明誠グループニュースレター

情報フラッシュ [ 連載記事 ]
ActiveDataによる不正監査手続 第12回 入力者と承認者の一致
シリーズIFRS(国際財務報告基準)第37回 IFRS第11号「共同支配の取決め」

[ トピック解説 ]

金融商品の監査における特別な考慮事項について

不正調査ガイドライン


情報フラッシュ

 
発表日時 表題
平成25年12月26日 日本公認会計士協会は非営利法人委員会研究報告第17号「監査基準委員会報告書第29号「企業及び企業環境の理解並びに重要な虚偽表示のリスクの評価」を社会福祉法人に適用する場合の留意点」の改正について公表しました。
平成25年12月26日 日本公認会計士協会は非営利法人委員会研究報告第19号「監査基準委員会報告書第35号「財務諸表の監査における不正への対応」を社会福祉法人監査に適用する場合の留意点」の改正について公表しました。
平成25年12月26日 日本公認会計士協会は非営利法人委員会研究報告第26号「社会福祉法人会計基準に基づく財務諸表等の様式等に関するチェックリスト」を公表しました。
平成25年12月26日 日本公認会計士協会は中小企業支援対応プロジェクトチームによる報告「経営改善計画作成支援シート」を公表しました。
平成25年12月25日 ASBJは 実務対応報告第30号 「従業員等に信託を通じて自社の株式を交付する取引に関する実務上の取扱い」を公表しました。
平成25年12月24日 平成26年度税制改正の大綱が閣議決定されました。
平成25年12月24日 日本公認会計士協会は「経営研究調査会研究報告第41号「事例に見る企業価値評価上の論点−紛争の予防及び解決の見地から−」の改正について」を公表しました。
平成25年12月24日 日本公認会計士協会は経営研究調査会研究報告第53号「種類株式の評価事例」を公表しました。
平成25年12月24日 日本公認会計士協会は経営研究調査会研究報告第52号「第三セクター等と事業再生‐再生事例と新しい事業手法‐」を公表しました。
平成25年12月20日 日本公認会計士協会はIT委員会研究資料第6号「Trustサービス原則、規準及びその例示(セキュリティ、可用性、処理のインテグリティ、機密保持及びプライバシーに係る適合するTrustサービス原則、規準及びその例示の2006年版の更新)」を公表しました。
平成25年12月13日 日本公認会計士協会は「監査基準委員会報告書800「特別目的の財務報告の枠組みに準拠して作成された財務諸表の監査」、監査基準委員会報告書805「個別の財務表又は財務諸表項目に対する監査」及び関連する監査基準委員会報告書の改正に関する公開草案を公表しました。
平成25年12月10日 日本公認会計士協会は「IT委員会研究報告「新EDINETの概要とXBRLデータに関する監査人の留意事項」(公開草案)」を公表しました。
平成25年12月6日 日本公認会計士協会は、品質管理レビュー制度・上場会社監査事務所登録制度一部改正要綱(公開草案)を公表しました。
平成25年12月6日 日本公認会計士協会は学校法人委員会実務指針「「学校法人会計基準の一部改正に伴う計算書類の作成について(通知)」に関する実務指針」(公開草案)を公表しました。
平成25年12月5日 日本公認会計士協会は業種別委員会実務指針第38号「投資事業有限責任組合における会計処理及び監査上の取扱い」の改正について(公開草案)を公表しました。

トピック解説

 
 

金融商品の監査における特別な考慮事項について

1.概要

日本公認会計士協会(監査基準委員会)は、適用を開始した監査基準委員会報告書540「会計上の見積りの監査」に基づく金融商品の監査手続をより適切に行えるよう、国際監査・保証基準審議会が公表した「国際監査実務ノート」IAPN1000“Special Considerations in Auditing Financial Instruments”を参考に取りまとめ、研究報告として平成25年9月に公表するに至りました。

 

[1]目的と構成

本報告は、金融商品に係るリスク及び見積りの不確実性についての評価、並びに開示に関連する監査上の留意点を取り扱っており、金融商品の監査に関する実務上の参考に資することを目的としています。監査人にとって興味深い実務上の留意点は主に後半に記載されていますが、前半と付録では金融商品自体や取引を行う会社の内部統制に係る前提的な情報が記載されています。構成は以下の通りです。

第I部 金融商品についての一般的な情報

第II部 金融商品に関する監査上の考慮事項

付録 金融商品に関する内部統制の例示

 

[2]対象範囲

金融商品は企業の規模にかかわらず幅広く利用され、金融商品取引を行う企業には重要な虚偽表示リスクが存在する可能性があるため、本報告は全ての規模の企業の監査に関連することになります。金融機関等の特定の業種の監査のためのものではなく、例えば大量の金融商品取引を行う企業等、金融商品に係る見積りの不確実性が財務諸表に重要な影響を与える企業の監査向けの考慮事項として位置付けられます。

また、対象とする財務諸表の枠組みは、我が国の企業会計の基準だけではなく、米国基準及び国際財務報告基準も含まれているため、公正価値ヒエラルキーに係る内容に及んでいます。このため、財務報告の枠組みにより要求される事項が異なる場合があることを前提としています。

金融資産と金融負債のいずれも対象としていますが、単純な金融商品(例えば現預金、一般的な貸付金、売上債権及び仕入債務)、非上場の株式への投資、関係会社投資及び保険契約は対象外としています。

 

[3]特徴

本報告は、評価及び表示と開示に係るアサーションに重点を置いて記載されています。また、新たな要求事項を設定するものではありません。

2.金融商品に関する監査上の考慮事項

金融商品の監査は以下のような要因によって困難になることがあります。

イ.金融商品の性質、利用目的及び企業がさらされているリスクを理解することが難しいことがある。

ロ.市場心理と流動性は急激に変化することがあり、経営者がエクスポージャーを効果的に管理できないことがある。

ハ.評価を裏付ける証拠を入手するのが困難なことがある。

ニ.特定の金融商品に伴う支払が多額となり、資産流用のリスクが増加することがある。

ホ.金融商品に関して財務諸表に記録された金額は重要でないが、重要なリスク及びエクスポージャーが存在することがある。

ヘ.少数の従業員が金融商品取引に重要な影響を与えていることがある。特に報酬制度が金融商品から生じる収益に連動していたり、他の者がそれらの特定の者に過度に依存していたりすることがある。

また、特に市況が悪化している状況においては、潜在していたリスクが急に顕在化することがあります。金融商品が複雑な場合には、様々な場面において職業的専門家としての懐疑心がより必要となることも触れられています。

 

[1]監査計画と手続

監査計画において、会計処理と開示に関連して要求される事項の理解、保有している金融商品の理解及び内部統制の理解等に焦点を当てる必要があります。

見積りの不確実性の程度は会計上の見積りに関する重要な虚偽表示リスクに影響を与えますが、将来キャッシュ・フローの不確実性と変動性が高い、より複雑な金融商品を利用することによって、特に評価に関する重要な虚偽表示リスクが高くなることがあります。

(1)リスク評価

リスク評価は、追加的な情報の入手により、監査過程で変更されることがあることに留意が必要です。例えば、取締役会等の議事録や専門的アドバイザーからの請求書等の記録又は文書の閲覧の際に、金融商品の新たな存在を示唆するような情報を識別することがあります。また、企業の報酬制度がリスク選好とどのように関連するか、また経営者とトレーダーにどのような動機を与えるかについて理解することは、不正リスクの評価に重要となることがあります。さらに、金融市場の悪化局面においては、個人賞与の確保、不正又は誤謬の隠蔽、規制、流動性に関する制限又は借入限度の抵触の回避、損失の隠蔽等を行うため、経営者又は従業員が不正な財務報告に関与する動機が高まることがあります。データ及び仮定に関する内部統制やプロセスレベルの内部統制を無効化することにより、損失や流用の隠蔽が可能となることにも留意が必要です。

(2)運用評価手続

十分に確立された内部統制を有する金融機関を対象とする場合、有効に運用されていると想定できることが多く、内部統制の運用評価手続は監査証拠を入手する有効な手段となることがあります。また、トレーディングを行っている企業の場合、金融商品の契約量や、使用するシステムが多岐にわたるため、実証手続だけでは十分かつ適切な監査証拠を入手できないことがあります。

1)大量の金融商品取引を行う企業の場合

より高度な内部統制と効果的なリスク管理を担う部門を有していることがあるため、監査人は、取引の発生、網羅性、正確性及び期間帰属や、勘定残高の実在性、権利と義務及び網羅性に係る監査証拠を入手する際、運用評価手続を実施する可能性が高いと考えられます。

2)比較的少量の金融商品取引を行う企業の場合

金融商品の利用目的や特徴を理解することは比較的容易であると考えられます。多くの監査証拠は実証手続により入手することができ、監査手続の大部分を期末時点で実施し、第三者に対する約定確認(コンファメーション)により、取引の網羅性、正確性及び実在性に関する証拠が提供される可能性が高いと考えられます。

(3)実証手続

実証手続の立案は以下を考慮して行われます。

イ.分析的手続の利用

企業が行う事業に関する情報を入手するリスク評価としては有効ですが、実証手続としては、単独で実施された場合、評価に影響を与える要因が複雑に相互作用し、異常な傾向を覆い隠してしまうことがあることに留意が必要です。

ロ.非定型取引

金融商品取引が定型的でなく通常活動から外れている場合には、実証手続を中心とした監査アプローチが最も有効な手段となることがあります。この場合、企業がこの領域において経験が不足している可能性を考慮に入れる必要があります。

ハ.証拠の入手可能性

企業が外部の価格情報ベンダーを利用する場合、関連する財務諸表のアサーションに関する証拠を企業からは入手できないことがあります。

ニ.他の領域で実施された手続

事後的な入出金に関するテストや簿外負債の調査等により、金融商品取引の網羅性に関する証拠を提供することがあります。

ホ.テスト項目の選定

様々な複雑性とリスクを伴った金融商品からポートフォリオが構成されている場合、特定項目の抽出によることが適切なことがあります。


[2] 金融商品の評価

(1)財務報告の枠組みにおいて要求される事項

財務報告の枠組みによっては、公正価値ヒエラルキーが用いられることがあり、通常、測定の不確実性が増すにつれて、要求される開示の量と詳細さが増すこととなります。また、公正価値ヒエラルキーにおけるレベル区分の決定には、判断を要することがあるため、重要な虚偽表示リスクは増加することに留意が必要です。

(2)金融商品の評価に関する重要な虚偽表示リスクの評価

企業が利用する評価技法が個々の状況において適切かどうか及び評価技法に係る内部統制が整備されているかどうかを評価します。また、金融商品の評価における見積りの不確実性が高い状況が存在する等により、特別な検討を必要とするリスクを識別することがあります。

(3)経営者が外部の価格情報ベンダーを利用する場合における監査上の考慮事項

金融商品の公正価値を見積もるために、経営者は外部の価格情報ベンダーが提供する情報を利用したり、モデルを含む様々な評価技法を使用して独自の見積りを行うためにデータを収集したり、見積りを行う専門家を業務に従事させることがあり、多くの場合、これらのアプローチは組み合わされて行われます。例えば、経営者は独自の価格設定プロセスを有する一方で、算出した価格を検証するために外部の価格情報ベンダーを利用することがあります。

(4)経営者がモデルを使用して公正価値を見積もる場合における監査上の考慮事項

金融商品の評価にはモデルが使用されることが多く、特に活発な市場における相場価格以外の入力数値を使用する場合に多いです。モデルに関する監査手続の種類、時期及び範囲の決定にあたって、会計上の見積りの監査手続として、モデルで使用される手法、仮定及びデータを検討することがあります。実施するモデルに関する手続には、主に、経営者が使用したモデルの適切性、使用した仮定及びデータの合理性、並びに計算の正確性を検討することや、監査人による独自の見積りによる評価と企業の評価を比較することが挙げられます。

 

[3]金融商品の表示と開示

財務報告の枠組みは、金融商品に関連するリスクと不確実性を含む、企業の金融商品取引の影響に関して、財務諸表の利用者が有意義な評価を実施できるようにするため、財務諸表上の追加的な開示を要求している場合があります。測定の基礎に関する開示の重要性は、金融商品の不確実性が増加するにつれて高まり、入力数値の観察可能性によっても影響を受けることに留意が必要です。

 

[4]その他の関連する監査上の留意点

(1)経営者確認書

金融商品の取引高と複雑性に応じて、関連する証拠を裏付けるために、金融商品に関する事項を含めることがあります。

(2)監査役等とのコミュニケーション

金融商品の評価に伴う不確実性に関連して識別された特別な検討を必要とするリスクが財務諸表に与える影響は、監査役等の関心事となることが多いです。監査人は公正価値測定に利用された重要な仮定の性質と結果、仮定の設定における主観の程度、及び公正価値で測定されている項目の財務諸表全体に対する相対的な重要性について、コミュニケーションを行うことがあります。さらに、金融商品契約の締結及び事後測定のプロセスを対象とする適切な内部統制の必要性についてコミュニケーションを要することがあります。

3.さいごに

金融商品の特徴として、その複雑性から見積りの不確実性が大きく存在することとなることから、財務諸表の重要な虚偽表示に繋がるおそれがあります。特にはその評価やリスクと不確実性に関する開示について、財務諸表作成や監査に求められる知識やノウハウの水準も高く、自助努力のみでは困難な場面もあるようです。監査人の姿勢としては、職業的専門家としての懐疑心を保持し、評価及び表示と開示に係るアサーションを意識して監査に臨むことが重要ですが、景気が変動している昨今においては、業種や市況に関する知識、理解を高めておくことも併せて重要と考えられます。

本報告は、監査人の能力向上や実務上のガイダンスとして役立てられることとなりますが、金融商品の新商品開発にも柔軟に対応していくものと考えられます。

 
執筆者:公認会計士 町出 知則
 

 

「不正調査ガイドライン」について

1.はじめに

日本公認会計士協会は平成25年9月4日、経営研究調査会研究報告第51号「不正調査ガイドライン」(以下、本ガイドライン)を公表しました。当ニューズレターでは、本ガイドラインの概要を説明いたします。

2.総論

【1】本ガイドラインの背景と目的

近年、公認会計士が実施する不正調査業務に対する社会的責任は増大している一方、こういった不正調査業務は体系的に整理がなされていない上、不正調査業務の品質が様々で、適切な不正調査が実施されていないと思われるものもあります。この状況を踏まえて、協会は「主として公認会計士が実施する現時点での有意で有用な不正調査業務を取りまとめる」ものとして本ガイドラインを作成しました。

公認会計士は、不正調査業務の実施にあたっても、公認会計士法第1条を順守し、誠実性、公正性、職業的専門化としての能力及び正当な注意義務に留意することが期待されます。また、本ガイドラインは、公認会計士に対し、厳正な姿勢で不正調査を実施するよう求めており、上場、非上場、非営利であっても同様であるとしています。

 

 【2】本ガイドラインにおける基本概念

本ガイドラインの対象となる不正は、「法律、規則及び基準(会計基準を含む)並びに社会倫理からの逸脱行為」と定義しています。また、本ガイドラインが定義する不正は、監査基準委員会報告書240「財務諸表監査における不正」で定義された不正よりも広範囲な概念であるとしています。

3.業務受嘱の判断

不正調査人が不正調査を実施する場合、様々な制約があり、十分な水準で不正調査を完了できない場合があります。本章では、主に公認会計士が業務を受嘱することを想定し、以下の事項や条件を十分に検討し、解決しがたい問題がある場合には、業務受嘱の辞退の判断を行ったり、依頼者やステークホルダー等の期待と調査結果との間にギャップが生じないように対応する必要があるとしています。

【1】不正調査業務の目的適合性の検討

不正調査人は、不正調査業務を受嘱するに当たり、不正調査の目的を明確にし、依頼者のニーズを適切に把握し、不正調査の目的を達成できるか、また法令及び職業倫理に関する規定等に照らして業務を受嘱することが適切であるか判断します。 例えば、不正がないことの証明や、不正調査人自らが違法行為を行うことを前提とした不正調査などは行うべきではないとされています。

【2】依頼者との関係性の検討

不正調査人は、経営者のみならず、株主や取引先といったステークホルダーから不正調査業務の依頼を受ける可能性があります。不正調査人は、依頼者の意向に沿うことに目を奪われ、依頼者からの圧力に屈して不利益な事実の隠蔽を図ること等はしてはならず、公正かつ客観的に不正調査を実施するため、経営者等やステークホルダーからの業務依頼に際しての留意事項をまとめています。

その他本章では、財務諸表監査の独立性、不正調査人の能力とリソース、調査対象者等の協力、その他の不正調査実施上の制約についても検討する必要があるとしています。

4.不正調査業務の体制と計画管理

【1】不正調査業務の体制

不正調査業務の体制は、不正調査実施の判断と同様に、不正の状況、不正調査実施状況、ステークホルダーへの影響の大きさなどから慎重に行うべきとされ、不正調査人が参画する役割の例として、内部調査委員会の調査補助者や内部調査委員、外部調査委員会における外部調査委員が挙げられています。

【2】業務の計画と管理

不正調査人は、受嘱した不正調査業務を適切に遂行するために、業務の着手に際して業務計画を策定し、進捗の状況や当初とは異なる事象が生じた場合には、適宜修正して、業務を管理する必要があるとしています。本項では、不正調査チームにおける業務の計画と管理上の留意点を中心に記述していますが、特に初動対応の失敗は、その後の不正調査プロセスに影響があるため、早期に証拠保全を行うとともに、業務遂行に当たってのチーム内の情報管理方法を確立する必要があるとしています。

5.不正調査に関連する情報の収集と分析

不正調査人が不正調査を実施する場面は、不正が発覚した時だけではなく、不正の発生が疑われる場合や不正を示唆する状況を識別した場合もあります。そのため不正調査人は、必要な「情報の収集」、収集した「情報の分析」、不正の手口に対する「仮説の構築」、及び構築した「仮説の検証」を実施するというサイクルを繰り返す、仮説検証アプローチを不正調査の手法として用います。

本章では、情報の収集方法と法的面での留意点や、財務分析をはじめとする情報分析の手法等について取り上げています。また、不正調査を実施するに当たり、調査の過程で収集した情報が、情報の関連性、信頼性及び適時性という、情報の適格性と、量的十分性を備えている必要があり、裁判等の証拠として利用されることを想定し、その証拠としての価値が保持されるよう適切に管理する必要があるとしています。

6.不正に対する仮説の構築と検証

本章ではまず、以下の表を用いて公認会計士が受嘱する不正調査と財務諸表監査との違いを示し、関連性はあるものの、同一の専門分野ではないことを理解する必要があるとしています。

 

  不正調査 財務諸表監査
アプローチ 仮説検証アプローチ リスク・アプローチ
実施頻度 単発的 定期的
範囲 特定的 全般的
目的 実態解明等 保証・意見表明
対象との関係 対立的 中立的
技術 不正調査技術 監査技術

 

【1】不正に対する仮説の構築と不正

不正調査人は、前章で記載した不正調査に関する情報を収集し、分析結果を基に不正に対する仮説を構築する必要がありますが、具体的に以下の事項を検討することを意味します。

(1)誰が(不正関与者) Who

(2)誰とともに(共謀者、不正関与者) With who

(3)なぜ(動機・プレッシャー、目的) Why

(4)いつ(不正実行期間、日時) When

(5)どこで(場所) Where

(6)誰に対して(被害者) To whom

(7)どんな方法で(手段、手口) How

(8)何をしたか(結果) What

また、不正に対する仮説の構築に関して不正調査チーム内で検討することが重要であるとし、入手している情報の真偽、及び真であると仮定した場合における実行可能な不正の手口の共有など、6項目が挙げられています。

【2】仮説検証のための主な調査手続と事実認定

不正調査人は、不正に対する仮説の構築を立案した後に当該仮説が有意であるか否かを判断するために検証手続を実施する必要があり、重要な調査手続として、書類の査閲・分析、バックグランド調査、反面調査などを挙げています。

調査手続後、不正調査人は手続から得た資料に基づき事実認定を行いますが、事実認定は、公知の事実等を除き、原則として証拠(事実認定に用いる資料)に基づいて行う必要があります。事実認定に当たっては、客観的事実や他の証拠との整合性、証拠の証明力等に留意する必要があるとし、性質による分類として、客観証拠と供述証拠、機能による分類として、直接証拠と間接証拠を挙げて説明を行っています。

7.不正の発生要因と是正措置案の提言

不正調査人は、不正が発生又は発覚した要因に基づき是正措置案を検討する必要があるとしており、不正リスク要因として、@動機・プレッシャーA機会B姿勢・正当化の3つを挙げています。また、不正調査人が行う是正措置の検討は、以下の2つに大きく区分することができるとしています。

 【1】緊急的対応

緊急的対応は、企業等が、不正により歪められた会計帳簿やその他の記録等を実態に合わせ修正を行ったり、事実として認識された不正について実行者又は監督者の責任の所在を明確にするといった対応であり、不正調査人は、財務諸表の修正や事業の縮小や民事再生・破産、共謀先との取引停止といった事項に関する検討を行うことになるとしています。

【2】抜本的対応

抜本的対応は、発生又は発覚した不正の再発を防止するために実施する根本的な対応であり、類似又は同種の事案が再度発生することを防止する観点で実施されるべきであるとしています。具体的な対応としては、人事制度・懲戒基準の見直しといった不正リスクに対するガバナンスの強化や、倫理に関する規定・行動規範等の策定と研修といった不正の予防と発見など、5項目が紹介されています。

8.調査報告

調査報告は、不正調査人が不正調査を実施し、調査の対象に対してどのような結論に至ったかを報告することを言います。不正調査人は、調査報告に際して事実誤認がないよう十分に留意する必要があり、また、不正調査の成否は、調査報告の作文力で決定づけられるものではない点にも留意が必要です。本章では、書面による報告と口頭による報告の一般的な報告の類型について説明し、不正調査報告書作成上の留意事項、作成例についてまとめています。

9.依頼者又は企業等が行うステークホルダー対応への支援

依頼者又は調査対象の企業等は、不正による損害の拡大を防止し、既に発生した損害や信頼の低下を速やかに回復するよう努めなければなりませんが、同時に不正の経緯や原因等について、ステークホルダーに対する説明責任を華早苗ければなりません。

本章では、不正調査人は、自らの不正調査の経緯及び結果を、適時かつ適切に伝達し、依頼者等が説明責任を果たすことができるように支援するとともに、説明責任を果たさない場合には、必要に応じて助言・勧告を行う必要があるとし、不正調査の公表の必要性の検討や時期・内容、株主や監査人をはじめとしたステークホルダーへの対応について留意事項をまとめています。

10.業務の終了

 一般的に、不正調査人が最終の不正調査報告書を提出することによって業務は終了しますが、不正調査において作成・入手した文書や、不正の手口に関する仮説を裏付ける証拠について、不正調査が業務委託契約書に準拠して適切に行われたことの立証や、調査対象となった事案に関連して争いが生じた場合に、裁判上の手続きにおいて証拠を提出する可能性があることから、本章では、文書や証拠の管理について、手続や留意事項をまとめています。

 

参考文献
経営研究調査会研究報告第51号「不正調査ガイドライン」

 
執筆者:公認会計士 関 和輝
 

連載記事

 
 

ActiveDataによる不正監査手続 第12回 入力者と承認者の一致

シリーズの12回目は、前回に引き続き、正当な権限を有しないものにより処理されたデータに関して考察します。

 

不正や誤謬を防ぐためには、一人の担当者のみで処理が完結しないように、入力者と承認者、又は入力者とチェック担当者を置く形で内部牽制組織を整える必要があります。この場合、システム上の処理権限は、入力担当者は入力のみ、承認者は承認のみが与えられているはずです。しかし、実際には上級管理者は双方の権限を有している場合も見られ、場合によっては、一時的に権限を拡張することで不正な入力を行っている場合もあります。内部牽制のルールがあるにもかかわらず、入力者と承認者が一致しているデータが存在する場合は、不正のリスクがある取引と考えることができます。

では、「仕訳帳」シートのデータから入力者と承認者が一致している仕訳を抽出してみましょう。

@対象となる「仕訳帳」シートを開きます。

Aワークシートコマンドの中から「シートクエリ」を選択し、さらに「数式により抽出」を選択します。

B「数式により抽出」ダイアログボックスが開きますので、条件を次のように設定します。

(ア) 「列名」で「入力者」を指定します。

(イ) 計算式の中から「=」を選びます。

(ウ)「列名」で「承認者」を指定します。

D「OK」をクリックすると「抽出>仕訳帳」シートが作成されます。

 
執筆者:公認会計士・税理士・公認不正検査士 武田 剛
 

 

シリーズIFRS(国際財務報告基準)第37回 IFRS第11号「共同支配の取決め」

1.はじめに

今回は、IFRS第11号「共同支配の取決め」(以下、IFRS第11号という。)について紹介します。

2.目的及び範囲

IFRS第11号の目的は、共同支配の取決めに対する持分を有する企業の財務報告に関する原則を定めることにあり、取決めの当事者であるすべての企業が適用しなければなりません。

3.共同支配の取決めの識別と種類

 【1】識別

共同支配の取決めとは、複数の当事者が共同支配を有する取決めを言います。ここで、共同支配とは、関連性のある活動に関する意思決定について、支配を共有している当事者の全員一致の合意を必要とする、契約上合意された取決めの支配の共有を言います。

共同支配を有するか否かの判定については、まず、@契約上の取決めが当事者のすべて又は当事者のグループに、集団で取決めに対する支配を与えているかの判定を行い、その後、A関連性のある活動に関する意思決定に、当該取決めを集団で支配している当事者のすべて又は当事者のグループの全員一致の合意が必要とされるか否かで判定を行います。

例えば、関連性のある活動に関する意思決定を行うためには、議決権の75%以上が必要となる場合で、A社50%、B社30%、C社20%の議決権を有していた場合には、関連性のある活動を行うためには、A社とB社の合意が必要となるため、共同支配を有していることになります。

 

【2】種類

共同支配の取決めは、次の2つに分類されます。分類は、当該取決めの当事者の権利及び義務に応じて決定されます。

(1)共同支配事業:取決めに対する共同支配を有する当事者が、当該取決めに関する資産に対する権利及び負債に対する義務を有する取決め

(2)共同支配企業:取決めに対する共同支配を有する当事者が、当該取決めの純資産に対する権利を有する取決め

分類にあたっては、まずはじめに、別個のビークルを通じて組成されたか否かで判断を行います。別個のビークルを通じて組成されていない場合は、共同支配事業となりますが、別個のビークルを通じて組成された場合は、次の3つの事項を順に考慮しなければなりません。

(1)別個のビークルの法的形式

法的形式上、別個のビークルが保有する資産及び負債が、当事者の資産及び負債である場合のみ、共同支配事業と判定されます。

(2)契約上の取決めの諸条件

契約上の取決めに、当事者が資産に対する権利及び負債に対する義務を有すると定めている場合、共同支配事業と判定されます。

(3)該当がある場合、他の事実及び状況

以下の2つの要件を満たす場合、共同支配事業と判定されます。

1)各当事者が、別個のビークルで保有されている資産の経済的便益のほとんどすべてに対する権利を有している。

2)当該取決めを通じて行われる活動に係る負債の決済に関し、継続的に当事者に依存している。

4.会計処理

【1】共同支配事業

共同支配事業者は、自己の資産・負債・収益・費用(共同で保有する資産や共同で負う負債や費用に対する持分を含む)を認識します。

【2】共同支配企業

共同支配投資者は、共同支配企業に対する持分を持分法で会計処理します。

【3】共同支配を有していない他の当事者

(1)共同支配事業に対する他の当事者は、共同支配事業に対する資産に対する権利及び負債に対する義務を有している場合には、【1】共同支配事業と同じ方法で会計処理を行い、それ以外の場合には、共同支配事業に対する持分を、当該持分に適用可能なIFRSに従って会計処理しなければなりません。

(2)共同支配企業に対する他の当事者は、IFRS第9号「金融商品」に従って会計処理します。ただし、重要な影響力を共同支配企業に対し有している場合には、持分法で会計処理します。

 
執筆者:公認会計士 関 和輝
 


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  明誠ニュースレター vol.39
2014年1月16日発行
発行責任者:武田剛 プロダクトマネジャー:村田博明
制作:株式会社ゼラス 佐々木景子
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