の目的を果たす様式が公開されています。

4.最後に

新Q&AはIT6号をもとに作成されています。したがって新Q&Aの内容を理解するには、新Q&A だけでなく、旧Q&Aとの比較や、IT3号からIT 6号への変更点を把握することが重要です。

 
執筆者:月見典史
 

連載記事

 
 

IFRS(国際財務報告基準)第21回 IAS第37号「引当金、偶発負債及び偶発資産」

1.はじめに

今回は、IAS第37号「引当金、偶発負債及び偶発資産」(以下、IAS第37号という。)について紹介します。

2.引当金

【1】認識
引当金とは、時期または金額が不確実な債務をいい、次の条件のすべてを満たす場合に認識しなければなりません。

(a)企業が過去の事象の結果として現在の債務(法的又は推定的)を有しており、
(b)当該債務を決済するために経済的便益をもつ資源の流出が必要となる可能性が高く、
(c)当該債務の金額について信頼性のある見積もりが出来る場合。
【2】測定

引当金として認識される金額は、報告期間の末日における現在の債務を決済するために要する支出の最善の見積りでなければなりません。 この最善の見積りを行う過程においては、事象と状況に関連するリスクと不確実性を考慮しなければならず、貨幣の時間的価値の影響に重要性がある場合には、引当金額は債務の決済に必要と見込まれる支出の現在価値としなければなりません。

また、引当金を決済するのに必要な支出の一部又は全部を他人から補填されると予想される場合には、補填を受けられることがほぼ確実なときにのみ、別個の資産として認識しなければなりません。

3.偶発負債

偶発負債とは、過去の事象から発生しうる債務のうち、不確実な事象の発生又は不発生によってのみその存在が確認される債務、及び、過去の事象から発生した現在の債務であるが、経済的便益をもつ資源の流出が必要となる可能性が高くないか、債務の金額が十分な信頼性を持って測定できないものをいいます。

企業は偶発債務を認識してはならず、経済的便益を持つ資源の流出の可能性がほとんどない場合を除き、5.開示に記載する事項を開示しなければなりません。

4.偶発資産

偶発資産とは、過去の事象から発生しうる資産のうち、不確実な事象の発生又は不発生によってのみその存在が確認されるものをいいます。

企業は偶発資産を認識してはならず、経済的便益の流入の可能性が高い場合に、5.開示に記載する事項を開示しなければなりません。

5.開示

企業は、引当金、偶発負債及び偶発資産について、次の事項を開示しなければなりません。

【1】引当金
(a)期首と期末における引当金の計上金額
(b)既存の引当金の増加も含む、期中の引当金増加額
(c)期中に使用された金額
(d)期中に未使用で取り崩された金額
(e)現在価値で計上されている引当金について、時間の経過によって発生した期中増加額及び割引率の変更による影響額
(f)債務の内容についての簡潔な説明及び経済的便益の流出が予測される次期
(g)流出の金額及び時期に関する不確実性の内容
(h)予想されている補填の金額、予想されている補填について認識されている資産の金額
【2】偶発負債
(a)報告期間の末日における偶発負債の種類ごとに、内容についての簡潔な説明実行可能な場合には、
(b)偶発負債の財務上の影響の見積額
(c)流入の金額又は時期に関する不確実性の内容
(d)補填の可能性
【3】偶発資産
(a)報告期間の末日における偶発資産の簡潔な内容
(b)実行可能な場合には、偶発資産の財務上の影響の見積額
 
執筆者:関和輝
 


 

国際監査基準のクラリティ版について解説(第13回)
「継続企業」「経営者確認書」について

1.基準の概要

今回は、監査基準委員会報告書570「継続企業」と580「経営者確認書」について解説します。いずれも、2013年3月決算に係る監査から適用されている基準です。これらは、それぞれ国際監査基準(ISA)570「継続企業」、ISA580「書面による陳述」に対応しています。

2.「継続企業」

継続企業の前提は財務諸表の作成における基本的な原則であり、経営者は、財務諸表の作成において継続企業の前提を評価することが求められます。また、監査人は、経営者が継続企業を前提として財務諸表を作成することの適切性について十分かつ適切な監査証拠を入手し、継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められるか否かを結論付ける責任があります。


(1) 経営者の評価の検討

監査人は、企業及び企業環境の理解を通じたリスク評価手続を実施する際、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在するか否かについて考慮します。また、監査人は、継続企業の前提に関して経営者が行った評価を検討しなければなりません。その結果、監査人が継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況を識別した場合には、追加的な監査手続を実施し、重要な不確実性が認められるかどうか判断するための十分かつ適切な監査証拠を入手しなければなりません。これらの追加的な監査手続には、当該事象又は状況を解消する、又は改善する要因の検討を含んでおり、また、以下の手続を含めなければなりません。


表1:重要な疑義を生じさせるような事象又は状況を識別した場合の追加的な監査手続
No

監査手続

1 継続企業の前提に関する経営者の評価が未了の場合には、評価の実施を経営者に求めること。
2 継続企業の評価に関連する経営者の対応策が、当該事象又は状況を解消し、又は改善するものであるかどうか、及びその実行可能性について検討すること。
3 企業が資金計画を作成しており、当該計画を分析することが経営者の対応策を評価するに当たって事象又は状況の将来の帰結を検討する際の重要な要素となる場合、以下を行う。
@ 資金計画を作成するために生成した基礎データの信頼性を評価する。
A 資金計画の基礎となる仮定に十分な裏付けがあるかどうかを判断する。
4 経営者が評価を行った日の後に入手可能となった追加的な事実又は情報がないかどうかを検討すること。
5 経営者に、経営者の対応策及び当該対応策の実行可能性に関して記載した経営者確認書を要請すること。

(2) 継続企業の前提に重要な不確実性が認められる場合等

監査人は、入手した監査証拠に基づき、単独で又は複合して継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況に関する重要な不確実性が認められるか否かについて実態に即して判断し、結論付けなければなりません。そして、重要な不確実性が認められる場合や継続企業を前提として財務諸表を作成することが適切でない場合には、監査人は以下の対応をとります。


表2:監査人の対応
  監査人の対応
(1)継続企業を前提として財務諸表を作成することが適切であるが、重要な不確実性が認められる場合 (a)財務諸表における注記が適切な場合 無限定意見を表明し、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況に関する重要な不確実性が認められること等を強調するために、監査報告書に強調事項の区分を設ける。
(b)財務諸表における注記が適切でない場合 状況に応じて限定意見又は否定的意見を表明し、継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められる旨を監査報告書に記載する。
(2)継続企業を前提として経営者が財務諸表を作成することが適切でない場合 否定的意見を表明する。

3.「経営者確認書」

本基準は、財務諸表監査において経営者から入手する経営者確認書に関する実務上の指針を提供しています。
経営者確認書とは、特定の事項を確認するため又は他の監査証拠を裏付けるため、経営者が監査人に提出する書面による陳述のことをいいます。また、経営者確認書は、企業の財務諸表監査に関連して監査人が求める必要な情報であることから監査証拠になります。


(1) 経営者確認書の記載事項

監査人は、経営者に、以下の事項について記載した経営者確認書を提出するように要請しなければなりません。

(a)監査契約書において合意したとおり、経営者が財務諸表の作成に関連すると認識している又は監査に関連して監査人が依頼したすべての情報及び情報を入手する機会を監査人に提供した旨
(b)すべての取引が記録され、財務諸表に反映されている旨
(c)適用される財務報告の枠組みに準拠して財務諸表を作成し適正に表示するという経営者の責任
(d)その他、他の監査基準委員会報告書において経営者確認書の入手が要求されている事項等

(2)経営者確認書の信頼性に疑義がある場合等

監査人が確認を要請した事項の全部又は一部について経営者から確認を得られない場合、監査人は、当該事項について経営者と協議するとともに、経営者の誠実性を再評価し、口頭又は書面による陳述の信頼性及び監査証拠全体の証明力に及ぼす影響を評価しなければなりません。

その他、経営者確認書の信頼性に疑義がある場合にも一定の手続を行い、監査意見に及ぼす影響を判断することを含め、適切な措置を講じなければなりません。

 
参考文献

2010、内藤文雄・松本祥尚・林隆敏編著、「国際監査基準の完全解説」、中央経済社

 
執筆者:吉田隆伸
 


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  明誠ニュースレター vol.22
2012年8月10日発行
発行責任者:武田剛 プロダクトマネジャー:村田博明
制作:株式会社ゼラス 佐々木景子
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