明誠グループニュースレター

情報フラッシュ [ 連載記事 ]
ActiveDataによる不正監査手続 第7回 売上控除項目の月次推移分析
IFRS(国際財務報告基準)第33回 IFRS第8号「事業セグメント」
中小企業お役立ち情報3 中小企業を対象とした融資制度

[ トピック解説 ]

「時価の算定に関する研究資料〜非金融商品の時価算定〜」の公表について

「我が国の引当金に関する研究資料」の公表について

特別目的会社の連結範囲等に関する検討の中間取りまとめ


情報フラッシュ

 
発表日時 表題
平成25年7月24日 日本公認会計士協会はIT委員会実務指針第7号「受託業務のセキュリティ・可用性・処理のインテグリティ・機密保持に係る内部統制の保証報告書」を公表しました。
平成25年7月24日 日本公認会計士協会は「IT委員会報告第5号「ITに係る保証業務等の実務指針(一般指針)」の改正について」を公表しました。
平成25年7月22日 日本公認会計士協会は「経営研究調査会研究報告第32号「企業価値評価ガイドライン」の改正について」を公表しました。
平成25年7月18日 IASBが「概念フレームワーク」に関するディスカッション・ペーパーを公表しました。
平成25年7月12日 日本公認会計士協会は監査・保証実務委員会研究報告第28号「訂正報告書に含まれる財務諸表等に対する監査上の留意事項について」を公表しました。
平成25年7月10日 日本公認会計士協会は「監査基準委員会研究報告第1号「監査ツール」の改正について」(公開草案)を公表しました。
平成25年7月9日 日本公認会計士協会は会計制度委員会研究資料第4号「時価の算定に関する研究資料〜非金融商品の時価算定〜」を公表しました。
平成25年7月5日 日本公認会計士協会は学校法人委員会研究報告第22号「私立大学退職金財団に対する負担金等に関する会計処理及び監査上の取扱いに関するQ&A」を改正しました。
平成25年7月2日 企業会計基準委員会は実務対応報告公開草案第39号 「従業員等に信託を通じて自社の株式を交付する取引に関する実務上の取扱い(案)」を公表しました。
平成25年7月2日 日本公認会計士協会は「経営研究調査会研究報告「不正調査ガイドライン」」(公開草案)を公表しました。
平成25年7月2日 日本公認会計士協会は非営利法人委員会研究報告第25号「非営利組織の会計枠組み構築に向けて」を公表しました。
平成25年7月2日 日本公認会計士協会は公会計委員会研究報告第20号「国際監査基準 公的部門特有の考慮事項の検討」を公表しました。
平成25年7月2日 日本公認会計士協会は租税調査会研究報告第27号「中小企業の経営者に関係する相続税制と手続について」を公表しました。

トピック解説

 
 

「時価の算定に関する研究資料〜非金融商品の時価算定〜」の公表について

1.はじめに

2013年7月9日に日本公認会計士協会より会計制度委員会研究資料第4号「時価の算定に関する研究資料〜非金融商品の時価算定〜」が公表されました。これは日本公認会計士協会の研究資料であり、実務上の基準や指針ではありませんが、非金融商品の時価の算定について一定の研究がなされていることから、その内容を解説したいと思います。

2.時価について

近年、日本の会計実務において資産の時価を使用する局面が増加しています。これは、会計基準の改定により、時価をもって評価すべき資産の種類が増加していること、時価を注記する事項が増加していること等によります。時価を使用すべく会計基準が改定されてきた背景としては、帳簿価額が価値を過大に表示したまま将来に損失を繰り延べているのではないか等の指摘もあり、企業の財政状態をより正しく把握する必要性が増加してきたこと等によります。

現在の会計基準における時価の取扱いは以下の通りです。

 

表1:現在の会計基準における時価の取扱い

会計基準 時価評価等の対象 取扱い
金融商品会計基準 売買目的有価証券 時価で測定
その他有価証券(時価のあるもの) 時価で測定
デリバティブ 原則として時価で測定
金融商品全般 時価等について注記
棚卸資産評価会計基準 棚卸資産 低価法の適用(収益性の低下が認められる場合には正味売却価額で評価)
トレーディング目的で保有する棚卸資産 時価で評価
固定資産減損会計基準 固定資産 減損の測定時に時価を使用
企業結合会計基準 企業結合により受け入れる事業 企業結合日の時価で算定
企業結合により受け入れる資産・負債 企業結合日の時価を資産・負債に配分して評価
退職給付会計基準 年金資産 時価により計算
賃貸等不動産時価等開示会計基準 賃貸等不動産 時価を注記

3.非金融商品の時価について

上記に言う時価とは公正な評価額であり、通常、それは観察可能な市場価格に基づく価額をいい、市場価額が観察できない場合には合理的に算定された価額を言うとされています。一般的にマーケットが存在する金融商品では時価を算定するための情報の入手が容易である一方、非金融商品については時価を算定することが困難な場合が多いと思われます。そのような場合に、いかに公正な評価額たる時価を算定すべきかが問題となります。

4.時価の算定方法の概要

一般に市場価格が観察できないなどの場合には、資産の特性等により以下のような方法を併用又は選択して時価を算定します。

 

表2:時価(公正な評価額)の算定の方法

方法 内容 算定のために必要な情報
コスト・アプローチ 同等の資産の取得に要するコストを用いて時価を算定する 対象資産の経過年数、残存耐用年数など
マーケット・アプローチ 類似の資産の市場価格を用いて時価を算定する 市場取引データ
インカム・アプローチ 資産が将来もたらすキャッシュ・フローを現在価値に割り引くことで時価を算定 将来キャッシュ・フロー、割引率など

5.非金融資産の時価算定に関する実務上の論点

[1] 有形固定資産−不動産

不動産は市場価格に基づく価額を客観的に観察することは、通常、困難であるため、合理的に算定された価額が時価となります。通常は、不動産鑑定士から不動産鑑定評価書を入手することが多いと考えられます。不動産の価格を求める鑑定評価の手法は、a.原価法(コスト・アプローチ)、b.取引事例法(マーケット・アプローチ)、c.収益還元法(インカム・アプローチ)に大別されます。

また、重要性の乏しい不動産等については、公示価格や路線価などの価格指標を用いて算定した価額を、合理的に算定された価額とみなすことができるとされています。

なお、不動産の時価の算定にあたり注意すべき主な点は以下の通りです。

 

表3:不動産の時価算定について

方法 注意点など
コスト・アプローチ 再調達原価の把握と減価修正を適切に行うことができる場合に有効
マーケット・アプローチ 近隣地域などで類似の不動産の取引が行われている場合に有効
インカム・アプローチ ほとんどの不動産に適用可能であるが、賃料、貸室の稼働率などの毎期の変動を慎重に分析する必要がある

 

なお、不動産鑑定士の鑑定評価を用いる際には、依頼目的によって鑑定評価の条件の付され方が異なる場合があることに注意が必要です。また、重要性が乏しい不動産等について一定の価格指標を用いた評価を行う場合には、評価条件や限定された手続の内容に留意する必要があります。

 

[2] 有形固定資産−動産

機械装置や車両などの動産の時価については、観察可能な市場価格が存在するケースは限定的であるため、時価を何らかの手法で算定する必要があります。ただし動産は、不動産と異なり、比較的短い期間の耐用年数で減価償却されているうえ、帳簿価額と時価が大幅に乖離することは少ないと思われます。ただ、市場環境の変化などにより時価が帳簿価額と大きく乖離した場合には、時価の合理的な見積りを検討する必要があります。

なお、動産の時価の算定にあたり注意すべき主な点は以下の通りです。

 

表4:動産の時価算定について

方法 注意点など
コスト・アプローチ 再取得コストや減価率を適切に算定する必要がある
マーケット・アプローチ 利用できるケースは限定的であるが、直近の売買事例や価格水準を参考にすることが有用である場合がある
インカム・アプローチ 利用できるケースは限定的(他の方法の検証用に利用することはある)

 

[3] 無形固定資産−仕掛研究開発を除く

特許権や商標権などの無形固定資産は、観察可能な市場価格が存在することは極めて限定的であるため、時価を何らかの合理的な方法に基づいて算定することになります。

なお、時価の算定にあたり注意すべき主な点は以下の通りです。

 

表5:無形固定資産の時価算定について

方法 注意点など
コスト・アプローチ 再調達原価等を測定するのは困難なことが多く、ソフトウェアなど限定的なケースで利用される
マーケット・アプローチ 利用できるケースは限定的であるが、可能な限り直近の売買事例や価格水準を参考にすることが有用である
インカム・アプローチ 多くの無形資産で利用される。税務メリットを考慮するかどうかに注意する

 

[4] 無形固定資産−仕掛研究開発

日本では、「研究開発費等に係る会計基準」において研究開発費は発生時に費用処理しなければならないとされていることから開発費を資産として認識することはありませんでした。ただし、平成20年の企業結合会計基準等の改正により、企業結合により受け入れた研究開発活動の途中段階の成果について、識別可能である場合には識別可能資産として取得原価を配分することが求められることになりました。この場合に、当該研究開発の途中段階の成果について時価算定を行うことになります。

なお、当該研究開発の途中段階の成果については、当該資産から将来もたらされる経済的便益から時価を算定するインカム・アプローチを用いることが一般的です。この場合、研究開発プロジェクトの成否等に対応して複数のシナリオを分け、それぞれのキャッシュ・フローを見積もり、期待値を算定するDCF法などを利用することになります。

 

[5] 企業結合

企業結合における会計処理は、取得企業を決定した後、(1) 取得原価の算定、(2) 取得原価の配分、(3) のれんの会計処理、の順に処理をしていくことになります。

取得原価の配分については、事業の取得原価を、識別可能資産・負債に取得日における時価を以って配分する必要があります。この場合は、被取得企業の貸借対照表上に計上されている帳簿価額を考慮する必要がない点に注意が必要です。すなわち、取得日において一定の要件を満たすものは、取得企業において識別可能資産・負債として認識する必要があります。

また、日本の会計基準は、のれんは取得原価を識別可能資産・負債に配分した残余として算定することになります。

6.最後に

時価をめぐる国際的な動向として、国際会計基準(IFRS)財団は平成24年12月にIFRS第13号「公正価値測定」に付属する教育マテリアル(第1章)を公表しています。これは、相場価格のない資本性金融商品の公正価値の測定についての指針であり、強制力はありませんが、実務上参考となるものです。今後、他の資産、負債についても作成が予定されています。日本の会計実務にも影響を与えることが考えられることから、今後の動向にも注意が必要です。

 
執筆者:吉田隆伸
 


 

「我が国の引当金に関する研究資料」の公表について

1.本研究資料公表の経緯

我が国では、引当金について、企業会計原則注解【注18】にその計上基準が示されており、企業会計基準委員会及び協会から、個別の会計事象等について、会計基準や監査上の取扱い等が公表されているものの、引当金に関する包括的な会計基準は設定されていません。

このような状況下、引当金の実務においては、経済環境の変化や企業の事業内容の多様化・複雑化などを背景として、認識又は測定に係る判断が容易ではない場合があるとの指摘が従来から見られ、監査実務においても論点になることが多く、このため、以下のような検討を行うこととしました。

・我が国企業における「引当金の計上基準」の開示状況等による引当金に関する個別論点の洗い出し

・具体的な会計処理(主に注解18に基づく)及び開示についての考察

引当金の計上基準に係る多様な実務慣行から、必ずしも一つの見解や結論を見出すことは困難でありましたが、これまでの検討経過を研究資料として公表することは意義のあることと考え、当該研究資料を公表するに至りました。

2.具体的事例の考察

(1) 従業員・役員への給付(従業員への退職給付引当金を除く。)

  会計処理の考え方
ケース1:賞与引当金

期末日後の支給日に在籍することが賞与支給の条件となっている場合、将来の賞与支給の全部又は一部が当期末までの従業員による勤務に起因しているか否か、賞与支給の可能性等を検討して引当金を認識することになると考えられる。

決算賞与については、支給理由、支給額の算定方法、支給時期などを総合的に勘案する必要がある。

期末日をまたぐ一定期間の成果に基づいて支給額が算定される賞与については、期末日までの実績を踏まえた成果の達成可能性を合理的に見積もった上で、支給対象期間に対応して当期の負担に属する金額を引当金として計上することになると考えられる。

ケース2:役員賞与引当金

業績連動型役員報酬に含める等の方法により期末日前に支給額を株主総会で決議している場合には、未払役員報酬等の科目で認識されていることが多いと考えられる。

一方、期末日後に株主総会で役員賞与の支給額を決議する場合には、役員賞与引当金の認識の要否を検討することが必要となる。

役員退職慰労引当金

将来の役員退職慰労金の支給の全部又は一部が当期末までの役員による職務に起因しており、支給の可能性が高く、その金額を合理的に見積もることができる場合には、役員退職慰労引当金を認識することになると考えられる。

 

(2) 収益認識に関連する引当金

  会計処理の考え方
ケース4:製品保証引当金

販売後の一定期間、製商品の修理又は交換に無償で応じる契約に基づいて負担する費用は、過去の経験等から費用の発生見込額を合理的に見積もることができる場合には、製商品の販売時に引当金を認識することになると考えられる。

有償での保証契約に基づく製商品の修理又は交換によって生じる費用は、製商品の販売時には発生していないと考えられるため引当金を認識することにはならず、その発生時に認識することになると考えられる。

ケース5:返品調整引当金

将来返品が予想される場合であって、その返品の額を合理的に見積もることができる場合は、販売時点で収益を認識し、返品調整引当金を認識することになると考えられる。

ケース6:売上値引引当金・売上割戻引当金

販売先に対する将来の売上値引額や売上割戻額を考慮した後の売上金額を合理的に見積もることができるときには、収益及び売上値引引当金等を認識することになると考えられる。

ケース7:ポイント引当金

商品やサービスと交換可能なポイントの付与が、約款や広く周知された撤回不可能な方針等に基づいて行われており、将来の商品又はサービスとの交換時に通常の取引価格を下回る価格での提供又は一定の支出が見込まれている場合には、ポイントの付与時に引当金を認識することになると考えられる。

 

(3) 不利な契約に関連する引当金

  会計処理の考え方
ケース8: 工事損失・受注損失引当金

工事損失の発生の可能性が高く、かつ、その金額を合理的に見積もることができる場合には、引当金を認識することとなると考えられる。(企業会計基準第15号「工事契約に関する会計基準」19項参照)

ケース9:買付契約に関連する引当金

将来の棚卸資産の購入に伴って生じる損失が、当期以前の解約不能の買付契約の締結及び当期末までの事業環境の変化に起因しており、損失の発生の可能性が高く、その金額を合理的に見積もることができる場合には、確定買付契約に関連する引当金を認識することになると考えられる。

ケース10: 転貸損失引当金

当期以前に締結した解約不能の賃借契約を原因とした転貸損失の発生する可能性が高く、その金額を合理的に見積もることができる場合には、引当金を認識することになると考えられる。

 

(4) 訴訟・法令違反等に関連する引当金

  会計処理の考え方
ケース11: 法令違反等に関連する引当金

訴訟が過去の事象を対象としており、訴訟損失が発生する可能性が高く、その金額を合理的に見積もることができる場合には、訴訟損失引当金を認識することになると考えられる。

ケース12: 独占禁止法等の違反に関連する引当金

独占禁止法等の違反については、当期以前の事象に起因して課徴金等が発生する可能性が高く、その金額を合理的に見積もることができる場合には、独占禁止法等の違反に関連する引当金を認識することになると考えられる。

ケース13: リコール損失引当金

当期以前に販売済みの製商品に安全上の問題等が発生したことを原因として、将来当該製商品を回収するために費用が発生する可能性が高く、その金額を販売数量や過去の経験値等に基づき合理的に見積もることができる場合には、引当金を認識することになると考えられる。

 

(5) 保証債務に関連する引当金

  会計処理の考え方
ケース14: 債務保証損失引当金

主たる債務者の財政状態の悪化等により、債務不履行となる可能性があり、その結果、保証人が保証債務を履行し、その履行に伴う求償債権が回収不能となる可能性が高い場合で、かつ、これによって生ずる損失額を合理的に見積もることができる場合には、保証人は、当期の負担に属する金額を債務保証損失引当金に計上する必要がある。(監保実第61号4.(1))

 

(6)将来の費用又は損失に関連する引当金

  会計処理の考え方
ケース15: 修繕・特別修繕引当金

現在の当該設備の利用によって、次回の修繕や特別修繕が必要となり、その際には費用が発生する可能性が高く、その金額を過去の経験等に基づいて合理的に見積もることができる場合には、引当金を認識することになると考えられる。

ケース16: 将来の営業損失

過去の不利な契約の締結により生じる損失を除く、実際に営業活動を行わなければ発生しない将来の営業損失については、その発生が当期以前の事象に起因しているとはいえないことから、引当金の認識要件を満たさないと考えられる。

 

(7) 環境対策及びリサイクルに関連する引当金

  会計処理の考え方
ケース17: 環境対策引当金、環境安全対策引当金

例えば、工場等からの臭気や騒音等に対処するための費用については、法的義務がある場合だけでなく法的義務がない場合であっても、実際に周辺住民に被害が発生しており、損失の発生する可能性が高く、かつ金額を合理的に見積もることができるときには、引当金を認識することになると考えられる。


  会計処理の考え方
ケース18: リサイクル費用引当金・再資源化費用等引当金

家電リサイクル法、PCリサイクル法及び二輪車リサイクルシステムでは、法的義務の有無に違いはあるが、いずれの場合にも、当期以前のリサイクル対象物の販売に起因し、将来のリサイクル費用の発生する可能性が高いと考えられることから、その金額を合理的に見積もることができる場合には、引当金を認識することになると考えられる。

 

(8) リストラクチャリングに関連する引当金

  会計処理の考え方
ケース19: 事業構造改善引当金、事業撤退損失引当金、事業整理損失引当金等

リストラクチャリングに伴い発生する費用又は損失については、原則として、固定資産の減損損失、投資有価証券の減損、貸倒引当金、未払退職金等の内容に応じた会計基準を適用して会計処理すると考えられる。

その上で、会計基準では直接規定されていない費用又は損失のうち、その金額を合理的に見積もることができる場合には、引当金を認識することになると考えられる。

ケース20: 本社移転損失引当金、移転費用引当金、店舗閉鎖損失引当金等

例えば、移転費用については、期末日までに移転が行われている場合には未払金等として計上されるが、移転又は閉鎖等の方針を決定しただけで期末日までに移転が行われていない場合には、費用の発生が当期以前の事象に起因しているとは判断されないため、引当金の認識要件を満たしている場合は多くないものと考えられる。

ケース21: リストラクチャリングに伴う割増退職金等

リストラクチャリング計画を経営者が決定したのみの段階では、一般的には、引当金の認識要件を満たさないと考えられる。

リストラクチャリング計画が従業員に周知された段階では、リストラクチャリングの実行可能性が高まり、金額の合理的な見積りも可能となるケースもあると想定されるため、引当金の認識要件を満たすことがあると考えられるが、労使関係等の状況によって慎重な判断が必要となる。

 

(9) 業界特有の引当金

  会計処理の考え方
ケース22: 利息返還損失引当金

債務者等から利息制限法の上限金利を超過して支払った利息の返還の請求があるが和解に至っていないものが存在する場合及び請求はないが過去に返還実績がある等により今後返還の請求が見込まれる場合においては、当該見積返還額を引当計上することになる。

 

(10) 負債の認識の中止に関連する引当金

  会計処理の考え方
ケース23: 睡眠預金に対する引当金

睡眠預金に対する負債計上の中止処理後、将来の返還(支払)請求に応じた場合、費用が発生することになるため、引当金の認識要件を満たしている可能性があるものとし、引当金計上の要否を検討する必要がある。


  会計処理の考え方
ケース24: 商品券・旅行券等に対する引当金

商品券・旅行券等に対する負債計上の中止処理後、顧客が商品券や旅行券等を使用した場合には、商品を引渡したり、旅行を提供することから、引当金の認識要件を満たしている可能性があるため、引当金計上の要否を検討する必要がある。

 

(11) その他

  会計処理の考え方
ケース25: 株主優待引当金

株主優待券等の利用により企業に費用負担が生じる場合であって、その内容が期末日以前に株主に公表されており、利用実績に基づき翌事業年度以降の利用により発生する費用を合理的に見積もることができる場合には、株主優待引当金を認識することになると考えられる。

ケース26: 災害損失引当金

将来の建物や設備等の撤去・取壊費用又は将来の復旧・原状回復や修繕に要する費用については、撤去・取壊・修繕等を行う以外に選択肢がない場合には、引当金を認識することになると考えられる。

災害を受けて本社等を移転する場合、期末日に移転していない場合の移転費用については、引当金の要件を満たさないのが一般的と考えられるため、実際の移転時に認識する。

3.引当金の開示に関する考察

我が国では、有価証券報告書等においては、重要な会計方針として「引当金の計上基準」の記載が要求されているものの、詳細な定めはありません。引当金の計上基準を重要な会計方針として具体的に開示することや、重要な訴訟や偶発事象について詳細に開示することは、財務諸表利用者が企業の経営状況を理解し、投資意思決定を行う上で重要であると考えられるため、当該引当金の開示が財務諸表利用者にとって十分なものとなっているかについて、改めて検討されることが期待されます。

 

【参考資料】

会計制度委員会研究資料第3号「我が国の引当金に関する研究資料」

 
執筆者:古田 まゆみ
 

 

特別目的会社の連結範囲等に関する検討の中間取りまとめ

2013年3月29日に企業会計基準委員会から、「特別目的会社の連結範囲等に関する検討の中間取りまとめ」(以下、本中間取りまとめ)が公表されました。以下では、本中間取りまとめについて、国際財務報告基準(IFRS)第10号「連結財務諸表」に着目して簡潔に概要を説明します。

1.これまでの検討の経緯

平成18年2月に、特別目的会社を利用した取引に係る会計基準等の整備のために特別目的会社専門委員会(以下、専門委員会)が設置されました。専門委員会は、平成19年3月に、当面の対応として企業会計基準適用指針第15号「一定の特別目的会社に係る開示に関する適用指針」を公表し、特別目的会社の連結に関する特則の要件を満たした特別目的会社に関する一定の開示を求めました。

また、平成23年3月には、特別目的会社の連結に関する連結の取扱いの包括的な改正に向けた検討に先がけて、特別目的会社の連結に関する特則について、資産の譲渡者のみに適用されるよう、短期的対応として企業会計基準第22号「連結財務諸表に関する会計基準」の改正を行いました。

その後、平成23年5月のIFRS第10号の公表後は、仮に我が国でIFRS第10号の支配の考え方を取り入れた場合に生じえる論点の検討を行ってきました。

今般、専門委員会での検討が長期間にわたっていることから、今後の会計基準の開発に向けた検討に資するよう、現在までの検討状況について中間的に取りまとめておくこととし、本中間取りまとめが公表されました。

2.特別目的会社の連結範囲

[1]特別目的会社に対する支配力基準の適用について

我が国の会計基準では、親会社を以下の要件を満たす企業として定めています。

(1)他の企業の議決権の過半数を自己の計算において所有している企業

(2)他の企業の議決権の40/100以上、50/100以下を自己の計算において所有している企業であって、以下の要件を満たす企業

1)緊密者と同意者が所有している議決権と合わせて、議決権の過半数を占めている。

2)過去又は現在の役員若しくは使用人で財務及び営業又は事業の方針の決定に関して影響を与えることができる者が、意思決定機関の過半数を占めている。

3)重要な財産及び営業または事業の方針の決定を支配する契約等が存在する。

4)(緊密者からの融資と合計して)資金調達額の過半について融資を行っている。

5)その他意思決定機関を支配していることが推測される事実が存在する。

(3)自己の計算において所有している議決権(0%である場合を含む。)と、緊密者及び同意者が所有している議決権とを合わせて、他の企業の議決権の過半数を占めている企業であって、かつ、上記(2)の1)〜5)までのいずれかの要件に該当する企業

また、上記にかかわらず、一定の要件を満たした特別目的会社については、資産を譲渡した企業の子会社に該当しないものと推定するという特別目的会社の連結に関する特則がおかれています。

IFRS第10号は、事業を営む典型的な企業とそれ以外の企業に区分せず、全ての投資先に適用する単一の基礎(支配)を設けており、投資者は、以下の3つの要素をすべて有している場合にのみ、投資先を支配しているとされています。

 

@投資先に対するパワー、

A投資先への関与により生じる変動リターンに対するエクスポージャー又は権利

B投資者のリターンの額に影響を及ぼすように投資先に対するパワーを用いる能力

さらに、支配の判定にあたっては、以下の@〜Dとともに、ほかの当事者との関係の内容を考慮することが求められています。

 

@投資先の目的及び設計

A関連性のある活動は何か、及び当該活動に関する意思決定がどのように行われるか

B投資者の権利が、関連性のある活動を指図する現在の能力を投資者に与えているかどうか

C投資者が、投資先への関与により生じる変動リターンに対するエクスポージャー又は権利を有しているかどうか

D投資者が、投資者のリターンの額に影響を及ぼすように投資先に対するパワーを用いる能力を有しているかどうか

本中間取りまとめでは、上記のIFRSにおける支配の判定について、以下の設例を用いた検討を行っています。

・不動産の流動化

・住宅ローンの証券化

 

[2]代理人の取扱いについて

我が国において包括的に代理人の取扱いを定めた会計基準はありません。

IFRS第10号においては、支配の1要素として、投資者は、投資者のリターンの額に影響を及ぼすように投資先に対するパワーを用いる能力を有していることが求められています。

また、意思決定者は自らが代理人かどうかを決定する際に、意思決定者、管理されている投資先、及び他の当事者との間の全体的な関係、特に以下の4つの要因をすべて検討することが求められています。

@投資先に対する意思決定権限の範囲

A他の当事者が保有している権利(解任権など)

B報酬契約に従って得る権利のある報酬

C投資先に対して保有している他の関与により生じるリターンの変動制に対する意思決定者のエクスポージャー

本中間取りまとめでは、上記のIFRSにおける代理人かどうかの判定について、以下の設例を用いた検討を行っています。

・不動産の流動化

・未公開株式投資を目的とした投資事業組合

 

[3]会社に準ずる事業体について(組合及び信託の取扱い)

「連結財務諸表における特別目的会社の取扱い等に関する論点の整理」では、組合は、法人格はないものの、連結会計基準において会社に準ずる事業体として明示されていることから、連結対象となり得る企業に含まれると解されるとしています。また、信託は財産管理の制度としての特徴も有しており、通常、会社に準ずる事業体に該当するとはいえないと解されるとしています。そのうえで、これらは、経済的な機能が類似している場合も少なくないが、組合であるか信託であるかによって、出資者又は受益者の会計処理が異なる場合があることから、今後、これらの取扱いができるだけ整合するように見直していくことが考えられるとしています。

IFRS第10号においては、親会社は、「1つ又は複数の企業を支配している企業」と定義され、また、子会社は、「他の企業に支配されている企業」と定義されており、どのような企業が子会社となり得るかは明示されていません。

3.資産の流動化に関する会計基準等の見直し

我が国の会計基準においては、資産を流動化するためには、特別目的会社に対して金融資産を譲渡した場合、当該金融資産の消滅の可否は、企業会計基準10号「金融商品に関する会計基準」における金融資産の消滅の認識に関する定めに基づいて判断されます。また、資産を流動化するために特別目的会社に対して不動産を譲渡した場合、不動産の消滅の認識の可否は、日本公認会計士協会 会計制度委員会報告第15号「特別目的会社を活用した不動産の流動化に係る譲渡人の会計処理に関する実務指針」に基づいて判断されます。

資産の譲渡先の特別目的会社を、資産を譲渡した会社の連結範囲に含めるべきか否かは、連結会計基準に基づいて判断されます。したがって、特別目的会社を利用して流動化した資産が、資産を譲渡した会社の連結財務諸表に引き続き計上されるかどうかは、対象資産の消滅の認識の判断と、当該特別目的会社を連結範囲に含めるかどうかの判断が必要となります。

本中間取りまとめでは、金融資産の消滅の認識及び不動産の流動化に関する専門委員会の過去の検討状況をまとめています。なお、IFRS第10号の公表後、これらの論点についての検討は行われていません。

 
執筆者:中戸 大介
 

 

連載記事

 
 

ActiveDataによる不正監査手続 第7回 売上控除項目の月次推移分析

シリーズの7回目は、売上控除項目である売上取消、値引き、返品についての月次推移分析をしてみたいと思います。

 

売上の粉飾が行われると当期の売上は増加しますが、その売上債権を通常の方法で期限通りに回収するのは困難となります。多額の売上債権が回収されずに不良債権化すれば、原因追及され、不正が明るみに出る確率は高くなります。架空債権を不良債権化させないもっとも簡易な方法は、翌期に入って売上取消や返品・値引などの処理を行う事によって、売上債権を消去することです。このような処理を行った場合、当然のことながら、翌期初月の売上取消、返品・値引きの期初月の金額が通常月に比べ異常に大きくなります。そのため、売上控除項目の月次推移分析を行う事により発見できます。

また、期首直後の期間に行われたこれらの取引の中から多額な取引を抽出して、詳細な検討を行うことも有効な監査手続きです。

 

それでは、ActiveDataを使用して、売上取消、値引、返品についての月次比較分析をしてみたいと思います。

@「売上控除項目明細」シートを開きます。

A分析コマンドの中から「集約/ピボット」を選択します。

B「集約/ピボット」ダイアログボックスが開きますので、条件を次のように設定します。

(ア) 分析対象列のグループ列:区分コード

(イ) 集約対象列:金額

(ウ)オプションの「ピボットテーブル作成」にチェック

(エ)ピボット列:計上日とし、右のプルダウンから月を選択

(オ)クロス表計算:合計

(カ)「合計を追加」をチェック

C「OK」を押すと、「集約>売上控除項目明細」シートが作成されます。

 

次に、翌期初月の多額の売上取消、値引、返品取引を抽出してみたいと思います。

@「売上控除項目明細」シートを開きます。

Aワークシートコマンドの中から「シートクエリ」を選択し、さらに「数式により抽出」を選択します。

B「式ビルダー」ダイアログボックスが開きますので、条件を次のように設定します。

(ア) 「列名」で「計上日」を指定します。

(イ) 計算式の中から「>=」を選びます。

(ウ)関数として「日付/時刻」の「DATE(year, month, day)」を指定します。

(エ)「year, month, day」の部分に「2013,4,1」と入力します。

(オ)計算式の中から「And」を選びます。

(カ)「列名」で「計上日」を指定します。

(キ)計算式の中から「<=」を選びます。

(ク)関数として「Date&Time Function」の「DATE(year, month, day)」を指定します。

(ケ)「year, month, day」の部分に「2013,4,30」と入力します。

C「OK」をクリックすると、「抽出>売上控除項目明細」というシートが作成されます。

D「抽出>売上控除項目明細」というシートを開いている状態で次のステップに進みます。

Eワークシートコマンドの中から「シートクエリ」を選択し、さらに「指定値により抽出」を選択します。

F「指定値により抽出」ダイアログボックスが開きますので、条件を次のように設定します。

(ア) 「条件を入力する列」で「金額」を指定します。

(イ) 「条件入力」の「数値>=」をチェックし、抽出したい金額の下限を入力します。

G「OK」をクリックすると、「抽出>抽出>売上控除項目明細」シートが作成されます。

 
執筆者:武田剛
 

 

IFRS(国際財務報告基準)第33回 IFRS第8号「事業セグメント」

1.はじめに

今回は、IFRS第8号「事業セグメント」(以下、IFRS第8号という。)について紹介します。

2.基本原則

IFRS第8号では、財務諸表の利用者が、企業が従事する事業活動及び企業が事業を行っている経営環境の性質や財務的な影響を評価できるような情報を開示することを基本原則としています。

3.事業セグメント

事業セグメントとは、企業の構成単位で、次の3つの要件すべてに該当するものをいいます。

【1】その活動から、収益を稼得し費用を負担する事業に従事している単位であること。

【2】企業の最高経営意思決定者が、資源配分に関する意思決定を行い、その業績を評価するために、その経営成績を定期的に検討している単位であること。

【3】分離した財務情報を入手できる単位であること。

ここで、最高経営意思決定者とは、企業の事業セグメントに資源を配分し、その業績を評価する者をいい、最高経営責任者又は最高業務責任者が多くの場合該当しますが、特定の肩書を有するかではなく、機能に基づき決定されます。

4.報告セグメント

企業は、上記の事業セグメントを報告セグメントとするほか、集約基準及び量的基準に基づき報告セグメントを決定します。

【1】集約基準

複数の事業セグメントを1つの事業セグメントに集約することが基本原則と整合し、当該セグメントが類似の経済的特徴を有し、かつ、次のすべての点において類似する場合には、事業セグメントを集約することを認めています。

(1)製品及びサービスの性質

(2)生産過程の性質

(3)当該製品及びサービスの顧客の類型又は種類

(4)当該製品の配送又は当該サービスの提供のために使用する方法

(5)該当がある場合には、規制環境の性質

 

【2】量的基準

企業は、次のいずれかを満たす事業セグメントに関する情報を区分して報告しなければなりません。

(1)外部売上高及びセグメント間売上高若しくは振替高の双方を含む収益が、すべての事業セグメントの収益合計額の10%以上であること

(2)セグメント純損益の絶対額が、利益を計上したすべての事業セグメントの利益合計額又は損失を計上したすべての事業セグメントの損失合計額の絶対額のいずれか大きい方の10%以上であること

(3)セグメント資産がすべての事業セグメントの資産合計額の10%以上であること

また、量的基準を満たさない事業セグメントのうち、事業セグメントが類似の経済的特徴を有し、かつ集約基準の過半数を共有する場合にのみ、事業セグメントを合算して1つの報告セグメントとすることができます。なお、事業セグメントが報告する外部収益の合計額が企業の収益合計額の75%未満である場合には、収益合計額が75%に達するまで追加する事業セグメントを識別しなければなりません。

5.開示

企業は基本原則を実行するために、以下の情報を開示なければなりません。

【1】一般的情報

(1)報告セグメントを識別するために使用した要素

(2)各報告セグメントが収益を得る源泉とする製品又はサービスの類型

【2】純損益、資産及び負債に関する情報

企業は、各報告セグメントについて、以下の金額を開示しなければなりません。ここで、開示される金額は、事業セグメントに資源を配分する意思決定を行い、その業績を評価する目的で、最高経営意思決定者に報告される測定値を原則とします。

(1)各報告セグメントの純損益

(2)定期的に最高経営意思決定者に提供されている場合には、報告セグメントの総資産及び総負債

(3)最高経営意思決定者が検討するセグメントの純損益の測定値に含まれている場合、又は別の方法で最高経営意思決定者に定期的に報告されている場合、以下に掲げる項目

(イ)外部顧客からの収益

(ロ)他の事業セグメントのとの取引による収益

(ハ)金利収益

(ニ)金利費用

(ホ)減価償却費及び償却費

(ヘ)IAS第1号97項に従って開示される重要性がある収益及び費用

(ト)関連会社及び共同支配企業の持分法損益

(チ)法人所得税費用又は収益

(リ)減価償却費及び償却費以外の重要性がある非資金項目

なお、前述したとおり、最高経営意思決定者に報告される測定値を原則とするため、各セグメントの純損益、資産及び負債の測定値に関する説明や、報告セグメントの各測定値から財務諸表上の数値への調整表を開示することが求められます。

また、内部組織構造の変更を行い、報告セグメントの構成を変更した場合には、コストが過大になる場合を除き、変更前の期間について対応する情報を修正再表示しなければなりません。修正再表示が困難な場合には、当該変更の発生した年度に、セグメントを区分した古い基準と新しい基準の双方で当期のセグメント情報を開示します。

6.企業全体の開示

報告セグメントが1つしかない企業を含め、IFRS第8号の対象となるすべての企業は、次の事項を開示しなければなりません。

【1】各製品及びサービス又は類似の製品及びサービスの各グループについての外部顧客からの収益

【2】国内及び海外の外部顧客からの収益合計額、国内と海外それぞれの非流動資産

【3】主要な顧客(取引収益が企業収益の10%以上である顧客)からの収益合計額及び当該収益を報告するセグメント名

 

【参考文献】

1.IFRS第8号

2.IFRS会計学基本テキスト 中央経済社

 
執筆者:関和輝
 

 

中小企業お役立ち情報3 中小企業を対象とした融資制度

1.概要

[1]中小企業融資制度の概要

中小企業融資制度とは、都道府県や各市町村などの地方自治体が企業向けに融資をすることです。

基本的には、銀行などが窓口となり、自治体から預かる預託金を用いて融資を行います。

中小企業が民間金融機関から通常の融資よりも低利で資金を借り入れられるよう、個々の自治体が独自の政策支援を行っており、その狙いは、中小企業の事業活動に必要な資金の融資を促進し、経営安定化、産業復興、創業支援、小規模企業対策など多岐にわたり、それぞれの政策目的に応じた独自のメニューが各自治体により用意されています。

 

[2]中小企業融資制度の成り立ち

我が国の最初の制度融資は、蜷川京都政府の下で昭和26年に創設されたというのが定説であり、高度成長期になると、独自の制度融資を導入する動きが、全国各地の自治体へと拡がりました。当初は、弱者としての中小企業の保護や育成に力点が置かれていたものの、融資の目的は、経営安定化、産業復興、創業支援、小規模企業対策へと拡大していきました。

 

[3]中小企業融資制度のメリット・デメリット

(1)メリット

イ) 利率が低めに設定されている融資制度では、たとえ信用保証協会に対して保証料を支払ったとしても、民間の金融機関が行う無担保融資などよりも資金調達コストを低く抑えることができる場合があります。

ロ) 一部の地方自治体では、事業主の方に対して、信用保証協会への保証料の支払の一部を補助する制度を設けています。

ハ) 多くの融資利用を促進するため、地方自治体が民間の金融機関に対して、低い利率での金利の設定と積極的な貸付の促進を求めており、その結果、融資の審査が比較的緩やかとなっています。

ニ) 「創業者向け融資」や「倒産対策融資」など、一般の金融機関では扱っていない種類の融資を取り扱っている地方自治体もあります。

 

(2)デメリット

イ) 制度融資を利用するためには、一定の要件が必要です。

ロ) 信用保証協会の保証を受けることが必須となります。そのため、融資の際には、通常の金利の他に保証料の負担が発生します。

ハ) 信用保証協会と金融機関の2段階で審査するため、融資を得るまでに時間が掛かります。

ニ) 税金を滞納していると、融資を得ることができない場合もあります。

ホ) 制度の種類が多く、かつ内容が頻繁に入れ替わるため、自分に最も適したものを選ぶのが困難な場合があります。

2.制度

[1]東京都の融資制度

東京都の制度融資は、東京都と東京信用保証協会と指定金融機関の三者協調のうえに成り立っている融資制度で、都内の中小企業者が金融機関から融資を受けやすくするための制度です。

東京都の制度融資を受けるには東京信用保証協会の保証が必要になります。

東京信用保証協会は、経営者の人物、資金使途、返済能力等を総合的に判断して保証の諾否や保証金額を決定します。

具体的な内容は下記のとおりで、抜粋しております。

 

この制度を利用できるのは、中小企業者又は組合で、次の条件を全て満たすことが必要です。

イ) 都内に事業所(住居)があり、保証協会の保証対象となる業種を営んでいること。
(ただし、一定の業歴要件が必要となる場合があります。)

ロ) 事業税その他租税の未申告、滞納がないこと。
(ただし、完納の見通しが立つ場合などはこの限りではない。)

ハ) 許可、認可、登録、届出等が必要な業種にあっては、当該許認可等を受けていること。
※創業を計画している方にご利用いただける制度は、創業融資です。
※極度型融資については、引き続き2年以上同一事業を営んでいることが必要です。

ニ) 現在かつ将来にわたって、暴力団員等に該当しないこと、暴力団員等が経営を支配していると認められる関係等を有しないこと及び暴力的は要求行為等を行わないこと。

 

中小企業者とは、下表の資本金・従業員数のいずれかの条件を満たしている者です。

業 種 資本金 従業員数
製造業等(ソフトウェア業、情報処理サービス業、
建設業、不動産業、運送業、出版業などを含む。)
3億円以下 300人以下
卸売業 1億円以下 100人以下
小売業(飲食業を含む。) 5千万円以下 50人以下
サービス業 5千万円以下 100人以下
医療法人 (条件なし) 300人以下

 

また、組合とは、信用保険法第2条第1項に該当する事業協同組合、事業協同小組合、企業組合、消費生活協同組合、協業組合、商工組合、商店街振興組合、生活衛生同業組合、生活衛生同業小組合、酒造組合、酒販組合、内航海運組合等のいずれかです。なお、消費生活協同組合及び内航海運組合の融資限度額は、中小企業者と同額となります。

 

【参考文献】

東京都産業労働局HP

 
執筆者:桑原
 


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  明誠ニュースレター vol.34
2013年8月9日発行
発行責任者:武田剛 プロダクトマネジャー:村田博明
制作:株式会社ゼラス 佐々木景子
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