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情報フラッシュ [ 連載記事 ]
IFRS(国際財務報告基準)第24回 IAS第41号「農業」
[ トピック解説 ]
東証のプロ向け市場「TOKYO PRO Market」、OKINAWA J-Adviser誕生
不正に対応した監査の基準の考え方(案)について

情報フラッシュ

 
発表日時 表題
平成24年10月4日 金融庁は「次世代EDINETタクソノミ(案)第二版及び提出者向け事前チェックテストの実施について」を公表しました。

トピック解説

 

 

東証のプロ向け市場「TOKYO PRO Market」、OKINAWA J-Adviser誕生

去る11月1日、沖縄県の沖縄産業振興公社が出資するOKINAWA J-Adviserが、第8番目のTOKYO PRO Marketの上場適格性を評価するJ-Adviserの認定を受けました。TOKYO PRO Marketの現状を振り返るとともに、OKINAWA J-Adviserの可能性を検討したいと思います。

1.TOKYO PRO Marketの概要

[1]沿革

TOKYO PRO Marketは、国内プロ投資家向け市場として、既存の個人投資家を対象とする市場とは一線を画する新しいコンセプトの市場として誕生しました。当該市場の沿を簡単に振り返って見ましょう。

TOKYO PRO Marketの前身は、TOKYO AIM取引所で、世界最大の国際的なベンチャー市場と言われるロンドンAIMをモデルに、2008年6月1日東京証券取引所(51%)とロンドン証券取引所(49%)の合弁でスタートしました。

第一号の上場案件として、2011年7月バイオベンチャーのメビオファームが上場し、その後、2012年5月第2号案件として冷凍菓子の五洋食品産業が上場、2012年9月には産業廃棄物処理の新東京グループが上場し、現在3社が上場を果たしています。

当初、TOKYO AIM取引所は、東京証券取引所とは独立した証券市場として運営されていましたが、2012年3月ロンドン証券取引所との合弁を解消し、同年7月1日東京証券取引所と合併、東京証券取引所内の証券市場の1つとして、TOKYO PRO Marketが再スタートしました。

[2]特徴

(1)プロ向け市場

TOKYO PRO Marketに参加できる投資家は、既存市場とは異なり、プロ投資家に限定されています。プロ投資家とは、適格機関投資家、上場会社、資本金5億円以上の株式会社、国、日本銀行、地方自治体(特定投資家)、特定投資家以外の株式会社、3億円以上の金融資産及び純資産を持ち1年以上の金融商品取引の経験を有する個人(みなし特定投資家)及び非居住者を意味します。

(2)柔軟な市場運営

 市場参加者をプロ投資家に限定して、自己責任の原則の徹底を図る市場として柔軟な運営がなされています。また、既存市場は、証券取引所が上場の可否を判断しますが、TOKYO PRO Marketは、証券取引所から認定を受けたJ-Adviserが、証券取引所に成り代わって、上場時の上場適格性の評価を行います。さらに、既存市場と異なる点として特徴的なのが、J-Adviserは、上場した後も、上場適格性の維持を図るため、継続して上場企業のアドバイスを行う点です。したがって、上場維持の前提条件として、J-Adviserとの継続的な契約が必須となっています。

このように、投資家の自己責任の原則とJ-Adviserによる継続的な上場企業のモニタリングが、以下のような柔軟な市場運営を可能としています。

1)上場の数値基準が無く、J-Adviserの上場適格性評価に判断が委ねられること
2)短期上場が可能であること(監査証明:直近1年、上場申請から上場承認までの期間:10営業日)
3)内部統制報告書、四半期開示は、任意の取り扱いとなっていること

(3)国際性

1)上場申請及び開示は英語で可能なこと
2)会計基準は、IFRS及び米国基準でも可能なこと
3)規則等は英語で開示されていること

2.OKINAWA J-Adviser

[1]概要

2012年7月、地元ベンチャー企業を地域主導で目指す目的で、沖縄県産業振興公社と地元金融機関からの出資に基づき、OKINAWA J-Adviserが、沖縄県金融特区に設立されました。証券会社ではないJ-Adviser は、OKINAWA J-Adviseが初めてです。

1)会社名 : 株式会社OKINAWA J-Adviser
2) 代表者 : 代表取締役社長 知念榮治(沖縄県産業振興公社 理事長)
3)資本金 : 2,900万円
4)株 主 : 沖縄県産業振興公社、沖縄振興開発金融公庫、琉球銀行、沖縄銀行、沖縄海邦銀行、コザ信用金庫、他
[2]誕生の経緯

沖縄県産業振興公社によると、沖縄県は、ベンチャー企業の育成に力を入れており、ベンチャー企業数では、日本で3番目だそうです。支援策として、助成金及びファンド出資の充実を図ってきたそうですが、株式上場に至るために必要な自由度の高い資金供給の方策が見つからず、模索していたそうです。そこに、TOKYO PRO Marketという柔軟性の高い証券市場が誕生したことを受け、当該市場の活用に踏み込んだとのことです。

[3]OKINAWA J-Adviserによる沖縄企業上場の特徴

1)マイルストーン上場

TOKYO PRO Marketを、既存市場の上場までには至らないが、高い技術力を持つベンチャー企業のステップアップのための市場として位置づけ、技術支援を中心に、一緒に上場会社を育てていくというスタンスで上場企業を支援していきます。上場適格性の判断は、主にビジネスモデルDD(デューデリジェンス)、技術DD、財務DD、内部統制DDの4つで行います。

2)戦略的資金調達計画

上場の数値基準の無いTOKYO PRO Marketでは、上場時及び上場後の資金調達の計画を戦略的に立てることが出来ます。例えば、創業間もない資本金の小さなベンチャー企業の場合、上場後に段階的に資金調達を行うことで、安定的な株主政策を行うことができます。

3)多様な上場モデルの創出

自由設計市場として、企業戦略に応じた上場モデルを創出できます。
a.ベンチャー企業型
上場の数値基準がなく、短期上場が可能なので、成長速度を落とすことなく、タイムリーな資金調達と上場会社としての信用により、さらなる成長を期待できます。
b.事業承継型

流動株式比率の数値基準がないので、後継者の株式取得及び贈与税対策のために必要な資金に応じて株式を売り出すことが可能となりますので、外部株主を最小限に抑えた安定株主での上場が可能になります。

c.子会社上場型
議決権のない優先株式のみの上場や資本政策に応じた株式上場が可能なので、親会社の子会社統治を維持しながらの上場が可能となります。

3.沖縄企業の上場へ

OKINAWA J-Adviserによる第1号上場候補として、新聞発表されているのが、現在、グリーンシートに株式公開されている鉄板焼ステーキレストラン、株式会社 碧です。

1999年創業、細やかなサービスを実現するために女性スタッフによって運営されており、沖縄産の黒毛和牛、沖縄産の野菜を食材として使用しています。2006年にグリーンシートに株式公開し、2011年9月期で売上6億22百万円、営業利益69百万円、資本金55百万円、純資産2億52百万円となっています。沖縄県外には、東京、銀座三越に1店舗オープンしています。

2013年4月の東京と大阪への新規出店に合わせて、2013年3月の上場を目指すとのことです。上場時には資金調達は行わず、上場をPR手段として活用し、知名度、信用力向上を目指し、上場後、1年〜2年かけて資金調達を図るとのことです。

4.今後への期待

現状、TOKYO PRO Marketへの上場は、ファイナンスを目的とするよりは、東証の上場会社であるというブランドを短期間で獲得することを期待する企業が多いようです。

一方で、TOKYO PRO Marketの市場取引は、あまり活発であるとは言えず、新東京グループが初値6,300円から7,400円へ株価の上昇がありましたが、メビオファームは初値から大きく値を崩し、五洋食品も値動きがない状況です。TOKYO PRO Marketに上場している3社に関する上場時ファイナンスについては、以下の通りです。

メビオファーム:上場日2011年7月15日、上場時資金調達額 無し

当初、10億35百万円の調達を予定していましたが、上場直前に特定企業への技術導入の契約が交わされたため株価への影響を考慮して、新規株式発行を中止しました。

五洋食品産業 :上場日2012年5月28日、上場時資金調達額28百万円

当初、1億9千万円の調達を予定していましたが、28百万円に下方修正しました。

新東京グループ:上場日2012年9月25日、上場時資金調達額 無し

上場時のファイナンスを実施しない方針で上場した初めてのケースでしたが、上場直後9月28日、無担保社債を1億円発行しています。

国内市場が冷え込む日本において、ベンチャー企業の海外展開が不可欠となっています。そのような経済環境の中で、短期で上場を果たし、上場会社の信頼性で国際取引を活発化することは、企業成長及び我が国の経済活性化においても、大きなプラス要因であり、今までに無かった魅力的な市場と言えます。

しかし、一方で、TOKYO PRO Marketの前身であるTOKYO AIMが誕生した背景には、国際証券市場として、アジア金融センターへの発展を目指す目的もありました。このことを振り返れば、例えば、アジア諸国におけるインフラ系国営企業の民営化上場案件などで、現地証券市場では資金調達力に限界があるものを、TOKYO PRO Marketに誘致し、投機的な短期利益を求める証券市場とは一線を画した、中長期的で安定的な国際証券市場としてのプレゼンスを確保するということも重要ことだと考えています。

急成長するアジア諸国の中で、日本は、今後急激な成長が期待できないといった見方もあるかもしれません。しかし、成熟した日本だからこそ、ボラティリティを排除した安定的、中長期的志向の投資ができる、安心できる国だということを強みに出来れば、もっと違った世界が広がっていくのではないでしょうか。今後、TOKYO PRO Marketが、洗練された幅広い海外の投資家の資金を呼び寄せる、魅力ある国際証券市場に発展することを期待しています。

 
【出典】
<沖縄型上場>セミナー資料、東京証券取引所株価情報、特定証券情報、グリーンシート決算短信、新聞記事、インターネットホームページ情報
執筆者:安田秀志
 

 

不正に対応した監査の基準の考え方(案)について

最近の会計不祥事が騒がれる中、会計不正に対応するための公認会計士監査のあり方について、企業会計審議会監査部会において数回に渡り意見が交わされ、監査基準の見直しを検討する際のベースとして整理されてきました。そして、平成24年9月25日の企業会計審議会監査部会(第29回)において、「不正に対応した監査の基準の考え方(案)」(以下、考え方案という)が示されました。

また、これを受け、日本公認会計士協会は平成24年10月18日に、今般の検討を実効性のあるものとするため、また、監査がより有効に機能するよう監査実務の担い手としても改善を図るために、考え方案に対する意見書を提出しています(4.参照)。

1.概要

[1]不正に対応した監査の基準の対象

監査人が財務諸表監査において対象とする重要な虚偽の表示の原因となる不正について取り扱うとし、財務諸表監査の枠組みにおける、不正リスクに対応する監査手続等を規定するものとしています。

[2]今般の基準の主な改訂点

不正リスク要因の検討、不正リスクを把握するための手続及び不正リスクに対応した監査手続を強化し、さらに、監査手続の実施において、不正による重要な虚偽表示の端緒を示す状況(以下、不正の端緒を示す状況という)を把握した場合に、当該不正の端緒を示す状況が明らかに重要な虚偽の表示に結びつかないと認められるものを除き、不正の端緒として扱うこととし、不正の端緒に対応する監査計画の修正や監査手続の実施など、不正対応に特化した監査手続の実施及び証拠の評価を求めることとしています。

(1)不正リスク要因の検討及び不正リスクの適切な把握

現行基準では、重要な虚偽表示のリスクの暫定的評価をする際に特別な検討を必要とするリスクを識別することとなっていますが、そこに不正リスク要因の検討及び不正リスクの適切な把握をするよう追加的に求めています。

(2)不正リスクに対応した監査手続の強化

上記に基づく監査計画を策定し、その監査手続を実施することとなり、特別な検討を必要とするリスクに対応する監査手続として、不正リスクに対応した監査手続の実施が求められることとなります。

(3)不正の端緒を示す状況から不正の端緒へのプロセス

まず、不正の端緒を示す状況があるか否かを判断します(例示については3.参照)。

イ.不正の端緒を示す状況がある場合
ロ.不正の端緒を示す状況がない場合においても不正リスクに対する十分かつ適切な監査証拠の入手ができない場合

上記2つの場合については、適宜、監査計画を修正して追加的な監査手続を実施し、その結果を踏まえて不正の端緒として扱うか否かを判断することになります。

1)不正の端緒として扱わない場合

限定的な場合に限られており、明らかに重要な虚偽の表示に結びつかないと結論づけるに足る十分かつ適切な監査証拠を入手した場合に限り、不正の端緒として扱わない旨及び理由を監査調書に記載することを求めています。

2)1)以外は不正の端緒として扱うこととなります。

不正の端緒に対応する監査計画の見直しを行い、より証拠力の強い監査証拠を入手するための監査手続を実施するよう監査計画の修正が求められており、修正監査計画にしたがい、当該不正の端緒の内容を徹底的(十分)に調査し、必要に応じて監査証拠を追加的に入手するため、想定される不正の態様等に直接対応する監査手続を実施しなければならないとしています。


用語 説明
不正 不当又は違法な利益を得る等のために他者を欺く行為を伴う、経営者、監査役等、従業員又は第三者による意図的な行為をいう。
不正リスク 重要な虚偽表示のリスクのうち、不正による重要な虚偽表示のリスクをいう。
不正リスク要因 不正を実行する動機やプレッシャーの存在を示し、不正を実行する機会を与え、または不正を実行する際にそれを正当化する事象や状況をいう。
不正の端緒を示す状況 監査人が監査実施の過程で識別した、財務諸表に不正による重要な虚偽の表示をもたらす可能性が示唆されている状況をいう。
不正の端緒 不正の端緒を示す状況が識別され、または、不正リスクに対する十分かつ適切な監査証拠を入手できない場合において、明らかに重要な虚偽の表示に結びつかないと結論づけるに足る十分かつ適切な監査証拠を入手した場合を除き、監査人はこれを不正の疑いがあるものとし、不正の端緒として取扱う。

2.各論

[1]職業的懐疑心の強化
(1)経営者等の誠実性に関する監査人の過去の経験にかかわらず、監査の全過程を通じて職業的懐疑心を発揮しなければならない。
(2)不正リスクを評価する場合には、経営者の主張を批判的に検討するなど、職業的懐疑心を発揮しなければならない。
(3)不正リスクを把握した場合には、職業的懐疑心を発揮して、当該リスクに対応する監査手続を実施しなければならない。
(4)より強い職業的懐疑心を発揮し、入手した情報と監査証拠が不正の端緒を示す状況があるにもかかわらず、それらを看過することがないように常に注意を払わなければならない。
(5)不正の端緒を示す状況を識別した場合、または不正の端緒を把握した場合には、より強い職業的懐疑心を発揮して、それらに対応する監査手続を実施しなければならない。

特に、(4)と(5)では、「より強い」という表現が用いられていますが、これは、不正の端緒を示す状況や不正の端緒の検討段階においては、より強い職業的懐疑心を求めているということを表現しています。

[2]不正リスクに対応した監査の実施等

計画策定に関して、企業が属する産業特有の不正の理解をすることや、不正リスクが識別された監査要点に関して企業が想定しない要素を組み込むこと等が求められています。また、実施段階においては、十分かつ適切な監査証拠が得られるまで、不正リスクに関連する監査要点に対する証拠の収集と評価を行わなければならない等が求められており、意見表明に関して、不正の端緒を発見した場合には、その監査対応について、監査事務所の方針と手続にしたがって、本部の適切な者の承認が得られるまで意見表明の禁止等が求められていますが、主な改訂のポイントは、不正の端緒を示す状況の考え方を追加している点にあると言えます。

考え方案の付録2において、不正の端緒を示す状況について例示していますが、少なくとも監査人は、これらの状況については、不正の端緒を示す状況として扱わなくてはならず、また、他の不正による重要な虚偽表示の端緒を示す状況が存在する可能性にも留意しなければならないとしています。

なお、監査部会の議事録によると、例示を網羅的にチェックするということを求めておらず、監査実施の過程で例示にあたる事項がみつかったら、少なくともその点についてはきちんと調査、確認をしなければならないと説明されています。また、不正の端緒を示す状況について、不正の端緒にならないと判断できるのは、明確に白といえる場合に限定しています。

その他、不正リスクに関連する確認状の送付先に通謀の疑いがあると思料される場合の送付先企業を担当する監査人への確認の実施のあり方については別途検討対象として挙げられています。

[3]不正リスクに対応した監査事務所の品質管理等

監査事務所による不正リスク対応のモニタリングが求められる等の他、被監査企業の取引先の監査人との連携のあり方についても別途検討対象として挙げられています。

3.不正の端緒を示す状況の例示(考え方案の付録2より抜粋、以下、例示事象という)

[1]不正等に関する情報が存在する、[2]留意すべき非経常取引等として、不適切な売上計上の可能性を示唆する状況や、資金還流取引等のオフバランス取引の可能性を示唆する状況等がある、[3]証拠の変造の可能性を示唆する状況がある、[4]会計上の不適切な調整が行われた可能性を示唆する状況がある、[5]確認結果について、十分かつ適切な監査証拠を入手することができない差異がある、[6]経営者の監査への対応として、複雑な又は問題のある事項の解決について、不当な時間的プレッシャーを与える又は監査上必要な情報の提供を著しく遅延する、[7]その他、財務諸表に重要な影響を及ぼす取引に関して、明らかに専門家としての能力又は客観性に疑念のあると考えられる専門家を利用している等が挙げられています。

4.日本公認会計士協会からの意見書

[1]全般的事項

長年にわたる社会とのコンセンサスに基づく現在の監査制度の改正は、その負担と効果を比較衡量の上、実現可能性を慎重に検討しながら進めるべきであるとしています。

不正な財務報告を意図した悪意が認められるケースでは改正の効果が期待できるとした一方で、他の多くの善意の企業や監査人に過度な負担をもたらすことを懸念しています。また、不正を企業ぐるみで巧妙に隠蔽している場合、それを監査の過程で不正と断言するのは困難であるため、企業の統治機能や資本市場全般の改革が企図されなければならないとしています。

[2]個別事項

(1)監査意見に及ぼす影響

考え方案の中で、監査手続実施上最も影響が大きい点として、「不正の端緒」の取扱いを挙げています。これにより、すべての監査業務において「不正の端緒を示す状況」が識別される可能性が生じ、結果的に不正がない場合や不正リスクの高くない監査業務を含め、相応の監査手続の増加が懸念され、また、特に決算日近くに例示事象を発見した場合には、法定期限の遵守を意識することによる、限定付き監査意見表明の増加が懸念されます。さらに、監査報告書提出遅延による株価等への影響、信用問題、損害賠償問題への発展等も懸念されます。これらに対しては、以下を提案しています。

イ.例示事象の取扱いは、当初の不正リスク評価を再検討する際に考慮しなければならない事項にとどめ、不正の端緒とみなすかどうかは、職業的懐疑心を発揮した監査人の判断に委ねる。
ロ.あるいは、経験豊富な監査人のほとんどが、その事象が単独で「不正の端緒」であると判断すると思われる事象に限定するべく、例示事象の絞り込みをする。現行実務や国際的な監査基準と相違することによる影響を十分検討し、証券取引所の上場廃止ルールの見直し、会社法上の決算確定プロセスや税務申告等に及ぼす影響を関係者で十分認識し対応方法を明らかにする。

(2)監査人間の連携

被監査会社と取引先が共謀している場合は効果が少ない、自己の監査とは別の対応義務が生じることや他の監査人への照会の連鎖により社会全体で負担する監査コストが増加する、不正の疑いに関する情報を取引先に伝えることでビジネスに悪影響を及ぼす等、大きな問題があるとしています。

(3)監査事務所の品質管理等

現行基準に定める品質管理のシステムとは別の不正リスク対応の枠組みを構築するよう求められているという誤解を生じさせる懸念があるため、用語の定義の必要性や、監査基準と品質管理基準との関連性にも留意した上で、厳格な運用を求めるような具体化が必要としています。

(4)適用について

社会制度としてのバランスを欠くこととならないよう、適用対象を上場会社等に限定する手当を講じるべきと提案しています。また、考え方案には、国際的な監査基準(ISAやPCAOB基準)では要求されていない事項が含まれているため、海外拠点等の監査への適用は実務的に大きな負担となるとしています。その他、基準の適用に際しては準備期間が取れるよう配慮が必要と提案しています。

5.さいごに

今後も、不正の端緒を示す状況の考え方の見直しや他法令等との関連を意識した基準の調整が主な課題として、関係者間の協議が重ねられていくものと考えられます。

 
執筆者:町出知則
 

連載記事

 
 

IFRS(国際財務報告基準)第24回 IAS第41号「農業」

1.はじめに

今回は、IAS第41号「農業」(以下、IAS第41号という。)について紹介します。

2.目的、適用範囲及び定義

IAS第41号の目的は、農業活動に関連する会計処理及び開示を定めることにあります。

IAS第41号は、次のものが農業活動に関連する場合の会計処理に適用しなければなりません。ここで農業活動とは、生物資産を販売するため、農産物にするため、又は追加的な生物資産を得るために、企業が生物資産の生物学的変化又は収穫を管理することをいいます。

【1】生物資産(生きている動物又は植物)
【2】収穫時点における農産物(企業の生物資産から収穫された成果物)
【3】売却費用控除後の公正価値で測定される生物資産に関する政府補助金

なお、生物資産から収穫される農産物については、その収穫時点においてのみIAS第41号を適用し、その後はIAS第2号「棚卸資産」や他の基準が適用されます。例えば、ぶどうを育てた業者がぶどうからワインを作る過程のような、収穫後の農産物の加工はIAS第41号の適用範囲外となります。生物資産、農産物及び加工後の製品については以下のようなものが示されています。


生物資産 農産物 加工後の製品
植林地における樹木 伐採された木 丸太、材木
乳牛 牛乳 チーズ
ぶどうの木 ぶどう ワイン

3.認識及び測定

企業は、以下の要件をすべて満たす場合に、生物資産又は農産物を認識しなければなりません。

 【1】過去の事象の結果として、企業が資産を支配している。
 【2】その資産に起因する将来の経済的便益が企業に流入する可能性が高い。
 【3】その資産の公正価値又は原価が信頼性を持って測定できる。

認識された生物資産又は農産物は、原則として売却費用控除後の公正価値で測定しなければなりません。ただし、生物資産の公正価値が信頼性をもって測定できない場合、当該生物資産は減価償却累計額及び減損損失累計額控除後の取得原価により測定しなければなりません。なお、公正価値が信頼性をもって測定できないという判断は、生物資産の当初認識時においてのみ認められ、一度売却費用控除後の公正価値で測定した生物資産は、処分するまで売却費用控除後の公正価値で測定し続けなければなりません。また、IAS第41号では、農産物の公正価値は常に信頼性を持って測定できるという見解を反映しており、いかなる場合においても売却費用控除後の公正価値で測定しなければなりません。

4.利得及び損失

生物資産の売却費用控除後の公正価値による当初認識時及び変動により発生する利得又は損失、及び農産物の売却費用控除後の公正価値により当初認識することにより生じる利得又は損失は、発生した期の純損益に含めなければなりません。

5.政府補助金

売却費用控除後の公正価値で測定される生物資産に関する無条件の政府補助金は、政府補助金を受け取ることになった時に、純損益に認識しなければなりません。政府補助金に付帯条件がある場合には、当該付帯条件が満たされたときに純損益に認識しなければなりません。

なお、減価償却累計額及び減損損失累計額控除後の取得原価により測定される生物資産に関連する政府補助金には、IAS第20号「政府補助金の会計処理及び政府援助の開示」が適用されます。

6.開示

企業は、以下の事項を開示しなければなりません。

【1】全般的事項
(a)生物資産及び農産物の当初認識において発生した利得又は損失の合計額
(b)生物資産の売却費用控除後の公正価値の変動により発生した利得及び損失の合計額
(c)収穫時における農産物及び生物資産の公正価値を算定する際に適用した方法及び主要な仮定
(d)所有権が制限されている生物資産について、その存在と帳簿価額及び担保として差し入れている生物資産の帳簿価額
(e)生物資産の開発又は取得に関するコミットメントの金額
(f)農業活動に関する財務リスク管理方針
(g)生物資産の帳簿価額の期首から期末への変動の調整表

【2】生物資産の公正価値が信頼性をもって測定できない場合の追加開示
(a)当該生物資産の説明
(b)公正価値を信頼性をもって測定できない理由の説明
(c)可能な場合には、公正価値を表している可能性が高い見積額の範囲
(d)使用した減価償却の方法
(e)使用した耐用年数又は償却率
(f)期首及び期末の減価償却累計額控除前の帳簿価額並びに、減価償却累計額(減損損失累計額との合計額)の総額

 【3】政府補助金
(a)財務諸表に認識した政府補助金の性質及び程度
(b)政府補助金に付している未履行の付帯条件及びその他の偶発事象
(c)政府補助金の水準が大きく減額されることが予想される場合には、その旨
 
執筆者:関和輝
 

 

シリーズ「監査基準のクラリティ版についての解説」はお休みさせて戴きます。

 


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  明誠ニュースレター vol.25
2012年11月12日発行
発行責任者:武田剛 プロダクトマネジャー:村田博明
制作:株式会社ゼラス 佐々木景子
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