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発表日時 表題
平成26年8月29日 日本公認会計士協会は「学校法人委員会報告第42号「「ソフトウェアに関する会計処理について(通知)」に関する実務指針」、同研究報告第22号「私立大学退職金財団及び私立学校退職金団体に対する負担金等に関する会計処理に関するQ&A」、学校法人会計問答集(Q&A)第7号「内部取引の表示について」、同第11号「学校法人における土地信託の会計処理 について」及び同第13号「有価証券の評価等について」の改正、学校法人委員会研究報告第26号「人件費関係等について」の公表並びに学校法人会計問答集(Q&A)第3号及び第4号の廃止について」を公表しました。
平成26年8月21日 日本公認会計士協会は「監査・保証実務委員会実務指針第85号「監査報告書の文例」の改正について」を公表しました。
平成26年8月18日 日本公認会計士協会は「法規委員会研究報告第14号「監査及び四半期レビュー契約書の作成例」の改正について」を公表しました。
平成26年8月18日 日本公認会計士協会は「法規委員会研究報告第10号「財務情報の保証業務等の契約書の作成について」の改正について」を公表しました。
平成26年8月18日 日本公認会計士協会は「会計制度委員会報告第15号「特別目的会社を活用した不動産の流動化に係る譲渡人の会計処理に関する実務指針」及び「特別目的会社を活用した不動産の流動化に係る譲渡人の会計処理に関する実務指針についてのQ&A」の改正について(公開草案) 」を公表しました。
平成26年8月18日 日本公認会計士協会は「会計制度委員会報告第4号「外貨建取引等の会計処理に関する実務指針」及び「金融商品会計に関するQ&A」の改正について(公開草案) 」を公表しました。
平成26年8月8日 金融庁は「四半期財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令(案)」等を公表しました。
四半期会計期間等における企業結合に係る暫定的な会計処理等の改正を反映したものとなっています。

トピック解説

 
 

経済財政運営と改革の基本方針「骨太の方針」と日本再興戦略の改訂版について

1.はじめに

政府は平成26年6月24日の臨時閣議で、経済財政運営と改革の基本方針2014「骨太の方針」と日本再興戦略の改定版を決定しました。以下、内容について概略を紹介します。

2.経済財政運営と改革の基本方針「骨太の方針」の概要について

安部内閣では、長引くデフレからの早期脱却と日本経済の再生のため、「大胆な金融政策」、「機動的な財政政策」、「民間投資を喚起する成長戦略」を「三本の矢」として、新たな経済政策(アベノミクス)に取り組んできました。現在、経済の好循環が動き始め、実質GDPは6四半期連続でプラス成長と、デフレ脱却に向けて着実に前進しています。このような状況の下、デフレからの脱却を確実なものとするため、「経済財政運営と改革の基本方針2014」において今後の日本経済の4つの課題、また、経済再生の進展と中長期の発展に向けた重点課題等を掲げています。

 

[1]今後の日本経済の課題

経済財政運営の今後の課題として、4つの課題が整理されています。

(1)消費税率引上げに伴う駆け込み需要の反動減への対応

消費税率が8%に引き上げられたことによる反動減はこれまでのところ想定内という見方が多く、今後も経済対策が順調に進み、また、賃上げによる効果も顕在化すると考えられることから、駆け込みの反動減を乗り越えて景気回復が続くと期待されます。そのため、政府としては引き続き状況を見極めつつ、必要があれば機動的な対応を行うこととしています。

(2)足元の動き始めた経済の好循環の更なる拡大と企業の主体的行動

雇用情勢が改善する中で、今後人手不足が継続する恐れがあり、需要面だけでなく供給面にも目配りした政策運営を行う必要があります。

(3)日本の未来像に向けた制度・システム改革の実施

日本は「人口急減・超高齢化」へ向かっており、この流れを2020年を目途に変えるべく、必要な改革を行うこととしています。具体的には、@財源を確保した上で子どもへの資源配分を大胆に拡大、少子化対策を充実。A地方自治体の創意工夫や努力がより反映されるよう、行政サービスの提供の在り方、政策手段などを大胆に見直す。B地域の活力維持、東京への一極集中傾向に歯止めをかけるとともに、少子化と人口減少克服を目指し、総合的に政策を推進。といった政策を掲げています。

(4)経済再生と両立する財政健全化

三本の矢が持続的に効果を発揮するためには、政府が財政規律を堅持することが求められ、経済成長を通じた税収の増加、及び歳出削減により、財政健全化の進展が経済再生の一段の進展に寄与する好循環を目指します。

 

[2] 経済再生の進展と中長期の発展に向けた重点課題

経済再生の進展に向け、以下に記載した様々な課題に取り組むとしています。

(1)女性の活躍、教育再生を始めとする人材力の充実・発揮

(a)女性が輝く社会を目指し、男女の働き方に関する制度・慣行や、ワーク・ライフ・バランスを抜本的に変革する。

(b)総合的な教育再生を実行し、世界トップレベルの学力達成、大学改革等に取り組む。また、スポーツ・文化芸術の振興にも取り組む。

(c)一旦失敗するとやり直すことが容易でない現状を改善し、複線的なキャリア形成の実現など若者等の 活躍推進を図る。また、人材育成や職業訓練の拡充、企業側ニーズに合致した質の高い職業訓練の実施、学び直し機会の拡充、ライフステージに応じたキャリア転換の支援など、自らの専門性を高める能力開発を行うことのできる環境整備を進める。

(d)結婚・妊娠・出産・育児の「切れ目のない支援」を行うため、子供への資源配分を大胆に拡充し、少子化対策を実施する。

(e)健康長寿を社会の活力にするため、希望する人には70歳まで働ける環境整備を検討課題とし、また、高齢者の就労支援やボランティア活動の推進等により、高齢者が地域社会に参画しやすい場づくりなど生涯現役社会に向けた環境整備を推進する。

 

(2)イノベーションの促進等による民需主導の成長軌道への移行に向けた経済構造の改革

(a)「科学技術イノベーション総合戦略2014」を推進し、大胆な規制・制度改革や中長期の成長資金の供給拡大、ICTの利活用等を通じて、ダイナミックに産業構造を変革する。また、成長志向に重点を置いた法人税改革に着手し、数年で法人実効税率を、20%台まで引き下げることを目指し、来年度から引下げを開始する。財源については、アベノミクスの効果により日本経済がデフレを脱却し構造的に改善しつつあることを含めて、2020 年度の基礎的財政収支黒字化目標との整合性を確保するよう、課税ベースの拡大等による恒久財源の確保をすることとし、年末に向けて議論を進め、具体案を得る。

(b)持ち合い株式の議決権行使の在り方の検討、独立社外取締役の在り方の検討・導入促進などのコーポレートガバナンスの向上や地域金融機関等による経営支援等により、稼ぐ力の向上を図り、賃金や配当を始めとした様々な経路を通じて多様なステークホルダーに適切に還元する。また健全かつ力強い企業を生み出すための環境整備を図る。

(c)TPP(環太平洋パートナーシップ)の早期妥結に向けて引き続き取り組む。また、対日直接投資推進会議において、投資案件の発掘・誘致活動等を推進する。

(d)エネルギーコスト高への対策を講じるほか、資源・エネルギーを安価かつ安定的に確保する。また、原子力規制委員会の判断を尊重し、原子力発電所の再稼働を進める。

(e)健康・医療産業の発展、多様で柔軟な働き方、新しい事業の開拓、農業の成長産業化、対日直接投資の促進等を重視してきめ細かな規制の見直しを推進する。

 

(3)魅力ある地域づくり、農林水産業・中小企業等の再生

(a)「新しい東北」の将来像として示された5つの社会(元気で健やかな子どもの成長を見守る安心な社会等)の実現を目指すとともに、自律的で持続可能な地域経済の再生を進める。

(b)2020年オリンピック・パラリンピック東京大会等の開催に向けて、グローバル化、地域活性化、観光振興、環境技術と科学技術イノベーションの発信等を重視しつつ、必要な体制の整備等に取り組む。

(c)観光・交流等による都市・地域再生、地方分権、集約・活性化を図る。

(d)「農林水産業・地域の活力創造プラン」により10年間で農業・農村の所得を倍増させる目標の実現を目指す。また、農業の競争力強化を進め、食料安全保障の確立等を図る。

(e)中堅・中小企業、小規模事業者の更なる躍進を促すため、新事業展開の促進等支援の充実を図る。

 

(4)安心・安全な暮らしと持続可能な経済社会の基盤確保

(a)戦略的外交に向けて総合的外交力を高め、戦略的対外発信の取組を強化する。国家安全保障会議の下、戦略的かつ体系的な国家安全保障政策を推進する。また、防衛大綱等に基づき、統合的な防衛力を効率的に整備する。

(b)府省横断的な国土強靭化(ナショナル・レジリエンス)の取組を推進する。

(c)良好な治安を確保するため、サイバー犯罪・サイバー攻撃対策、テロ対策、組織犯罪対策等講じる。また、消費者の安全・安心を確保するため、食品表示等の適正化・充実を推進する。

(d)温室効果ガスの削減を始めとする地球環境問題の解決に取り組む。

 

[3] 経済再生と財政健全化の好循環

経済再生と財政健全化の両立に向け、国・地方の基礎的財政収支について、2015年度までに2010年度に比べ赤字の対GDP比半減、2020年度までに黒字化を目指すこととしています。また、法人実効税率を20%台まで引き下げ、社会保障改革、公的部門改革の推進(行政のIT化など)等を図ることとしています。

 

[4] 平成27年度予算編成に向けた基本的考え方

平成27年度予算については、本基本方針、「日本再興戦略」改定2014、中期財政計画を踏まえ、民需主導の経済再生と財政健全化目標の双方の達成を目指した予算とするとしています。

3.「日本再興戦略」改定2014の概要について

アベノミクス「三本の矢」により始まりつつある経済の好循環を一過性のものに終わらせず、持続的な成長軌道につなげるべく、平成26年6月24日「日本再興戦略」改訂2014を閣議決定しました。

今回の改訂では、昨年の成長戦略で残された課題としていた、労働市場改革、農業の生産性拡大、医療・介護分野の成長産業化等の分野にフォーカスして、解決の方向性を提示しています。

(1)コーポレートガバナンスの強化

(2)公的・準公的資金の運用の在り方の見直し

(3)産業の新陳代謝とベンチャーの加速、成長資金の供給促進

(4)成長志向型の法人税改革
数年で法人実効税率を20%台まで引き下げることを目指す

(5)イノベーションの推進と社会的課題解決へのロボット革命

(6)女性の更なる活躍促進
学童保育の充実、女性就労に中立的な税・社会保障制度等の実現

(7)働き方の改革
働き過ぎ防止のための取組強化、時間ではなく成果で評価される制度への改革

(8)外国人材の活用
外国人技能実習制度の見直し、製造業における海外子会社従業員の受入れ

(9)攻めの農林水産業の展開
農業委員会・農業生産法人・農業協同組合の一体的改革

(10)健康産業の活性化と質の高いヘルスケアサービスの提供
非営利ホールディングカンパニー型法人制度(仮)の創設

4.おわりに

今後、安部政権はアベノミクス政策による動きを持続的な成長・発展につなげていくため、今回解説しました経済財政運営と改革の基本方針「骨太の方針」と日本再興戦略の2つのプランに基づいて、「成長志向に重点を置いた法人税改革とコーポレートガバナンスの強化による「稼ぐ力」の強化」、「女性の更なる活躍の場の拡大や海外人材の受入れの拡大」、「農業、雇用、医療等における大胆な制度改革」、そして「アベノミクスの成果を全国津々浦々に波及させ、地域経済の発展につなげるための取組」などに取り組んでいくと述べています。

 
執筆者:古田まゆみ
 

 

我が国におけるライツ・オファリングの定着に向けて

1.はじめに

平成26年7月25日に株式会社東京証券取引所の上場制度整備懇談会から「我が国におけるライツ・オファリングの定着に向けて」が公表されました。

これは、ライツ・オファリングに関する制度整備が進み、実例が積み重なりつつある中、ライツ・オファリングが濫用的に利用されていることに対する懸念が生じているとし、ライツ・オファリングに係る上場制度について早急に対応すべき事項を取りまとめたものです。

今回は、本提言について簡単に解説します。

2.ライツ・オファリングの概要

ライツ・オファリングは、株主に対する新株予約権無償割当てを利用した投資手法です。新株予約権は、保有する株式の持分に応じて株主に平等に割り当てられ、上場されます。そのため、株主は、新株予約権を行使して自ら増資に応じることで、持分の希薄化を避けることもできますし、新たな資金の払込みに応じずに持分の希薄化を受け入れるとしても、新株予約権を市場で売却することで、親株の時価を下回る行使価格が設定されることによる経済的損失を回避することもできます。この点で、ライツ・オファリングは、公募増資や第三者割当増資といった他の増資手法と比べ、株主の利益に配慮した増資手法であると評価されています。

ライツ・オファリングには、引受人が未行使分の新株予約権の行使などを約束する契約を締結する「コミットメント型ライツ・オファリング」と、そうした契約が締結されない「ノンコミットメント型ライツ・オファリング」との2種類があります。

3.現状及び問題点

我が国では、平成26年6月末までに、ノンコミットメント型ライツ・オファリングが22件、コミットメント型ライツ・オファリングが3件実施されています。また、ノンコミットメント型ライツ・オファリングを実施した22件については、14件が直前期に純損失を計上した会社によるもの、4件が直前期又は直前四半期の時点で債務超過の会社によるもの、14件が直前期に無配の会社によるものとなっています。

本提言では、ほぼ同期間の公募増資や第3者割当増資をおこなった会社の状況と比較し、業績の優れない会社がノンコミットメント型ライツ・オファリングを利用している傾向が明らかであるとし、そのうえで、我が国におけるライツ・オファリングの問題点として(1)ノンコミットメント型ライツ・オファリングの合理性を評価する仕組みが存在しないこと、及び(2)新株予約権の合理的な市場価格が形成されにくい状況があることを挙げています。

 

(1)ノンコミットメント型ライツ・オファリングの合理性を評価する仕組みが存在しないこと

我が国の資本市場では、増資の合理性について客観的な立場から経営者の判断を規律づける実務上の仕組みが存在します。公募増資やコミットメント型ライツ・オファリングであれば、その合理性を外部の専門家である引受証券会社が審査し、第3者割当増資であっても、払込みを行う割当先がその合理性を吟味するのが通常です。これに対し、ノンコミットメント型ライツ・オファリングでは、その合理性を評価する仕組みが確保されていません。

新株予約権を割り当てられた株主は、その増資が払込みに値する合理的なものだと評価すれば自ら権利行使して増資に応じますが、そうでないと評価した場合には新株予約権を市場で売却します。また、市場で新株予約権を買い取る投資家は、増資が合理的だと評価すればその評価に応じた金額で新株予約権を買い取って行使することが想定されますが、そのように評価しない場合であっても新株予約権の市場価格がその理論価格よりも割安であれば、増資自体の合理性とは無関係に、裁定取引として新株予約権を買い取って権利行使することで利益を得ることができます。したがって、ノンコミットメント型ライツ・オファリングの場合、当該増資が合理的だと評価する者がいない中でも、裁定行為の一環として新株予約権を行使して払込みが行われ得るという、構造的な特殊性があります。

本提言では、増資の合理性が評価されないままにディスカウントされた払込金額で大量の新株が発行されることによる株主の不利益は、株主が新株予約権を売却することによって自ら招いた面もないとはいえないものの、基本的には増資手法の構造的な特殊性によって引き起こされるものであり、制度的な改善を行う必要があるとしています。

 

(2)新株予約権の合理的な市場価格が形成されにくい状況があること

我が国のライツ・オファリングの実例では、新株予約権の市場価格がその理論価格と比して割安となる傾向が顕著です。本提言では、このような傾向を生み出す要因として、以下(a)から(c)の要因があると想定しています。

(a)価格差を是正すべき裁定取引に(貸株の調達コストや裁定ポジションを維持する期間に対応する資金負担等の)制約が存在している。

(b)行使期間の開始前は貸株に提供される親株の数が少なく、裁定取引の実施に必要な借株が不十分にしか供給されないために新株予約権の買い需要が顕在化しないことが、市場価格を割安にしている。

(c)個人投資家等には、ライツ・オファリングの理解が十分に浸透していないおそれがあり、そのために意図せずに理論株価を下回る価格で新株予約権を売却してしまっており、それが新株予約権の価格形成を歪ませている。
そして、裁定が十分に機能せず、常に裁定機会が提供し続けられていることは、裁定取引で取得された新株予約権については増資の合理性とは無関係に権利行使がされるという(1)の問題を結果的に助長している可能性があるため防止する必要があるとしています。

4.制度整備の方向性

上記の問題点の改善のために、本提言では、ノンコミットメント型ライツ・オファリングについては、増資の合理性を評価するプロセスを導入することが適切であり、そうした評価の手続きとして証券会社による引受審査に準じる審査を通過したこと、又は株主総会決議などによる株主の意思確認によって株主の承認を得たことを、新株予約権の上場基準に追加することを提言しています。加えて、これら証券会社の審査や株主の承認の実効性を確保する観点から、ノンコミットメント型ライツ・オファリングに係る新株予約権を上場するには、上場会社が一定の業績基準を満たしていることも併せて求めることが適当であるとしています。

また、新株予約権の円滑な価格形成のために、行使期間の開始後には、親株の発行総数が増加して裁定取引のための借株が容易になると考えられるため、新株予約権の行使期間の開始後に新株予約権を上場させることとすれば、市場価格と理論価格の乖離の程度が小さくなると見込まれるため、新株予約権の行使期間の開始後に新株予約権を上場させることとするのが望ましく、また、個人投資家等にはライツ・オファリングについての理解が十分に浸透していないことが新株予約権の価格形成を歪ませている可能性があるため、ライツ・オファリングの仕組み(とりわけ、新株予約権を市場で売却する際の目安となる理論価格)を周知することが望ましいとしています。

5.今後の対応

最後に、本提言では、ライツ・オファリングは、株主の持分希薄化への配慮という積極的な面を有する増資手法であり、今後、増資の際の有力な選択肢のひとつとして市場関係者が育てていくという視点が重要であるとし、本提言もライツ・オファリングをより良い形で我が国の実務に定着させるための試みのひとつであり、その内容も、将来の必要に応じて見直しの対象とされるべきであるとしています。

 
執筆者:中戸 大介
 

連載記事

 
 

ActiveDataによる不正監査手続はお休みさせて戴きます。

 

 

シリーズIFRS(国際財務報告基準)第45回 IFRIC第15号「不動産の建設契約」

1.はじめに

今回は、IFRIC第15号「不動産の建設契約」(以下、IFRS第15号という。)について紹介します。

2.範囲及び論点

IFRIC第15号は、不動産の開発を直接又は下請企業を通じて間接的に不動産の建設を行う企業の収益及び関連する費用の会計処理に適用します。IFRIC第15号の適用範囲の契約は、不動産の建設に関する契約であり、不動産の建設に加え、他の財又はサービスの引き渡しを含んでいることもあります。

また、IFRIC第15号では以下の2つの論点を取り扱っています。

【1】契約はIAS第11号「工事契約」とIAS第18号「収益」のいずれの適用範囲か

【2】不動産の建設による収益は、いつ認識するべきか

3.契約がIAS第11号かIAS第18号のいずれの適用範囲かの決定

不動産の建設契約がIAS第11豪華IAS第18号のいずれの適用範囲かの決定は、契約条件及びそれを取り巻くすべての事実及び状況によって決まります。

契約がIAS第11号第3項に示されている工事契約の定義「単一の資産又は資産の組み合わせの建設工事のために特別に取り決められる契約」に該当する場合には、IAS第11号が適用されます。以下の場合には、不動産の建設契約は工事契約の定義を満たします。

【1】買手が建設工事の開始前に不動産の設計の主要な構造上の要素を指定することができる場合

【2】買手が建設工事の進行中に主要な構造上の変更を指定できる場合(権利を行使する、しないに関わらず)

一方で、例えば企業が指定した一定範囲の選択肢の中からしか設計を選択できなかったり、基本設計に対する軽微な変更のみしか指定できないといった契約は、IAS第18号の適用範囲である物品の販売契約となります。

4.不動産の建設による収益の会計処理

契約がIAS第11号の適用範囲にあり、その結果を信頼性をもって見積もることができる場合、企業は、IAS第11号に従って、その契約による活動の進捗度に応じて収益を認識しなければなりません。

契約が工事契約の定義に該当せず、IAS第18号の適用範囲となる場合、企業は契約がサービスの提供に関するものなのか、物品の販売に関するものなのかを決定する必要があります。

【1】サービスの提供に関する契約である場合

企業が建設資材の取得及び供給を行う必要がない場合、当該契約はIAS第18号に従ったサービスの提供に関する契 約となります。この場合、IAS第18号第20項の要件に該当するときは、進行基準により取引の進捗度に応じて収益を認識することが要求されます。

【2】契約が物品の販売である場合

企業が、買手に不動産を引渡す契約上の義務を履行するために、建設資材とともにサービスを提供することを要求されている場合には、その契約は物品の販売に関する契約であり、IAS第18号第14項に示されている収益認識の要件が適用されます。

企業は工事が進行するごとに、現状の仕掛工事に対する支配及びその所有に関する重要なリスク及び経済価値を買手に移転する場合、IAS第18号第14項のすべての要件を継続的に満たしているときは、進行基準により進捗度に応じて収益を認識します。

一方で、単一の時点(例えば、完成時、引渡時又は引渡後)に、不動産に対する支配とその所有に関する重要なリスク及び経済価値を買手に移転する場合、IAS第18号第14項のすべての要件が満たされたときにのみ収益を認識します。

5.開示

企業が、建設工事契約が物品の販売契約に該当し、かつIAS第18号第14項のすべての要件を継続的に満たす契約について、進行基準を用いて収益を認識する場合には、次の事項を開示しなければなりません。

【1】IAS第18号第14項のすべての要件を工事の進行中に継続的に満たす契約なのかをどのように判定しているのか。

【2】当期中における該当契約から生じた収益の金額

【3】進行中の契約の進捗度を算定するために用いた方法
報告日現在において進行中にものについては、以下の開示が必要となります。

【4】現在までに発生した原価及び認識した収益(認識した損失を控除後)

【5】受け取った前受金の金額

 

参考文献
IFRIC第15号「不動産の建設契約」

 
執筆者:公認会計士 関 和輝
 

 

中小企業お役立ち情報_12 「キャリアアップ助成金」

1.はじめに

今回は、中小企業お役立ち情報9「平成26年度中小企業支援制度」で挙げた雇用関係助成金の中から、キャリアアップ助成金について解説します。

2.キャリアアップ助成金とは

キャリアアップ助成金は、有期契約労働者、短時間労働者、派遣労働者といった、いわゆる非正規雇用の労働者の企業内でのキャリアアップなどを促進するため、正規雇用への転換、人材育成、処遇改善などの取組を実施した事業主に対して助成する制度です。

本助成金は次の6つのコースに分けられます。

I. 有期契約労働者等の正規雇用等への転換等を助成する「正規雇用等転換コース」

II. 有期契約労働者等に対する職業訓練を助成する「人材育成コース」

III. 有期契約労働者等の賃金テーブルの改善を助成する「処遇改善コース」

IV. 有期契約労働者等に対する健康診断制度の導入を助成する「健康管理コース」

V.労働者の短時間正社員への転換や新規雇入れを助成する「短時間正社員コース」

VI. 短時間労働者の週所定労働時間を社会保険加入ができるよう延長することを助成する「短時間労働者の週所定労働時間延長コース」

3.主な受給要件と受給額

I. 正規雇用等転換コース

(1)主な受給要件

正規雇用または無期雇用に、転換または直接雇用(以下「転換等」といいます。)する制度を規定し、有期契約労働者を正規雇用または無期雇用へ転換等、無期雇用者を正規雇用等すること。なお、制度の適用となる前と比べて5%以上昇給しているこが求められます。

 

(2)受給額

適用内容 支給対象者1人当たり支給額 支給対象者が母子家庭の母等・父子家庭の父の場合
有期労働から正規雇用への転換等 30万円(40万円) 10万円加算
有期労働から無期雇用への転換等 15万円(20万円) 5万円加算
無期労働から正規雇用への転換等 15万円(20万円) 5万円加算

注1.()内は中小企業事業主の場合

注2.平成26年3月1日から平成28年3月31日までの間に、有期契約労働者または無期雇用労働者を正規雇用へ転換した場合、1人当たり10万円が加算されます。

注3.平成26年3月1日から平成28年3月31日までの間に、派遣労働者を正規雇用労働者として直接雇用する場合、1人当たり10万円が加算されます。

注4.対象労働者の合計人数は、1年度1事業所当たり10人までを上限とします。ただし、平成26年3月1日から平成28年3月31日までの間は、1年度1事業所当たり15人まで(無期雇用への転換等は10人まで)を上限とします。

 

II. 人材育成コース

(1)主な受給要件

職業訓練計画を作成し、有期契約労働者等に次のいずれかの訓練を実施すること。

(a)一般職業訓練(実施期間が1年以内のOFF-JT)

(b)有期実習型訓練(「ジョブ・カード」を活用したOFF-JTとOJTを組み合わせた3か月以上6カ月以下の職業訓練)

 

(2)受給額

本助成金は、訓練の種類に応じて支給対象者1人当たり下表の支給額の合計がまとめて支給されます。

訓練の種類 助成対象 支給額
OFF-JT 賃金助成 1時間当たり500円(800円)
訓練経費助成 訓練時間数が100時間未満:7万円(10万円)
訓練時間数が100時間以上200時間未満:15万円(20万円)
訓練時間数が200時間以上:20万円(30万円)
※実費が上記を下回る場合は実費を限度とする。
OJT 訓練実施助成 1時間当たり700円(700円)

注1. ()内は中小企業事業主の場合

注2. 1年度1事業所当たり500万円を上限とします。

 

III. 処遇改善コース

(1)主な受給要件

すべての有期契約労働者等の基本給の賃金テーブルを作成し、3%以上増額改定すること。なお、平成26年3月1日から平成28年3月31日までの間は2%以上の増額改定で足ります。

(2)受給額

本助成金の支給額は、賃金テーブル改定の対象となる支給対象者1人当たり7,500円(中小企業事業主の場合1万円)です。なお、1年度1事業所当たり100人までを上限とします。

また、職務評価を活用して処遇改善を行う場合には、職務評価加算として1事業所当たり7.5万円(中小企業事業主の場合10万円)が加算されます。ただし、平成26年3月1日から平成28年3月31日までの間に、職務評価を活用して処遇改善を行った場合は、職務評価加算として1事業所当たり15万円(中小企業事業主の場合20万円)が加算されます。

 

IV. 健康管理コース

(1)主な受給要件

有期契約労働者を対象とする「健康診断制度」を新たに規定し、延べ4人以上実施すること。

(2)受給額

本助成金の支給額は、1事業所当たり30万円(中小企業事業主の場合40万円)です。

 

V.短時間正社員コース

(1)主な受給要件

短時間正社員に転換する制度、または短時間正社員として新たに雇い入れる制度を、労働協約または就業規則に規定し、当該制度の規定に基づき雇用する労働者を短時間正社員に転換または新たに短時間正社員として労働者を雇い入れること。

(2)受給額

本助成金の支給額は、支給対象者1人当たり15万円(常時雇用する労働者が300人を超えない中小規模企業の場合20万円)です。ただし、平成26年3月1日から平成28年3月31日までの間に、有期契約労働者等を短時間正社員に転換した場合の支給額は、支給対象者1人当たり25万円(中小規模企業の場合30万円)です。

また、支給対象者が母子家庭の母等または父子家庭の父の場合は1人当たり10万円が加算されます。

なお、VI「短時間労働者の週所定労働時間延長コース」の人数と合計し、1年度1事業所あたり10人が上限です。

 

VI. 短時間労働者の週所定労働時間延長コース

(1)主な受給要件

週所定労働時間が25時間未満の有期契約労働者等に係る週所定労働時間を30時間以上に延長し社会保険の適用とすること。

(2)受給額

本助成金の支給額は、支給対象者1人当たり7.5万円(中小企業事業主の場合10万円)です。

なお、V「短時間正社員コース」の人数と合計し、1年度1事業所あたり10人が上限です。

4.受給手続き

本助成金を受給しようとする事業主は、事業所ごとに「キャリアアップ管理者」を配置するとともに、「キャリアアップ計画」を作成(人材育成コースを実施する場合には「職業訓練計画」を併せて作成)して、管轄の都道府県労働局またはハローワークに提出します。

その後、受給を受けようとする事業主は、コースごとに定められた基準日の翌日から2カ月以内に、支給申請書に必要な書類を添えて、管轄の都道府県労働局またはハローワークに支給申請を行います。

5.おわりに

本助成金の詳細については、下記のキャリアアップ助成金パンフレットをご参照いただくか、最寄りのハローワークまたは都道府県労働局にお問い合わせください。

 

 

 

参考文献:キャリアアップ助成金パンフレット

http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11650000-Shokugyouanteikyokuhakenyukiroudoutaisakubu/0000043425.pdf

 
執筆者:公認会計士 松浦 政文
 


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  明誠ニュースレター vol.47
2014年9月12日発行
発行責任者:武田剛 プロダクトマネジャー:村田博明
制作:株式会社ゼラス 佐々木景子
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