1.はじめに
今回は、中小企業お役立ち情報9「平成26年度中小企業支援制度」で挙げた雇用関係助成金の中から、キャリアアップ助成金について解説します。
2.キャリアアップ助成金とは
キャリアアップ助成金は、有期契約労働者、短時間労働者、派遣労働者といった、いわゆる非正規雇用の労働者の企業内でのキャリアアップなどを促進するため、正規雇用への転換、人材育成、処遇改善などの取組を実施した事業主に対して助成する制度です。
本助成金は次の6つのコースに分けられます。
I. 有期契約労働者等の正規雇用等への転換等を助成する「正規雇用等転換コース」
II. 有期契約労働者等に対する職業訓練を助成する「人材育成コース」
III. 有期契約労働者等の賃金テーブルの改善を助成する「処遇改善コース」
IV. 有期契約労働者等に対する健康診断制度の導入を助成する「健康管理コース」
V.労働者の短時間正社員への転換や新規雇入れを助成する「短時間正社員コース」
VI. 短時間労働者の週所定労働時間を社会保険加入ができるよう延長することを助成する「短時間労働者の週所定労働時間延長コース」
3.主な受給要件と受給額
I. 正規雇用等転換コース
(1)主な受給要件
正規雇用または無期雇用に、転換または直接雇用(以下「転換等」といいます。)する制度を規定し、有期契約労働者を正規雇用または無期雇用へ転換等、無期雇用者を正規雇用等すること。なお、制度の適用となる前と比べて5%以上昇給しているこが求められます。
(2)受給額
適用内容 |
支給対象者1人当たり支給額 |
支給対象者が母子家庭の母等・父子家庭の父の場合 |
有期労働から正規雇用への転換等 |
30万円(40万円) |
10万円加算 |
有期労働から無期雇用への転換等 |
15万円(20万円) |
5万円加算 |
無期労働から正規雇用への転換等 |
15万円(20万円) |
5万円加算 |
注1.()内は中小企業事業主の場合
注2.平成26年3月1日から平成28年3月31日までの間に、有期契約労働者または無期雇用労働者を正規雇用へ転換した場合、1人当たり10万円が加算されます。
注3.平成26年3月1日から平成28年3月31日までの間に、派遣労働者を正規雇用労働者として直接雇用する場合、1人当たり10万円が加算されます。
注4.対象労働者の合計人数は、1年度1事業所当たり10人までを上限とします。ただし、平成26年3月1日から平成28年3月31日までの間は、1年度1事業所当たり15人まで(無期雇用への転換等は10人まで)を上限とします。
II. 人材育成コース
(1)主な受給要件
職業訓練計画を作成し、有期契約労働者等に次のいずれかの訓練を実施すること。
(a)一般職業訓練(実施期間が1年以内のOFF-JT)
(b)有期実習型訓練(「ジョブ・カード」を活用したOFF-JTとOJTを組み合わせた3か月以上6カ月以下の職業訓練)
(2)受給額
本助成金は、訓練の種類に応じて支給対象者1人当たり下表の支給額の合計がまとめて支給されます。
訓練の種類 |
助成対象 |
支給額 |
OFF-JT |
賃金助成 |
1時間当たり500円(800円) |
訓練経費助成 |
訓練時間数が100時間未満:7万円(10万円)
訓練時間数が100時間以上200時間未満:15万円(20万円)
訓練時間数が200時間以上:20万円(30万円)
※実費が上記を下回る場合は実費を限度とする。 |
OJT |
訓練実施助成 |
1時間当たり700円(700円) |
注1. ()内は中小企業事業主の場合
注2. 1年度1事業所当たり500万円を上限とします。
III. 処遇改善コース
(1)主な受給要件
すべての有期契約労働者等の基本給の賃金テーブルを作成し、3%以上増額改定すること。なお、平成26年3月1日から平成28年3月31日までの間は2%以上の増額改定で足ります。
(2)受給額
本助成金の支給額は、賃金テーブル改定の対象となる支給対象者1人当たり7,500円(中小企業事業主の場合1万円)です。なお、1年度1事業所当たり100人までを上限とします。
また、職務評価を活用して処遇改善を行う場合には、職務評価加算として1事業所当たり7.5万円(中小企業事業主の場合10万円)が加算されます。ただし、平成26年3月1日から平成28年3月31日までの間に、職務評価を活用して処遇改善を行った場合は、職務評価加算として1事業所当たり15万円(中小企業事業主の場合20万円)が加算されます。
IV. 健康管理コース
(1)主な受給要件
有期契約労働者を対象とする「健康診断制度」を新たに規定し、延べ4人以上実施すること。
(2)受給額
本助成金の支給額は、1事業所当たり30万円(中小企業事業主の場合40万円)です。
V.短時間正社員コース
(1)主な受給要件
短時間正社員に転換する制度、または短時間正社員として新たに雇い入れる制度を、労働協約または就業規則に規定し、当該制度の規定に基づき雇用する労働者を短時間正社員に転換または新たに短時間正社員として労働者を雇い入れること。
(2)受給額
本助成金の支給額は、支給対象者1人当たり15万円(常時雇用する労働者が300人を超えない中小規模企業の場合20万円)です。ただし、平成26年3月1日から平成28年3月31日までの間に、有期契約労働者等を短時間正社員に転換した場合の支給額は、支給対象者1人当たり25万円(中小規模企業の場合30万円)です。
また、支給対象者が母子家庭の母等または父子家庭の父の場合は1人当たり10万円が加算されます。
なお、VI「短時間労働者の週所定労働時間延長コース」の人数と合計し、1年度1事業所あたり10人が上限です。
VI. 短時間労働者の週所定労働時間延長コース
(1)主な受給要件
週所定労働時間が25時間未満の有期契約労働者等に係る週所定労働時間を30時間以上に延長し社会保険の適用とすること。
(2)受給額
本助成金の支給額は、支給対象者1人当たり7.5万円(中小企業事業主の場合10万円)です。
なお、V「短時間正社員コース」の人数と合計し、1年度1事業所あたり10人が上限です。
4.受給手続き
本助成金を受給しようとする事業主は、事業所ごとに「キャリアアップ管理者」を配置するとともに、「キャリアアップ計画」を作成(人材育成コースを実施する場合には「職業訓練計画」を併せて作成)して、管轄の都道府県労働局またはハローワークに提出します。
その後、受給を受けようとする事業主は、コースごとに定められた基準日の翌日から2カ月以内に、支給申請書に必要な書類を添えて、管轄の都道府県労働局またはハローワークに支給申請を行います。
5.おわりに
本助成金の詳細については、下記のキャリアアップ助成金パンフレットをご参照いただくか、最寄りのハローワークまたは都道府県労働局にお問い合わせください。
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