明誠グループニュースレター

情報フラッシュ [ 連載記事 ]
IFRS(国際財務報告基準)第23回 IAS第40号「投資不動産」
国際監査基準のクラリティ版について解説(第15回)「内部監査の利用」「専門家の業務の利用」について
[ トピック解説 ]
中小企業金融円滑化法の終了と中小企業経営力支援法等の施行について
「外国事業体課税に関する最近の論点整理と今後の方向性」について

情報フラッシュ

 
発表日時 表題
平成24年9月7日 法務省は法制審議会第167回会議における「会社法制の見直しに関する要綱案」の採択についてを公表しました。
平成24年9月7日 日本公認会計士協会は「IT委員会報告第4号「公認会計士業務における情報セキュリティの指針」の改正について」及びIT委員会研究報告第34号「IT委員会報告第4号「公認会計士業務における情報セキュリティの指針」Q&A」の改正について」を公表しました。
平成24年9月6日 日本公認会計士協会は「業種別委員会実務指針第47号『特定目的会社に係る監査上の実務指針』の改正について」を公表しました。
平成24年9月5日 日本公認会計士協会は「「職業倫理に関する解釈指針」の改正について」(公開草案)を公表しました。

トピック解説

 

 

中小企業金融円滑化法の終了と中小企業経営力支援法等の施行について

中小企業金融円滑化法の最終期限が平成25年3月31日に迫るなか、金融庁が打ち出した「出口戦略」を背景に、平成24年8月30日に中小企業経営力支援法が施行され、10月1日からこれをサポートする経営力強化保証制度も創設されました。以下では、これらの中小企業の経営を支援する諸施策について中小企業金融円滑化法終了に至る経緯を含めて解説します。

1.中小企業金融円滑化法の終了を踏まえた出口戦略、政策パッケージの策定

中小企業金融円滑化法は、リーマン・ショックを契機にした経営環境の悪化を背景に、事業資金の返済が困難になった中小企業の資金繰りを支援するための臨時措置として、平成21年12月から施行されました。

同法は、中小企業から貸付条件変更の申出があった場合に、柔軟に対応するよう金融機関に努力義務を課したもので、中小企業が事前に経営改善計画を提出できなくても最長1年以内に策定できる見込みであれば、貸付条件の緩和は「不良債権」に該当しないとする措置が施されています。この結果、変更後も「正常先」として新規融資が可能になったこともあって、平成24年3月末現在、申込み件数は累積で308万件に達し(金額では85兆円)、実行率は9割を超える水準で推移しています。

このように金融円滑化の取組みがほぼ定着する一方、先行きの不透明感から、中小企業の業況や資金繰りはなお厳しいとして、金融庁は同法を二度延長しましたが、この間には、貸付条件の再変更、再猶予の増加の事実が浮き彫りになり、貸付条件の変更のほぼ8割以上は再猶予の債務者で、経営改善計画を策定しないまま何度も貸付条件の変更だけを受けている債務者も一定程度いることが明らかになってきました。これを斟酌して金融庁では今年3月末の実態を以下のように推計し直しています。

イ.実際の債務者数は、大体30万社から40万社程度(全国の中小企業数約400万社強の1割弱程度)
ロ.このうち、経営改善計画が策定できていないため、不良債権に陥っているに等しい債務者は、5、6万社程度

この状況を踏まえて、昨年12月に金融庁は同法をこれ以上延長しないことを決定しました。同時に、終了後のソフトランディングを図るために、一方で金融規律の確保を図りつつ、再猶予を繰り返す5、6万社を特に支援の対象として、真の意味で経営改善につながる支援を強力に推し進めていくとする「出口戦略」を策定、今年4月には、内閣府・中小企業庁との連名で、中小企業等に対する支援措置を具体化した「政策パッケージ」を公表しました。その骨子は、以下のとおりです。

[1]金融機関によるコンサルティング機能の一層の発揮

金融機関は、自ら、自助努力による経営改善や抜本的な事業再生・業種転換・事業承継による経営改善が見込まれる中小企業に対して、必要に応じ、外部専門家や外部機関等と連携を図りながら、最大限支援する。特に中小企業が抜本的な事業再生等の支援を必要とする場合は、判断を先送りせず外部機関等の第三者的な視点や専門的な知見を積極的に活用する。

[2]企業再生支援機構(以下「機構」)及び各県の中小企業再生支援協議会(以下「協議会」)の機能及び連携の強化

財務内容の毀損度合いが大きく、債権者間調整を要する中小企業に対しては、機構や協議会の機能と連携の強化で事業再生を支援する。機構は協議会では支援の実施が困難な案件を中心に積極的に取り組み、協議会は、デューデリジェンスの省略等、再生計画の策定支援を迅速・簡易に行う方法を確立する(標準処理期間を2ヶ月に設定し1年に3千件程度の実施を目指す)。

[3]その他経営改善・事業再生支援の環境整備

各県で、金融機関、事業再生の実務家、法務・会計・税務等の専門家、中小企業関係団体、国、自治体等で構成する「中小企業支援ネットワーク」を構築するほか、事業再生ファンドの設立の推進、資本性借入金の積極的な活用等に取り組む。

2.中小企業経営力支援法の施行による「経営革新等支援機関」(以下「支援機関」)の認定

この政策パッケージの中心は、もちろん、金融機関みずからがコンサルティング機能の一層の発揮に取り組むことにありますが、中小企業を最大限支援するには、必要に応じて、外部専門家等と連携を図ることが非常に重要であることから、平成24年6月に、支援の担い手の多様化・活性化を図る措置を盛り込んだ中小企業経営力支援法が成立しました。

これは、既存の中小企業支援者(商工会、商工会議所、中小企業診断士等)だけでなく、金融機関や税理士・税理士法人等の支援事業を行う者を「支援機関」として国が認定することで、中小企業が安心して経営相談を受けられるようにするとともに、中小企業基盤整備機構からも海外展開、広域的販路開拓、知財管理等の高度な課題に対応できるメーカーや商社の実務経験者等の様々な専門家を派遣してもらい、チームとして専門性の高い支援を行なえる体制を整備するもので、この支援により、急務となっている事業計画の策定等を行い、中小企業の経営力の強化を図るねらいです。

支援機関として応募できるのは、「中小企業の財務内容等の経営状況の分析や事業計画の策定・実行支援の業務を行うために、税務、金融及び企業の財務に関する専門的な知識や実務経験が一定レベル以上の者」です。具体的には、既存の中小企業支援者の他、税理士、公認会計士、弁護士等といった士業関係者、金融機関、NPO法人等の中から、全国で数千件程度を国が認定する想定となっています。

認定を受けた金融機関が経営支援の一方で融資等の申込みを受けた場合、与信判断自体は経営支援とは別ですが、中小企業が支援を受けつつ努力することで業況や財務改善につながることから、結果的に融資を受けやすくなると期待されています。

同法は8月30日に施行されたばかりで、申請の状況や認定結果の公表はこれからですが、これをサポートするため、10月1日から「経営力強化保証制度」が施行されました。これは、認定された支援機関から経営支援を受けながら、自ら事業計画を策定し、計画の実行と進捗の報告を行う中小企業に対して、信用保証協会の保証料を一般保証料率より概ね0.2%減免するものです。

3.これからが正念場

東京商工会議所が8月27日に公表した「中小企業金融に関するアンケート調査結果」では、経営改善計画が未提出の理由について、金融機関側の回答は「時間的余裕がない」が13%、「指導できる人材の不足」が26%を占め、また「取引先が作成指導に応じない」が47%を占めました。これはまさに、金融機関が必要に応じて連携でき、中小企業が安心して相談できる支援機関の認定が待たれる状況といえます。中小企業を取り巻く環境に改善が見られない中、これら諸施策の「集中的な推進」によって懸念の不良債権化が防止できるかどうか、ソフトランディングの成否はまさにこれからが正念場です。

 
【参考文献】
金融審議会議事録及び同資料「最近の金融行政について(金融円滑化法の出口戦略)」(平成24年7月4日)、金融庁
「中小企業金融に関するアンケート調査結果」(平成24年8月27日)、東京商工会議所
「中小企業経営力強化支援法が本日施行されます」(平成24年8月30日)、中小企業庁
「経営力強化保証制度を創設します」(平成24年9月27日)、中小企業庁
執筆者:西谷富士夫
 

 

「外国事業体課税に関する最近の論点整理と今後の方向性」について

平成24年6月5日に日本公認会計士協会が、租税調査会研究報告第26号「外国事業体課税に関する最近の論点整理と今後の方向性」を公表しました。

これまでに、日本公認会計士協会は、外国事業体を我が国の税法上どのように扱うべきかの判断についての研究報告を2度公表しました。また、2度の研究報告の公表後に多くの判例が公表されました。しかしながら、外国事業体を我が国の税法上どのように扱うべきかの判断基準はいまだ確立されていない状況にあります。今回公表された「外国事業体課税に関する最近の論点整理と今後の方向性」では、最近の裁判での判断基準の比較分析、実務上の問題点の整理が行われ、その後外国事業体課税の在り方についての考え方及びその問題点の提示、今後の方向性についての検討が行われています。

以下、租税調査会研究報告第26号「外国事業体課税に関する最近の論点整理と今後の方向性」について概要を説明します。

1.判例のアプローチ及び判断基準

対外投資及び対内投資の実務において、外国における多様な事業体が利用されていますが、それらの事業体を我が国租税法上の「法人」「人格なき社団」「組合」等の各事業体にいかに分類するかの判断基準は定められていません。そのため、我が国租税法上の「法人」該当性をめぐり納税者と課税当局との見解の相違が税務調査の場面で争点とされ、中には訴訟に発展するケースもあります。

以下では、我が国税法上の「法人」該当性が争点とされた最近の代表的な判例である

@「ニューヨーク州 Limited liability Company 事件」A「米国デラウェア州 Limited Partnership事件−大阪地裁」B「米国デラウェア州 Limited Partnership事件−東京地裁及び名古屋地裁」C「船舶リース事件(ケイマン諸島のExempted Limited Partnership)」の法人該当性の解釈アプローチ及び判断基準を簡潔に示します。なお、@からBでは、借用概念が採用されています。借用概念とは、租税法上定義がない用語について、私法上の概念と同意義に解する考えです。

@「ニューヨーク州 Limited liability Company 事件」

外国法を借用し、英米法における「法人格」を有する団体の要素((@)訴訟当事者能力(A)財産の取得・処分の主体(B)契約締結主体(C)法人印の使用等)を判断基準とした。

A「米国デラウェア州 Limited Partnership事件−大阪地裁」

我が国の民法を借用し、我が国民法の学説から「法人」の要素を3つ((@)訴訟当事者能力(A)財産の取得・処分の主体(B)契約締結主体)列挙し判断基準とした。

B「米国デラウェア州 Limited Partnership事件−東京地裁及び名古屋地裁」

我が国の民法を借用し、民法第35条の「外国法人」の解釈から、設立準拠法である外国法令によって法人とする旨を規定していると認められるかを判断基準とし、外国法における法制等の多様性、「法人」概念の形成沿革等の多様性から、上記基準に加え損益の帰属すべき主体として設立が認められたものであるかも判断基準とした。

C「船舶リース事件(ケイマン諸島のExempted Limited Partnership)」

ケイマン諸島パートナーシップ法の内容から法人格の有無を判断した。

以上のように、司法判断において「法人」該当性の解釈アプローチ及び判断基準は統一されていない状況にあります。

2.判断基準確立の必要性

外国において事業や投資を行う際に、我が国における取扱いが確立した事業体を選択することができれば、外国事業体の取扱いに係る実務上の問題は回避することができますが、実務では必ずしもそのようにして問題を回避できる場合ばかりとは限りません。 そこで、多様な事業体が用いられるのですが、一般に対外投資においては、外国事業体が本邦税法上、法人として取り扱われた場合には、当該外国事業体からの利益が分配された時点で受取配当として取り扱われ、当該外国事業体が構成員課税の対象となる場合には、当該外国事業体が所得を稼得した時点で、その所得が国内の投資家の所得として課税されるという違いがあります。

このように、外国事業体の取扱いの違いにより、課税関係は大きく異なることになるので、課税の予見可能性が担保されることが極めて重要となります。

3.判断基準の考え方

外国事業体の課税上の取扱いについては、様々な議論が検討され、判例が蓄積されてきました。特に昨今の裁判における議論では、我が国の事業体課税の取扱いを基礎として、外国事業体課税を我が国の事業体課税と同様に取扱う考え方、すなわち、我が国の事業体課税と「パラレル」な取扱いをすべきであるという考え方が主張されています。そして、何をもって「パラレル」とするかについての考え方は、以下の@及びAの2つがあります。

@外国事業体の設立準拠法において、当該事業体に法人格が付与されているかどうかを判断基準とすべきという考え方

A外国事業体に財産保有の主体性があること、権利義務の主体性があること、訴訟当事者能力があることなどの我が国における法人格の要素が外国事業体に備わっているかどうかを判断基準とすべきという考え方

@については、外国法は必ずしも我が国の法体系と同様の法体系を採用しているとは限らず、「法人格」という概念は、各国共通の概念ではなく、法人格を付与されるかどうかは、事業体の機能上の差異ではなく、各国の立法政策上の差異と考えることもでき、法人概念の形成沿革等の多様性を鑑みると、「法人格」に着目するアプローチは、課税の公平性担保という観点から、一定の限界があるように思われます。

また、Aについては、判断基準とする法人格の要素として、過去の判例では、契約や財産の所有の主体性、訴訟当事者能力、損益帰属の主体性などが挙げられており、これらの属性のすべてを満たす場合に限り、外国事業体を我が国租税法上の法人として取り扱うのか、あるいは、先の法人格が付与されていることという条件を加えて、このうちいくつかの条件が満たされた場合に法人として取り扱うのか、法人格が付与されていることが明らかである場合には法人として取り扱い、それが明らかでない場合には、外国事業体の属性から法人該当性の判断をするのかなどいくつかの組合せが考えられ、以下のような制約が考えらます。

・多様な外国事業体が必ずしも我が国の法人が備えている属性をすべて備えているわけではなく、どこまでの属性を満たしていれば法人として取り扱うべきかという基準を客観的に選定することが困難である。

・我が国の持分会社は社団性が希薄であり、会社の内部関係に関する規定は、組合の規定を準用するなどの類似性があり、持分会社と組合の区別が、法人格の有無という点に帰着するとすれば、結局は「法人格」が付与されているかどうかというアプローチによらざるを得ないという帰結になる可能性がある。

4.現状の対応策と欠点

現状の実務において外国事業体に関する課税関係について、可能な限り法的安定性を求めるのであれば、現在公表されている国税庁Webサイト上の「米国LLCに係る税務上の取扱い」及び蓄積されてきた判決がそれぞれ示した基準に従って、実際に用いられる外国事業体の現地法令及び契約内容を確認の上、当該事業体がその名において、@訴訟当事者になることができるか、A財産を取得し処分することができるか、B契約を締結する権能を有し義務を負うか、C「構成員とは別個の独立した法的主体」と規定されているか、D当該事業体が設立又は組成された国の準拠法上、当該事業体は法人格を有する団体と規定されているか、E当該外国事業体が損益の帰属主体となる実体を備えているかという諸点につき、国内及び外国の弁護士や公認会計士等の専門家を通じて確認し、これらの要素を満たすか否かを検討する他ないものと考えられます。

しかしながら、このような手続は、手続の煩雑さ、時間、コスト等の面納税者に多大な負担をかけることになり、ひいては、対外投資や対内投資にも影響を及ぼし得ることになりかねません。

5.米国での対応と欠点

米国では数々の判例・実務を重ねた後に、外国事業体が法人であるかパススルー事業体であるかの判断を納税者の選択に委ねる制度(チェック・ザ・ボックス制度)を導入しています。

この制度によって、納税者及び課税当局の負担が軽減され、課税の予見可能性・法的安定性が改善したという見解もあるが、その一方で、外国と本国(米国)で事業体の取扱いが異なるハイブリッド事業体を納税者の選択で創り出すことができるようになり、不必要に課税関係を複雑にすることになった、タックス・プランニングの温床になっている、などの批判的見解も数多いです。

6.今後の在り方

最後に、日本公認会計士協会は、納税者選択制度を採用することで、外国事業体を利用した容易な租税回避を可能とするなどの懸念もあるものの、これに対しては、個別に防止規定を設けることで対応できるのではないだろうかと、その可能性を示唆し、納税者選択方式は一つの選択肢として検討すべき課題と思われるとしています。

 
執筆者:中戸大介
 

連載記事

 
 

IFRS(国際財務報告基準)第23回 IAS第40号「投資不動産」

1.はじめに

今回は、IAS第40号「投資不動産」(以下、IAS第40号という。)について紹介します。

2.目的及び定義

IAS第40号の目的は、投資不動産の会計処理及び関連する開示要求を定めることにあります。ここで、投資不動産とは、賃貸収益もしくは資本増価又はその両方を目的として保有する不動産をいいます。投資不動産の例としては以下のようなものが挙げられています。

【1】通常の営業過程において短期的に販売されるものではなく、長期的な資本増価のために保有される土地
【2】企業が所有し、1つ以上のオペレーティング・リースによりリースされている建物

【3】投資不動産としての将来の利用のために建設中又は開発中である不動産

3.当初認識と測定

投資不動産は、(a)投資不動産に帰属する将来の経済的便益が、企業にもたらされる可能性が高く、かつ(b)投資不動産の取得原価が信頼性をもって測定できる場合に資産として認識しなければならず、取得時に、取引費用を含む取得原価で測定しなければなりません。

なお、オペレーティング・リースにより借手が保有する不動産賃借権であっても、当該資産が投資不動産の定義を満たし、かつ借手が認識された資産について後述する公正価値モデルを使用する場合には、当該リース資産を投資不動産として会計処理することができ、ファイナンス・リースと同様の処理を行います。

4.認識後の測定

投資不動産の認識後の測定方法としては、原則として原価モデル又は公正価値モデルの2つの方法の選択適用が認められており、選択した方針を投資不動産のすべてに適用しなければなりません。

【1】原価モデル

原価モデルを選択した場合には、その投資不動産のすべてをIFRS第5号「売却目的で保有する非流動資産及び非継続 企業」に従って売却目的保有に分類する規準に合致するものを除き、IAS第16号「有形固定資産」の要求事項に従って測定しなければなりません。すなわち、取得原価から減価償却累計額と減損損失累計額を控除した価額で計上します。

【2】公正価値モデル

公正価値モデルを選択した場合には、すべての投資不動産を公正価値で測定し、かつ、毎期末に再評価する必要があります。この再評価により生じた利得又は損失は、発生した期の純損益に含めなければなりません。

なお、有形固定資産の認識後の測定方法として再評価モデルがありますが、公正価値モデルとは以下の点で異なります。

(a)再評価モデルでは、再評価は帳簿価額が公正価値と大きく異ならない頻度で定期的に行われるが、公正価値モデルでは毎期末に再評価する必要がある。
(b)再評価モデルでは、利得が発生した場合にはその他包括利益、損失が発生した場合には発生した期の損失に含めるが、公正価値モデルでは双方とも発生した期の純損益に計上。
(c)再評価モデルでは、減価償却及び減損が実施されるが、公正価値モデルでは実施しない。

5.振替

投資不動産への、又は投資不動産からの振替は、以下に掲げるような用途の変更を示す証拠がある場合にのみ認められます。

【1】投資不動産から自己使用不動産への振替:自己使用の開始
【2】投資不動産から棚卸資産への振替:販売する計画を伴う開発の開始
【3】自己使用不動産から投資不動産への振替:自己使用の終了
【4】棚卸資産から投資不動産への振替:他社へのオペレーティング・リースの開始

6.投資不動産の処分

投資不動産が処分された場合、又は恒久的に使用を取りやめ、除却による将来の経済的便益が見込まれなくなった場合には、認識の中止を行わなければなりません。その場合には、停止または処分に関わる期間に、資産の正味売却収入と帳簿価額との差額を損益として認識しなければなりません。

 
執筆者:関和輝
 


 

国際監査基準のクラリティ版について解説(第15回)
「内部監査の利用」「専門家の業務の利用」について

1.基準の概要

今回は、監査基準委員会報告書610「内部監査の利用」と620「専門家の業務の利用」について解説します。いずれも、2013年3月決算に係る監査から適用されている基準です。これらは、それぞれ国際監査基準(ISA)610とISA620に対応しています。

2.「内部監査の利用」

本報告書は、監査人が、内部監査機能が財務諸表の監査に関連する可能性があると判断する際に、内部監査の利用に関する実務上の指針を提供しています。


(1) 内部監査機能と監査人との関係

内部監査機能の目的は、経営者等によって決定されます。内部監査機能の目的と監査人の目的は異なりますが、内部監査機能と監査人がそれぞれの目的を達成する方法は類似しています。しかし、内部監査機能には、その自主性及び客観性の程度にかかわらず、監査人が財務諸表に関して意見を表明するときに求められるような企業からの独立性はありません。また監査人は、表明した監査意見に単独で責任を負い、その責任は内部監査を利用したとしても軽減されません。

 

(2) 内部監査の利用の可否及びその利用の程度の判断

監査人は、内部監査の利用の可否及びその利用の程度を考慮するにあたり、以下の事項を判断し評価しなければなりません。


表1:監査人の考慮事項
No

判断する事項

評価する事項
1 内部監査人の作業が財務諸表の監査の目的に照らして適切かどうか (1) 内部監査機能の客観性
(2) 内部監査人の専門的能力
(3) 内部監査人が専門職としての正当な注意を払い作業を実施するかどうか。
(4) 内部監査人と監査人との間で有効なコミュニケーションが図れるかどうか。
2

内部監査人の作業が適切な場合には、内部監査人の作業が監査人の監査手続の種類、時期又は範囲に及ぼし得る影響

(1) 内部監査人により実施された又は実施される予定の特定の作業の内容及び範囲
(2) 特定の取引種類、勘定残高、開示等についてアサーション・レベルで評価した重要な虚偽表示リスク
(3) 関連するアサーションの裏付けとして内部監査人により収集された監査証拠の評価において、主観的要素が介在する程度

(3) 内部監査人の特定の作業の利用

内部監査人の特定の作業を利用する際に、監査人は、監査人の目的に照らして適切かどうかを判断するため、当該作業を評価し、それらに対して監査手続を実施します。内部監査人によって実施された特定の作業が監査人の目的に照らして適切かどうかを判断するために、監査人は以下の事項を評価します。

(a) 当該作業が、十分な専門的研修を受け、経験を有している内部監査人によって実施されたかどうか。
(b) 当該作業が適切に監督、査閲、文書化されたかどうか。
(c) 内部監査人が合理的な結論を得るのに十分な証拠を入手したかどうか。
(d) 到達した結論がその状況に応じて適切であるかどうか、及び内部監査人により作成されたすべての報告書が実施された作業の結果と整合しているかどうか。
(e) 内部監査人による指摘事項(通例でない事項を含む。)が適切に解決されているかどうか。

3.「専門家の業務の利用」

本報告書は、監査人が十分かつ適切な監査証拠を入手する際に、会計又は監査以外の専門分野における個人又は組織の業務を利用する場合の実務上の指針を提供しています。


(1) 監査意見に対する監査人の責任

監査人は、表明した監査意見に単独で責任を負うものであり、その責任は専門家の業務を利用したとしても軽減されません。しかし、専門家の業務を利用した監査人が、本基準に従い、当該専門家の業務が監査人の目的に照らして適切であると結論付けた場合には、監査人は、当該専門家による専門分野での指摘事項又は結論を適切な監査証拠として受け入れることができます。


(2) 専門家の業務を利用する際の要求事項

監査人は、監査人の利用する専門家が、監査人の目的に照らして必要な適性、能力及び客観性を備えているかどうかを評価し、監査人の利用する専門家の専門分野を十分に理解しなければなりません。また、監査人及び専門家のそれぞれの役割と責任などについて合意をする必要があります。

また、監査人は、監査人の目的に照らして、以下の事項を含めて、監査人の利用する専門家の業務の適切性を評価しなければなりません。

表2:専門家の業務の適切性に係る評価事項

No

評価事項

1 専門家の指摘事項又は結論の適合性や合理性、及び他の監査証拠との整合性
2 専門家の業務に重要な仮定及び方法が採用されている場合には、それらの仮定及び方法についての個々の状況における適合性と合理性
3

専門家の業務にとって基礎データの利用が重要な場合には、当該基礎データの目的適合性、網羅性及び正確性


なお、監査人は、監査人の利用する専門家の業務が監査人の目的に照らして適切ではないと判断した場合には、専門家が実施する追加業務の内容及び範囲について当該専門家と合意をしたり、個々の状況において適切な追加的監査手続を実施することになります。

 
執筆者:吉田隆伸
 


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  明誠ニュースレター vol.24
2012年10月9日発行
発行責任者:武田剛 プロダクトマネジャー:村田博明
制作:株式会社ゼラス 佐々木景子
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