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情報フラッシュ

 
発表日時 表題
平成27年7月31日 日本公認会計士協会は「平成28年度税制改正意見・要望書」について公表しました。
平成27年7月23日 日本公認会計士協会は「IT委員会実務指針第7号「受託業務のセキュリティ・可用性・処理のインテグリティ・機密保持に係る内部統制の保証報告書」」及び「IT委員会研究報告第45号「IT委員会実務指針第7号「受託業務のセキュリティ・可用性・処理のインテグリティ・機密保持に係る内部統制の保証報告書」の実施上の留意点」」の改正の公開草案について公表しました。

トピック解説

 
 

繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針(案)について

現在、繰延税金資産の回収可能性の判断は、監査委員会報告第66 号「繰延税金資産の回収可能性の判断に関する監査上の取扱い」等の日本公認会計士協会が公表している実務指針や監査上の取り扱いをもとに行われています。これらの実務指針等を企業会計基準委員会に移管すべく企業会計基準委員会において審議が行われ、平成27年5月26日に「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針(案)」(以下、公開草案)が公表されました。

 

本公開草案は、主に監査委員会報告第66 号「繰延税金資産の回収可能性の判断に関する監査上の取扱い」(以下66号)の以下の3点を見直した内容となっています。

 

(1) 繰延税金資産の回収可能性に関する企業の分類の要件

(2) 一定の要件を満たしたスケジューリング不能な一時差異に係る繰延税金資産の回収可能性の取扱い

(3) 5分類の要件をいずれも満たさない企業の取り扱いの明記

 

66号では企業を5つに分類し分類に応じ繰延税金資産の回収可能性を判断することを基本的な考え方としています。公開草案においても5つの分類に当てはめるという基本的な考え方自体には変更は有りませんが、分類のための要件や繰延税金資産計上額に一部見直しがなされています。

 

[1]内容

5分類について66号と公開草案を比較すると以下の様になります。

(1)分類1

  66号 公開草案
要件 期末における将来減算一時差異を十分に上回る課税所得を毎期(当期及びおおむね過去3年以上)計上している会社等で、その経営環境に著しい変化がない場合 次の要件をいずれも満たす企業
(1) 過去(3 年)及び当期のすべての事業年度において、期末における将来減算一時差異を十分に上回る課税所得が生じている。
(2) 当期末において、経営環境に著しい変化がない。
繰延税金資産計上額 繰延税金資産の全額(スケジューリングが不能な将来減算一時差異分も含む) 繰延税金資産の全額について回収可能性があるものとする。また、スケジューリング不能な将来減算一時差異に係る繰延税金資産についても回収可能性があるものとする。

要件、計上額共に特に見直された点はありません。

 

(2)分類2

  66号 公開草案
要件 過去の業績が安定している会社等の場合、すなわち、当期及び過去(おおむね3年以上)連続してある程度の経常的な利益を計上しているような会社 次の要件をいずれも満たす企業は、(分類2)に該当する。
(1) 過去(3 年)及び当期のすべての事業年度において、臨時的な原因により生じたものを除いた課税所得が、期末における将来減算一時差異を下回るものの、安定的に生じている。
(2) 当期末において、経営環境に著しい変化がない。 (3) 過去(3 年)及び当期のいずれの事業年度においても重要な税務上の欠損金が生じていない。
繰延税金資産計上額 一時差異等のスケジューリングの結果に基づき、それに係る繰延税金資産を計上している場合には、当該繰延税金資産は回収可能性があると判断できる。 一時差異等のスケジューリングの結果、繰延税金資産を見積る場合、当該繰延税金資産は回収可能性があるものとする。
  なお、分類2に該当する企業においては、原則として、スケジューリング不能な将来減算一時差異に係る繰延税金資産について、回収可能性がないものとする。ただし、スケジューリング不能な将来減算一時差異のうち、税務上の損金算入時期が個別に特定できないが将来のいずれかの時点で損金算入される可能性が高いと見込まれるものについて、当該将来のいずれかの時点で回収できることを合理的に説明できる場合、当該スケジューリング不能な将来減算一時差異に係る繰延税金資産は回収可能性があるものとする。

上記の様に要件の判断対象を利益から課税所得に変更しています。また繰延税金資産計上額についてもスケジューリング不能部分について計上できないものの、一定の場合繰延税金資産を計上できることが明記されています。

 

(3)分類3

  66号 公開草案
要件 過去の業績が不安定な会社等の場合、すなわち、過去の経常的な損益が大きく増減しているような会社。 次の要件をいずれも満たす企業は、(分類3)に該当する。
  • 過去(3 年)及び当期において、臨時的な原因により生じたものを除いた課税所得が大きく増減している。
  • 過去(3 年)及び当期のいずれの事業年度においても重要な税務上の欠損金が生じていない。

ただし以下の要件を満たす場合を除く。

  • 過去(3 年)において、重要な税務上の欠損金の繰越期限切れとなった事実がある。
  • 当期末において、重要な税務上の欠損金の繰越期限切れが見込まれる。
繰延税金資産計上額 将来の合理的な見積可能期間(おおむね5年)内の課税所得の見積額を限度として、当該期間内の一時差異等のスケジューリングの結果に基づき、それに係る繰延税金資産を計上している場合には、当該繰延税金資産は回収可能性があると判断できる。 将来の合理的な見積可能期間(おおむね5 年)以内の一時差異等加減算前課税所得の見積額に基づいて、当該見積可能期間の一時差異等のスケジューリングの結果、繰延税金資産を見積る場合、当該繰延税金資産は回収可能性があるものとする。
 

ただし、臨時的な原因により生じたものを除いた課税所得が大きく増減している原因、中長期計画、過去における中長期計画の達成状況、過去(3 年)及び当期の課税所得の推移等を勘案して、5 年を超える見積可能期間においてスケジューリングされた一時差異等に係る繰延税金資産が回収可能であることを合理的に説明できる場合、当該繰延税金資産は回収可能性があるものとする。

なお、ここでいう中長期計画は、おおむね3 年から5 年の計画を想定している

分類2と同様、要件の判断対象が利益から課税所得に変更されるとともに欠損金に係る要件が追加されています。また繰延税金資産の回収可能性について66号では5年超のスケジューリングについて認められていませんでしたが、公開草案においては一定の場合認められることが明記されています。

 

(4-1)分類4(原則)

  66号 公開草案
要件

期末において重要な税務上の繰越欠損金が存在する会社、過去(おおむね3年以内)に重要な税務上の欠損金の繰越期限切れとなった事実があった会社、又は当期末において重要な税務上の欠損金の繰越期限切れが見込まれる会社

また、過去の経常的な利益水準を大きく上回る将来減算一時差異が期末に存在する会社について、翌期末において重要な税務上の繰越欠損金の発生が見込まれる場合

次のいずれかの要件を満たし、かつ、翌期において一時差異等加減算前課税所得が生じることが見込まれる企業は、分類4に該当する。

(1) 過去(3 年)又は当期において、重要な税務上の欠損金が生じている。

(2) 過去(3 年)において、重要な税務上の欠損金の繰越期限切れとなった事実がある。

(3) 当期末において、重要な税務上の欠損金の繰越期限切れが見込まれる。

繰延税金資産計上額 原則として、翌期に課税所得の発生が確実に見込まれる場合で、かつ、その範囲内で翌期の一時差異等のスケジューリングの結果に基づき、それに係る繰延税金資産を計上している場合には、当該繰延税金資産は回収可能性があると判断できるものとする。 翌期の一時差異等加減算前課税所得の見積額に基づいて、翌期の一時差異等のスケジューリングの結果、繰延税金資産を見積る場合、当該繰延税金資産は回収可能性があるものとする。

 

(4-2) 分類4(例外orただし書き)

  66号 公開草案
要件

重要な税務上の繰越欠損金や過去の経常的な利益水準を大きく上回る将来減算一時差異が、例えば、事業のリストラクチャリングや法令等の改正などによる非経常的な特別の原因により発生したものであり、それを除けば課税所得を毎期計上している会社

重要な税務上の欠損金が生じた原因、中長期計画、過去における中長期計画の達成状況、過去(3 年)及び当期の課税所得又は税務上の欠損金の推移等を勘案して、将来の一時差異等加減算前課税所得を見積る場合で以下に該当する場合

(1)将来において5 年超にわたり一時差異等加減算前課税所得が安定的に生じることが合理的に説明できるとき

(2) 将来においておおむね3 年から5 年程度は一時差異等加減算前課税所得が生じることが合理的に説明できるとき

繰延税金資産計上額 分類3と同様に取り扱う。 (1) 分類2と同様に取り扱う。
(2) 分類3と同様に取り扱う。

大きな変更点としては、以下の2点が挙げられます。

  • 原則的な取り扱いにおける要件の変更
  • 例外的な取り扱い(66号におけるただし書き)の繰延税金資産の回収可能性について66号では5年超のスケジューリングについて認められていませんでしたが、公開草案においては一定の場合認められることが明記されています。

 

(5)分類5

  66号 公開草案
要件

過去(おおむね3年以上)連続して重要な税務上の欠損金を計上している会社で、かつ、当期も重要な税務上の欠損金の計上が見込まれる会社の場合

次の要件をいずれも満たす企業は、分類5に該当する。

(1) 過去(3 年)及び当期のすべての事業年度において、重要な税務上の欠損金が生じている。

(2) 翌期においても重要な税務上の欠損金が生じることが見込まれる。

繰延税金資産計上額 原則として、将来減算一時差異及び税務上の繰越欠損金等に係る繰延税金資産の回収可能性はないものと判断する。 原則として、繰延税金資産の回収可能性はないものとする。

 

要件、計上額共に特に見直された点はありません。

 

(6)いずれの要件も満たさない場合の取り扱い

分類1~分類5の要件のいずれも満たさない企業については、各分類の要件からの乖離度合いが最も小さいと判断されるものに分類することとなりました。

 

[2]適用時期

原則 平成28 年4 月1 日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首
早期適用 平成28 年3 月31 日以後終了する連結会計年度及び事業年度の年度末に係る連結財務諸表及び個別財務諸表から適用することができる。
 
参考文献
企業会計基準適用指針公開草案第54号「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針(案)」
 
執筆者:公認会計士 石川 裕也
 

 

監査役等とのコミュニケーションの改正

1.はじめに

日本公認会計士協会は、監査人の実務上の指針である監査基準委員会報告書260「監査役等とのコミュニケーション」について、検討を行い、平成27年5月29日付で改正版を公表しました。

2.内容

[1] 改正の4つのポイント

(1) 改正会社法への対応(第9項及びA2項ほか)

平成26年6月に公布された会社法への対応が図られました。

1) コミュニケーションを行うべき「統治責任者」の定義に監査等委員会を追加

監査等委員会とは、社外取締役の機能を活用するための方策として、新たに機関設計を認められたものです。本報告にある「統治責任者」とは、企業の戦略的方向性と説明責任を果たしているかどうかを監視する責任を有する者又は組織をいい、監査人は、企業統治の構造に応じてコミュニケーションを行うことが適切な統治責任者を判断しなければなりません。

2) 社外取締役その他の非業務執行取締役とも必要に応じてコミュニケーションを行うことが有用な場合がある旨の追加

コーポレートガバナンス・コード(実効的なコーポレートガバナンスの実現に資する主要な原則を取りまとめたもの)を考慮しています。

 

(2) 独立性に関する指針への対応(第15項及びA21-2項)

独立性に関して監査役等とコミュニケーションを行わなければならない旨の全般的な記載を要求事項に追加し、また、独立性に関する指針では、例えば以下に該当する場合に監査役等とコミュニケーションを行うことを求めているとして、適用指針に具体例として追加しています。

イ. 合併や企業買収時にその効力発生日までに利害関係を解消できない場合

ロ. 監査人の独立性に関する違反が生じた場合

ハ. 特定の大会社等に対する報酬依存度が一定の割合を占める場合

 

(3) 監査事務所の品質管理のシステムの整備・運用状況に関する監査人の伝達義務の明確化

1) 要求事項(第15-2項)

公認会計士法上の大会社等、会計監査人設置会社、信用金庫・信用協同組合・労働金庫の監査を対象とした場合には、監査事務所の品質管理のシステムの整備・運用状況を「書面」で伝達しなければなりません。これには、監査事務所の品質管理のシステムの外部のレビュー又は検査の結果が含まれます。

 

2) 適用指針

a.伝達の内容は第21項に基づき文書化が求められます(A22-2項)

口頭でコミュニケーションを行った場合、監査人は、いつ、誰と、どのような内容についてコミュニケーションを行ったかを記載した監査調書を作成しなければならず、書面でコミュニケーションを行った場合、監査人は、その写しを監査調書として保存しなければなりません。法令により、会計監査人に監査役等に対して監査人の職務の遂行に関する事項の通知義務が定められている場合が含まれます。

b. 品質管理レビュー又は公認会計士・監査審査会の検査の結果の伝達のタイミング及び伝達内容を記載(A22-3項)

監査契約の新規締結又は更新に際して、直近の状況に基づき以下の事項を伝達し、監査期間中にレビュー又は検査の結果を受領した場合には、個々の状況に応じて適宜伝達することが適切であるとしています。

 

日本公認会計士協会の品質管理レビュー

① 対象となるレビュー報告書等

ア. 直近の品質管理レビュー報告書及び改善勧告書の日付(過去に受領していない場合はその旨)

イ. フォローアップ・レビュー報告書の日付(ア.に関連して実施された場合は、ア.と併記する)

② ①のレビュー報告書等の内容及び対応状況

ア. 品質管理レビューの結論(限定事項付き結論又は否定的結論の場合にはその理由を含む)及びその結果に基づく措置

イ. フォローアップ・レビューの実施結果(改善勧告書に記載された事項の改善状況を含む)及びその結果に基づく措置

ウ. 監査事務所における品質管理に関する限定事項及び改善勧告事項の有無、当該事項があった場合は、その内容の要約及び監査事務所の対応状況

エ. 品質管理レビューの対象業務として選定されたかどうかの事実

オ. 選定された場合は、当該監査業務における品質管理に関する限定事項及び改善勧告事項の有無、当該事項があったときは、その内容の要約及び対応状況

公認会計士・監査審査会の検査

① 対象となる検査結果通知書

直近の検査結果通知書の日付(過去に受領していない場合にはその旨)

② ①の通知書の内容及び対応状況

ア. 監査事務所の品質管理のシステムの整備・運用等に関する指摘の有無及びその概要並びに監査事務所の対応状況

イ. 検査の対象業務として選定されたかどうかの事実

ウ. 選定された場合は、当該監査業務における品質管理に関する指摘の有無、指摘があったときは、その内容及び対応状況

 

(4) 監査役等とのコミュニケーション項目の明瞭化(第13項及びA11-2項ほか)

a. 計画した監査の範囲とその実施時期の概要に関するコミュニケーションにおいて、「特別な検討を必要とするリスク」を追加

b. その他適用指針の明瞭化

 

[2] 適用について

平成27年4月1日以後開始する事業年度に係る監査及び同日以後開始する中間会計期間に係る中間監査から適用します。

第15-2項は、平成27年5月29日以後行われる監査役等とのコミュニケーションから適用するものとし、外部のレビュー又は検査の結果については、平成27年5月29日以後受領した品質管理レビューの報告書又は検査結果通知書を対象として伝達します。ただし、品質管理レビューについては、平成27年5月29日までに受領したレビュー報告書に記載されている限定事項及び改善勧告事項で、平成27年5月29日時点で、フォローアップ・レビューによる改善状況の確認が未了の事項を伝達対象とします。

3. その他

監査基準委員会報告書260の改正に伴い、品質管理基準委員会報告書及び監査基準委員会報告書等について修正が行われ、また、これらには、本報告書で要求される事項に追加して、監査役等とコミュニケーションを行うことが要求される事項が記載されているため(付録1参照)、併せて参照する必要があります。

 
執筆者:公認会計士 町出 知則
 

連載記事

 
 

ActiveDataによる不正監査手続はお休みさせて戴きます。

 

 

シリーズIFRSの会計処理と開示例第5回 IAS第36号「資産の減損」(前編)

1.はじめに

今回は、次回と2回に分け、IAS第36号「資産の減損」の、主な論点及び開示例について紹介します。なお、基準の説明については、ニュースレターVol.21のIFRS(国際財務報告基準)第20回 IAS第36号「資産の減損」をご確認ください。

2.減損テスト

IAS第36号では、報告期間末日現在で資産に減損の兆候がある場合、またはのれんについては年1回減損テストを実施することが求められています。ここで、減損テストとは、個別資産又は資金生成単位グループの回収可能価額を算定し、帳簿価額と比較する手続をいいます。

【1】資金生成単位の識別

 IAS第36号では、減損の兆候がある場合には、まず個別資産について回収可能価額を見積もらなけらばならないとしており、不可能な場合には、当該資産が属する資金生成単位の回収可能性を算定しなければならないとしています。

次の場合には、個別資産の回収可能価額は算定することができないとしています。

(1) 当該資産の使用価値が、その処分費用控除後の公正価値に近いものと見積もることができない場合

(2) 当該資産が、他の資産からのキャッシュ・フローからおおむね独立したキャッシュ・イン・フローを発生させない場合

なお、資金生成単位は、変更が正当化されない限り、同一の資産又は資産の種類に対して、各期間にわたり継続的に識別しなければなりません。

例:鉱業を営む企業が、鉱物や従業員の輸送のために私設鉄道を所有しており、鉱山の他の資産からのキャッシュ・インフローから概ね独立したキャッシュ・インフローを生成しない場合、私設鉄道の使用価値を決定できず、回収可能価額を見積もることが不可能である。したがって、企業は、私設鉄道が属する資金生成単位である鉱山全体の回収可能価額を見積もる。

 

【2】回収可能価額の算定

回収可能価額は、資産または資金生成単位の売却費用控除後の公正価値と使用価値のいずれか高い金額をいいます。売却費用については、法的費用、印紙税及び類似の取引税、資産の除去費用並びに資産を売却可能状態にするための直接増分費用が挙げられています。

回収可能価額を算定する際に考慮する事項は以下の通りです。

(1) 売却費用控除後の公正価値と使用価値の双方を算定することは、常に必要とは限らず、どちらか1つでも帳簿価額を超過する場合には、もう一方の金額を見積もる必要はない。

(2) 測定日現在で、市場参加者間の秩序ある取引において資産を売却するために受け取るであろう価格又は負債を移転するために支払うであろう価格の信頼し得る見積りを得る基礎がないため、売却費用控除後の公正価値を測定することが困難な場合には、使用価値を用いることができる。

(3) 資産の使用価値が処分費用控除後の公正価値を著しく超過していると考えられる理由がない場合には、処分費用控除後の公正価値が回収可能価額として用いられる。これには、処分や売却を予定している資産が該当します。

 

【3】使用価値

資産又は資金生成単位の使用価値を算定する場合には、次の事項を考慮します。(2)・(4)・(5)については、将来キャ  ッシュ・フローの修正として反映することも、割引率の修正として反映することもできます。

(1) 企業が資産から得られるものと期待する将来キャッシュ・フローの見積り

(2) 将来キャッシュ・フローの金額又は時期について、起こり得る変動についての期待

(3) 貨幣の時間価値

(4) 資産固有の不確実性の負担に対する価格

(5) 企業が資産から得られると期待する将来キャッシュ・フローの価格付けに際して、市場参加者が反映させるであろうその他の要因

また、企業は使用価値の測定の際に、次の事項を考慮します。

(1) キャッシュ・フローの予測は、当該資産の残存耐用年数にわたり存在するであろう一連の経済的状況に関する経営者の最善の見積りを反映する、合理的で裏づけ可能な過程を基礎としなければなりません。また、外部の証拠により大きな重点を置く必要があります。

(2) キャッシュ・フローの予測は、経営者が承認した直近の財務予算・予測を基礎としなければならず、将来のリストラクチャリング又は資産の機能を改善又は拡張することから生じるキャッシュ・インフロー又はキャッシュ・アウトフローの見積りは除外しなければなりません。また、予算・予測を基礎とした予測は、より長い期間を正当化できる場合を除き、最長でも5年間でなければなりません。

(3) 直近の予算・予測の期間を超えたキャッシュ・フロー予測は、逓増率が正当化できる場合を除き、一定あるいは逓減する成長率を使用した予算・予測に基づくキャッシュ・フロー予測を推測して延長することにより、見積もらなければなりません。

設例:以下の条件における処分費用控除後の公正価値を求めなさい。
①公正価値:10,000,000円
②印紙税:300,000円
③資産の除去費用:800,000円
④処分後の再編成に関連する解雇給付:1,000,000円
解答:10,000,000円-(300,000円+800,000円)=8,900,000円
IAS第36号では、資産処分後の事業の縮小及び再編成に関連する解雇給付及び費用は売却費用に含まれないとされています。
 
参考文献

IAS第36号「資産の減損」

詳細解説IFRS実務適用ガイドブック 中央経済社 あずさ監査法人

 
執筆者:公認会計士 関 和輝
 

 

中小企業お役立ち情報21 知的財産支援

1.はじめに

我が国の中小企業は優れたモノづくり技術やコンテンツ等の知的財産を有し、世界から高い評価を得ています。しかし我が国の中小企業の知的財産に関する実態調査によれば、知的財産の出願経験は7割を超えるものの、知的財産の経営への活用は6割程度にとどまっています。また知的財産に関する社内体制を厳密に管理できている企業は2割程度に過ぎないという実態がありその結果、約4分の1の中小企業が技術・営業情報の流出被害を経験しており、約3割が模倣品被害を経験しています。

以上の事から中小企業の知的財産の戦略的活用を促進するため、モノづくりやブランド事業等の先進事業の紹介等の取り組み、営業秘密に関する社内管理体制の整備、また模倣品等の対応の強化を図っていく必要があります。

そこで今回は中小企業の知的財産に関する以下の5つの支援策をご紹介いたします。

2.国内出願支援(例:産業財産権取得支援事業(千代田区))

産業財産権(特許権、実用新案権、意匠権、商標権)の取得に係る経費の一部を補助します。

① 対象及び条件
中小企業基本法に定める中小企業者のうち、次のいずれにも該当する方が対象となります。

  • 法人で区内に本社を有し、法人事業税及び法人都民税を滞納していない又は個人事業主で区内に住所を有し、個人事業税及び特別区民税、都民税を滞納していない。
  • 区内で引き続き一年以上事業を営んでいる。
  • 会社法に定める子会社ではない 等

② 助成内容
助成率 1/2 (助成限度額20万円)
助成対象経費・・・出願料、審査請求料、技術評価請求料、特許料、登録料、図面作成費、弁理士・弁護士費用

3.外国出願支援 (例:外国特許、実用新案、意匠、商標、出願費用助成事業(東京都))

海外において広く活躍しようとする中小企業の方に対し、特許、実用新案、意匠、商標等の外国出願の費用の一部を助成します。

① 対象及び条件
東京都内の中小企業者(会社及び個人事業者)、中小企業団体、一般社団・財団法人が対象となります。

② 助成内容
助成率 1/2以内(助成限度額 特許300万円 実用新案・意匠・商標60万円)
助成対象経費・・・外国出願料、弁理士費用、翻訳料、先行技術調査費用、国際調査手数料、国際予備審査手数料 等

4.特許料等の減免制度(例:特許料等の減免制度(特許庁))

個人・法人、研究開発型中小企業及び大学等を対象に、審査請求料と特許料(第1年分から第10年分)及び国際出願に係る調査手数料等の納付について、一定の要件を満たした場合、減免措置が受けられます。特に、中小ベンチャー企業・小規模企業等については平成26年4月以降、軽減率が1/2から2/3(負担額が1/3)に拡充されました。

① 対象及び条件

a. 小規模の個人事業主(従業員20人以下(商業又はサービス業は5人以下))

b. 事業開始後10年未満の個人事業主

c. 小規模企業(法人)(従業員20人以下(商業又はサービス業は5人以下))

d. 設立後10年未満で資本金3億円以下の法人

※ c及びdについては、大企業の子会社など支配法人のいる場合は除く

② 助成内容
審査請求料、特許料(第1年分から第10年分)調査手数料・送付手数料、予備審査手数料を1/3に軽減します。

5.模倣品対策(例:外国侵害調査費用助成事業(東京都))

外国における自社製品の模倣品・権利侵害について、事実確認調査、侵害品の鑑定、侵害先への警告灯の対策や外国で製造された模倣品の国内への輸出を阻止するための対策を行う中小企業の方に対し、それらに要する費用の一部を助成します。

① 対象及び条件
東京都内の中小企業者(会社及び個人事業者)、中小企業団体、一般社団・財団法人

② 助成内容

  • 助成率1/2以内(助成限度額200万円)
  • 助成対象経費・・・侵害調査費用、侵害品の鑑定費用、侵害先への警告費用、税関での輸入差止費用

6.営業秘密管理(例:営業秘密管理指針/技術流出防止指針(経済産業省))

企業が競争力を維持するためには、価値ある情報を守り、戦略的に活用することが重要であることから、営業秘密として不正競争防止法の保護を受けるための情報管理の方法について解説しています。実践的に使いやすいよう、中小企業等の参考となるチェックシート、各種契約書の参考例等を掲載しています。

7.おわりに

これらの知的財産関連支援策については中小企業等において利用ニーズは存在するものの、特許権等の減免制度については適用要件が厳しい事や、各種手続きが煩雑である為、実際の支援策の利用は少ないという実態があります。今後は適用要件の緩和、各種手続きの簡素化等より支援策を利用しやすい制度設計の努力が必要であると考えます。

 

出典・参考文献

東京商工会議所「中小企業の知的財産に関する調査報告書」

東京商工会議所「知的財産関連施策の紹介」

 
執筆者:園山 隆幸
 


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  明誠ニュースレター vol.57
2015年9月3日発行
発行責任者:武田剛
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