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情報フラッシュ [ 連載記事 ]
ActiveDataによる不正監査手続 第4回 滞留債権一覧表の作成
IFRS(国際財務報告基準)第30回 IFRS第2号「株式に基づく報酬」
国際監査基準のクラリティ版について解説(第21回)「監査の過程で識別した虚偽表示の評価」「監査調書」について
[ トピック解説 ]
2013年税制改正(資産課税)
2013年税制改正(法人課税)

情報フラッシュ

 
発表日時 表題
平成25年4月30日 金融庁は「金融商品取引法施行令の一部を改正する政令(案)」及び「企業内容等の開示に関する内閣府令等の一部を改正する内閣府令(案)」等を公表しました。
平成25年4月24日 日本公認会計士協会は「監査・保証実務委員会実務指針「産業活力の再生及び産業活動の革新に関する特別措置法に基づく会計監査に係る監査上の取扱い」(公開草案)」を公表しました。
平成25年4月24日 日本公認会計士協会は「監査・保証実務委員会研究報告「産業活力の再生及び産業活動の革新に関する 特別措置法における事業再構築計画及び経営資源再活用計画の認定申請書に 添付する「資金計画に係る公認会計士又は監査法人の報告書」に係る研究報告」 (公開草案)」を公表しました。
平成25年4月19日 日本公認会計士協会は法規委員会研究報告第14号「監査及び四半期レビュー契約書の作成例」の改正についてを公表しました。
平成25年4月16日 日本公認会計士協会は「非営利法人委員会研究報告「社会福祉法人の外部監査上の取扱い」(公開草案)」を公表しました。
平成25年4月4日 IASBはIAS第19号の修正「確定給付制度:従業員拠出」に関する提案を公表しました。

トピック解説

 
 

2013年税制改正(資産課税)

1.はじめに

平成25年度税制改正法案が3月29日に参議院本会議で可決・成立し、3月30日に改正政省令・告示等とともに公布されました。

平成25年度税制改正の目玉ともいえるのが相続税の改正です。基礎控除の引下げにより、今まで対象とならなかった方が課税対象者となり相続件数は改正前に比べ1.5倍に増えるといわれています。特に、大都市圏では影響が大きく、戸建の家を持っていると相続税がかかるといわれるほどで、「相続税は富裕層の税」といわれていた時代は終わったと言えます。

そこで今回は、注目される相続税・贈与税の平成25年度税制改正の概要について説明していきます。

2.平成25年度税制改正の概要

(1)相続税の基礎控除の引下げ

相続税の基礎控除が下表の通り、改正前に比べ6割に縮小されました。

 

  改正前 改正後
基礎控除額 5000万+1000万×法定相続人 3000万+600万×法定相続人

(注)上記の改正は、平成27年1月1日以後の相続または遺贈により取得する財産に係る相続税について適用されます。

 

 

(2) 相続税の税率構造の見直し

相続税の累進税率を6段階から8段階に細分化するとともに、最高税率を50%から55%に引き上げる改正がなされました。

法定相続分に基づく取得金額 改正前
税率 控除額
1000万円以下 10% ゼロ
1000万円超 3000万円以下 15% 50万円
3000万円超 5000万円以下 20% 200万円
5000万円超 1億円以下 30% 700万円
1億円超 2億円以下 40% 1700万円
2億円超 3億円以下
3億円超 6億円以下 50% 4700万円
6億円超
 
改正後
税率 控除額
10% ゼロ
15% 50万円
20% 200万円
30% 700万円
40% 1700万円
45% 2700万円
50% 4200万円
55% 7200万円

(注)上記の改正は、平成27年1月1日以後の相続または遺贈により取得する財産に係る相続税について適用されます。

 

(3) 税額控除の引き上げ

未成年者や障害者に配慮する観点から、未成年者控除と障害者控除の引き上げがされています。

  改正前 改正後
未成年者控除額 6万円×20歳に達するまでの年数 10万円×20歳に達するまでの年数
障害者控除額 6万円(特別障害者:12万円)
×85歳に達するまでの年数
10万円(特別障害者:20万円)
×85歳に達するまでの年数

(注)上記の改正は、平成27年1月1日以後の相続または遺贈により取得する財産に係る相続税について適用されます。

 

(4) 小規模宅地等の特例の拡充

相続税の基礎控除の引き下げ、最高税率の引き上げ等税率構造の見直しを行うに際し、個人の土地所有者の居住や事業の継続に配慮する観点から下記の点について小規模宅地等の特例の拡充が行われています。

(1) 居住用宅地の適用対象面積の見直し

特定居住用宅地等に係る特例の適用対象面積が240uから330uに拡充されます。

(2) 居住用宅地と事業用宅地を併用する場合の限度面積の拡大

特例の対象として選択する宅地等の全てが特定事業用等宅地等及び特定居住用宅地等である場合には、それぞれの適用対象面積まで適用可能となりました。これにより、@の改正と併せて、特定事業用等宅地等で400u、特定居住用宅地等で330u、合計で最大730uまで小規模宅地等の特例を受けることが可能となりました。

なお、貸付事業用宅地等を選択する場合における適用対象面積の計算については、現行どおり調整を行うこととなります。

(3) 居住用宅地の適用要件の緩和・柔軟化

小規模宅地等の特例の適用判定にあたり、二世帯住宅における構造上の要件が撤廃されました。これまで、二世帯住宅について構造上区分があり住宅内部で互いに行き来ができないものは「別居」として扱い、小規模宅地等の特例の適用は受けられませんでしたが、改正により「同居」として扱い、特例の適用を受けられることとなりました。

また、現行の税制では、終身利用権のある老人ホームに入居した場合、居住しなくなった家屋の敷地については特定居住用宅地等に該当せず、小規模宅地等の特例の適用は受けられませんでしたが、今回の改正により、以下の要件の下で、終身利用権のある老人ホームに入居した場合でも、小規模宅地等の特例の適用が受けられることとなりました。

ア.被相続人に介護が必要なため入所したものであること。

イ.貸付けなどの用途に供されていないこと。

(注)上記の改正は、平成27年1月1日(「居住用宅地の適用要件の緩和・柔軟化」については、平成26年1月1日)以後の相続・遺贈について適用されます。

 

(5)相続時精算課税制度の拡充

  改正前 改正後
贈与者 65歳以上 60歳以上
受贈者 20歳以上の推定相続人 20歳以上の推定相続人および孫

(注)上記の改正は、平成27年1月1日以後の贈与により取得する財産に係る贈与税について適用されます。

 

(6) 贈与税の税率構造の見直し

相続税の最高税率が55%に引き上げられたことに伴い、贈与税の最高税率も55%に引き上げられます。その一方で、高齢者の保有する資産を現役世代により早期に移転させ、その有効活用を通じて「成長と富の創出の好循環」につなげるため、子や孫等が受贈者となる場合の贈与税の税率構造が緩和されています。

  改正前 改正後
右記以外の贈与 20歳以上のものが直系尊属から贈与を受けた場合
課税対象金額 税率 控除額 税率 控除額 税率 控除額
200万以下 10% 10% 10%
300万以下 15% 10万 15% 10万
400万以下 20% 25万 20% 25万 15% 10万
600万以下 30% 65万 30% 65万 20% 30万
1000万以下 40% 125万 40% 125万 30% 90万
1500万以下 50% 225万 45% 175万 40% 190万
3000万以下 50% 250万 45% 265万
4500万以下 55% 400万 50% 415万
4500万超 55% 640万

(注)上記の改正は、平成27年1月1日以後の贈与により取得する財産に係る贈与税について適用されます。

 

(7)事業承継税制の見直し

事業承継税制とは、一定の要件を満たす事業承継を行う場合に、非上場株式の贈与または相続について、その贈与税または相続税の一部の納税を猶予するという制度です。平成21年度に創設された同制度ですが、適用要件の厳しさから適用件数はこれまでで500件ほどと決して多くありませんでした。平成25年度税制改正では、使い勝手の悪かった事業承継税制の適用要件の緩和等により制度適用を促進しつつ、適正な課税を確保するための見直しが行われています。

項目 改正前 改正後
要件の緩和・負担の軽減・手続きの簡素化
経済産業大臣の事前確認 必要 不要
後継者要件 前経営者の親族に限定 親族以外の一定の者も可
贈与者(先代経営者)要件 贈与時において役員を退任
(給与の支給不可)
贈与時において代表者から退任
(有給役員として残留が可能)
雇用8割維持要件 認定後5年間毎年維持 認定後5年間平均で維持
被相続人の債務及び葬儀費用の取扱い 非上場株式等から控除する 個人財産から控除
民事再生計画の認可があった場合 納税猶予額を再計算し、当初の猶予税額との差額は免除
納税猶予打ち切りの際の利子税 納税猶予期間における利子税を負担利子税率2.1% 5年以内の利子税は免除
利子税率0.9%
株券不発行会社の株券の発行 必要 一定の場合には不要
申告書・継続届出書等に係る添付書類 必要 一定のものは提出不要
適正な課税の確保
制度適用となる資産保有型・運用型会社の要件 ・常時使用従業員数が5名以上
・販売・資産貸付等の事業の実施
・後継者と生計を一にする親族を除外
・後継者の同族関係者への貸付は除外
資産保有型・運用型会社による上場株式(保有割合3%以上)の保有 制限なし 上場株式相当額は猶予しない

(注)上記の改正は、平成27年1月1日以後に相続若しくは遺贈または贈与により取得する財産に係る相続税または贈与税について適用されます。

 

(8) 子や孫等に対する教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置の創設

高齢者層の保有する豊富な金融資産の若年世代への移転を促し、子どもの教育資金の早期確保を図るため、30歳未満の受贈者の教育資金に充てるために、その直系尊属(父母、祖父母、曾祖父母等)が金銭を拠出して金融機関等に信託した場合、受贈者1名につき1,500万円(学校等以外に支払う金銭は500万円が限度)までは贈与税が非課税となります。なお、教育資金とは、学校または学校以外の者に支払われる金銭で、文部科学大臣が定めるものになります。

贈与を受ける者は、この特例の適用を受けようとする旨等を記載した教育資金非課税申告書を金融機関を通じて、贈与を受ける者の納税地の所轄税務署長に提出する必要があるほか、払出しを行った場合には、払い出した金銭を教育資金の支払いに充当したことを証する書類を金融機関に提出するなどの手続き等が必要となります。

また、受贈者が30歳に達した際に、受贈を受ける者の非課税拠出額から教育資金支出額を控除した残額がある場合には、残額について贈与者が30歳に達した日に贈与があったものとして贈与税が課税されます。

(注)上記の改正は、平成25年4月1日から平成27年12月31日までの間の金銭の拠出(教育資金の贈与)に限り適用されます。

 

 

執筆者:松浦 政文
 

 

2013年税制改正(法人課税)

所得税法等の一部を改正する法律案が平成25年3月29日に成立、平成25年3月30日に公布がなされ、法人課税について主に以下のような改正が行われました。

 

1.中小法人の交際費課税の特例の拡充

2.雇用促進税制の拡充

3.研究開発税制の拡充

4.環境関連投資促進税制の拡充等

5.生産等設備統制促進税制

6.所得拡大促進税制

7.商業・サービス業及び農林水産業を営む中小企業等の経営改善に向けた設備投資を促進するための税制措置

8.福島復興再生特別措置法の改正に伴う措置

 

以下、上記の税制改正の内容についての解説を行います。

1.中小法人の交際費課税の特例の拡充

  現行 H25年度税制改正
大法人 全額損金不算入
中小法人 交際費のうち600万円に達するまでの金額の90%が損金算入可能 交際費のうち800万円以下の金額の全額を損金算入可能

2.雇用促進税制の拡充

  現行 H25年度税制改正
適用対象法人 青色申告法人
適用要件 前期及び当期に事業主都合による離職者がいないこと
基準雇用者数が5人以上(中小企業者等については2人以上)であること
基準雇用者割合が10%以上であること
給与等支給額が比較給与等支給額以上であること
雇用保険法第5条第1項に規定する適用事業(一定の事業を除きます。)を行っていること
税額控除額 控除基準額 一人当たり20万円 一人当たり40万円
税額基準額 法人税額の10%(中小法人にあっては20%)を限度とする。

3.所得拡大促進税制の創設

適用対象法人 青色申告法人
適用対象年度 平成25年4月1日から平成28年3月31日
要件 以下の全てを満たすこと
(1)基準年度(*1)と比較して5%以上給与等支給額が増加すること
(2)給与等支給額が前事業年度を下回らないこと
(3)平均給与等支給額が前事業年度を下回らないこと
税額控除額 控除基準額 給与等支給額の増加額の10%の税額控除
  税額基準額 法人税額の10%(中小企業等は20%)を限度とする。

*1平成25年4月1日以後最初に開始する事業年度の直前の事業年度を指す。
なお、所得拡大促進税制と雇用促進税制は同時に適用することができませんので注意が必要です。

4.研究開発税制の拡充

  現行 H25年度税制改正
適用対象法人 青色申告法人
試験研究費の総額に係る税額控除制度
及び
特別試験研究費の額(*2)に係る税額控除制度
控除基準額 試験研究費の総額の8%〜10%
(特別試験研究費の額については12%)
税額基準額 法人税の20%を限度額とする。
(平成21年4月1日から平成24年3月31日までの間に開始する各事業年度においては、30%相当額)
法人税の20%を限度額とする。
(平成25年4月1日から平成27年3月31日までの間に開始する各事業年度においては、30%相当額(*3)
中小企業技術基盤強化税制
(中小企業者のみ適用可)
控除基準額 試験研究費の総額の12%
税額基準額 法人税の20%を限度額とする。
(平成21年4月1日から平成24年3月31日までの間に開始する各事業年度においては、30%相当額)
法人税の20%を限度額とする。
(平成25年4月1日から平成27年3月31日までの間に開始する各事業年度においては、30%相当額(*3)

*2 平成25年度税制改正により、特別試験研究費の範囲に一定の契約に基づき企業間で実施される共同研究に係る試験研究費が加えられた。

*3 繰越税額控除限度超過額に係る税額控除制度、繰越中小企業者等税額控除限度超過額に係る税額控除制度についても同様。

5.環境関連投資促進税制の拡充等

  現行 H25年度税制改正
即時償却の適用対象資産の具体例

・太陽光発電設備

・風力発電設備

・熱電併給型動力発生装置(コージェネレーション設備)を追加
特別償却(取得価額の30%)の適用対象資産の具体例

・水熱利用設備

・雪氷熱利用設備

・バイオマス利用装置等

・定置用蓄電設備等の追加

・補助金等の交付を受けて取得等をしたものを除外

6.生産等設備統制促進税制の創設

適用対象法人 青色申告法人
適用対象年度 平成25年4月1日から平成27年3月31日
要件

@及びAを共に満たすこと。

@国内における生産等設備への年間総投資額が減価償却費を超えること

A国内における生産等設備への年間総投資額が前年度と比較して10%増加すること

償却限度額 取得価額の30%の特別償却
税額控除額 控除基準額 取得価額の3%の税額控除
税額基準額 法人税額の20%を限度とする

7.商業・サービス業及び農林水産業を営む中小企業等の経営改善に向けた設備投資を促進するための税制措置の創設

適用対象法人 経営改善に関する指導及び助言(*4)を受けたもので、中小企業等かつ青色申告法人
対象事業 卸売業・小売業・サービス業・農林水産業(*5)
適用対象年度 平成25年4月1日から平成27年3月31日
適用対象資産

器具備品(1台又は1基の取得価額が30万円以上のもの)

建物附属設備(一の取得価額が60万円以上のもの)
償却限度額 取得価額の30%の特別償却
税額控除額(*6) 控除基準額 取得価額の7%の税額控除
税額基準額 法人税額の20%を限度とする

*4商工会議所、認定経営革新等支援機関等による法人の経営改善及びこれに必要な設備投資等に係る指導及び助言をいう。

*5これらのうち性風俗関連特殊営業及び風俗営業に該当する一定の事業を除く。

*6資本金3,000万円以下の中小法人に限る

8.福島復興再生特別措置法の改正に伴う措置

避難解除区域等において避難対象雇用者等を雇用する場合の税額控除制度、及び設備投資を行う場合の即時償却・税額控除制度(以下の[1]、[2]を参照)について、新たに避難解除区域等に進出する法人に同様の措置を適用できることとなりました。

 

[1]立地促進区域において機械等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除制度

機械装置を取得した場合

償却限度額 全額償却
税額控除額 控除基準額 取得価額の15%の税額控除
税額基準額 法人税額の20%を限度とする

建物等及び構築物を取得した場合

償却限度額 取得価額の25%の特別償却
税額控除額 控除基準額 取得価額の8%の税額控除
税額基準額 法人税額の20%を限度とする

[2]避難対象者を雇用する場合の税額控除制度

避難対象者への給与等の額のうち20%を税額控除することができる。(法人税額の20%を限度とする。)

  
執筆者:石川 裕也
 

連載記事

 
 

ActiveDataによる不正監査手続 第4回 滞留債権一覧表の作成

シリーズの4回目は、滞留債権一覧表の作成をしてみたいと思います。

 

売上取引の粉飾と滞留債権や貸倒損失は、非常に密接な関係を持っています。例えば架空の売上取引を計上した場合、その売上債権は架空なのですから、真実の相手先から適正に回収されることはありえません。もし、「架空売上債権の回収処理」がなされているとすれば、@何らかの形で外部から資金を調達して、売掛金の回収に見せかけて入金する、A他の得意先からの入金を付替える等の手法で回収したように装う、B取引先を巻き込んで架空循環取引を行って在庫と資金を会社間で循環させるなどの「工夫」をしたのだろうと思われます。

そのような「架空売上債権の回収処理」のための「工夫」をしなかった場合、あるいは「工夫」の果てに誤魔化しきれなくなった場合などには、債権は回収されず、滞留債権となり、最終的には貸倒損失として計上されます。そのため、滞留債権を分析し調査し、あるいは貸倒損失の内容を検証するのは、売上取引の架空計上や水増し計上を発見する有効な手段として、一般的に行われます。

 

滞留債権の分析・調査は、一般的に@回収期限を超過した債権を抽出した滞留債権一覧表を調査する方法、A取引発生日からの経過日数ごとに債権を分類集計した年齢調べ表を調査する方法、B売上債権の回転期間を分析する方法があります。

滞留債権一覧表、売上債権の年齢調べ表、売上債権の回転期間分析表の出力は、売上管理システムの一機能として備わっていることも多いと思いますが、その機能が無い場合もありますので、今回は、ActiveDataで滞留債権一覧表の作成をしてみたいと思います。

 

ここでは、未入金の売上債権の一覧から、期限の過ぎた債権を抽出することを考えます。

@対象となる「未決済売上債権明細」シートを開きます。

Aワークシートコマンドの中から「シートクエリ」を選択し、さらに「数式により抽出」を選択します。

B「数式により抽出」ダイアログボックスが開きますので、条件を次のように設定します。

(ア) 「列名」で「入金予定日」を指定します。

(イ) 計算式の中から「<=」を選びます。

(ウ)「関数」で「日付/時刻」を選択し、「NOW()」を指定します。現在時刻ではなく基準日を想定する場合は、同じく「日付/時刻」を選択し、DATE(year, month, day)を指定し、「数式」で「year」「 month,」「day」をそれぞれ特定の年月日に置き換えます。例えば「DATE(2013, 5, 1)」(2013年5月1日となる)とします。

C「OK」をクリックすると「抽出>未決済売上債権明細」シートが作成されます。
ここまでで、入金予定日を過ぎた債権の一覧が作成されました。次に、どのくらい過ぎているのかを示す列を作ります。

D列を挿入したい位置をクリックします。

Eワークシートコマンドの中から「列」を選択し、さらに「数式列を追加」を選択します。

F「数式列を追加」ダイアログボックスが開きますので、条件を次のように設定します。

(ア) 「列の名前」に「遅延月数」と入力します。

(イ) 「小数点以下桁数」を「0」とします。

(ウ)「数式をもとに列名を付ける」のチェックを外します。

(エ)「結果を値で保存」にチェックを入れます。

(オ)「新しい列の値」で「数式」を選択します。

(カ)入力欄に「DATADIF(入金予定日, NOW(), “m”)」と入力します。現在時刻ではなく基準日を想定する場合は、「NOW()」の代わりに、B(ウ)と同様に例えば「DATE(2013, 5, 1)」と指定します。

G「OK」をクリックすると、クリックした位置に「遅延月数」列が追加されます。
ここまでの操作で、当該債権について期限から何ヶ月過ぎたかがわかるようになりました。

 

滞留債権一覧表は、取引先への催促のために、事業部又は営業担当者ごとにリストを分けて、当該担当部門へデータを渡して業務に利用することはあるでしょう。不正の観点では、この滞留債権一覧表を用いて、特定の部門や担当者に偏りがないか、金額が異常に大きい滞留債権はないか、取引内容や摘要の記載が異常なものがないかを分析することになります。異常な傾向やアイテムがある場合は、関連証憑のチェックやヒアリングの手続に進むことになります。

 
執筆者:武田剛
 

 

IFRS(国際財務報告基準)第30回 IFRS第2号「株式に基づく報酬」

1.はじめに

今回は、IFRS第2号「株式に基づく報酬」(以下、IFRS第2号という。)について紹介します。

2.目的と範囲

IFRS第2号の目的は、企業が株式に基づく報酬取引を行っている場合の財務報告を定めることであり、特に従業員にストック・オプションが付与される取引に関連する費用を含めて、株式に基づく報酬取引の影響を純損益及び財政状態に反映することを企業に要求しています。

IFRS第2号は、次の取引を含むすべての株式に基づく報酬取引の会計処理に適用しなければなりません。

【1】持分決済型株式に基づく報酬取引

【2】現金決済型株式に基づく報酬取引

【3】企業が財又はサービスを受け取るか又は取得し、企業か取引の相手方のいずれかに、現金で決済するか持分金融商品の発行により決済するかの選択権が与えられている取引

3.認識

企業は、株式に基づく報酬取引で受領又は取得した財又はサービスを、当該財を受領した時またはサービスを受け取った時に認識しなければなりません。持分決済型株式に基づく報酬取引の場合には資本に、現金決済型株式に基づく報酬取引の場合には負債に、対応する増加を認識しなければなりません。なお、株式に基づく報酬取引で受領したか取得した財又はサービスが、資産としての認識の要件を満たしていない場合には、費用として認識しなければなりません。

4.持分決済型株式に基づく報酬取引

持分決済型株式に基づく報酬取引については、企業は、取得した財又はサービス、及び資本の増加を、取得した財又はサービスの公正価値で直接測定しなければなりません。ただし、公正価値が信頼性をもって見積れない場合には、付与した持分金融商品の公正価値を参照して、間接的に測定しなければなりません。

従業員から受け取ったサービスの場合、その公正価値を直接測定することは困難のため、付与した持分金融商品の公正価値を参照して、間接的に測定しなければなりません。付与した持分金融商品の公正価値は付与日現在で測定しなければなりません。

付与した持分金融商品の公正価値の算定方法については、その公正価値を市場等から入手できる場合にはその市場価格に基づいて測定します。市場等から入手できない場合には、一般に受け入れられている評価技法を用いて見積もらなければなりません。

費用の配分については、従業員が一定期間の勤務を完了するまで確定しないなどの権利確定条件が付されている場合、権利確定期間にわたってサービスを受け取るものと仮定して、権利確定期間の各期にわたって認識します。また、最終的に権利確定する権利の数量の見積もりを必要に応じて修正します。

権利確定日は上記の修正を行ってはならず、権利確定後に持分金融商品が失効したり、ストップ・オプションの権利行使期間を経過したとしても、費用の戻入れを行ってはなりません。なお、我が国の会計基準においては、新株予約権が失効した場合には戻入れが認められています。

5.現金決済型株式に基づく報酬取引

現金決済型株式に基づく報酬取引については、企業は、取得した財又はサービス及び発生した負債を、当該負債の公正価値で測定しなければなりません。負債が決済されるまで、企業は当該負債の公正価値を各報告期間の末日及び決済日に再測定し、公正価値の変動を当期の純損益に認識しなければなりません。

費用の配分については、直ちに権利確定する場合には直ちに認識し、従業員が一定期間の勤務を完了するまで確定しない場合には、サービス提供期間にわたり認識します。

なお、我が国の会計基準においては現金決済型株式に基づく報酬取引について特に規定はありません。

6.選択権付きの株式に基づく報酬取引(2.【3】の取引)

選択権付きの株式に基づく報酬取引については、企業は当該取引又は構成要素を、企業に現金又は他の資産で決済する負債が発生している場合にはその範囲で現金決済型株式に基づく報酬取引として、そのような負債が発生していない場合にはその範囲で持分決済型株式に基づく報酬取引として会計処理しなければなりません。

選択権を取引の相手方が有している場合には、企業は複合金融商品を付与していることになるため、負債部分と資本部分とにわけて処理しなければなりません。

一方選択権を企業が有している場合には、現金で決済する義務を有している場合は負債として取り扱い、それ以外の場合には持分決済型として処理しなければなりません。

7.開示

株式報酬を有する企業は、以下の情報を開示する必要があります。

【1】当期中に存在していた株式報酬の内容と範囲

【2】財・サービスの公正価値又は付与した持分金融商品の公正価値の算定方法

【3】株式報酬取引が企業の当期純損益及び財政状態に与えた影響

 
執筆者:関和輝
 

 

国際監査基準のクラリティ版について解説(第21回)
「監査の過程で識別した虚偽表示の評価」「監査調書」について

1.基準の概要

今回は、監査基準委員会報告書450「監査の過程で識別した虚偽表示の評価」と230「監査調書」について解説します。いずれも2013年3月決算に係る監査から適用されている基準です。

2.「監査の過程で識別した虚偽表示の評価」

本基準は、識別した虚偽表示が監査に与える影響と、未修正の虚偽表示が財務諸表に与える影響を評価する際の実務上の指針を提供しています。

 

(1) 財務諸表に対する監査人の意見形成

財務諸表に対する監査人の意見は、本基準に従って、未修正の虚偽表示が財務諸表に与える影響について監査人が行った評価に基づいて形成されます。なお、虚偽表示は誤謬又は不正から発生する可能性がありますが、未修正の虚偽表示とは、監査人が監査の過程で集計対象とした虚偽表示のうち修正されなかった虚偽表示のことをいいます。

 

(2) 監査の進捗に伴い識別した虚偽表示の検討

監査人は、監査の過程で集計した虚偽表示の合計が重要性の基準値に近づいている場合などには、監査の基本的な方針及び詳細な監査計画を修正する必要があるかどうか判断しなければなりません。

また、監査人の要請により、経営者が取引種類、勘定残高又は開示等を調査して発見された虚偽表示を修正した場合にも、監査人は未発見の虚偽表示があるかどうか判断するため追加的な監査手続を実施しなければなりません。

 

(3) 虚偽表示に関するコミュニケーション及び修正

監査人は、監査の過程で集計したすべての虚偽表示について、適切な階層の経営者に適時に報告し、これらの虚偽表示を修正するように求めなければなりません。経営者が、監査人によって報告された虚偽表示を修正することに同意しない場合、監査人は、経営者が修正しない理由を把握した上で、全体としての財務諸表に重要な虚偽表示がないかどうかを評価しなければなりません。

 

(4) 未修正の虚偽表示が及ぼす影響の評価

監査人は、未修正の虚偽表示が与える影響を評価する前に、重要性の基準値が、実績値に照らして適切であるかどうかを検討しなければなりません。監査人は、未修正の虚偽表示が重要であるかどうかを判断する際には以下の事項を考慮します。

(a) 全体としての財務諸表及び関連する取引種類、勘定残高又は開示等に対する虚偽表示の大きさと内容、並びに虚偽表示が発生した特定の状況

(b) 過年度の未修正の虚偽表示が、財務諸表及び関連する取引種類、勘定残高又は開示等に与える影響

 

(5) 監査役等とのコミュニケーション

監査人は、未修正の虚偽表示の内容とそれが監査意見に与える影響について、監査役等に報告を行います。未修正の虚偽表示のうち重要な虚偽表示がある場合には、監査人は、監査役等が経営者にその修正を求めることができるよう、未修正の重要な虚偽表示であることを明示して報告します。

 

(6) 経営者確認書

監査人は、経営者に、未修正の虚偽表示の与える影響が財務諸表に対して重要性がないと判断しているかどうかについて経営者確認書に記載することを求めます。なお経営者確認書には、未修正の虚偽表示の要約を記載するか又は添付することになります。

 

(7) 監査調書

監査人は、以下の事項を監査調書に記載しなければなりません。

(a) 明らかに僅少な虚偽表示と取り扱う金額

(b) 監査の実施過程で発見したすべての虚偽表示と修正の有無

(c) 未修正の虚偽表示が個別に又は集計して重要であるかどうかに関する監査人の結論及びその根拠

3.「監査調書」

本基準は、財務諸表監査に係る監査調書の作成に関する実務上の指針を提供しています。

 

(1) 実施した監査手続及び入手した監査証拠の文書化

(a) 監査調書の様式、内容及び範囲

監査人は、経験豊富な監査人が、以前に当該監査に関与していなくても以下の事項を理解できるように、監査調書を作成しなければなりません。

(ア) 一般に公正妥当と認められる監査の基準及び適用される法令等に準拠して実施した監査手続の種類、時期及び範囲。これには、手続を実施した項目又は対象を識別するための特性、監査手続を実施した者やその完了日などを含みます。

(イ) 監査手続を実施した結果及び入手した監査証拠。

(ウ)監査の過程で生じた重要な事項とその結論及びその際になされた職業的専門家としての重要な判断。

 

その他、監査人は、経営者、監査役等及びその他の者と重要な事項について協議した場合には、重要な事項の内容、協議を実施した日、協議の相手方等について記録します。

さらに監査人は、重要な事項に関する結論を形成する過程において矛盾した情報を識別した場合には、監査人がどのようにその矛盾した情報に対応したかについて、文書化しなければなりません。

 

(b) 要求事項に代替する手続の実施

監査人は、例外的な状況において、原則的な監査手続に代えて代替的な監査手続が必要と判断した場合には、実施された監査手続がどのようにその目的を達成したか及びその理由を監査調書に記載しなければなりません。

 

(c) 監査報告書日後に認識した事項

監査人は、例外的な状況において、監査報告書日後に追加的に監査手続を実施する場合や新たな結論を導き出す場合等には、以下の事項を監査調書に記載しなければなりません。

(ア) 発生した状況の内容

(イ) 新たに若しくは追加的に実施した監査手続の内容、その結果入手した監査証拠、到達した結論及びそれらが監査報告書に及ぼす影響

(ウ) 監査調書に追加・変更を実施した者、実施日、それらを査閲した者及び査閲日

 

(2) 監査ファイルの最終的な整理

監査人は、監査報告書日後、適切な期限内に、監査ファイルにおける監査調書を整理し、監査ファイルの最終的な整理についての事務的な作業を完了しなければなりません。監査人は、監査ファイルの最終的な整理が完了した後、その保存期間が終了するまで、いかなる監査調書であっても削除や廃棄をすることはできません。

また監査ファイルの最終的な整理が完了した後に、既存の監査調書の修正又は新たな監査調書の追加が必要となった場合には以下の事項を文書化しなければなりません。

(a) 修正又は追加が必要となった具体的理由

(b) 修正又は追加を実施した者、実施日、それらを査閲した者及び査閲日

 
執筆者:吉田隆伸
 


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  明誠ニュースレター vol.31
2013年5月14日発行
発行責任者:武田剛 プロダクトマネジャー:村田博明
制作:株式会社ゼラス 佐々木景子
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