明誠グループニュースレター

情報フラッシュ [ 連載記事 ]
シリーズIFRS(国際財務報告基準)第39回 IFRS第13号「公正価値測定」(前編)
中小企業経営力強化支援法お役立ち情報_8「事業再生手法について(再生手法の概略の説明)」

[ トピック解説 ]

「種類株式の評価事例」の公表について

第三セクター等と事業再生‐再生事例と新しい事業手法‐


情報フラッシュ

 
発表日時 表題
平成26年2月25日 企業会計審議会は「監査基準の改訂に関する意見書」を公表しました。
平成26年2月25日 企業会計基準委員会は企業会計基準公開草案第56号(企業会計基準第12号の改正案)「四半期財務諸表に関する会計基準(案)」及び企業会計基準適用指針公開草案第51号(企業会計基準適用指針第14号の改正案) 「四半期財務諸表に関する会計基準の適用指針(案)」を公表しました。
平成26年2月24日 日本公認会計士協会は会計制度委員会報告第4号「外貨建取引等の会計処理に関する実務指針」、同第6号「連結財務諸表における税効果会計に関する実務指針」、同第7号「連結財務諸表における資本連結手続に関する実務指針」、同第7号(追補)「株式の間接所有に係る資本連結手続に関する実務指針」、同第8号「連結財務諸表等におけるキャッシュ・フロー計算書の作成に関する実務指針」、同第9号「持分法会計に関する実務指針」、「土地再評価差額金の会計処理に関するQ&A」及び「金融商品会計に関するQ&A」の改正についてを公表しました。
平成26年2月18日 日本公認会計士協会は「IT委員会研究報告「新EDINETの概要とXBRLデータに関する監査人の留意事項」(再公開草案)」を公表しました。
平成26年2月14日 金融庁は「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則に規定する金融庁長官が定める企業会計の基準を指定する件」の一部改正(案)を公表しました。
平成26年2月3日 日本公認会計士協会は「中小企業の会計に関する指針(平成25年版)」を公表しました。

トピック解説

 
 

「種類株式の評価事例」の公表について

1.はじめに

日本公認会計士協会は、平成25年11月6日付けで経営研究調査会報告第53号「種類株式の評価事例」を公表しました。本研究報告は、我が国で種類株式が資金調達の手段として一層活用されるようになるために、比較的よく使われている権利を付した種類株式の評価について、実務の参考となるよう、その評価の基本概念や発行事例、評価例を取りまとめたものです。

2.我が国の種類株式制度の概要

本章では種類株式制度の概要として、会社法108条1項に定める種類株式について説明し、さらに、これと類似の効果をもたらす契約等について述べています。

※類似の効果をもたらす契約等についても本研究報告では種類株式という呼称を付しています。

 

【我が国の種類株式及び類似の効果をもたらす契約等】

根拠 権利の内容
会社法108条1項に定める種類株式 剰余金の配当
残余財産の分配
議決権の制限
譲渡の制限
株式取得の請求、株式取得条項、全部取得条項
株主総会決議の拒否権、取締役・監査役の選解任権
類似の効果をもたらす契約等 定款に株主ごとに異なる取り扱いを定める場合 剰余金の配当
残余財産の分配
株主総会決議の議決権
みなし清算条項を定款で定める場合 みなし清算条項
株主間契約等 合併等対価の優先分配権
希薄化防止条項
先買権(right of first refusal)
ドラッグ・アロング・ライト(drag-along right)
共同売却権(co-sale right)

3.種類株式の発行事例

本章では、比較的よく使われている種類株式として、転換権付配当優先株式、みなし清算条項付種類株式、無議決権配当優先株式及び拒否権条項付株式について、意義、活用局面、効果、課題等について述べています。

4.企業価値、株主価値及び種類株式の株式価値評価

【1】企業価値評価ガイドラインにおける企業価値の概念

種類株式の評価の前段階となる企業全体の価値評価については、経営研究調査会研究報告第32号「企業価値評価ガイドライン」において取り扱われており、一部を本報告書の巻末に参考資料として掲載しています。

また、実務上、企業や株式の価値といっても様々な用語が使われていることから、当該「企業価値評価ガイドライン」における企業価値の概念を紹介しています。

 

【企業価値評価ガイドラインにおける価値概念】

事業価値 事業から創出される価値である。会社の静態的な価値である純資産価値だけではなく、会社の超過収益力等を示すのれんや、貸借対照表に計上されない無形資産・知的財産価値を含めた価値である。事業価値算定に使用するキャッシュ・フローは営業フリー・キャッシュ・フローといわれるもので、有利子負債に係る支払利息や配当金等の特定の投資家等へのキャッシュ・アウト・フローを控除する前のキャッシュ・フローである。
企業価値 事業価値に加えて、事業以外の非事業資産の価値も含めた企業全体の価値である。
株主価値 企業価値から有利子負債等の他人資本を差し引いた株主に帰属する価値である。
株式価値 特定の株主が保有する特定の株式の価値
例えば、ある株主が保有する普通株式又は種類株式の価値

 

【2】本研究報告における基本的な価値評価の考え方

種類株式の評価に関する本研究報告の基本的な考え方を示すと、以下の2つに大別されます。

(1)普通株式の評価を基礎とする方法
(2)将来キャッシュ・フロー期待値を見積もる方法

 

上記は(1)は、普通株式の評価を基礎として、付加されている権利を勘案することにより決定する方法です。しかしながら、付加されている権利の中には、定量的に表すことが困難な権利も多く、そうした数値的に表すことが困難な権利については、価値評価上、反映されないこともあります。そのため、通常は、(2)の将来キャッシュ・フロー期待値を見積もり、割引計算を行った現在価値を種類株式の価値とする方法を取ることとなります。

 

【3】種類株式の価値評価における検討事項

種類株式の価値評価における検討事項として、評価方法の選択、転換権評価に関する論点を述べています。

例えば、評価方法の選択としては、優先株式の価値評価は、その負債的性格を考慮してDCF法を用いて計算するのが一般的であり、一方、劣後株式の評価についても、償還等が合理的に予想される場合には優先株式の評価と同様にDCF法が適している場合もありますが、普通株式への転換権が付与されていてその転換権が行使される場合には、普通株式の価値、転換株式数、劣後株式としてのディスカウント(又はプレミアム)を加味して評価を実施することも理論的には可能となります。

5.種類株式の評価例

本章では比較的よく使われる権利を付した種類株式である転換権付配当優先株式、みなし清算条項付種類株式及び無議決権配当優先株式について、具体的な評価例を、数値を用いて説明しています。

6.種類株式の第三者評価

【1】種類株式の第三者評価の必要性

種類株式の第三者評価の必要性としては、以下の2つを上げています。

(1)上場規定に基づく第三者評価

例えば、東京証券取引所に上場している場合、上場会社の企業行動規範(上場規程)として、第三者割当による募集株式等の割当てを行う場合、その割り当てる価額の妥当性について独立第三者による評価を求められています。

(2)コーポレート・ガバナンス

上場会社の場合、種類株式の発行が上記上場規程に該当しない場合であっても、コーポレート・ガバナンスの観点から第三者評価を実施している場合が多く、また、非上場会社の場合も種類株式を発行する際も同じくコーポレート・ガバナンスの観点から、上場会社同様第三者評価を実施することが望まれます。

 

【2】第三者評価の意義

第三者評価には以下のような意義があります。

(1)意思決定の基礎とするため
(2)評価を巡る紛争の予防と回避のため
(3)利益相反といった批判を予防・回避するため
(4)会計不正、脱税スキーム又は不公正発行といった批判を予防・回避するため
(5)経営者としての善管注意義務や忠実義務を果たすため

 

【3】公認会計士が第三者評価を行う際に専門家として留意すべき事項

種類株式の評価に際しては、受嘱時から評価書作成までを通じて適正な評価環境の確保が必要となります。下記の4点が維持・確保できないと判断される場合には、評価業務を受嘱しないか、業務委託契約の途中解除などの適切な対応が必要になると考えられます。

(1)専門性の発揮
(2)全体観の発揮
(3)慎重さの発揮
(4)批判性の発揮

 

また、種類株式の価値評価においては、会計、税務及び監査の専門性、「企業価値評価ガイドライン」に記載された普通株式の価値評価に関する専門性だけではなく、種類株式に関して内容や特徴、評価アプローチや評価法、関係法令等情報も把握しておく必要があります。

7.終わりに

種類株式の評価は、経営研究調査会研究報告第32 号「企業価値評価ガイドライン」においても一部検討されており、本研究報告は「企業価値評価ガイドライン」の中の種類株式に関する記述を深化させたものと位置付けられます。ただし、種類株式については未だ評価実務が成熟段階には到っていないため、本研究報告では種類株式評価のガイドラインとはせず、評価例にとどめることとしました。

 
執筆者:古田 まゆみ
 

 

第三セクター等と事業再生‐再生事例と新しい事業手法‐

1.はじめに

日本公認会計士協会(経営研究調査会)は、平成25 年10 月31 日付で経営研究調査会研究報告第52 号「第三セクター等と事業再生‐再生事例と新しい事業手法‐」を公表しました。

本研究報告は、近年において多くの第三セクター等の経営が悪化している現状を踏まえ、第三セクター等に関する法令や諸制度、及び第三セクターの再生・整理が行われた代表的な事例の検討を行い、その結果を取りまとめたものです。

2.第三セクター等とは

「第三セクター」とは、国や地方公共団体(第一セクター)と民間(第二セクター)の共同出資による事業体をいいます。また、「第三セクター等」とは、以下のとおりです。

 

@第三セクター:地方公共団体が出資又は出えんを行っている一般社団法人及び一般財団法人(公益社団法人及び公益財団法人を含む。)並びに会社法法人

A地方住宅供給公社、地方道路公社及び土地開発公社(以下「地方三公社」という。)

B地方公共団体が損失補償等の財政援助を行っている法人その他地方公共団体がその経営に実質的に主導的な立場を確保していると認められる法人

3.第三セクター等の現状

第三セクター等の法人数は平成24年3月31日現在8,308法人で、平成20年度の8,899法人に比して591法人、約6.6%減少しており、近年は減少傾向にあります。

 

(1)経常収支の状況

下表のとおり、約4割が赤字法人となっています。

区分 法人 構成比 金額
第三セクター 黒字法人 3,555 60.1% 208,778
赤字法人 2,361 39.9% -89,190
         
地方三公社 黒字法人 557 54.0% 49,754
赤字法人 474 46.0% -15,286
         
小計 黒字法人 4,112 59.2% 258,532
赤字法人 2,835 40.8% -104,476
         
地方独立行政法人 黒字法人 84 89.4% 28,588
赤字法人 10 10.6% -1,323
         
総計 黒字法人 4,196 59.6% 287,120
赤字法人 2,845 40.4% -105,799

(出典:「第三セクター等の状況に関する調査結果」(平成24年12月26日、総務省)p.11 http://www.soumu.go.jp/main_content/000193253.pdf

 

(2)借入金と損失補償・保証債務の現状

地方公共団体は第三セクター等に出資、補助金交付、無利息や低利の貸付をすることにより支援しています。また、それ以外にも第三セクター等が金融機関から借入をする際に損失補償契約をしているのが一般的です。また、債務保証をしている場合もあります。

 

平成24年3月31日現在(単位:百万円)

法人区分 地方公共団体等
出資額
補助金総額 地方公共団体からの借入金残高 損失補償
保証債務
第三セクター 2,146,778 269,689 3,033,491 1,424,770
地方三公社 1,157,187 35,841 1,641,994 4,287,862
小計 3,303,965 305,529 4,645,485 5,712,632
地方独立行政法人 1,235,370 283,353 373,695 0
総計 4,539,336 588,882 5,019,179 5,712,632

(出典:「第三セクター等の状況に関する調査結果」(平成24年12月26日、総務省)p.6、p.20-22 http://www.soumu.go.jp/main_content/000193253.pdf

上記のとおり第三セクター等を整理しようとすると出資総額が棄損するだけではなく、貸付金の貸倒れや、損失補償及び債務保証による多額の資金が必要となるため、第三セクター等の整理は遅々として進まなかった現状があります。

4.第三セクター等健全化に関する取組経緯

(1)地方公共団体の財政の健全化に関する法律(以下「健全化法」という。)の施行と第三セクター等の抜本的改革等に関する指針の公表

北海道の夕張市の財政破綻を契機として、地方公共団体の財政状況を統一的な指標で明らかにし、財政の健全化や再生が必要な場合に迅速な対応を取るための健全化法が平成21年4月に全面施行されるとともに、同年6月に第三セクター等の抜本的改革等に関する指針が公表されました。

健全化法では、監査委員の審査や議会への報告・住民への公表等を義務付けて情報開示を徹底するとともに、早期健全化基準を設け、基準以上となった地方公共団体には財政健全化計画の策定を義務付けて自主的な改善努力を促しています。また、フローだけでなくストックにも着目し、公営企業や第三セクターの負債や赤字、将来の実質的負担額等も明らかにし、地方公共団体の財政の全体像を浮き彫りにした上で、平成21年度から一定期間内で第三セクター等の抜本的改革を集中的に行うことが必要不可欠としています。

 

(2)三セク債の創設

健全化法の施行を踏まえ、経営が著しく悪化したことが明らかになった第三セクター等について5年間で抜本的早期是正措置を集中的に行い、事業の再生及び削減を取り込む上で特に必要となる経費については地方債の対象とすることができることとする特例措置(三セク債)の創設を盛り込んだ「地方交付税法等の一部を改正する法律」が平成21年4月1日から施行されました。

これまで、地方債は赤字を補てんする理由では原則として発行できなかったため、地方公共団体は第三セクター等を整理する際の経費を一時に負担をすることができず、抜本的な改革が実行できずにいました。そこで、今般の集中的な抜本的是正を具体的に実行するために、平成21年度から平成25年度に限りその財源として地方債を充てられることとした特例措置(三セク債)が設けられました。つまり、第三セクター等の整理又は再生手続を遂行することにより、債務及び損失を確定させて、通常は一度に経費負担しなければならないところを三セク債の発行により分割して地方公共団体が負担しやすくする方法を推進したものです。

なお、今年度通常国会に条件付きでの3年間の発行期限の延長の改正案が提出されています。

5.リスク回避の手段としての新しい手法の活用

三セク債の一旦の発行期限が平成25年度中ということもあり、今後は、民間の参加を求め、公共部門におけるリスクを限定し、地方公共団体に大きな損失が発生しない仕組みで事業を行う等の対応が求められています。公共事業への官民の関わり方として、様々な方法が考えられますが、最近の新たな手法として、本研究報告ではレベニュー債やPFIの活用が挙げられています。

 

(1)レベニュー債

レベニュー債とは、一般的には、公共インフラ事業の事業収入を返済原資とする債権で、その元利金の支払が当該事業収入に連動するものを言います。

レベニュー債については、従来の地方債と大きく異なる点としては、基本的にはノンリコースであることです。つまり、地方公共団体が損失補償等を行う必要がなくなることから、地方公共団体が予想外の債務を負うことがなくなり、健全化法の観点からも望ましく、総務省の方針にも沿ったものとなっています。

地方債より利率が高いことから、資金調達上、短期的なメリットが少なく、現在のところ、実際の導入事例は1件のみであり、今後の拡大に当たっては、税制上の優遇措置や、実際にレベニュー債が有効に働く等、事例の積み重ねが、重要なポイントになると考えられます。

 

(2)PFI

PFIとは、民間の資金と経営能力・技術力(ノウハウ)を活用し、公共施設等の設計・建設・改修・更新や維持管理・運営を行う公共事業の手法です。PFIは、1992年に英国で生まれた手法で、我が国では平成11年に「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律(PFI法)」が制定され、この法律に準拠したPFI事業が実施できるようになりました。

PFIの活用により、民間の事業機会を創出することによる経済の活性化や民間事業者のノウハウを活用した低廉かつ良質な公共サービスの提供が期待されるほか、官民の適切な役割分担に基づく新たな官民パートナーシップの形成されることが期待されています。

第三セクター等とPFIについては、いずれも公共性のある事業を民間と協力して行うという点では同じですが、下記の点で相違があります。特に、第三セクター等においては、損失補償という形で公共がリスクを負っていたが、PFIにおいては、サービス対価の負担という形でリスクを負う点が相違します。

 

  第三セクター等 PFIにおけるSPC
地方公共団体との資本関係
  • 資本関係有り
  • 資本関係無し
事業の性格
  • 会社法に基づく運営
  • 裁量の範囲大
  • 事業契約に基づく運営
  • 裁量の範囲小
事業破綻や事業収支が悪化した場合の地方公共団体の経済的負担
  • 原則として出資額の範囲内での有限責任
  • 損失補償、経営支援念書などがあれば発生
  • プロジェクトファイナンスの場合は基本的に不可抗力等、地方公共団体に発生する責任を契約により事前に明確化
金融機関との関係
  • 金融機関は株主としての地方公共団体の信用力に依存(コーポレートファイナンス)
  • 損失補償、経営支援を契約する場合もある
  • サービスの対価を支払う顧客としての地方公共団体の信用力には依存しない(プロジェクトファイナンス)
  • 直接協定(ダイレクトアグリーメント)等に基づき、金融機関と事業継続の方策を協議

(出典:内閣府ウェブサイト http://www8.cao.go.jp/pfi/tebiki/kiso/kiso03_01.html

 

また、平成23年6月1日にPFI法が改正され、@対象施設の変更・拡大、A民間事業者による提案制度の導入、B公共施設等運営権の導入が行われPFIの活用の幅が広がり、今後より一層PFI事業が拡大することが予想されます。

6.終わりに

現在、通常国会に三セク債の条件付きでの3年間の発行期限の延長の改正案が提出されており、今後の動向が注目されています。三セク債の発行期限までに、第三セクター等の整理や事業再生が多数発生すると思われ、公認会計士が関与する場面は増え、その局面での公認会計士の役割も重要となってくると考えられます。また、三セク債の発行期限後こそ、より慎重な舵取りが求められるところとなってくるので、地方公共団体等が過大なリスクを負わないよう、会計の専門家による財務面からの管理やアドバイスがより重要になるものと考えられます。本研究報告では多数の事例を取り上げ解説しているので、そちらも是非参考にして頂きたいと思います。

 
執筆者:公認会計士 松浦 政文
 

連載記事

 
 

ActiveDataによる不正監査手続はお休みさせて戴きます。

 

 

シリーズIFRS(国際財務報告基準)第39回 IFRS第13号「公正価値測定」(前編)

1.はじめに

今回は、IFRS第13号「公正価値測定」(以下、IFRS第13号という。)の目的や範囲、定義及び評価技法等について紹介します。

2.目的及び範囲

IFRS第13号の目的は、以下の3つが挙げられています。

【1】公正価値を定義する。

【2】単一のIFRSで公正価値の測定に関するフレームワークを示す。

【3】公正価値測定に関する開示を求める。

また、IFRS第13号は、IFRS第2号「株式報酬」の範囲内の株式報酬取引や、IAS第17号「リース」の範囲内のリース取引などを除き、他のIFRSが公正価値測定又は公正価値測定に関する開示を要求又は許容している場合に適用されます。

3.公正価値の定義

IFRS13号では、公正価値を「測定日時点で、市場参加者間の秩序ある取引において、資産を売却するために受け取るであろう価格又は負債を移転するために支払うであろう価格」と定義しています。

ここで、市場参加者とは、資産又は負債に関する主要な市場における買手及び売手のうち、@互いに独立しているA知識を有しているB取引を行う能力があるC取引を進んで行うの、4つをすべて有するものをいいます。また、秩序ある取引とは、資産又は負債に係る取引に関する通常の慣習的なマーケティング活動ができるように、測定日前の一定期間にわたり、市場にさらされていることを仮定した取引のことをいいます。

IFRS第13号の特徴としては、資産を取得するために支払った価格又は負債を引き受けるために受け取った価格である入口価格ではなく、定義にもある通り、公正価値を出口価格(上記下線部分)としたことが挙げられます。なお、価格は市場において直接的に観察されるかどうかを問わず、観察できない場合には、後述する適切な評価技法を用いて見積もることになります。

4.非金融資産、負債及び自己の持分金融商品の公正価値測定

【1】非金融資産の公正価値測定

非金融資産の公正価値測定には、@物理的に可能で、A法的に許容され、B財務的に実行可能という前提を考慮に入れた上で、当該資産の最有効使用を行うこと又は当該資産を最有効使用するであろう他の市場参加者に売却することにより、市場参加者が経済的便益の創出能力を考慮します。

【2】負債及び自己の持分金融商品の公正価値測定

同一又は類似の負債又は企業自身の資本性金融商品の移転に係る相場価格が利用可能でない場合は、同一の項目を資産として保有しているか否かで以下のように測定を行います。

(a)他の者が資産として保有する負債及び資本性金融商品

企業は当該負債又は資本性金融商品の公正価値の測定を、その同一の項目を資産として保有している市場参加者の観点から相場価格又は評価技法を用いる。

(b)他の者が資産として保有していない負債及び資本性金融商品

企業は当該負債又は資本性金融商品の公正価値の測定を、当該負債を負っているか又は持分に対する請求権を発行した市場参加者の観点から、評価技法を用いる。

また、負債の公正価値測定にあたっては、企業が債務を履行しないという不履行リスクの影響を反映する必要があります。

5.評価技法

 企業は、公正価値を測定するために、状況に適合し、十分なデータが利用可能な評価技法を使用しなければなりません。その際に、関連性のある観察可能なインプットの使用を最大限にし、観察可能でないインプットを最小限にする必要があります。

 公正価値の評価技法は、次の3つに大きく分けられます。

【1】マーケット・アプローチ:同一又は比較可能な資産、負債又は資産と負債のグループに関わる市場取引により生み出される価格及び他の関連性のある情報を用いる評価技法

【2】コスト・アプローチ:資産の用役能力を再調達するために現在必要とされる金額を反映する評価技法

【3】インカム・アプローチ:将来の金額を単一の現在の金額に変換する評価技法

 
執筆者:公認会計士 関 和輝
 

 

中小企業お役立ち情報8 「事業再生手法について(再生手法の概略の説明)」

1.はじめに

認定支援機関の業務の中心は、債務者企業が経営改善や事業再生を実現するにあたり策定するこれらの計画書の策定支援です。計画書策定についての大まかな手順及び作成時の留意点については、「中小企業経営力強化支援法お役立ち情報 5」、計画書についての具体的な構成と内容については、「中小企業経営力強化支援法お役立ち情報 6」で解説しました。

今回は、計画書を策定した後の事業再生の具体的な手法について解説します。

事業再生の手法には大きく分けて、裁判所が関与する法的再生と裁判外で行う私的再生の2種類があります。

2.法的再生

裁判所の関与下で行われる法的整理手続を利用して再生する手法です。

(1) 内容

主な法的整理手続としては、再建型の手続である民事再生法、会社更生法等があり、資金繰りや経営状況、取引関係等、企業に応じた手続を用いて事業の再生を図ります。

 (2) メリット

a.裁判所が関与して手続が進められるので、再生計画や更生計画について公平性の高い案が作成される可能性が高まります。また、裁判所の関与・監督の下、資産やその配分が明らかなため、債権者への分配が公正なものとなります。債権者が抜け駆け的に債権の回収を図ることは出来なくなり、債権者間の手続きの公平性が確保されます。

b.裁判所が関与しているため、勝手に資産を売却したり、資産を隠すような事はできず、債務者の詐害行為を防止できます。

c.一定数の債権者、一定債権額以上をもつ債権者が同意をし、裁判所が認可すれば、債権者全員の同意を得ることができなくても、再建計画を成立させ事業の再生を図ることができます。

(3) デメリット

a.法的手続を申請すると、世間に公になることで、既存の取引先の信用や企業ブランドイメージの悪化のおそれがあります。

b.裁判所の関与・監督を受けることから予納金の負担、また弁護士費用等の負担があります。

c.民事再生手続では開始決定から再生計画認可決定まで5か月程度、会社更生手続では開始決定から更生計画認可決定まで1年程度と、手続に長期的な時間がかかります。

d.再生計画案作成の見込みがなくなった場合、期限までに再生計画案が提出されない場合、再生計画が債権者の決議で否決された場合、また破産した方が債権者への分配が増える場合には、裁判所は再生手続廃止決定をし、強制的に破産手続へ移行します。

3.私的再生

法的手続きに依らず、債務者と債権者との合意により自主的に負債を整理していく倒産処理手続です。

手法は大きくわけて、債務を減少させないもの(リスケジュール)と、債務を減少させるもの(リスケジュール以外の方法)があります。そのほか、DDSやDESという方法もあります。

私的整理の流れとして、事業計画を立て、金融機関の同意をもらえるようにします。通常は、1カ月強の期間で、弁護士が各金融機関を回り、再建計画の内容の説明や質問を受け、要求される資料があれば提供します。そして、金融機関説明会を開き、同意書の提出を受け、各行の同意、不同意の意思表示をしてもらいます。しかし、実際には金融機関の意見対立があり、スケジュール通りに実行するのは困難です。

下記で、各方法について説明します。

 

[1]リスケジュール

金融機関からの借入金返済が困難となったとき、銀行に依頼して、毎月の元金返済を少なくし、元利金の返済を猶予してもらう手法です。

(1)方法

まず、金融機関に出向いて、リスケジュールを申し出ます。そのときに、@キャッシュフローを理解してもらうための資金繰り実績・予定表、Aリスケジュールに応じたほうが有利であることを示すための資料として、収益力を向上させるための方策を盛り込んだ経営改善計画書または事業計画書、B借入金をどのように返済していくのかを示す返済計画書、などの書面の提出が必要です。

(2)特徴

月々の返済額が減ることから、その返済額に相当する金額分の資金繰りを確保することができます。しかし、リスケジュール期間中に銀行から新たな借入はできないため、借入に頼らない資金繰りが必要となります。

 

 [2]債務免除

過剰債務の会社において、債務を減らす手法です。

(1)方法

債権放棄を含む計画において抜本的な事業の絞り込みが行われ、今後事業の用に供さない資産等を処分して債務弁済の原資に充て、それでもなお過剰債務を解消できない場合、一定の要件を満たす私的整理に係る再建計画により、債務者の同意なく、債権者の一方的な意思表示(単独行為)により債務を消滅させることでできます。

(2)特徴

返済と利息の支払いの借金が少なくなります。

また、一定の要件を満たす債務免除が行われた際、資産評価損益の計上や期限切れ欠損金の優先利用を認める税制措置が講じられました。その要件を満たさない場合は、債務免除益は会計上の利益を構成し、法人税上も益金となります。債権放棄を受ける企業は繰越欠損金を抱えているため、債務免除益は相殺されることが多いですが、債務免除益の額が大きかった場合には課税所得が発生してしまう可能性があります。

 

[3]ADR

経営危機に至った企業が、民事再生法や会社更生法の申し立てによる法的手続きに替え、中立な第三者機関であるADR事業者の手によって、債権者・債務者間の話し合いをもとに自主的な整理手続によって問題解決を図る手法です。

(1)方法

債務者が法務大臣の認証を受けた事業再生ADR事業者に手続の申し出をすると、債務者は事業再生ADR事業者と協議のもと、資産評定、清算貸借対照表、損益計画、弁済計画、事業再生計画案(概要)を作成し、この事業再生計画案について事前審査を行い、審査を通過すれば手続が開始します。手続開始後、債権者に対して債務の支払いの一時停止の通知をしたのち、債権者会議を行います。

最初の債権者会議において、計画案等の概要の説明と手続実施者の選任を行い、手続実施者が公正中立的な立場から再生計画案を調査して調査報告書を債権者会議に提出します。債権者会議で債権者より事業再生計画案に対する同意を得ることができれば、私的整理は成立し、再生計画案に従ったリスケジュールや債務免除が行われ、計画は実行に移されます。

(2)特徴

a.基本的に金融債権者だけを相手方として調整を進める手続きであり、取引先を巻き込む必要がなく、商取引を円滑に続けられます。

b.専門的知識を有する実務家の監督の下で進められる手続きであり、信頼できます。

c.再建計画に基づいた債権放棄等による損失であれば税務上損金算入が認められ、債権者は債権の無償消却が出来ます。

d.手続利用申請の正式受理から終了まで3ヶ月ほどで終了するため、迅速な手続が出来ます。

 

[4]DDS(資本性借入金)

債務を通常のローンから長期の劣後ローンへ組み換える手法です。

(1)方法

一般的には、債務者がメインおよびサブメイン以下の金融機関の協力を得て計画書を策定し、メインはDDSを実行するとともに、サブメイン以下は、残高維持、金利の減免、リスケジュールを行うケースが考えられます。

(2)特徴

借り換えによって元本の返済を長期化することができ、[1]リスケジュール以上の効果をもたらします。また、劣後ローンの中でも一定の要件を満たした資本的劣後ローンは、金融機関では資本とみなされ、自己資本も上昇し、新たな融資を受けられる可能性が出てきます。

 

[5]DES(債務の株式化)

債務を株式に組み替える手法です。

(1)方法

債務者である会社が第三者割当増資を行い、それによって振り込まれた資金を債務の返済に充てる「新株払込方式」と、債権者が債権を現物出資する「現物出資方式」があります。

(2)特徴

債務を株式化することで、貸借対照表の負債が減少し、その分資本が増加することです。債務のままであれば、いずれ弁済しなくてはなりませんが、株式化をすれば、弁済する必要がなくなります。しかし、金銭債権者に株式を与えることになるため、債権者が経営に関与することになります。もし、債権者が第三者の場合、DESにより経営者以外に持株比率の高い株主が現れることになると、経営権を取られてしまうおそれがあります。

また、会社の資産状況を鑑みて債権の時価が低い場合、額面でDESを実行すると、債務免除益が生じ、時価と額面との差額が益金扱いとなる可能性があります。

 

参考文献

事業再生ADR制度について 経済産業省
事業再生ADR活用ガイドブック 事業再生実務家協会
よくわかる事業再生 http://www.jigyosaisei.com/

 
執筆者:公認会計士 桑原
 


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  明誠ニュースレター vol.41
2014年3月12日発行
発行責任者:武田剛 プロダクトマネジャー:村田博明
制作:株式会社ゼラス 佐々木景子
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