明誠グループニュースレター
情報フラッシュ [ 連載記事 ]
シリーズIFRS(国際財務報告基準)第41回 IFRIC第1号「廃棄、原状回復及びそれらに類似する既存負債の変動」

[ トピック解説 ]

企業集団における親会社監査役等の監査の在り方についての提言について

プレスリリース「監査業務と不正等に関する実態調査の集計結果について」の公表 について

 
 

情報フラッシュ

 
発表日時 表題
平成26年4月22日 日本公認会計士協会は業種別委員会実務指針第40号「金融商品取引業者における顧客資産の分別管理の法令遵守に関する検証業務の取扱いについて」及び業種別委員会研究報告第7号「証券会社における顧客資産の分別管理に関する合意された手続業務について」の改正について公表しました。
平成26年4月21日 日本公認会計士協会は租税調査会研究報告第28号「個人所得税における課税最低限について」を公表しました。
平成26年4月18日 日本公認会計士協会は「IT委員会研究報告第44号「新EDINETの概要とXBRLデータに関する監査人の留意事項」」を公表しました。
平成26年4月17日 日本公認会計士協会は品質管理基準委員会研究報告第1号「審査を実施しない場合の自己点検チェックリスト」の一部改正について公表しました。
平成26年4月9日 日本公認会計士協会は法規委員会研究報告第14号「監査及び四半期レビュー契約書の作成例」の改正について公表しました。
平成26年4月9日 日本公認会計士協会は法規委員会研究報告第10号「財務情報の保証業務等の契約書の作成について」の改正について公表しました。
平成26年4月4日 日本公認会計士協会は監査基準委員会報告書800「特別目的の財務報告の枠組みに準拠して作成された財務諸表に対する監査」、監査基準委員会報告書805「個別の財務表又は財務諸表項目等に対する監査」、関連する品質管理基準委員会報告書及び監査基準委員会報告書の一部改正、並びに監査基準委員会研究報告第3号「監査基準委員会報告書800及び805に係るQ&A」の公表について公表しました。
平成26年4月2日 日本公認会計士協会は会計制度委員会研究報告第9号「計算書類に係る附属明細書のひな型」の改正について公表しました。

トピック解説

 
 

企業集団における親会社監査役等の監査の在り方についての提言について

1.はじめに

日本監査役協会(ケース・スタディ委員会)は「企業集団における親会社監査役等の監査の在り方についての提言」を取りまとめ、平成25年11月7日付けで公表しました。

これは、近年、子会社の不祥事などにより親会社を含む企業集団の利益を損なう例が増えていることをふまえ、企業集団のガバナンスの在り方を検証することは喫緊の課題であることから、企業集団の監査役による監査の在り方についての提言・注意喚起を行うことを目的として公表されたものです。

この提言をまとめるため、日本監査役協会は「親会社による企業集団の監査」に関するアンケートを会員会社に対して行ったほか(有効回答1,109社)、企業集団における不正事例等の事例研究を行っています。

この記事では、この提言の内容について簡単に解説します。

2.提言の内容

本提言では、親会社にとってグループ全体を見渡した経営管理の必要性が高まっていることから、親会社の監査役が取るべき対応について以下の提言を行っています。

 

[1]企業集団内部統制における監査役の役割

企業集団における親会社監査役の役割としては、次の2つがあります。

@連結決算を主体とした会計監査

A取締役の職務執行に対する監査に関連して行う企業集団内部統制の構築・運用状況を主体とした業務監査

特に、上記Aについては、親会社監査役は取締役(会)が企業集団の内部統制システムを適切に構築・運用しているかを監査することが求められています。そして、不祥事の未然防止の観点からは、内部統制システムの適切な構築・運用がきわめて重要であるとしています。

 

[2]企業集団内部統制の監査のチェックポイント

子会社等の不祥事の未然防止の観点からは、内部統制システムの適切な構築・運用がきわめて重要ですが、本提言では、企業集団の内部統制の監査におけるチェックポイントとして以下の8つを挙げ、それぞれ具体的な検証項目も挙げています。

 

表1:企業集団内部統制の監査のチェックポイント

No チェックポイント 具体的な検証項目(例)
1 権限の集中
  • 子会社の規定が十分な統制・牽制が効いた内容になっているか
  • 当該規定が適切に運用されているか
  • 親会社の執行部門が子会社の経営トップの職務遂行を監視するために適切な対策を講じているか
2 人事の固定化
  • 親会社からの派遣の任期について適切な基準・方針があるか
  • 基準・方針の有無にかかわらず適切なローテーションが行われているか
3 子会社内の監視機関の形骸化
  • 子会社の取締役会をはじめ、子会社内にある監督機関が有効に機能しているか
4 子会社会計数値の検証体制の不備
  • 親会社における子会社における子会社会計数値の検証のための体制が整っているか
  • 売上高・債権残高・在庫等主要科目及び主要財務指標の推移の検証体制及び運用状況は有効か
5 企業集団における共通の会計管理システムの不存在
  • システムが統制できない部分が人的もしくは組織的に統制されているか
  • 会計数値が親会社に報告される前に子会社の取締役会等正式な機関の承認を受けているか
6 親会社への報告及び親会社における管理体制
  • 子会社からの報告の仕組みが明確になっているか
  • 報告の仕組みが子会社内で浸透しているか
  • 子会社からの報告についての検証等が親会社内で適切に行われているか
  • 子会社事業担当部署と管理部署間の連携及び親会社各管理部署間の連携が適切に行われているか
7 内部通報制度の活用
  • 子会社役職員の内部告発を受けとめるシステムを親会社が構築・運用しているか
  • 親会社の執行側が内部通報に適切に対応できる体制を構築しているか
  • 親会社が受けた通報が迅速に監査役に報告されるシステムが構築・運用されているか
8 子会社内内部統制システム構築・運用に対する支援
  • 子会社の内部統制システムの構築・運用において、親会社の執行部門が不足する部分を的確に把握し、改善に向けて支援しているか

 

[3]親会社の管理部門及び社外監査人との連携

親会社監査役にとって、企業集団の監査においては、社内外の関係者との連携は非常に重要です。本提言では、子会社事業を担当する親会社の営業部門、親会社の管理部門、そして親会社の内部統制監査部門との連携についての必要性を強調しています。また、親会社会計監査人及び子会社の社外監査人との連携についても、監査役の人的資源の制約等から全子会社を往査することが難しい場合においても、連結計算書類の監査の方法及び結果の相当性の判断においての重要性を強調しています。

 

[4]子会社監査役との連携

親会社監査役は子会社監査役との連携に努めなければなりません。本提言では一つの方法として、「グループ会社監査役連絡会」等が有効であることを挙げています。本提言のベースとするために行われた「親会社の企業集団の監査」に関するアンケートにおいても、当該連絡会が有効とする回答が多かったことを紹介しています。

 

[5]親会社監査役による子会社調査

内部統制システム自体の検証や監査の過程で問題点が発見された場合には、その検証のために親会社監査役主導で子会社について新たな調査を行う必要があります。親会社監査役が有する個会社調査の権限を行使することを含めて、問題点の調査を行うことの必要性を挙げています。

 

[6]不祥事の兆候の把握と適切な対応

親会社監査役が子会社関連の不祥事の兆候を把握したものの、その後の対応が適切でなかったために、損害を拡大させてしまうことがあります。本提言では、もし親会社監査役が子会社関連の不祥事の兆候を把握した場合には、他の役員との情報共有・報告、内部監査部門・会計監査人との連携、弁護士等の専門家への相談、調査など、基本的な対応をとることが重要であるとされています。

 

[7]子会社監査役等に対する期待

子会社の内部統制システムの構築・運用は、一義的には子会社が責任を負うべきものです。そのため、企業集団の内部統制システムの構築・運用に占める子会社監査役の役割は大きいものがあります。そのため、親会社監査役は、子会社監査役の監査の品質向上に配慮し、子会社監査役の研修や子会社監査役の監査環境の整備にも注力することが望まれます。

 
執筆者:公認会計士・社会保険労務士 吉田 隆伸
 

 

プレスリリース「監査業務と不正等に関する実態調査の集計結果について」の公表について

1.調査内容について

平成26年2月21日から3月24日にかけて「監査業務と不正等に関する実態調査」がアンケートの形式で行われました。対象者は公認会計士登録後10年以上経過した会員13,506名で会員の不正な財務報告等に関する意識や過去の経験を調査し、不正な財務報告を未然に防止又は会計監査での適切な対応を行うための施策を検討する際の参考とすることを目的としています。調査では「不正等との遭遇*1」についてその内容や顛末などを質問しています。

 

*1当調査において「不正等との遭遇」は以下の@〜Cのいずれかに該当するものを指している。

@ 監査の過程で故意による財務諸表の虚偽表示をもたらす会計処理を発見した。

A 監査の過程で被監査会社(法人)の従業員等による資産の流用・窃用を発見した。

B 被監査会社(法人)から会計基準に抵触すると思われる(グレーゾーンも含む)会計処理を行いたい旨の相談を受けた。

C 被監査会社(法人)が作成した財務諸表原案に故意ではない財務諸表の虚偽表示があり、財務諸表の修正を被監査会社(法人)に求めたが強く抵抗された。

2.調査結果について

回答結果を見ていくと過去10年間で「監査業務を通じて不正等と遭遇」した件数は一人当たり平均2.02件で1件以上遭遇したとの回答が約半数(48.8%)となっています。当アンケートは回答率が7.5%と低く、不正等と遭遇された経験のある方の回答率の方が高いと予想されるため実際の不正等との遭遇率は集計結果より低いものと考えられます。ただし調査に回答された全体の7.5%の方だけでも過去10年間に2,046件(13,506名×7.5%×2.02件)の不正等と遭遇していることは軽視できません。

また回答された「不正等との遭遇」の構成割合は@「監査の過程で故意による財務諸表の虚偽表示をもたらす会計処理を発見した。」が38.5%、A「監査の過程で被監査会社(法人)の従業員等による資産の流用・窃用を発見した。」が30.8%と、この両者だけで大半を占めています。一方、最近(0〜3年前)の事例に限定すると両者の順位は逆転し、Aが38.2%、@29.9%という調査結果が出ています。

不正等の内容(複数回答)は、「資産の実在性に関するもの」が34.9%、「循環取引等による売上の架空計上」が大半を占めています。また経営トップ層が関与した不正等は、24.5%を占めており、「循環取引等による売上の架空計上」に限ると、経営トップ層の関与は38.3%にも及んでいます。

なお、約3分の1(32.8%)の不正等が「被監査会社の外部の協力があった。」と回答されており、経営トップ層が関与した不正等に限ると、外部との協力がある割合は44.7%と高くなっています。さらに「循環取引等による売上の架空計上」では、外部との協力がある割合が非常に高く62.5%となっています。外部との協力による循環取引等の不正は、確認等の監査手続きにより検出することが非常に困難です。このためデータ監査ツールを用いて異常な取引が生じていないかを確認する等、第三者との共謀による不正への対応を拡充していくことが求められます。

 
参考文献
日本公認会計士協会プレスリリース「監査業務と不正等に関する実態調査の集計結果について」
 
執筆者:石川 裕也
 

連載記事

 
 

ActiveDataによる不正監査手続はお休みさせて戴きます。

 

 

シリーズIFRS(国際財務報告基準)第41回 IFRIC第1号「廃棄、原状回復及びそれらに類似する既存負債の変動」

1.はじめに

今回は、IFRIC第1号「廃棄、原状回復及びそれらに類似する既存負債の変動」(以下、IFRIC第1号という。)について紹介します。IFRICとは、国際財務報告解釈委員会(International Financial Reporting Interpretations Committee)のことを言い、IFRSの解釈指針の策定を行っております。

2.背景及び範囲

企業が事務所や支店等を賃借している場合は、原状回復義務を通常企業が有しています。また、企業が有する建物を解体する際にアスベストを含む建材が使用されている場合には、企業は法令上除去する義務を有しています。IFRIC第1号では、このような有形固定資産の解体、撤去及び原状回復を行う義務を「廃棄、原状回復及びそれらに類似する既存の負債」と呼んでいます。IAS第16号「有形固定資産」においては、取得原価の構成要素として廃棄、原状回復費用が含まれている旨の記載があり、IAS第37号「引当金、偶発負債及び偶発資産」においては、廃棄、原状回復及びそれらに類似する負債の測定方法に関する要求事項が含まれます。

IFRIC第1号は、上記2つに該当するものに対して適用され、廃棄、原状回復及びそれらに類似する既存の負債の測定額が変動する影響をどのように会計処理するかについての指針を提供しています。

なお、我が国においては、関係する基準として、企業会計基準第18号「資産除去債務に関する会計基準」(以下、資産除去債務会計基準)が公表されています。

3.会計処理

廃棄、原状回復及びそれらに類似する既存の負債の変動で、債務を決済するために必要な経済的便益を包含する資源の流出時期又は金額の見積りの変更、又は割引率に起因するものは、関連する資産が@取得原価モデルを使用して測定されているか、A再評価モデルを使用して測定されているかで会計処理が異なります。なお、取得原価モデル及び再評価モデルについては、ニュースレターVol.09をご参照ください。

 

【1】関連する資産が取得原価モデルを使用して測定されている場合

取得原価モデルを使用しているものについて負債の変動が生じた場合は、関連資産の取得原価を増減する形で処理を行います。なお、資産の取得原価から控除される額は、帳簿価額を超えてはならず、負債の減少が資産の帳簿価額を超える場合は、超過額は利益として認識されます。

修正の結果、資産の取得原価への追加となる場合には、減損の兆候の有無を検討し、兆候がある場合にはIAS第36号「資産の減損」に従って、減損テストを行わなければなりません。なお、資産除去債務会計基準においては、資産除去債務が法令の改正等により新たに発生した場合は、影響が特に重要であれば、重要な法令改正又は規制強化による法律的環境の著しい悪化として減損の兆候に該当するとしています。また、合理的に見積もることができなかった資産除去債務の金額を合理的に見積もることができるようになった場合についても、資産に係る将来キャッシュ・フローに関する不利な予想が明確になったものであることから、減損の兆候として扱うべきものと考えられるとしています。

 

【2】関連する資産が再評価モデルを使用して測定されている場合

再評価モデルを使用しているものについて負債の変動が生じた場合は、負債が減少した場合と増加した場合で以下のように処理を行います。

(a)負債の減少については、その他の包括利益に認識し、再評価剰余金の増額とします。ただし、過年度において評価損を計上している場合には、評価損の範囲内において、利益として認識しなければなりません。

(b)負債の増加については、費用として認識しなければなりません。ただし、過年度において再評価剰余金を計上している場合は、再評価剰余金の範囲内において、当該再評価剰余金を取り崩します。

 

【3】修正後の減価償却

資産修正後の減価償却可能価額は、耐用年数にわたり償却されます。耐用年数に到達した資産についての負債の事後の変動は、取得原価モデル及び再評価モデル共通で、発生時に純損益に認識しなければなりません。

 

【4】時の経過を反映する増加(割引の振戻し)

時の経過を反映する負債の測定額の増加については、その発生時に財務費用として認識しなければなりません。なお、資産除去債務会計基準では、その発生時に、対象となる有形固定資産の減価償却と同じ区分に含めて計上します。

 

参考文献
1.IFRIC第1号「廃棄、原状回復及びそれらに類似する既存負債の変動」

2.企業会計基準第18号「資産除去債務に関する会計基準」
 
執筆者:公認会計士 関 和輝
 

 

中小企業経営力強化支援法お役立ち情報はお休みさせて戴きます。

 


    明誠グループ    
明誠監査法人   明誠リサーチアンドコンサルティング
明誠税理士法人   明誠労務管理事務所

  明誠ニュースレター vol.43
2014年5月9日発行
発行責任者:武田剛 プロダクトマネジャー:村田博明
制作:株式会社ゼラス 佐々木景子
※このニュースレターに含まれる文章、画像の無断転載はご遠慮ください。