明誠グループニュースレター

情報フラッシュ [ 連載記事 ]
ActiveDataによる不正監査手続 第3回 売上調整仕訳等の吟味
IFRS(国際財務報告基準)第29回 IFRS第1号「国際財務報告基準の初度適用」
国際監査基準のクラリティ版について解説(第20回)「監査人の交代」「中間監査」について
[ トピック解説 ]
2013年税制改正の概要及び(個人所得税)

情報フラッシュ

 
発表日時 表題
平成25年3月30日 日本公認会計士協会は業種別委員会研究報告第10号「年金基金に対する監査に関する研究報告」を公表しました。
平成25年3月30日 日本公認会計士協会は「監査・保証実務委員会研究報告第26号「年金資産に対する監査手続に関する研究報告」」を公表しました。
平成25年3月29日 企業会計基準委員会は「特別目的会社の連結範囲等に関する検討の中間取りまとめ」を公表しました。
平成25年3月29日 日本公認会計士協会は「『不正リスク対応基準』に対応するための品質管理基準委員会報告書第1号「監査事務所における品質管理」及び監査基準委員会報告書220「監査業務における品質管理」の一部改正について」(公開草案)を公表しました。
平成25年3月26日 金融庁企業会計審議会は「監査基準の改訂及び監査における不正リスク対応基準の設定に関する意見書」を公表しました。
平成25年3月25日 日本公認会計士協会は「業種別委員会実務指針第30 号『自己資本比率の算定に関する合意された手続による調査業務を実施する場合の取扱い』の改正について」を公表しました。
平成25年3月21日 金融庁は次世代EDINETタクソノミ(案)第四版を公表しました。
平成25年3月14日 金融庁企業会計審議会は「監査基準の改訂及び監査における不正リスク対応基準の設定について」を公表しました。
平成25年3月7日 IASBは、貸付金の損失引当に関する改訂提案を公表しました。
平成25年3月4日 日本公認会計士協会は業種別委員会報告第23号「投資信託及び投資法人における特定資産の価格等の調査」の改正についてを公表しました。
平成25年3月4日 日本公認会計士協会は業種別委員会実務指針第14号「投資信託及び投資法人における当面の監査上の取扱い」の改正についてを公表しました。
平成25年2月28日 IASBは、IAS第39号「金融商品:認識及び測定」の修正案 
デリバティブの契約更改とヘッジ会計の継続を公表しました。

トピック解説

 
 

2013年税制改正の概要及び(個人所得税)

1.はじめに

自民、公明両党は2013年1月24日、2013年度税制改正大綱を決定し、3月29日に参議院本会議で可決・成立、3月30日に改正政省令・告示等とともに公布しました。

現在の我が国は円高・デフレ不況が長引き、貿易赤字の拡大、国内の成長機会や若年雇用の縮小など、深刻な経済状況となっています。これらを突破するには「縮小均衡の分配政策」から「成長と富の創出の好循環」へと転換させる必要があります。

2013年度税制改正では、富裕層や高額所得者の所得税や相続税の最高税率が引き上げられ、個人富裕層の税負担の増加がクローズアップされている反面、安倍政権が掲げるデフレ脱却と景気浮揚を税制面から後押しするため、法人税では人材育成や雇用の確保と個人所得の拡大を図るための所得拡大促進税制を創設するとともに、雇用促進税制を拡充し経済成長を促進させる他、国内における民間投資の促進のための生産等設備投資促進税制が創設されています。さらに、東日本大震災からの復興を支援するための税制上の措置等を講じています。

当ニュースレターでは「個人所得課税」について、次回以降に「資産課税」「法人課税」について詳しく説明していきます。

2.個人所得税

[1] 所得税の最高税率の見直し

現在の所得税の税率構造に加えて、課税所得4,000万円超の場合は45%の税率となります。これは、2015年分以後の所得税から適用されます。2014年4月からの消費税の引上げや、2013年からの復興特別所得税による負担増等にも配慮し、特に高い所得階層に絞って一定の負担増を求めることが狙いです。

 

課税所得金額 税率 控除額
195万円以下 5 0
195万円超 330万円以下 10 97,500
330万円超 695万円以下 20 427,500
695万円超 900万円以下 23 636,000
900万円超 1,800万円以下 33 1,536,000
1,800万円超 4,000万円以下 40 2,796,000
4,000万円超 45 4,796,000

 

[2] 日本版ISAの創設

個人投資家向けの税制優遇策として、日本版ISAが創設されます。日本版ISA(Individual Savings Accounts)とは、英国の少額投資非課税制度であるISAを参考にして導入される制度であり、正式には非課税口座内の少額上場株式等に係る配当所得及び譲渡所得等の非課税措置といいます。

個人が年間100万円 (未使用枠の翌年以降の繰越は不可)を上限として上場株式や公募株式投資信託へ新たに投資をした場合、通常20%の税率が適用される配当や譲渡益はすべて非課税になります。こうした非課税投資が行うことができる期間は2014年から2023年までの10年間であり、当該投資を非課税で運用できる期間は最長5年間となっています。したがって、毎年上限額まで投資すれば最大で500万円の非課税投資ができることになります。

日本版ISAを利用するには、2014年1月1日から2023年12月31日までの期間中に銀行や証券会社等の金融機関に所定の書類を提出して専用の非課税口座を開設する必要があります。また、対象者は日本に住む20歳以上に限られ、一人につき一口座となります。

この制度の狙いは、「貯蓄から投資へ」の流れを促進することにあります。日本家計の金融資産の内訳は、現金・預金が過半数を占め、株式や投資信託などは10%にも満たないのです。そこで、将来への備えは今後益々重要になる中で、世の中の様々な税制メリットの一つに仲間入りする日本版ISAを上手に利用し、非課税の恩恵を受けながら将来への備えに取り組み始めることにあります。

 

[3] 金融所得課税の一体化の拡充

現行の上場株式・株式投資信託の配当・分配金、譲渡損益に対する税率10%(所得税7%、住民税3%)について、2013年12月31日をもって廃止し、2014年1月1日以降は税率20%(所得税15%、住民税5%)に引き上げられる。さらに2016年1月1日から公社債等の譲渡益が課税されることになります。

現行税制では、上場株式・株式投資信託の配当・分配金、譲渡損益と公社債の利子、譲渡損益との間で損益の通算は認められていません。しかし改正税制では、金融所得課税の一体化を進める観点から、公社債にかかる2016年1月1日以後の譲渡所得等に対する課税を原則として申告分離課税方式としたうえで、特定公社債等に係る利子所得等、譲渡所得等に対する課税について、上場株式等の配当所得等及び譲渡所得等との損益通算が可能なり、通算範囲の拡大が行われました。

デリバティブ取引については、総合的な取引所の実現にも資するとの観点から、「検討事項」として与党税制改正大綱に記載されています。

この制度の狙いは、金融所得に対する課税について、多様な金融商品(上場会社、公募投資信託、預金、公社債等)を一元的に捉え、その課税方式の均衡化を図り、併せて金融商品間の損益通算を広く可能とすることにあります。

 

[4]住宅ローン減税の拡充

住宅ローンなどを利用して住宅を購入、新築または増改築工事をしたとき、一定の要件を満たせば入居した年から10年間にわたり、支払った所得税の還付(または支払うべき所得税の控除)を受けることができます。これを「住宅ローン減税」といいます。年末の住宅ローン残高のうち2,000万円までの部分について、その1%分を毎年の所得税などから差し引かれ、一般住宅の場合、現行は年間最大20万円・入居年から10年間(最大200万円)の減税となっています。

2013年税制改正では、住宅ローン減税を2014年1月1日から2017年末まで4年間延長し、その期間のうち2014年4月1日から2017年末までに、一般住宅を取得した場合には、住宅ローン残高の上限を4,000万円に引き上げ、最大控除額が400万円にそれぞれ拡充されます。なお、認定住宅(長期有料住宅・低炭素住宅)を取得した場合の最大控除額は500万になります。

住宅取得は最大の「個人消費」であり内需拡大の柱であり、また、産業としてのすそ野が広く、地域経済への波及効果も大きいものです。以前より懸念されている2014年4月からの消費税の引上げ前後における駆け込み需要及びその反動等による影響については、過去の消費税導入時及び引き上げ時の例から見ても大きいこと予想され、そこで、住宅の取得・改修に伴う税制の大幅拡充・延長となりました。

また「控除枠」自体が増えても、所得税負担がその枠まで達しなければ減税効果は少ないこととなります。そこで、支払う所得税が控除額に達しない場合に、住民税からも一部を控除できる制度も拡充され、住民税の控除額の上限は年間13万6,500円まで引き上がることとなりました。

この制度の狙いは、消費税引き上げによる駆け込み需要と反動減による落ち込みを抑えることにあります。

 

[5] 認定住宅の取得及びリフォーム工事に係る住宅投資減税の拡充

復興支援のための税制上の措置として、高台移転をさらに推進するため、以下の要件を満たす防災集団移転促進事業で行われる土地等の買い取りにかかる譲渡所得に対しては、5,000万円の特別控除を適用します。これは、2013年4月1日以後に行う土地及び土地の上に存する資産の譲渡について適用されます。

(1) 防災集団移転促進事業が復興特区法の復興交付金事業計画に位置付けられていること

(2) 防災集団移転促進事業を含む一団体の船見防災拠点市街地形成施設に準ずる事業(事業期間:3年)として知事の証明を受けていること

また、東日本団震災の被災者が新たに再建住宅を取得等する場合、住宅ローン減税の最大控除額をほかの地域よりさらに抜本的にかさ上げし、現行税制の360万円から600万円に引き上げられます。

 
執筆者:繻エ由佳、佐藤沙織
 

連載記事

 
 

ActiveDataによる不正監査手続 第3回 売上調整仕訳等の吟味

シリーズの3回目は、売上調整仕訳等の吟味をしてみたいと思います。

 

売上の粉飾は、それが販売部門により行われる場合と、経理財務部門で行われる場合に分けられます。経理財務部門が売上の粉飾を行う場合は、販売管理システムのデータは正しいままで、経理財務システム上のデータが改ざんされます。この状況は、不正の方法とシステム環境の観点から、下の表のように分類することができます。


  不正の方法
  販売管理システムからの出力データに調整を加えて仕訳データを作成する 販売管理システムに存在しない仕訳データを作成する





販売管理システムと経理財務システムが連動しており、経理財務部門で経理財務システムのデータを変更できない A B
販売管理システムと経理財務システムの連携状況によらず、通常は両者のデータが一対一対応する C D
販売管理システムのデータは経理財務部門で集計されて経理財務システムに入力される E F

 

まず、AおよびBの場合は、経理財務部門で生成された売上計上仕訳の抽出は比較的容易です。通常は、仕訳データの中の伝票番号や仕訳作成者の項目には、販売管理システムが自動生成した仕訳を示す記号などが含まれているからです。この場合には、データ監査ツールが有効に機能します。

次に、CおよびDの場合は、販売管理システムの合計データと仕訳データを突合することで不一致を見つけることができます。この場合は、手作業の突合とデータ監査ツールの利用の、どちらが効率的になるかは、ケースバイケースということになると思います。

一方、EおよびFの場合は、そのプロセスをトレースしてチェックするしかなく、データ監査ツールよりも手作業でチェックする方が効率的であると思われます。

 

それでは、Bの場合を想定して、シート名が「売上仕訳」というシートに含まれる不正な売上計上データを、ActiveDataを用いて抽出してみたいと思います。

@対象となる「売上仕訳」シートを開きます。

Aワークシートコマンドの中から「シートクエリ」を選択し、さらに「指定値により抽出」を選択します。

B「指定値により抽出」ダイアログボックスが開きますので、条件を次のように設定します。

(ア)「条件を入力する列」で「伝票番号」を指定します。

(イ)その下の欄の否定条件(NOT)をチェックします。

(ウ)「条件入力」の「を含む文字」をチェックし、販売管理システムから自動で生成されていることを示す「s」という文字を入力します。

C「OK」をクリックすると、「抽出>売上仕訳」シートが作成されます。

 

これにより販売管理システムを通さずに計上された売上仕訳が、抽出されました。これらは不正リスクのある取引として、その内容を精査し、必要に応じて他の帳簿や証憑をチェックして、実在性を確かめることになるでしょう。

 
執筆者:武田剛
 

 

IFRS(国際財務報告基準)第29回 IFRS第1号「国際財務報告基準の初度適用」

1.はじめに

今回は、IFRS第1号「国際財務報告基準の初度適用」(以下、IFRS第1号という。)について紹介します。

2.目的

IFRS第1号の目的は、企業の最初のIFRS財務諸表及び対象年度の一部分に係る期中財務報告が、次のような高品質の情報を含むようにすることにあります。

【1】利用者にとって透明で、表示されている全期間にわたって比較可能である。

【2】IFRSに準拠した会計処理のための適切な出発点を提供する。

【3】利用者にとっての便益を超えないコストで作り出すことができる。

3.IFRS開始財政状態計算書の作成

企業は、IFRS移行日現在で、IFRS開始財政状態計算書を作成し表示する必要があり、IFRS開始財政状態計算書及び最初のIFRS財務諸表で表示される全期間を通じて、同一の会計方針を用いなければなりません。会計方針は、後述する例外を除き、最初のIFRS報告期間の期末日現在で有効なIFRSに準拠しなければなりません。

また、一部の例外規定を除き、IFRS開始財政状態計算書で次のことを行わなければなりません。

【1】IFRSで認識が要求されているすべての資産及び負債を認識する。

【2】IFRSが資産又は負債としての認識を許容していない項目は、認識しない。

【3】従前の会計原則に従って、企業が資産、負債又は資本の構成要素の1つとして認識していたが、IFRS に従えば資産、負債又は資本の構成要素のうち異なる種類のものである項目については、分類を変更する。

【4】認識されたすべての資産及び負債の測定にはIFRSを適用する。

4.財務諸表の表示期間

企業が初めて作成する財務諸表は、最低下記の期間を含む比較表示を行わなければなりません。

【1】3期分の財政状態計算書(開始財政状態計算書【1】-1、前期末財政状態計算書【1】-2、当期末財政状態計算書【1】-3)

【2】2期分の純損益及びその他の包括利益計算書

【3】2期分の分離された純損益計算書(表示する場合)

【4】2期分の持分変動計算書

【5】2期分のキャッシュ・フロー計算書

【6】関連する注記

上記を図示すると以下のようになります。

 

5.遡及適用の例外

前述したように、企業は最初のIFRS報告期間の期末日現在で有効なIFRSに準拠して、IFRS開始財政状態計算書及びIFRS財務諸表を作成しなければならず、遡及適用が原則となっていますが、2種類の例外措置を設けています。

【1】遡及適用が禁止される項目

IFRS第1号においては、遡及が禁止される項目として以下の6つが挙げられています。

(1)見積りの適用

(2)金融資産及び金融負債の認識の中止

(3)ヘッジ会計

(4)非支配持分

(5)金融資産の分類及び測定

(6)組込デリバティブの区分

例えば、見積りの適用については、従前の会計基準において見積りを行った時点の情報に基づいて行う必要があり、ヘッジ会計については、IFRS移行日現在ですべてのデリバティブを公正価値で測定し、かつ、従前の会計基準による繰延損益をすべて消去する必要があります。

【2】他のIFRSの一部の要求事項についての免除

IFRS第1号においては、企業のIFRS適用による費用対効果を踏まえて、以下の19項目については、他のIFRSの一

部の要求事項について免除が認められています。

(1)企業結合
(2)株式報酬取引
(3)保険契約
(4)みなし原価
(5)リース
(6)換算差額累計額
(7)子会社、共同支配会社及び関連会社への投資
(8)子会社、関連会社及び共同支配企業の資産及び負債
(9)複合金融商品
(10)既に認識されている金融商品の指定
(11)当初認識時における金融資産または金融負債の公正価値測定
(12)有形固定資産の原価に算入されている廃棄負債
(13)IFRIC第12号「サービス委譲契約」に準拠して会計処理される金融資産または無形資産
(14)借入コスト
(15)顧客からの資産の移転
(16)資本性金融商品による金融負債の消滅
(17)激しい超インフレ
(18)共同支配の取決め

(19)露天掘り鉱山の生産フェーズにおける剥土コスト

6.開示

企業は、従前の会計基準からIFRSへの移行が、報告された財政状態、財務業績及びキャッシュ・フローにどのように影響したかを説明しなければならず、株主資本や包括利益等について調整表を作成する必要があります。

7.おわりに

現在日本は、IFRS強制適用の明確な時期について公表していませんが、IFRSを最初に適用する際には、過去の財務諸表についても遡及修正が必要となるため、会社として十分な準備期間の確保することや、経理部門を中心としてIFRSの知識習得に努める必要があると考えます。

 
執筆者:関和輝
 

 

国際監査基準のクラリティ版について解説(第20回)
「監査人の交代」「中間監査」について

1.基準の概要

今回は、監査基準委員会報告書900「監査人の交代」と910「中間監査」について解説します。いずれも、2013年3月決算に係る監査から適用されている基準です。

2.「監査人の交代」

本基準の目的は、 監査人の交代にあたって、 監査人が職業的専門家としての基準等を遵守して、監査事務所間の引継が適切に行われることを合理的に確保するための手続を実施することです。

 

(1) 監査業務の引継 −後任の監査人

( i )監査業務の引継の手続

監査人が交代する場合には、後任の監査人は前任監査人に対して監査業務の引継を求めなければなりません。監査業務の引継は、主に後任の監査人による質問及び監査調書の閲覧によって実施されます。

なお、このときに前任監査人に対して質問しなければならない事項は以下の事項を含みます。

(a) 経営者の誠実性について疑義があるか否か。

(b) 監査人の交代事由に関する前任監査人の見解。

(c) 経営者による不正若しくは従業員による重要な不正が存在している、 又は兆候があるか否か。

 

( ii )十分な引継を受けられない場合

後任の監査人は、法令等に従って 監査人の交代に関する手続が会社により適切に行われているかどうか検討しなければなりません。後任の監査人は、前任監査人から監査業務の十分な引継を受けられない場合には、第三者への問い合わせを行うなど、 他の方法により情報を収集し、監査契約の締結に伴うリスクを低い水準に抑えることができるか否かについて検討しなければなりません。そして、リスク等の程度を許容可能な水準まで軽減できないと判断した場合には契約を締結することはできません。

 

(2)監査業務の引継 − 前任監査人

前任監査人は後任の監査人に引継ぎを行う場合には、後任の監査人が監査を実施する上で有用な情報等を提供するため、 適時に十分な引継を行わなければなりません。これには、重要な虚偽表示に関わる情報等を伝達すること、後任の監査調書の閲覧請求に対応することなどが含まれます。

 

(3)守秘義務

前任監査人と後任監査人は、 業務上知り得た情報を他の者に漏えいしたり、第三者のために利用してはなりません。なお、 守秘義務が解除される正当な理由には監査業務の引継を行う場合が含まれますが、その旨をあらかじめ監査契約書等に明記しなければなりません。

なお後任の監査人は、前任監査人から入手した情報については、監査契約の締結の可否の判断及び円滑な監査業務の引継に役立てるためのみに利用し、それ以外に利用してはなりません。

3.「中間監査」

本基準は、中間監査に関する実務上の指針を提供しています。監査人が中間監査の意見を表明するためには、監査人は、中間財務諸表に全体として投資者の判断を損なうような重要な虚偽表示がないことについて合理的な保証を得なければなりません。なお、年度監査の一環として行われる中間監査の保証水準は年度監査と同じではなく、中間監査意見は年度監査と同程度の信頼性を保証するものではありません。

 

(1) リスク評価手続

監査人は、内部統制を含む企業及び企業環境の理解を通じて、不正か誤謬かを問わず、中間財務諸表全体レベルの重要な虚偽表示リスクとアサーション・レベルの重要な虚偽表示リスクを識別・評価します。そして、中間監査に係る重要な虚偽表示リスクが特別な検討を必要とするリスクであると判断した場合は、当該リスクに関連する内部統制を理解しなければなりません。

 

(2) リスク対応手続

監査人は、中間監査に係る自己の意見を形成するに足る基礎を得るために、評価した虚偽表示リスクに応じて十分かつ適切な監査証拠を入手します。なお監査人は、中間監査においては年度監査と同一の監査手続を実施する必要はありませんが、分析的手続及び質問の監査手続は実施しなければなりません。監査人は、評価したリスクの程度にかかわらず、重要な取引・勘定残高・開示等の各々に対する実証手続の立案・実施について考慮し、設定した発見リスクの程度に適合した実証手続を実施することになります。また、中間監査に係る特別な検討を必要とするリスクを識別している場合には、当該リスクに個別に対応する実証手続などを実施しなければなりません。

 

(3) 継続企業の前提

監査人は中間監査において、継続企業を前提として中間財務諸表を作成することの適切性に関して合理的な期間について経営者が行った評価を検討しなければなりません。監査人は、前事業年度の貸借対照表日において継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められた場合には、当該事象又は状況の変化、これらに係る経営者の評価及び対応策の変更、開示の適切性について検討します。

また、当該事象又は状況並びにこれらに係る経営者の評価又は対応策に大きな変化があった場合など一定の場合には、監査人は、中間貸借対照表日の翌日から少なくとも1年間について経営者が行った評価及び対応策について検討した上で、なお継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められるか否かを検討しなければなりません。

 

(4) 中間監査の過程で識別した虚偽表示の評価

中間監査の過程で識別した虚偽表示の評価にあたっては、監査人は、識別した虚偽表示が中間監査に与える影響と、未修正の虚偽表示が中間財務諸表に与える影響を評価し、当該虚偽表示の影響を十分考慮しなければなりません。

 

(5) 中間監査報告書

監査人は、中間財務諸表に対する意見を形成し、中間監査報告書において中間監査意見を表明します。中間監査の保証水準は年度監査の保証水準ほど高くないことを明確にするため、中間監査報告書においては、中間監査が分析的手続及び質問を中心とした監査手続を適用して行われており、年度監査に係る監査手続とは異なる旨を記載しなければなりません。

 

(6) 監査調書

監査人は中間監査に当たり、年度監査と同様に、一般に公正妥当と認められる中間監査の基準に準拠して監査を実施したこと、十分かつ適切な監査証拠に基づいて中間監査意見を形成したことを示す証拠として監査調書を作成しなければなりません。

 
執筆者:吉田隆伸
 


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  明誠ニュースレター vol.30
2013年4月12日発行
発行責任者:武田剛 プロダクトマネジャー:村田博明
制作:株式会社ゼラス 佐々木景子
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