明誠グループニュースレター

情報フラッシュ [ 連載記事 ]
ActiveDataによる不正監査手続 第6回 売上債権の貸方処理の相手勘定分析
IFRS(国際財務報告基準)第32回 IFRS第5号「売却目的で保有する非流動資産及び非継続事業」
国際監査基準のクラリティ版について解説(第23回)「グループ監査」について

[ トピック解説 ]

中小企業経営力強化支援法

中小企業経営力強化支援法の概要

中小企業支援お役立ち情報_1

中小企業支援お役立ち情報_2


情報フラッシュ

 
発表日時 表題
平成25年6月28日 日本公認会計士協会は「監査基準委員会研究報告『金融商品の監査における特別な考慮事項』(公開草案)」を公表しました。
平成25年6月28日 企業会計基準委員会は「無形資産に関する検討経過の取りまとめ」を公表しました。
平成25年6月27日 IASBはデリバティブの契約更改について救済措置を提供を公表しました。
平成25年6月27日 日本公認会計士協会は法規委員会研究報告第15号「監査人の法的責任に関する裁判例」を公表しました。
平成25年6月26日 IASBは果実生成型植物に関する提案を公表しました。
平成25年6月25日 日本公認会計士協会は会計制度委員会研究資料第3号「我が国の引当金に関する研究資料」を公表しました。
平成25年6月20日 IASBは保険契約の会計処理に関する改訂後の提案を公表しました。
平成25年6月17日 日本公認会計士協会は「監査基準の改訂及び監査における不正リスク対応基準の設定に対応するための監査基準委員会報告書の改正について」の公表を公表しました。
平成25年6月14日 日本公認会計士協会は公会計委員会研究報告第19号「公会計基準設定スキームの構築に向けて〜海外事例の調査とそれを踏まえた提言〜」を公表しました。
平成25年6月7日 日本公認会計士協会は「産業活力再生特別措置法における事業再構築計画、共同事業再編計画、経営資源再活用計画の認定申請書に添付する「資金計画に係る公認会計士又は監査法人の報告書」に係る取扱い」及び監査委員会報告第80号「産業活力再生法に基づく会計監査に係る監査上の取扱い」の廃止についてを公表しました。
平成25年6月7日 日本公認会計士協会は「監査・保証実務委員会実務指針第89号「産業活力の再生及び産業活動の革新に関する特別措置法に基づく会計監査に係る監査上の取扱い」」を公表しました。
平成25年6月7日 日本公認会計士協会は監査・保証実務委員会研究報告第27号「産業活力の再生及び産業活動の革新に関する特別措置法における事業再構築計画及び経営資源再活用計画の認定申請書に添付する「資金計画に係る公認会計士又は監査法人の報告書」に係る研究報告」」 を公表しました。
平成25年6月5日 日本公認会計士協会は「IT委員会研究報告「電子的監査証拠〜入手・利用・保存等に係る現状の留意点と展望〜」(公開草案)」 を公表しました。

トピック解説

 
中小企業経営力強化支援法

中小企業金融円滑化法の終息に沿うように、中小企業の新たな事業活動の促進に関する法律等の一部を改正する法律(中小企業経営力強化支援法)が平成24年8月30日に施行されました。これにより、近年の中小企業が直面する多様化、複雑化する経営課題を克服するために、中小企業の経営力の強化を図るための

諸施策が実施されることとなります (ニューズレターVol.24(2012年10月9日配信トピック解説「中小企業金融円滑化法の終了と中小企業経営力支援法等の施行について」)参照)。

中小企業経営力強化支援に関する諸施策には様々なものがあります。これらの諸施策をお役立ち情報として紹介したいと思います。


 

中小企業経営力強化支援法の概要

1.中小企業経営力強化支援法の施行

本法律では、中小企業の経営力の強化を図るために、主として以下の措置を講じています。

[1]支援事業の担い手の多様化・活性化

既存の中小企業支援者、金融機関、税理士・税理士法人等の中小企業の支援事業を行う者の認定を通じ、中小企業に対して専門性の高い支援事業を実現します。また、中小機構の専門家派遣等による協力や信用保証の付与による資金調達支援を通じ、支援事業を支援します。これらにより、中小企業は質の高い事業計画を策定することが可能となり、経営力の強化が図られます。

 

[2]海外展開に伴う資金調達支援

中小企業新事業活動促進法等に基づく承認又は認定を受けた計画に従って事業を行う中小企業者に対し、以下の措置を講じます。

(1)日本政策金融公庫の債務保証業務、日本貿易保険の保険業務を拡充し、中小企業の外国関係法人の海外現地金融機関からの資金調達を支援します。

(2)中小企業信用保険の保険限度額を増額し、親子ローン等を通じた海外展開を支援します。

2.経営革新等支援機関認定制度の創設

中小企業経営力強化支援法の施行に伴い、中小企業に対して専門性の高い支援事業を行う経営革新等支援機関を認定する制度が創設されました。

この認定制度は、中小企業が安心して経営相談等が受けられるよう、税務、金融及び企業財務に関する専門的知識や中小企業支援に係る実務経験が一定レベル以上の個人、法人、中小企業支援機関等を、国が経営革新等支援機関として認定することにより、中小企業に対して専門性の高い支援を行うための体制を整備するものです。これまで金融機関、税理士、公認会計士、弁護士等の多岐多様な専門家が認定されており(以下「認定支援機関」という)、明誠監査法人も平成25年2 月に認定支援機関として登録されています。

3.経営改善計画策定支援事業の開始

金融支援が必要な中小企業・小規模事業者の多くは、自ら経営改善計画等を策定することが難しい状況にあります。こうした中小企業・小規模事業者を対象として、認定支援機関が中小企業・小規模事業者の依頼を受けて経営改善計画などの策定支援を行うことにより、中小企業・小規模事業者の経営改善を促進します。

全都道府県に設置されている中小企業再生支援協議会に「経営改善支援センター」が新設されました(以下「支援センター」という)。本事業は、一定の要件の下、認定支援機関が経営改善計画の策定を支援し、中小企業・小規模事業者が認定支援機関に対し負担する経営改善計画策定支援に要する計画策定費用及びフォローアップ費用について、支援センターがその一部を負担するものです。

本事業の対象となる事業者は、借入金の返済負担等の影響による財務上の問題を抱えており、自ら経営改善計画等を策定することが難しいものの、経営改善計画の策定支援を受けることにより、金融機関からの支援(条件変更や新規融資等)が見込める中小企業・小規模事業者になります。また、個人事業主は支援対象ですが、医療法人、社会福祉法人、LLP(有限責任事業組合)はこの制度による支援の対象外です。

[1]利用申請

中小企業・小規模事業者は、経営改善計画策定支援を実施する認定支援機関と連名で、「経営改善支援センター事業利用申請書」を、支援センターに提出します。支援センターにおいて申請書の内容を確認し、費用負担することが適切と判断した場合は、その旨を代表認定支援機関に通知します。

[2]計画策定支・合意形成

認定支援機関が、中小企業・小規模事業者の経営改善計画書策定支援を実施します。経営改善計画とは、以下を含む内容になります。

イ. ビジネスモデル俯瞰図

ロ.ループ相関図

ハ.資金繰実績表

ニ.経営改善計画に関する具体的施策及び実施時期

ホ.実施計画(アクションプラン)及びモニタリング計画(原則3年程度)

ヘ.資産保全表

ト.貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書等の計数計画(金融支援(条件変更、新規融資等)含む)

チ.その他必要とする書類

[3]支払申請及び支払決定

中小企業・小規模事業者は、計画について金融機関との合意成立後、認定支援機関と連名で「経営改善支援センター事業費用支払申請書」を支援センターに提出します。支援センターは、内容確認し、支払申請の結果及び支払決定額、支払予定日について、代表認定支援機関に通知し、経営改善計画策定支援に係る費用*1(モニタリング費用含む)の3分の2(200万円)を上限として支出します。

[4]モニタリング

認定支援機関は、経営改善計画の記載に基づき、中小企業・小規模事業者のモニタリングを実施して、支援センターに対し報告するとともに、「モニタリング費用支払申請書」を提出します。なお、モニタリングは、認定支援機関が自ら実施するものとし、外部委託することはできません。支援センターは、内容確認し、支払申請の結果及び支払決定額、支払予定日について、代表認定支援機関に通知し、モニタリング費用(計画策定費用等を含む)の3分の2(200万円)を上限として支出します。

(*1)計画の策定費用の他、事業DD費用、財務DD費用、モニタリング費用、金融調整サポート費用をいう。

4.中小企業にもたらす効果

認定支援機関が事業計画の策定支援を行うことを通じ、財務内容等その他経営状況の分析、現状把握、経営課題の抽出、計画策定に向けた助言や、事業の実施に必要な指導・助言がなされることとなり、中小企業には以下のような効果がもたらされると考えられます。

イ.自社の経営状況・業績が明確化される。

ロ.自社の目標とその目標までの過程が明確化し、社員のモチベーション向上に繋がる。

ハ.新たな商品開発、サービス提供の道筋が立てることができる。

ニ.金融機関からの信用度が上がり、資金調達が受けやすくなる。

ホ.売上の増加、販売形態の多様化、販路拡大、対外的信用度が増すことによる取引先の増加、海外展開、ブランド価値の向上、高付加価値品化等の波及効果が期待できる。

5.最後に

ものづくりや技術力に代表される日本の良さは、中小企業・小規模事業者にも多く蓄積されており、一方で、景気の煽りを受け、財務的体力のない中小企業・小規模事業者は、まだまだ困窮している状態にあるといえます。中小企業・小規模事業者が、国から認定された専門家による支援が受けやすくなったことで、日本経済の更なる発展の足掛かりになることでしょう。平成25年6 月5 日現在において、経営革新等支援機関として認定を受けている機関は、弊法人を含め11,156機関にのぼり(うち、関東エリアは3,594機関)、制度の活用がますます期待されます。

 

【参考文献】

「中小企業経営力強化支援法について」中小企業庁
「経営革新等支援機関の認定制度ができました」中小企業
「利用申請から支払決定までの流れ」中小企業庁
「認定支援機関等向けマニュアル・FAQ」中小企業庁

「認定支援機関による経営改善計画策定支援事業に関する手引き」中小企業庁
 
執筆者:町出知則
 

 

中小企業支援お役立ち情報 1

1.中小企業支援制度(助成金制度)の一覧について

中小企業庁は、中小企業支援制度として重点施策(震災対策、円高対策等)も含め中小企業の目的に合わせた助成金制度を整備しています。各種助成金制度は、次のとおりです。

 

目的別分類 助成金制度の名称等
重点施策(震災対策・円高対策等)
  • 被災者雇用開発助成金、事業復興型雇用創出事業による支援
  • 成長分野等人材育成支援事業
  • 施設・設備の復旧・整備に対する補助制度
  • 被災中小企業復興支援リース補助事業
  • 輸出品の放射線量の検査料への補助制度
創業したい
  • 創業補助金(地域需要創造型等起業・創業)
  • 雇用に関する助成制度
経営の効率化や経営革新を図りたい
  • 省エネ・新エネ関連設備等の導入に対する支援
  • 経営改善支援助成金
販路を開拓したい
  • 中小企業活路開拓調査・実現化事業
  • 地域資源活用促進
  • 伝統的工芸品産業支援補助金
  • 伝統的工芸品産業振興対策支援補助金
他の事業者との連携や地域資源を活用し、新たな取り組みをしたい
  • 新連携(異分野連携)の支援
  • 農商工連携の支援
  • 地域資源活用の促進
  • 伝統的工芸品産業支援補助金
  • JAPANブランド育成支援事業
技術開発に取り組みたい
  • ものづくり補助金(中小企業・小規模事業者試作開発等支援補助金)
知的財産や産業財産権などの特許権を活用したい
  • 中小企業知的財産権保護対策事業
新たな設備を導入したい
  • 国内クレジット制度の活用による低炭素投資・排出削減促進支援
  • 省エネ・新エネ関連設備等の導入に対する支援
企業を再生したい
  • 経営改善支援助成金
商店街や中心市街地の活性化、物流の効率化を図りたい
  • 地域商店街活用化法に基づく支援
  • 中小商業活力向上事業
  • 地域商業再生事業
  • 卸商業団地機能向上支援事業
  • 戦略的中心市街地商業等
海外に事業を展開したい
  • 中小企業海外展開等支援事業
  • JAPANブランド育成支援事業
  • 創業補助金(海外需要獲得型起業・創業)
社員教育・人材育成や新たな従業員を雇用したい
  • 成長分野等人材育成支援事業
  • 人材対策事業
  • 成長産業・企業立地促進等事業費補助金
  • 中小企業基盤人材確保助成金
  • 雇用に関する助成制度
  • 定年引上げ等奨励金
  • 障害者初回雇用奨励金
  • 発達障害者雇用開発助成金
  • 難治性疾患患者雇用開発助成金
  • 職場支援従事者配置助成金
  • キャリア形成促進助成金
  • 両立支援に関する助成制度
  • 均衡待遇・正社員化促進奨励金
 
執筆者:市原 豊
 

 

中小企業支援お役立ち情報 2

国の緊急経済対策(平成24 年度補正予算)における重点事業の1つとして、創業補助金(地域需要創造型等起業、創業促進補助金)とものづくり補助金(中小企業・小規模事業者試作開発等支援補助金)が、創出されました。

今回は、各種助成金制度のうち創業補助金とものづくり補助金の概要について解説します。

(1)創業補助金(地域需要創造型等起業、創業促進補助金)

@目的

新たな起業や第2創業(家業を継いだ後継者が、家業とは異なった新たな事業を始めること)を支援することで新たな需要や雇用を創出し、国内の経済を活性化することを目的するものです。

 

A対象者

・地域需要創造型起業・創業及び海外需要獲得型起業・創業

新たに創業する者

・第2創業

中小企業・小規模事業者(会社及び個人)

 

B補助対象事業

次の(ア)から(エ)をすべて満たす事業

(ア)既存技術の転用、隠れた価値の発掘(新技術、設計・デザイン、アイデア等の活用を含む。)を行う新たなビジネスモデルにより需要や雇用を創出する事業であること

(イ)認定支援機関たる金融機関又は金融機関連携した認定支援機関による事業計画書の策定から実行までの支援を受けることについて確認書への記名・押印により確認されること。

(ウ)次のいずれかに概ね該当するものであること

・地域需要創造型起業・創業

地域の需要や雇用を支える事業を新たに創業する者

・海外需要獲得型起業・創業

海外市場の獲得を念頭とした事業を新たに創業する者

・第2創業

既に事業を営んでいる中小企業・小規模事業者(会社及び個人)でこう後継者が先代から事業を引き継いだ場合などに業態転換や新事業・新分野に進出する第2創業を行う者

(エ)以下のいずれにも合致しないこと

・公序良俗に反する事業

・公的な資金の使途として社会通念上、不適切と判断される事業(風俗営業等)

・他の補助・助成制度を活用する事業

 

C助成内容

・地域需要創造型起業・創業

創業するために係る費用の3分の2(100万円以上200万円以下)

・第2創業 第2創業をするために要する費用の3分の2(100万円以上500万円以下)

・海外需要獲得型起業・創業

海外の需要を取り込むための起業・創業に係る費用の3分の2(100万円以上700万円以下)

 

(2)ものづくり補助金(中小企業・小規模事業者試作開発等支援補助金)

@目的

我が国の中小製造業の国際的競争力強化を図り新たな事業の創出を促進することを目的としています。

A対象事業者

「中小企業のものづくり基盤技術の高度に関する法律」で指定する22分野に対応した試作品の開発・設備投資を行おうとしている中小製造業者で、下表に該当するもの。(企業組合、協同組合、事業協同小組合、商工組合、協同組合連合会等を含む)

ただし、発行済株式の総数又は出資価格の総額の2分の1以上を同一の大企業が有しているか、3分の2以上を大企業が有している中小企業者及び大企業の役員又は職員を兼ねるものが役員総数の2分の1以上を占めている中小企業者は除く。

業種(主たる事業)  
製造業・建設業・運輸業 資本金3億円以下又は従業者数300人以下
卸売業 資本金1億円以下又は従業者数100人以下
小売業 資本金5千万円以下又は従業者数50人以下
サービス業 資本金5千万円以下又は従業者数100人以下
ゴム製品製造業(自動車又は航空機用タイヤ及びチューブ製造並びに工業用ベルト製造を除く) 資本金3億円以下又は従業者数900人以下
ソフトウエア業及び情報処理サービス業 資本金3億円以下又は従業者数300人以下
旅館業 資本金5千万円以下又は従業者数200人以下
その他の業種 資本金3億円以下又は従業者数300人以下

 

B補助対象事業

次の(ア)から(ウ)を満たす事業

(ア)競争力強化の形態として次のいずれかに該当していること

・小口化(多品種少量生産対応)・短納期化型

・ワンストップ化型(複数技術を組み合わせた一貫生産体制の導入)

・サービス化型(顧客のニーズへの提案を行う等製品以外の付加価値を付けた製品提供)

・ニッチ分野特化型(ニッチ分野へ経営資源を集中)

・生産プロセス強化型(従来の生産プロセスの見直しによる生産性向上)

(イ)事業計画書に、他社との差別化、競争力強化策を記述し、認定支援機関により実行性について確認を受けていること。

(ウ)我が国製造業の競争力を支える「中小ものづくり高度化法」22分野に係る技術を活用した事業であること。

(中小ものづくり高度化法22分野の技術):組み込みソフトウエア、金型、冷凍空調、電子部品・デバイスの実装、プラスチック成型加工、粉末治金、溶射・蒸着、鍛造、動力伝達、部材の締結、鍛造、金属プレス加工、位置決め、切削加工、繊維加工、高機能化学合成、熱処理、溶接、塗装、めっき、発酵、真空

 

B助成内容

対象22分野に対応した試作品の開発・設備投資の費用(原材料費、機械装置費、外注加工費、技術導入費、直接人件費、委託費、知的財産権関連費、専門家謝金、専門家旅費、運搬費、雑役務費)の3分の2(100万円以上1,000万円以下)

 

【参考資料】

各種助成等のパンフレット・解説、募集要領 中小企業庁
中小企業利用施策ガイドブック

 
執筆者:市原 豊
 

連載記事

 
 

ActiveDataによる不正監査手続 第6回 売上債権の貸方処理の相手勘定分析

シリーズの6回目は、売上債権の貸方処理の相手勘定分析をしてみたいと思います。

 

売上債権の貸方処理の相手勘定分析

 

売上債権は、通常は振込や手形により決済されて、最終的に資金化されて、その後、再び営業活動に利用されます。しかし、架空売上や水増しにより計上された売上債権は、現預金として回収されずに別な形で処理される場合があります。例えば、貸付金に振替えられ、本来支払うべき買掛金や返済すべき借入金を現預金で決済せずに、帳簿上だけで売上債権と「相殺」してしまうやり方があります。結果として、架空の売上債権は無事に消すことができますが、一方で簿外負債が生じることになります。外部監査人等にとっては、売上の架空計上が発見されずに、さらに簿外負債が生じてしまうという厄介な事態になります。

これらの「相殺」は、直接双方を相手勘定科目として行う場合もありますが、現預金勘定を形式的に通すやり方や、諸口勘定や仮勘定などを通して行うやり方もあります。現預金の勘定を通す方法では、日常的に管理されていない預金口座や現金勘定を利用することがあります。これらが補助科目で管理されているのであれば、借方と貸方が残高や口座の利用目的に比して異常に多額となっていることで発見できる可能性があります。諸口勘定や仮勘定などを通す方法でも、借方と貸方の金額が異常に膨らみますので、それで発見できる可能性があります。この場合は、経理財務システムに標準的に備わっている帳票である合計残高試算表を利用して分析することになります。

最初に挙げた直接双方を相手勘定科目として行う「相殺」処理を検出するのは、データ監査ツールによる仕訳分析が効率的であると思われます。

 

それでは、「仕訳帳」シートのデータから売上債権を貸方記帳している仕訳を抽出し、その相手勘定にどのような科目があるかActiveDataを用いて調べてみましょう。

@対象となる「仕訳帳」シートを開きます。

Aワークシートコマンドの中から「シートクエリ」を選択し、さらに「指定値により抽出」を選択します。

B「指定値により抽出」ダイアログボックスが開きますので、条件を次のように設定します。

(ア) 「条件を入力する列」で「貸方科目」を指定します。

(イ) 「条件入力」の「含む文字」をチェックし、「売掛金」と入力します。

C「OK」をクリックすると、「抽出>仕訳帳」シートが作成されます。

D「抽出>仕訳帳」シートを選択した状態で、分析コマンドの中から「集約/ピボット」を選択します。

E「集約/ピボット」ダイアログボックスが開きますので、条件を次のように設定します。

(ア) 分析対象列のグループ列:借方科目

(イ) 集約対象列:金額

F「OK」を押すと、「集約>抽出>仕訳帳」シートが作成されます。

 

このシート上で、相手勘定科目に異常がない場合は、分析は終了です。しかし、異常な相手勘定科目がある場合は、その仕訳を抽出して、さらなる調査をする必要があります。

では、ActiveDataを用いて、異常な相手科目のデータを抽出しましょう。

@ 「抽出>仕訳帳」シートを選択した状態で、ワークシートコマンドの中から「シートクエリ」を選択し、さらに「指定値により抽出」を選択します。

A「指定値により抽出」ダイアログボックスが開きますので、条件を次のように設定します。

(ア) 「条件を入力する列」で「借方科目」を指定します。

(イ) 「条件入力」の「を含む文字」をチェックし、異常な相手科目である「借入金」という文字を入力します。

B「OK」をクリックすると、「抽出>抽出>仕訳帳」シートが作成されます。

抽出された異常な仕訳については、その内容や合理性のみならず、売掛金の計上時の売上取引の実在性なども詳細に吟味する必要があります。

 
執筆者:武田剛
 

 

IFRS(国際財務報告基準)第32回 IFRS第5号「売却目的で保有する非流動資産及び非継続事業」

1.はじめに

今回は、IFRS第5号「売却目的で保有する非流動資産及び非継続事業」(以下、IFRS第5号という。)について紹介します。

2.目的

IFRS第5号の目的は、売却目的で保有する非流動資産の会計処理、非継続事業の表示及び開示を定めることにあります。

3.売却目的で保有する非流動資産の分類

非流動資産の帳簿価額が、継続的使用ではなく主に売却取引により回収される場合には、企業は当該資産(又は処分グループ)を非売却目的保有に分類しなければなりません。ここで処分グループとは、単一の取引として処分される資産グループ及びそれらの資産に直接関連し、当該取引で移転される負債をいいます。

上記要件に該当するには、当該資産(又は処分グループ)の売却について、通常又は慣例的な条件のみに従って、現状で直ちに売却することが可能でなければならず、その売却の可能性が非常に高くなければなりません。売却の可能性が非常に高いと言えるためには、次のすべての条件を満たしていなければなりません。

【1】適切な地位の経営者が当該資産の売却計画の実行を確約していること。

【2】買手を探し売却計画を完了させる活発な計画が開始されていること。

【3】販売価格は現在の公正価値との関係において合理的であること。

【4】原則として、分類した日から1年以内で売却が完了すると見込まれること。

【5】計画に重要な変更が行われたり撤回されたりする可能性が低いこと。

なお、廃棄予定の非流動資産(又は処分グループ)については、その帳簿価額が主として継続的使用により回収されるため、売却目的保有に分類してはなりません。ただし、当該資産(又は処分グループ)が後述する非継続事業の要件を満たす場合には、非継続事業として報告しなければなりません。

4.売却目的保有に分類された非流動資産の測定

売却目的保有に分類された非流動資産(又は処分グループ)については、減価償却を行わずに、帳簿価額と売却費用控除後の公正価値のいずれか低い金額で測定しなければなりません。売却費用控除後の公正価値までの当初又は事後の評価減については、減損損失を認識しなければなりません。売却費用控除後の公正価値がその後増加した場合には、過去に認識した減損損失累計額を限度として損失の戻入れを行わなければなりません。

なお、売却目的保有に分類していた資産(又は処分グループ)について、3.の分類要件を満たさなくなった場合には、売却目的保有に分類することを中止し、(1)売却目的保有に分類されていなければその資産(又は処分グループ)について認識されていたであろう減価償却費、償却費又は再評価額について調整を行った金額か、(2)売却しないという事後的な意思決定の時点での回収可能価額のいずれか低い金額で測定しなければなりません。

5.売却目的に分類された非流動資産の表示

企業は、売却目的保有に分類した非流動資産及び処分グループに含まれる資産を、財政状態計算書上、他の資産と区分して表示しなければなりません。また、非流動資産(又は処分グループ)が売却されたか売却目的保有に分類された期間における財務諸表の注記に、非流動資産(又は処分グループ)の説明や、売却に至った事実及び状況、並びに当該処分の予想される方法及び時期の説明などの情報を開示しなければなりません。

6.非継続事業の表示

非継続事業とは、すでに処分されたか売却目的保有に分類されている企業の構成単位で、次のいずれかに該当するものとされています。

【1】独立の主要な事業分野又は営業地域を表す。

【2】独立の主要な事業分野又は営業地域を処分する統一された計画の一部である。

【3】転売のみのために取得した子会社である。

非継続企業については、次の事項を開示しなければなりません。

【1】包括利益計算書上の、次の合計額からなる単一の金額

(1)非継続事業の税引後損益

(2)非継続事業を構成する資産又は処分グループについて、売却費用控除後の公正価値での測定又は処分により認識した税引後の利得又は損失

【2】【1】の内訳

(1)非継続事業の収益、費用及び税引前損益

(2)関連する法人所得税費用

(3)非継続事業を行使する資産又は処分グループを、売却費用控除後の公正価値で測定したこと又は

処分したことに認識した利得又は損失

【3】非継続事業の営業活動、投資活動、財務活動に帰属する正味キャッシュ・フロー

【4】親会社の所有者に帰属する継続事業及び非継続事業から生じた利益

 

【参考文献】

1.IFRS第5号

2.IFRS会計学基本テキスト 中央経済社

 
執筆者:関和輝
 

 

国際監査基準のクラリティ版について解説(第23回)
「グループ監査」について

1.基準の概要

今回は、監査基準委員会報告書600「グループ監査」について解説します。これはISA600に対応しており、2013年3月決算に係る監査から適用されています。

2.「グループ監査」の内容

本基準は、構成単位の監査人を関与させる場合のグループ監査に関する実務上の指針を提供しています。グループ監査とは、複数の構成単位からなるグループが作成する財務諸表に対する監査のことであり、連結財務諸表の監査などが該当します。

 

(1) 責任

グループ監査の責任者は、グループ財務諸表の監査業務を監督及び実施し、適切な監査報告書を発行する責任があります。したがってグループ監査責任者は、グループ財務諸表に対する監査報告書において、グループ財務諸表の構成単位の監査人の利用に関して言及することはできません。

 

(2) 監査契約の新規の締結及び更新

グループ監査責任者は、監査契約の新規の締結又は更新に際して、グループ監査において意見表明の基礎となる十分かつ適切な監査証拠を入手できるかどうかを判断しなければなりません。

グループ監査責任者は、経営者によって課される制約等により十分かつ適切な監査証拠を入手できないと判断した場合等には、監査契約の新規の締結又は更新を行うことはできません。

 

(3) 監査の基本的な方針及び詳細な監査計画

グループ監査チームは、グループ財務諸表の監査の基本的な方針とその詳細な監査計画を作成しなければなりません。また、グループ監査責任者はこれらを査閲しなければなりません。

 

(4) グループ全体、構成単位及びこれらの環境の理解

監査人は、重要な虚偽表示リスクを識別し評価するために、以下の事項を実施して企業及び企業環境を理解しなければなりません。

(a) 監査契約の新規の締結及び更新に当たって入手した、グループとその構成単位の環境の理解を深めること

(b) 連結プロセスを理解すること

 

(5) 構成単位の監査人に関する理解

グループ監査チームは、構成単位の財務情報に関する作業の実施を構成単位の監査人に依頼する場合、以下の事項等を理解しなければなりません。

(a) 構成単位の監査人が、グループ財務諸表の監査に関連する職業倫理に関する規定を理解し遵守しているか

(b) 構成単位の監査人が、専門的能力、職業的専門家としての能力を有しているか

(c) グループ監査チームが、十分かつ適切な監査証拠を入手するに当たり必要な程度まで構成単位の監査人の作業に関与できるか

グループ監査チームが上記に列挙されている事項に関して重大な懸念を抱いている場合等は、グループ監査チームは、構成単位の監査人に作業を依頼せずに、自ら十分かつ適切な監査証拠を入手しなければなりません。

 

(6) 重要性

グループ監査チームは、グループ財務諸表全体としての重要性の基準値、グループ財務諸表における特定の取引種類・勘定残高・開示等に対する重要性の基準値、構成単位の重要性の基準値をそれぞれ決定しなければなりません。

 

(7) 評価したリスクへの対応

監査人は、評価した重要な虚偽表示のリスクに応じて、適切な対応を立案し実施することが要求されています。

(a) 構成単位の財務情報について実施する作業の種類の決定

グループ監査チーム又は構成単位の監査人は、グループの中の重要な構成単位については財務情報の監査を実施しなければなりません。また、それ以外の構成単位については、グループ・レベルの分析的手続を実施します。

なお、一定の手続を実施しても十分かつ適切な監査証拠を入手できない場合には、一定の追加手続を行うことになります。

(b) 構成単位の監査人が実施する作業等への関与

構成単位の監査人が重要な構成単位の財務情報の監査を実施する場合、グループ監査チームは、特別な検討を必要とするリスクを識別するため、構成単位の監査人のリスク評価に関与します。

また、特別な検討を必要とするリスクが識別された場合には、グループ監査チームは、そのリスクに対応するためのリスク対応手続の適切性も評価することになります。

(c) 後発事象

グループ監査チーム又は構成単位の監査人が構成単位の財務情報についての監査を実施する場合には、グループ監査チーム又は構成単位の監査人は、期末日と監査報告書日の間に発生し、グループ財務諸表の修正又は開示が必要な事象を識別するための手続を実施しなければなりません。

(d) 構成単位の監査人とのコミュニケーション

グループ監査チームは、構成単位の監査人に、グループ財務諸表の監査において要求する事項として、実施すべき作業、その作業結果の利用目的並びに構成単位の監査人のグループ監査チームへの報告の内容等を適時に伝達します。

 

(8) 入手した監査証拠の十分性及び適切性の評価

グループ監査チームは、以下のことを実施して構成単位の監査人からの報告事項を評価します。

(a) 構成単位の監査人、構成単位の経営者又はグループ経営者と重要な事項を協議すること

(b) 構成単位の監査人の監査調書の査閲の必要性を判断すること

なお、グループ監査チームは、構成単位の監査人の作業が不十分であると判断した場合には、必要な追加手続等を決定します。

 

(9) グループ経営者及びグループ統治責任者とのコミュニケーション

グループ監査チームは、識別された内部統制の不備、識別した不正やその可能性等を、適切な階層のグループ経営者に適時に報告しなければなりません。また、実施する作業の種類の概要、グループ経営者による不正又は不正の疑いなどについてグループ統治責任者とコミュニケーションを行わなければなりません。

 

(10) 監査調書

グループ監査チームは、以下の事項を監査調書に記載します。

(a) 重要な構成単位を識別するために実施した分析及び作業の種類

(b) 重要な構成単位の監査人が実施した作業へのグループ監査チームの関与の内容、時期及び範囲

(c) グループ監査チームと構成単位の監査人との書面によるコミュニケーション

3.最後に

今まで23回に渡り、監査基準のクラリティ版を紹介してきました。旧来の監査基準が改訂され、クラリティ版の国際監査基準に対応した新しい日本の監査基準は2012年3月決算以降に適用されています。今回で現在適用されている監査基準36本の紹介がすべて終わったため、本連載記事「国際監査基準のクラリティ版について解説」は今月で最終回となります。今後も国際的な動向をとらえつつ、監査基準等に新しい動きがあれば随時、本ニュースレターで紹介していきたいと思います。

 
執筆者:吉田隆伸
 


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  明誠ニュースレター vol.33
2013年7月8日発行
発行責任者:武田剛 プロダクトマネジャー:村田博明
制作:株式会社ゼラス 佐々木景子
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