明誠グループニュースレター

情報フラッシュ [ 連載記事 ]
ActiveDataによる不正監査手続 第8回 売上控除項目の月次推移分析2
中小企業お役立ち情報4 事業承継税制

[ トピック解説 ]

「日本における公認会計士及び公認会計士制度のあるべき姿」の公表について

「訂正報告書に含まれる財務諸表等に対する監査上の留意事項について」の公表について


情報フラッシュ

 
発表日時 表題
平成25年8月26日 金融庁はIFRSの任意適用が可能な会社(特定会社)の要件を緩和するため、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令(案)」等を公表しました。
平成25年8月21日 金融庁は「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令」を公表しました。
平成25年8月9日 日本公認会計士協会はIT委員会研究報告第43号「電子的監査証拠〜入手・利用・保存等に係る現状の留意点と展望〜」を公表しました。
平成25年8月7日 東京証券取引所は、虚偽記載等に係る上場廃止基準の取扱いを明確化し、特設注意市場銘柄制度を積極的に活用していくために、有価証券上場規程等の一部改正を公表しました。
平成25年8月7日 日本公認会計士協会は法規委員会研究報告第10号「財務情報の保証業務等の契約書の作成について」の改正についてを公表しました。
平成25年8月7日 日本公認会計士協会は「監査基準委員会研究報告第1号『監査ツール』」の改正についてを公表しました。

トピック解説

 
 

「日本における公認会計士及び公認会計士制度のあるべき姿」の公表について

1.はじめに

日本公認会計士協会の設置した「日本における公認会計士及び公認会計士制度のあるべき姿」プロジェクトチーム(以下、プロジェクトチーム)は7月、「日本における公認会計士及び公認会計士制度のあるべき姿」に関する委託研究報告(以下、当報告)を公表しました。プロジェクトチームは、平成23年5月に設置され、検討を開始し、本報告に至ったものです。

プロジェクトチームは、「公認会計士の役割」、「公認会計士の育成及び能力開発」及び「公認会計士に対する規制」の3つに分け、欧米の制度との比較から、日本の公認会計士制度のあるべき姿を検討しています。以下、当報告の区分に沿って、プロジェクトチームの提言をまとめます。

2.公認会計士の役割

プロジェクトチームは、「公認会計士とpublic interest」、「公認会計士の業務の展開」の2項目に分けて、公認会計士の役割を検討しています。

 

[1]公認会計士とpublic interest

プロジェクトチームはまず、会計プロフェッションの意義について検討するとともに、米英における公認会計士制度と比較し、アメリカにおいてはPCAOB登録事務所においても、法定監査以外の保証業務やコンサルティング業務の提供が顕著であることなどを挙げています。その結果として、保証業務の取り扱いについて、以下のように提言を行っています。

(1)監査証明業務の純化

・監査証明に類似する業務について、真に監査業務に相当するものかどうかを明らかにすること。

・既に「監査」という用語によって法定化されている業務については、当該法規や省令の改正を提案するか、自主規制基準として保証水準の差に対応する基準化を指向すること。

・上記で切り分けた監査証明業務について、サービスの内容を自主規制基準により明確にすること。

(2)保証業務の具体化とその基準化

・個別具体的なサービスに関する指針を積極的に設定・公表する

・企業会計審議会「財務情報等に係る保証業務の概念的枠組に関する意見書」を改定して、保証業務の発展を期する

・公認会計士による保証業務の有用性を、専門職業として社会的に普及させる

・公認会計士協会が、それぞれの業務に適した基準を公表すること

以上により、法定監査以外の保証業務、コンサルティング業務提供を増加させるべきとしています。

 

[2]公認会計士の業務の展開

ここでは、保証業務以外の業務について、その位置づけを検討するとともに、国際的潮流を踏まえて提言を行っています。特に、税務業務については、「海外においては、税務当局が公認会計士の署名を要請し、公認会計士の署名があれば申告書をスムースに受理する実務がある」とし、「公認会計士の税務業務対応力、国際標準の維持やクライアント・ニーズへの対応を根拠として、公認会計士が税理士登録無く税務業務を実施しうるものと考えられる。また、公認会計士が税務業務を実施することが、クライアントの納税業務に一定の信頼性を付与することになるため、一種の保証業務に類するものとも考えられる」と位置付けています。その上で、監査と税務業務の同時提供の可否について検討しています。

同時提供可であるとする論拠は、税務業務は単純に税法規定に則ったCompilation業務であり、判断業務でないことから、税務業務は保証業務でなく、また、同時提供を許容している諸外国の実情に鑑みるとしています。一方、同時提供は不可とする場合、プロジェクトチームは税理士制度との棲み分け・統合に関して検討しています。「公認会計士と税理士の会計プロフェッションとしての共通性に鑑みると、双方の試験制度とCPE制度を包括的に再考し、土台部分をもう少し幅広く認識したうえで共通科目を増やしてみることも、一考かもしれない」とし、公認会計士が税務業務を実施する際に、税理士としての別途登録は不要としても、税務業務の実務経験を課す、税理士が監査や法律等に関するテスト及び一定の監査実務経験とCPEを充足することで監査業務を実施できるという改正を提案しています。

3.公認会計士の育成及び能力開発

プロジェクトチームは、公認会計士の育成及び能力開発について、資格取得前教育、試験・資格、資格取得後教育の3つに分けて検討しています。

 

[1]資格取得前教育

プロジェクトチームは、日本の状況についての前提として以下の5点を挙げています。

・企業においては「経験豊富な会計士の下での実務経験」を積むことができないこと

・一大学生の多くが大学3 年次の途中から就職活動に奔走していること

・大学教育においては、一般教育科目、とくに倫理教育がほとんど行われていないこと

・職業倫理やIT 等の科目については、国家試験としての公認会計士試験で知識を問うことは難しいこと

・実務補習は、公認会計士試験合格者の未就職者問題の大きな要因の一つであり、実務補習を行わないで資格取得ができ、かつ社会に出ることができるようにすることが一つの解決策であること。

上記を踏まえ、プロジェクトチームは、資格取得要件を一定レベルの「知識水準」と、「実務経験」からなるとし、それぞれについて検討しています。まず、知識水準について試験に加えて大学等での単位取得を組み込み、資格試験に馴染まないIT、英語、職業倫理等を受験要件として取り込み、一方で知識水準の判定に占める筆記試験の割合を下げることが必要としています。また、実務経験については、欧州諸国における実務経験を試験後に置くという形式と、実務経験の前後を問わないとするアメリカ型の形式を比較し、両アプローチのいずれか、又はその折衷案的な方法が求められるとしています。

なお、プロジェクトチームは、「少なくとも、国際的に見て高等教育機関での教育プログラムとの連携を持っていない試験・資格制度は、日本だけであるという問題点は克服すべき」「わが国制度上は、中学卒業や高校卒業者が公認会計士という資格を名乗ることができるのに対して、諸外国ではそのような職業会計士はあり得ない。果たして、このような学歴要件で、国際的に職業的専門家として受け入れてもらえるのか、という問題が、会計士の国際化とともに顕在化することが危惧される」として、受験要件について「大学教養課程修了程度」という受験要件を追加するのが現実的としています。

 

[2]試験・資格

プロジェクトチームは、我が国の会計インフラを強化するため、会計専門家の増加とその広い浸透が必要と指摘し、専門家に対して幅広い知識と経験を身に着けるため、受験資格を以下のように国際比較しています。

 

(1) 知識水準確認型(アメリカ型)

受験要件に実務経験を含めず、一定の知識水準に到達したものを合格させる。試験の合格者数と会計事務所での採用者数に直接的な需給関係を持たせないため、経済環境に比較して合格者数が多ければ「未就職者問題」が再燃しかねない。

(2)監査責任者養成型(欧州・日本)

受験要件に実務経験が含まれるか、それに準じた仕組み。必要な人材を必要なだけ用意するものではあるが、多様化には逆行し、人材の専門化とともに固定化も図られることになる。

プロジェクトチームは、(1)の方法は、2006 年からの新試験制度において失敗したと考えられていると指摘、(2)の方法は、日本の会計プロフェッションの広がりや会計インフラの強化という長期展望を無視し、時代に逆行するものであるとしています。これを受けて、実務補習について、「国家公務員等のテーブルと同一の低額・低廉な給与・報酬を前提とし、試験合格者の採用は有期雇用を原則とし、修了考査の受験要件を満たした時点で雇用契約は解消される」という方法を提案しています。この方法により、現状の1.5〜2 倍程度の人員が監査法人等に吸収され、実務経験を積むことができるとしています。

 

[3]資格取得後教育

プロジェクトチームは、日本の資格取得後の継続的専門研修、CPE制度 (Continuing Professional Education)についても、欧米と比較し、提言を行っています。また、CPE制度を公認会計士としての最低限の資質要件を明確化するものと位置付けるアプローチ、CPE制度を公認会計士の専門性に応じた業務品質の向上のためのものと位置付けるアプローチを提案し、二つのアプローチの組み合わせも検討していくべきとしています。

4.公認会計士に対する規制

最後に、法制度及び自主規制に係る国際比較が行われています。

[1]法制度

プロジェクトチームは、会計専門職団体(日本公認会計士協会)に対する法制度、公的機関と英米と比較しています。まず、州法の規定に任されているアメリカでは、アメリカ公認会計士協会がそのモデル法を策定しており、会計専門職団体による自主規制に実質的には委ねられている。イギリスでは、会計専門職団体の広範な自主規制に任されている。対して、法的な規制は日本は公認会計士法という国による法律によって会計専門職の資格、位置づけ、業務範囲等が基本的に定められているとしています。

第二に、公開会社の監査を行う会計専門職に対しては、別途公的機関、独立第三者機関等による監査品質の監視が行われる傾向があり、その機関の位置づけ(第三者機関か、政府機関か)、会計専門職団体の自主規制との関係も世界的な共通化が進む可能性があるとしています。また、合わせて懲戒制度及び懲戒事例についての比較も行っています。

 

[2]自主規制

プロジェクトチームは、自主規制について国際比較を行い、「わが国はもっとも公的規制が強いレベルに分類される」とした上で、公的規制機関と自主規制機関を独立させ、米英の独立併存型、カナダの自主規制優位型への移行を提言しています。しかしながら、自立的自主規制に必要なリソースの確保、独立性の低下の補完、「インセンティブのねじれ」という本質的な独立性の問題を指摘し、その実現に向けてはなお多くの検討すべき事項があるとしています。そのため、まずは現在の枠組みを前提としたうえで、自主規制団体として自主規制のあり方をいま一度明確にすることを提言しています。

また、レビューについても言及し、リソースの調達が問題であるが、「もし会計プロフェッションの品質の向上を目的として掲げるならば、原則的に所属する会員全員に対して品質管理が行われるべき」としています。

5.おわりに

上記のように、プロジェクトチームは欧米との比較により、制度改正を伴う見直しを、一部具体的に提言しています。なお、協会は本委託研究報告に含まれる意見について、「これらは協会の見解を示すものではない」としており、今後の扱いについては、注目する必要があります。

 
執筆者:本田
 


 

「訂正報告書に含まれる財務諸表等に対する監査上の留意事項について」の公表について

1.はじめに

不適切な会計処理に関連して、公認会計士協会は、不適切な会計処理が疑われる場合の監査対応につき、会長通牒平成23 年第3号「循環取引等不適切な会計処理への監査上の対応等について」(平成23 年9月15 日)を公表するとともに、不適切な会計処理が発覚した場合の対応については、監査人の立場からの留意事項を整理したものとして監査・保証実務委員会研究報告第25 号「不適切な会計処理が発覚した場合の監査人の留意事項について」(平成24 年3月22 日)を公表しました。

このような経緯から、公認会計士協会では、不適切な会計処理が発覚しそれを原因として訂正報告書が提出され、当該訂正報告書に含まれる財務諸表の監査が実施される場合において、監査人として適切な監査対応とするための留意事項につき調査研究を行い、監査・保証実務委員会研究報告第28号「訂正報告書に含まれる財務諸表等に対する監査上の留意事項について」(平成25年7月3日)を公表しました。

本研究報告は、近年における、上場会社において不適切な会計処理が発覚しそれを原因として訂正報告書が提出されることになった場合の事例を基に、監査人として、監査業務の受嘱、監査計画の策定と監査手続の実施、第三者委員会又は内部調査委員会の調査報告書の利用の可否等の判断、監査人が交代している場合の対応、監査意見の表明等において監査上留意すべき事項を取りまとめ、実務上の適切な対応に資することとしたものです。ここでは、監査計画の策定と監査手続の実施に焦点を当て、訂正報告書に含まれる財務諸表の監査を行う上での留意事項について見ていきます。

2.監査計画の策定と監査手続の実施

[1] 監査計画の策定と監査手続の実施に関する全般的な留意事項

本研究報告では、監査計画の策定と監査手続の実施に関する全般的な留意事項について、以下の七つを挙げています。

監査計画の策定と監査手続の実施に関する全般的な留意事項

@訂正後の財務諸表に適用される会計基準及び監査基準

訂正後の財務諸表に適用される会計基準及び監査基準は、訂正前の財務諸表に適用される会計基準及び監査基準であることに留意する。

A監査計画の策定と監査手続の実施の同時並行的な実施

訂正後の財務諸表に対する監査は、会社の継続開示書類の提出期限の影響を受けることから、監査業務の着手から監査終了予定日までの時間が限られることが多い。このため、リスクの再評価を含む監査計画の策定と監査手続の実施を同じ時期に行いつつ、新たな発見事項について、監査計画の見直しを行い、追加手続を実施するといった監査計画の策定と監査手続の実施を常に更新しながら進めていく必要がある点に留意する。

B会社の訂正報告書提出までのスケジュール確認

訂正後の財務諸表に対する監査は、監査業務の着手から監査終了予定日までの時間が限られることが多いため、会社の訂正報告書提出までのスケジュールを確認することは重要である。

C訂正後の財務諸表に対する監査のスケジュールの策定

監査人は、訂正後の財務諸表に対する監査のスケジュール策定に当たっては、会社の訂正後の財務諸表の提出スケジュールを勘案の上、決定することになるが、証券取引所の上場廃止基準についても考慮しなければならない。

D監査チームの編成及び専門家の利用の検討

a) 監査チームの編成

監査事務所は、監査責任者を含め監査チームメンバーの選定に当たって、訂正後の財務諸表に対する監査が進行中の年度監査や四半期レビューと同時並行して実施されることが多いため、効率的かつ効果的に訂正後の財務諸表に対する監査が実施できるように考慮しなければならない。

 

b) 不正調査の専門家の検討

財務諸表を訂正する原因に不正がある場合、監査人の検討する領域は幅広く、また専門的な知識が必要とされる場合もある。したがって、監査人は、これらの検討に当たって不正調査の専門家を利用するかどうかを判断しなければならない。

E訂正後の財務諸表に対する監査の業務執行社員の任期(ローテーション)

訂正後の財務諸表に対する監査のみを実施する監査責任者は、訂正対象年度ではなく実際に訂正に関する監査を実施した期間に基づいて関与期間を計算することになる。

F不正が監査計画に与える影響の検討

財務諸表の訂正の原因が不正である場合には、不正が監査計画に与える影響を十分に検討する必要がある。

 

[2]リスク評価手続の再検討及びリスク対応手続の策定

次に、リスク評価手続の再検討及びリスク対応手続の策定における留意事項について、本研究報告では以下の六つを挙げています

リスク評価手続の再検討及びリスク対応手続の策定

@企業及び企業環境の理解と重要な虚偽表示リスクの識別の見直し

財務諸表を訂正する場合には、従来識別していた重要な虚偽表示リスクの評価が変更される可能性があり、更に従来識別していなかった重要な虚偽表示リスクを識別する可能性がある。財務諸表の訂正の原因となった事象の内容の把握、事象が発生した原因、事象が与える影響を慎重に検討した上で、影響を与える重要な虚偽表示リスクを識別し評価する必要がある。

また、リスク評価手続として内部統制を含む、企業及び企業環境の理解に変更がないかどうか再評価を行う。訂正後の財務諸表の監査を行う場合には、訂正の原因となった事象を分析した上で、それが内部統制を含む企業及び企業環境の理解に与える影響の検討を行うことになる。

A監査契約の締結時及びその後のリスク評価

訂正後の財務諸表の監査計画の策定に当たって、重要な虚偽表示リスクの再評価を行う必要があるが、まず訂正後の財務諸表に対する監査の契約締結時に新たに識別したリスクを検討することになる。

B重要な虚偽表示リスクの再検討における実務上の留意事項

訂正後の財務諸表に対する監査における重要な虚偽表示リスクの識別は、実務上は、訂正前の財務諸表に対する監査で識別した重要な虚偽表示リスクからの変更の有無を確認することになるため、訂正の原因となった事項を把握するとともに、訂正事項に類似する取引及び訂正によって数値が変更となる結果影響を受ける事項について、特に以下の検討を行う。

a)訂正事項、b)訂正事項に類似する取引等、c)訂正によって数値が変更となる結果影響を受ける事項

C財務諸表の訂正が当時の見積りに与える影響

財務諸表を訂正する場合、例えば、不適切な会計処理が会計上の見積り以外の項目で発生していた場合でも、経営者の偏向の存在等により会計上の見積りに影響を与えることがあることに留意する。

D内部統制の運用評価及び不備の検討

訂正の原因の検討の結果、訂正の原因とは無関係であった内部統制については、訂正後の財務諸表に対する監査において追加的な手続の実施は必要とならない場合がある。しかし、内部統制の理解を含む企業及び企業環境の再理解の結果を受けて、当該内部統制の運用状況の有効性に関して、依然として十分かつ適切な監査証拠を入手しているかどうか検討を行うことは必要である。

E実証手続の立案に関する留意事項

訂正事項、訂正事項に類似する取引及び数値が変更された結果として影響を受ける項目のそれぞれについて、実証手続を立案する。評価したリスクの程度、見直した重要性、内部統制の評価を勘案して手続の種類、範囲を決定することになる。

 

[3]重要性の基準値

財務諸表が訂正される場合、重要性の基準値の算定基礎の数値が訂正前の財務諸表から変化することが想定されるため、重要性の基準値の見直しが必要かどうかを検討しなければなりません。重要性の基準値の見直しが必要でないと判断した場合には、その旨及び見直しが必要でないと判断した理由を文書化します。重要性の基準値の見直しを行った場合には、特定の取引種類、勘定残高又は開示等に対する重要性の基準値、並びに手続実施上の重要性の見直しが必要かどうかも検討しなければなりません。

重要性の基準値が訂正前の財務諸表に対する監査を実施した際の重要性の基準値よりも低く設定される場合には、訂正前の財務諸表に対する監査では重要な虚偽表示リスクと判断していなかったリスクが金額的な観点から重要な虚偽表示リスクとなり得ることに留意する必要です。

 

[4]監査の過程で識別した虚偽表示の評価

訂正後の財務諸表に対する監査の過程で識別した虚偽表示については、監基報450 の要求事項に従って評価を行います。訂正前の財務諸表において未修正の虚偽表示が存在していた場合には、訂正後の財務諸表に対する監査の過程で識別した虚偽表示とともに、これらの虚偽表示を修正するよう経営者に求める必要があります。

 

[5]入手した監査証拠の評価

監査基準委員会報告書500「監査証拠」第6項より、「監査人は、監査手続を立案し実施する場合には、監査証拠として利用する情報の適合性と信頼性を考慮しなければならない」とされています。訂正の原因を分析し、訂正前に実施した監査手続及びその結果を利用する場合でも、入手した監査証拠の信頼性に訂正の原因となった事象が影響を与えていないかどうか評価する必要があります。

 

[6]経営者及び監査役等とのコミュニケーション

訂正後の財務諸表に対する監査においては、業務着手後、監査報告までの期間が通常の財務諸表監査と比べて短いことが想定されること、日々状況が変化する可能性があること、入手した情報の信頼性を確認する必要があることなどから、監査人は、経営者と密接にコミュニケーションを行うことが重要です。不正を原因とした訂正後の財務諸表の監査を行う場合には、不正内容の把握及び評価を適切に行うためにも、少なくとも以下の事項について、適時かつ適切にコミュニケーションを行うことが有用でしょう。

@不正の事実関係(実行者、共謀者、不正の手法)の確認

A経営者による第三者調査委員会への協力内容

B内部調査委員会の進捗状況

 

[7]事後判明事実及び後発事象

@財務諸表の訂正における事後判明事実

財務諸表の訂正における事後判明事実は、訂正前の財務諸表に対する監査報告書日後に監査人が知るところとなったが、もし訂正前の財務諸表に対する監査報告書日現在気付いていたとしたら、当該監査報告書を修正する原因となった事実であると考えられます。したがって、訂正後の財務諸表に反映させる事実は、訂正前の財務諸表に対する監査報告書日までに発生した事実となります。

 

A訂正後の財務諸表における後発事象

訂正後の財務諸表に対する監査報告書日は、期末日から相当の日数が経過した日になり、そこに多くの後発事象の発生が想定されることとなるが、訂正後の財務諸表は、当初提出した財務諸表を訂正したものであることから、訂正後の財務諸表に反映させる後発事象は、訂正前の財務諸表に対する監査報告書日までに発生していた事象であると考えられます。この場合、訂正前の財務諸表に対する監査報告書日後に発生した事象については、訂正の対象となる会計年度後の有価証券報告書等の開示書類(四半期報告書又は半期報告書を含む。)において反映されることとなります。

 

[8]その他

本研究報告では、監査計画の策定と監査手続の実施に関する全般的な留意事項について、上記で説明した以外に、「グループ監査」「内部調査委員会の調査報告書の利用の可否及び利用する場合の留意事項」「第三者委員会の調査報告書の利用の可否及び利用する場合の留意事項」が挙げられています。

3.最後に

近年、上場会社において、不適切な会計処理の発覚を原因として、有価証券報告書等(四半期報告書又は半期報告書を含む。)の訂正報告書が提出されている事例が少なからず見受けられる状況となっています。監査人は、訂正報告書に含まれる財務諸表の監査を行う場合においても、職業的専門家としての正当な注意を払い、懐疑心を保持、発揮して監査業務を遂行することとなりますが、本研究報告に記載されている留意事項を踏まえて対応することが望まれます。なお、本研究報告を利用するに当たっては、訂正報告書の提出に係る経緯・内容等に個別の事情が含まれていることから、その状況を踏まえて適切に対処することが必要となるでしょう。

 
執筆者:清川 早苗
 

 

連載記事

 
 

ActiveDataによる不正監査手続 第8回 売上控除項目の月次推移分析2

シリーズの8回目は、前回同様、売上控除項目に着目して、解説したいと思います。

前回の解説において、翌期初月の売上取消、返品・値引きが多額である場合は、売上粉飾のリスクが高いことと、その検出手続きである売上控除項目の月次推移分析を解説しましたが、売上の水増しによる粉飾においては、取引先の協力を得て期末月と翌期初月の受注量を調整することによって期末月の販売額を水増ししているケースもあります。

この場合には、翌期に売上取消や、返品・値引き等の処理は行われません。翌期初月の売上がその調整分だけ減少するだけです。場合によっては、協力相手に資金負担をかけさせないために、得意先からの入金条件が通常よりも長い入金条件に変更されるか、入金が遅れることを許容する取り決めを行う事もあります。この場合には、売上から入金までの期間を分析することにより、販売協力取引を検出することができます。

 

それでは、ActiveDataを用いて、実際の入金までの期間が通常よりも長くなっている取引を抽出してみます。まずは、事前の処理として「売上明細」と「入金明細」を結合します。

@「売上明細」シートを開きます。

Aワークシートコマンドの中から「シートの結合」を選択します。

B「結合先シートの選択」ダイアログボックスが開きますので、「入金明細」シートを選択して、「選択」ボタンを押します。

C「シートの結合」ダイアログボックスが開きますので、次のように設定します。

(ア) シートを結合する列に「請求番号」を指定します。

(イ) 「シート1から表示する列」及び「シート2から表示する列」のいずれも「すべてをチェック」にチェックを入れます。

(ウ) 結合オプションは「シート1とシート2の両方に存在するデータ」にチェックを入れます。

なお、(ア)で選択する列をキーにして結合することになるのですが、この時、両方のシートで列名が一致していなければなりません。たとえば、「売上明細」では「請求番号」、「入金明細」では「請求連番」となっている場合、ActiveDataでは列を認識できませんので、ご注意ください。

D「OK」ボタンをクリックすると、「結合>売上明細」シートが作成されます。

 

次に、請求日から入金日までの日数を計算する列を追加します。

E「結合>売上明細」シートを開いた状態で、計算結果列を挿入したい位置にカーソルを合わせます。

Fワークシートコマンドの「列」の中から、「数式列を追加」コマンドを選択します。

G「数式をもとに列名をつける」にチェックを入れます。

H「小数点以下桁数」に0を入れます。

I「数式列を追加」ダイアログボックスの「新しい列の値」の「数式」にチェックを入れて、下の空欄の右側のボタンをクリックします。

J「式ビルダー」ダイアログボックスが開きますので、次のように操作します。

(ア) 右側の関数の枠の上のプルダウンメニューの中から「ActiveData」の関数の一覧の中から、「adDaysDif(date1,date2)」を選択します。

(イ) 下方の数式ボックスに表示された数式の「date1」にカーソルを合わせて、左上の列名の中の「入金日」をクリックします。次に「date2」に合わせて「請求日」をクリックします。date1の方が後の日付であることに注意してください。

(ウ)「OK」を押すと、「数式列を追加」ダイアログボックスに戻りますので、再度「OK」を押すと、「結合>売上明細」に「adDaysDif(入金明細.入金日,売上明細.請求日)」列が追加されています。計算結果の単位は「日」です。

そして、顧客ごとの請求日から入金日までの平均日数を算定し、算定結果を結合させたシートを作成します。

K「結合>売上明細」シートを開いた状態で、「集約/ピボット」コマンドを選択します。

L「集約/ピボット」ダイアログボックスで次のように設定します。

(ア) 「分析対象列」の「グループ列」に「顧客番号」を指定します。

(イ) 集約対象列に「adDaysDif(入金明細.入金日,売上明細.請求日)」を選択します。

(ウ) 「統計を追加」にチェックを入れ、「統計値を選択」ボタンを押して、「平均値」のみをチェックします。

(エ)「OK」を押すと、「集約>結合>売上明細」シートが生成されます。

Mシートの結合コマンドを用いて、@〜Dの要領で、「結合>売上明細」に顧客番号を用いて「集約>結合>売上明細」シートを結合させます。この時、「結合>売上明細」シートを開いた状態でコマンドを実行し、Bで「集約>結合>売上明細」シートを選択するという順で実行してください。

Nこれにより「結合>売上明細」に「adDaysDif(入金明細.入金日,売上明細.請求日).平均値」の列が追加された「結合>結合>売上明細」シートが作成されました。

最後に、顧客ごとの請求日から入金日までの平均日数よりも30日以上回収までにかかっている取引を抽出します。

O「結合>結合>売上明細」シートを開いて、ワークシートコマンドの「シートクエリ」「数式により抽出」を選択し、数式ボックスに、「入金までの日数が平均日数に30日を加えたものよりも大きい」ことを意味する関数を作成して、「OK」ボタンを押すと、最終目的である「抽出>結合>結合>売上明細」シートが作成されます。

 

後半の手順はすでにシリーズで解説済みの手順ばかりでしたので、分量の関係から説明を省いてしまいましたが、ご容赦ください。

 
執筆者:武田剛
 

 

中小企業お役立ち情報4 事業承継税制

1.はじめに

中小企業の事業承継を円滑に進めることを目的として平成20年5月に「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」いわゆる経営承継円滑化法が成立しました。この法律に基づき、平成21年税制改正で相続税と贈与税のそれぞれに設けられた納税猶予制度が、事業承継税制と呼ばれています。

中小企業の事業承継は、相続財産の大半が換金可能性のない自社株というケースが多く、相続税の納税資金調達のため、企業の財政状態が悪化する場合がありました。そこで、相続税・贈与税の納税猶予制度を創設することにより、事業承継を円滑化し、雇用の確保や地域経済活力の維持を図る観点から、この制度が導入されました。

事業承継税制は、中小企業の相続に関して、後継者の子が相続税負担によって事業継続に支障が出ないよう課税を軽減する仕組みです。

2.現行の事業承継税制

具体的には、「非上場株式等に係る相続税の納税猶予制度」、自社株を親族に対して一括で生前贈与する場合の「非上場株式等に係る贈与税の納税猶予制度」の二つの制度が創設されています。

軽減対象は後継者の保有株式数が発行済み議決権株式総数の3分の2に達するまでの部分で、軽減割合は相続税で80%、贈与税で100%となっています。

現行の事業承継税制は、80%分の納税猶予という大がかりな制度であることから、適用要件や打ち切り事由が非常に数多くありました。このように適用要件が厳しく積極的な利用が困難との声もあり、実用例は多くありませんでした。

3.平成25年度税制改正

そこで平成25年度税制改正において、手続の簡素化、適用要件の緩和、負担の軽減など制度利用の促進を図るために、事業承継税制が抜本的に見直されています。

以下、主な改正点について解説していきます。

 

[1]手続きの簡素化

(1) 事前確認の廃止

現行の事業承継税制を使って納税猶予の適用を受けるためには、制度利用の前に経済産業大臣の「事前確認」を受ける必要がありましたが、改正後は事前確認を受けなくても制度を利用することができるようになり、手続きの負担が軽減されました。

(2) 提出書類の簡略化

現行では、経済産業局と税務署に同一の書類を提出する必要がありましたが、改正後は、相続税の申告書、事業承継期間経過後の継続届出書等に係る添付書類のうち、経済産業局への提出書類は、税務署に提出を要しないこととされ、提出書類が大幅に減少されました。

(3) その他の措置

現行では、株式を担保提供する場合、株券不発行会社は、定款を変更して株券を発行しなければなりませんでしたが、一定の要件を満たす場合には、株券の発行をしなくても、相続税・贈与税の納税猶予の適用を認めることとなりました。

 

[2] 後継者要件の緩和

現行では、後継者を被相続人(贈与者)の親族に限定していましたが、この要件を撤廃し、改正後は親族以外の後継者に対する遺贈・贈与についても納税猶予の適用対象となり、後継者の引き受け手が拡大しました。

 

[3] 雇用確保要件の緩和

現行では、事業承継から5年間は、相続又は贈与時の常時使用の従業員数の8割以上の雇用を毎年継続しなければならず、8割を下回れば利子税を加えた猶予額の全額を納付しなければなりませんでした。

改正後は、毎年の景気変動に配慮して、5年間平均で8割以上を確保することに要件が緩和されました。

 

[4] 利子税の負担軽減

現行では、要件を満たせず、納税猶予が打ち切られる場合の納税猶予期間に係る利子税率年2.1%について、改正後は年0.9%に引き下げられます。また、納税猶予期間が5年を超える場合には、事業承継期間である5年間の利子税が免除されることとなります。

 

[5] 納税猶予税額の再計算の特例の創設

現行では、相続・贈与から5年後以降は、後継者の死亡又は会社倒産により納税を免除していましたが、事業の再出発に配慮し、改正後は、民事再生、会社更生、中小企業再生支援協議会での事業再生の際にも、納税猶予額を再計算し、一部を免除することとなりました。

 

[6] 役員退任要件の緩和

現行では、贈与税の納税猶予における贈与者(先代経営者)の要件のうち、「贈与時において認定会社の役員であってはいけない」との要件がありました。改正後は、現経営者の信用力を活用し、「贈与時において認定会社の代表権を有していてはいけないこと」と要件が緩和され、代表権のない取締役であれば退任する必要はなくなりました。

また現行では、贈与者(先代経営者)は、5年間は会社から役員給与を受けてはいけませんでしたが、改正後は、贈与者は有給役員(たとえば、代表権のない取締役会長など)として残留することができるようになりました。

 

[7] 債務控除方式の変更

現行では、猶予税額の計算で現経営者の個人債務・葬儀費用を株式から控除するため、猶予税額が少なく算出されていました。改正後は、債務の相続があっても株式の納税猶予をフル活用できるように、現経営者の個人債務・葬儀費用を株式以外の相続財産から控除できるようになりました。

 

[8] 適正化措置

適正化措置として、以下が新設されました。

(1)資産管理会社を通じて上場株式等1銘柄につき3%以上保有する場合、納税猶予税額の計算上、当該上場株式等相当額を算入しないこととされます。

(2)資産管理会社の要件の見直し

イ 後継者の生計一親族は、常時使用従業員数5名に含めないこととします

ロ 商品の販売・貸付け等から、後継者の同族関係者に対する貸付けを除外します

ハ 納税猶予取消事由である「総収入金額が零になった場合」に、総収入金額の範囲から営業外収益及び特別利益が除外されます

 

[9] 適用時期

この改正は、所要の経過措置を講じた上、原則として平成27年1月1日以後に相続若しくは遺贈又は贈与により取得する財産に係る相続税又は贈与税について適用されます。平成27年1月より施行されるので、平成25年、平成26年については、従来通りとなる点は注意を要します。

4.おわりに

現行の事業承継税制において、特に使い難いと言われてきた雇用の確保要件(上記3.[3])と役員退任要件(上記3.[6])が改正されたことにより、今後の事業承継問題に際して事業承継税制を積極的に適用する企業も増えてくるのではないでしょうか。

 
執筆者:佐藤
 

 

 

IFRS(国際財務報告基準)はお休みさせて戴きます。

 


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  明誠ニュースレター vol.35
2013年9月6日発行
発行責任者:武田剛 プロダクトマネジャー:村田博明
制作:株式会社ゼラス 佐々木景子
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