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発表日時 表題
平成27年12月9日 日本公認会計士協会はIT委員会研究報告「ITを利用した監査の展望~未来の監査へのアプローチ~」の公開草案について公表しました。
平成27年12月10日 企業会計基準委員会は企業会計基準適用指針公開草案第55号「税効果会計に適用する税率に関する適用指針(案)」について公表しました。
平成27年12月14日 日本公認会計士協会は「業種別委員会実務指針第14号「投資信託及び投資法人における監査上の取扱い」の改正について」の公開草案について公表しました。
平成27年12月22日 日本公認会計士協会は専門業務実務指針4400「合意された手続業務に関する実務指針」の公開草案について公表しました。
平成27年12月25日 日本公認会計士協会は「業種別委員会実務指針「年金基金に対する監査に関する実務指針」」の公開草案及び「業種別委員会研究報告第10号「年金基金に対する監査に関する研究報告」の改正について」の公開草案ついて公表しました。
平成27年12月28日 企業会計基準委員会は企業会計基準適用指針第26号「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」について公表しました。
平成27年12月28日 日本公認会計士協会は学校法人委員会研究報告第32号「施設型給付費を受ける幼稚園のみを設置する学校法人等の会計及び監査に関する研究報告」について公表しました。

トピック解説

 
 

ITを利用した監査の展望~未来の監査へのアプローチ~

1.はじめに

日本公認会計士協会は、2015年12月9日に、IT委員会研究報告「ITを利用した監査の展望~未来の監査へのアプローチ~」の公開草案(以後草案)を公表しました。これは、よりIT化が進んだ未来における会計監査のあり方を提言するものです。

昨今のITの進歩により、監査手続はサンプリングによる伝統的な試査だけでなく、CAAT(Computer Assisted Audit Techniques)による精査も利用されるようになりました。そして企業活動の記録のさらなるIT化が進む現在、監査手続もより一層のIT化が進むものと考えられます。この公開草案では、CA(Continuous Auditing)という手法を紹介しつつ、想像される未来の監査手続と、実現のための課題について議論が行われています。

2.現状の監査の課題と未来への期待

[1]精査から試査、そして精査へ

・表1 近年の監査潮流 (草案II.1.より引用)

  枠組み 目的 方法
19世紀後半 株主の保護 不正及び誤謬の発見 精細監査
20世紀初頭 経営者からの依頼 財務諸表の適正性 一部試査
1930年~ 一般投資家の保護 財務諸表の適正性 試査
1980年~ 一般投資家の保護
株主の保護
財務諸表の適正性
不正及び誤謬の発見
試査
未来 一般投資家の保護
株主の保護
財務諸表の適正性
不正及び誤謬の発見
試査及び
精査的な手法

 

統計学に基づくサンプリングにより行われることで、試査は限られた監査資源の中で監査リスクへの対応を行うことができます。しかしサンプルから漏れたデータの中に潜む不正や誤謬を発見することはできないという欠点も持っていました。精査はこの欠点を補うものですが、膨大な監査資源を必要とするため、広範囲に実施することは不可能です。しかしながら大量のデータを短時間で処理できるというITの特長を利用し、CAATでは精査的な手法で監査をすることが可能となりました。

 

[2]過去の監査からリアルタイム監査へ

・表2 ITの利用度と監査手法 (草案III.1.より引用)

 
企業のIT利用 なし   限定的   かなり利用   全てITで処理
企業が持つ
データ量
少ない   多い   かなり多い   非常に多い
                 
手続面での要素
監査対象
実施タイミング
処理後
随時
 
処理後
随時
 
処理後
随時
 
処理中
リアルタイム
                 
   
原始的監査
 
伝統的監査
 
リスク・アプローチ及び内部統制監査の追加
 
未来の監査
                 
報告面での要素
監査報告の
間隔
年次
 
四半期
又は年次
 
四半期又は年次
 
日次でも
可能
 
監査目的
不正発見
 
投資
有用性
 
投資有用性及び不正発見
 
投資有用性
及び不正発見
 
監査手続の
中心
精査
 

試査

 

試査

 

精査的・
統計的

 

精査的な監査を可能とするCAATですが、従来型の監査手続の一環として行われるため、対象となるデータはあくまで過去の情報です。そのため情報のスピードを重視する場面では、対象となる情報を保証する監査意見が提供されず、信頼性が不十分なままの情報をもとに判断しなければいけない恐れがあります。この欠点を補うために生み出された概念がCAです。

3.CAとは

[1]仕組

CAとは、被監査会社のシステムにデータ分析機能を付加し、リアルタイムでデータ監視を行うものです。データ分析機能は監査人が管理するサーバ上に置かれる(MCL: Monitoring Control Layer)こともあれば、被監査会社のシステム内に置かれる(EAM: Embedded Audit Module)場合もあります。データ分析により一定の条件に該当した取引、仕訳等は監査人に通知され、監査人がこれを確かめることで、不正の有無等を検証します。

 

[2]想像されるシナリオ (草案IVより)

ここでは、(1)閾値を超える返品データがある(2)入力担当者と承認者が同一である(3)売上、仕入を日次で累計して仕訳処理している場合において、各取引の累計額と仕訳額が異なる(4)売上データが受注データ、出荷データ、得意先検収データと連動している場合、受注番号をキーに検索しても他のデータが抽出できない(5)取引データ上の顧客が顧客マスタ上にない(6)売上取消や値引が閾値以上である(7)売掛金の改修予定日が変更される(8)訪問実績が乏しい会社へ閾値以上の売上が計上される(9)閾値以上の金額の発注データについて、これの受領日と同日付の出荷データが入力される(10)計上された売上高が、時間帯、曜日、季節、イベント等と通話時間、データ通信料の相関から推定される売上高の範囲を超える(11)情報量の少ない製品に係る取引がある(12)物品販売売上高、飲食売上高が、来場者数から推定される売上高を超える、といった内容が例示されています。

草案の中にはこれ以外にもいくつかの監査シナリオの可能性が提案されていますが、重要なのは、監査目的に見合う監査シナリオ、そして閾値を設定することです。被監査会社を取り巻く様々な状況を正確に勘案しないと、異常値を見逃したり、正常データが大量のアラートとして報告されたりする結果となる可能性があります。

 

[3]CA導入のための条件

ここでは、(1)監査の主題が適切な特性を有していること(2)監査の主題を提供するシステムが信頼できること(3)監査証拠が高度に自動化された監査手続から提供されること(4)タイムリーに監査手続の結果を得るための信頼できる手段があること(5)監査報告書の適時の可用性と、監査報告書に対する統制があること、の5つの条件が列挙されています。

監査シナリオが適切でなければ、分析結果は監査上の意味を持たなくなります。システムが信頼できないと、入手したデータは信頼できなくなります。またデータの入手、分析や監査報告に時間がかかると、せっかくの長所であるリアルタイム性を失うことになりかねません。

 

[4]CA導入の利点

監査人側の利点として、(1)問題点をリアルタイムに発見できることにより、開示期限までに余裕をもって問題の解決ができる可能性がある(2)リアルタイムのデータ分析により、従来の監査手続を削減できる可能性がある(3)収益の増大または費用の削減につながるデータ分析結果を被監査会社に提供できる可能性がある、という点が挙げられています。

監査人側の利点と書かれていますが、監査の負担が減り有用な情報が得られることは被監査会社の利点でもありますので、これらが実現されるとCAの導入が積極的に進められるようになると考えられます。

 

[5]CA導入の課題

一方、CA導入にも課題があります。草案では(1)CAがコストのかかる業務である(2)第三者が包括的かつ継続的なデータアクセスをすることに被監査会社が消極的である、という現状があるとしています。また、(3)新しい分析シナリオが必要である(4)複雑なシステム基盤への考慮事項が多い(5)データが標準化されていない、といった技術的な困難のほかに、(6)監査基準におけるCAの位置づけがはっきりせず、従来からの監査手続の削減を計画しにくい(7)異常値が出た瞬間に被監査会社と監査人で検出データについて検討するような環境では、監査人が財務情報作成プロセスに関与しているとみなされるかもしれない、といった監査の枠組み上の問題も指摘されています。これに対してはCAでできること、できないことを実務指針で明確にすること、CAはまず内部監査部門で実施することが、草案中で提案されています。

4.筆者見解

ここまでCAという概念を見てきましたが、ITの分野ではすでに実施されてきていることであるように筆者には思われます。メモリ使用量、HDDのI/O、CPU温度といった各種ステータスを自動監視し、閾値を超えた場合にアラートを出す機能は、一定規模以上のシステムでは必須といえる設備です。また機械制御の分野では、動作特性のリアルタイム監視により装置の稼働率や製品品質の向上を目指す動きがすでにあります。これを会計監査に応用したのがCAであると考えると、CAはすでに実現可能な技術であると筆者は考えています。監査体系の中でCAの位置づけが確立し、監査シナリオが研究され、社会的要請が増大すれば、草案で語られる未来はそれほど遠くないものなのかもしれません。

 
執筆者:公認情報システム監査人 月見 典史
 

 

平成28年度税制改正大綱の解説

1.はじめに

平成27年12月16日に平成28年度税制改正大綱が公表されました。今回のニュースレターでは当税制改正大綱のうち法人に関わりのある法人税・地方税・消費税に係る改正の主だったものについて解説致します。

2.法人税

(1) 法人税率の改正

法人税率について以下の様に段階的に引き下げる見直しがなされています。

事業年度開始日 改正案の税率
現行(平成28年3月31日まで) 23.9%
平成28年4月1日以後 23.4%
平成30年4月1日以後 23.2%

 

(2) 欠損金の取り扱いの改正

欠損金の控除限度割合や繰越期間に以下のような見直しがなされています。

平成27年度税制改正後 改正案
事業年度開始日 控除限度割合 欠損金繰越期間 事業年度開始日 控除限度割合 欠損金繰越期間
平成27年4月~
平成29年3月
100分の65 9年 平成27年4月~
平成28年3月
100分の65 9年
平成28年4月~
平成29年3月
100分の60
平成29年4月~ 100分の50 10年 平成29年4月~
平成30年3月
100分の55
平成30年4月~ 100分の50 10年

中小法人等の特例については改正されておらず、これまで通り所得金額全額を控除することが出来ます。

 

(3) 減価償却制度の見直し

以下の減価償却資産について定率法が選択できなくなりました。

資産の区分 現行の償却方法 改正案の償却方法
建物付属設備及び構築物(鉱業用のこれらの資産を除く。) 定額法、定率法 定額法
鉱業用減価償却資産(建物、建物付属設備及び構築物に限る。) 定額法、定率法、生産高比例法 定額法、生産高比例法

 

(4) 少額減価償却資産の特例に係る対象法人の変更

中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例の対象法人の範囲が以下の様に狭まりました。また当該租税特別措置の適用期限を2年延長することとなりました。

  現行 改正案
対象法人 中小企業者等 中小企業者等(常時使用する従業員の数が1,000人を超える法人を除外する)

 

(5) 役員給与の見直し

①事前確定届出給与

役員から受ける将来の役務の提供の対価として交付する一定の譲渡制限付株式による給与についての事前確定の届出が不要となりました。

②利益連動給与

算定指標の範囲にROE(自己資本利益率)その他の利益に関連する一定の指標が含まれることを明確化されることになりました。

3.地方税

(1) 税率の改正等

①法人事業税

資本金の額又は出資金の額が1億円超の普通法人の法人事業税の標準税率は以下の様になります。

  現行 改正案
平成28年3月31日までに開始する事業年度 平成28年4月1日以後に開始する事業年度
付加価値割 0.72% 1.2%
資本割 0.3% 0.5%


年400万円以下の所得 3.1%
(1.6%)
1.9%
(0.3%)
年400万円超800万円以下の所得 4.6%
(2.3%)
2.7%
(0.5%)
年800万円超の所得 6.0%
(3.1%)
3.6%
(0.7%)

(注)所得割の税率下段のカッコ内の率は地方法人特別税等に関する暫定措置適用後の税率である。

 

②地方法人特別税

資本金の額又は出資金の額が1億円超の普通法人の地方法人特別税の税率が以下の様に変更され、その後平成29年度において当該税金は廃止されます。

  現行 改正案
  平成28年3月31日までに開始する事業年度 平成28年4月1日以後に開始する事業年度 平成29年4月1日以後に開始する事業年度
税率 93.5% 414.2% 廃止

 

③住民税法人税割・地方法人税

平成29年4月1日以後に開始する事業年度から以下の税率とすることになりました。

  現行 改正案
標準税率 制限税率 標準税率 制限税率
道府県民税法人税割 3.2% 4.2% 1.0% 2.0%
市町村民税法人税割 9.7% 12.1% 6.0% 8.4%
地方法人税 4.4% 10.3%
合計 17.3% 20.7% 17.3% 20.7%

 

(2) 法人事業税の税率の改正に伴う負担変動の軽減措置の改正

法人事業税の税率改正に伴う負担変動軽減措置として、下記表の金額を当該事業年度に係る事業税額から控除することができることになりました。

  事業年度開始日
  平成28年4月~平成29年3月 平成29年4月~平成30年3月 平成30年4月~
付加価値割額が30億円以下 (改正案の税額-現行の税額)×3/4 (改正案の税額-現行の税額)×1/2 (改正案の税額-現行の税額)×1/4
付加価値割額が30億円超40億円未満 (改正案の税額-現行の税額)×「0~3/4の間の割合」 (改正案の税額-現行の税額)×「0~1/2の間の割合」 (改正案の税額-現行の税額)×「0~1/4の間の割合」

4.法人税・地方税に係る改正

(1) 雇用促進税制の改正

雇用促進税制については対象となる事業所や雇用者の対象が制限されました。また所得拡大促進税制との併用が可能となりました。また当該租税特別措置の適用期限を2年延長することとなりました。

  現行 改正後
対象事務所 特に指定なし 同意雇用開発促進地域内にある事務所
対象となる増加雇用者増加数 無期雇用かつフルタイムの雇用者の増加数
(新規雇用に限り、その事業所の増加雇用者数及び法人全体の増加雇用者数を上限とする)
所得拡大促進税制との併用 不可 可(注1)

(注1)雇用促進税制を所得拡大促進税制と重複して適用する場合には、計算の基礎数値から一定額を控除することになります。

 

(2) 地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)の創設

地方創生を推進する上で効果の高い地方公共団体の行う一定の事業に対し法人が寄付を行った場合、法人税、住民税、事業税について税額控除を受けることが出来ます。

①対象となる寄付金

対象法人 青色申告書提出法人
対象期間 地域再生法の改正法の施行日から平成32年3月31日まで
対象となる寄付金 地域再生法の認定地域再生計画に記載された同法の地域創生促進寄付活用事業(仮称)に関連する寄付金

 

②控除限度額

【法人税】

  法人税
控除額 以下のa及びbのうち少ない金額
a対象となる寄付金額×20%-当該制度により法人住民税から控除した金額
b対象となる寄付金額×10%
限度額 法人税額の5%

【地方税】

  法人事業税 法人道府県民税法人税割 法人市町村民税法人税割
平成29年3月31日まで 控除額 対象となる寄付金額×10% 対象となる寄付金額×5% 対象となる寄付金額×15%
限度額 法人事業税の20% 法人道府県民税法人税割の20% 法人市町村民税法人税割の20%
平成29年4月1日~ 控除額 対象となる寄付金額×10% 対象となる寄付金額×2.9% 対象となる寄付金額×17.1%
限度額 法人事業税額の15% 法人道府県民税法人税割額の20% 法人市町村民税法人税割額の20%

5.消費税

(1)軽減税率制度

消費税率(国・地方)が10%に上がる平成29年4月1日より、軽減税率制度が導入されることになりました。軽減税率の対象となる課税資産の譲渡等を行った際は消費税率(国・地方)が8%となります。軽減税率の対象となる課税資産は以下の通りです。

①飲食料品の譲渡(食品表示法に規定する食品(酒税法に規定する酒類を除く)の譲渡をいい、外食サービスを除く。)

②定期購読契約が締結された週2回以上発行される新聞の譲渡

(2)適格請求書等保存方式(以下、インボイス制度)

軽減税率制度導入に併せて、複数税率制度に対応した仕入税額控除の方式としてインボイス方式を平成33年4月1日より導入することとしています。インボイス方式では仕入税額控除の要件として適格請求書を適格請求書発行事業者から交付を受けて保存することが求められています。適格請求書とは適格請求書発行事業者の登録番号、摘要税率、消費税額等の一定の事項が記載された請求書、納品書等の書類を言い、適格請求書発行事業者とは免税事業者以外の事業者であって、納税地を所管する税務署長に申請書を提出し適格請求書を交付することのできる事業者として登録を受けた事業者のことを言います。

なお上述の通り免税事業者は適格請求書発行事業者になることが出来ませんので、これまで仕入税額控除の適用が出来た免税事業者からの課税仕入れについて、将来仕入税額控除の適用が出来なくなりますので注意が必要です。

(3)適格請求書発行事業者登録制度の創設

適格請求書発行事業者登録制度が創設され、平成31年4月1日よりその申請を受けることができるようになります。

(4)インボイス制度導入までの経過措置

①インボイス制度が導入されるまでの間における仕入税額控除制度については現行の請求書等保存方式を維持することとなっています。ただし、課税仕入れが軽減税率対象品目に係るものである場合には、請求書等に記載されるべき事項として「軽減対象課税資産の譲渡等ある旨」及び「税率の異なるごとに合計した対価の額」を加えることとなっています。なお、これらの事項については当該請求書等の交付を受けた事業者が事実に基づき追記することを認める予定となっています。

②売上又は仕入を税率の異なるごとに区分することが困難な事業者に対して売上税額又は仕入税額を簡便に計算することを予定しています。

 

出展・参考文献

平成28年度税制改正大綱

 
執筆者:公認会計士 石川裕也
 

連載記事

 
 

ActiveDataによる不正監査手続はお休みさせて戴きます。

 

 

シリーズIFRSの会計処理と開示例第9回 IAS第24号「関連当事者についての開示」

1.はじめに

今回は、IAS第24号「関連当事者についての開示」の、主な論点及び開示例について紹介します。なお、基準の説明については、ニュースレターVol.13のIFRS(国際財務報告基準)第12回 IAS第24号「関連当事者についての開示」をご確認ください。

2.関連当事者の範囲

 関連当事者の範囲については、IFRS(国際財務報告基準)第12回 IAS第24号「関連当事者についての開示」に記載しておりますが、IAS第24号では、以下の状況にある当事者間は、関連当事者にならないとしております。

 

【1】2つの企業が単に共通の経営幹部を有している、又は一方の企業の経営幹部が他の企業に重要な影響力を有しているのみである場合

【2】2つの共同支配投資企業が1つの共同支配企業に対する共通支配を共有しているのみの場合

【3】金融機関、労働組合、公共事業体又は政府の部門及び機関が、単に当該企業と通常の取引を行っているのみである場合

【4】企業が、単一の得意先、仕入先、フランチャイズ実施権付与者、卸売業者又は総代理店と多額の取引を行った結果、単純に経済的依存度が高まったのみである場合

3.開示

IAS第24号における開示事項は以下の通りです。

【1】親会社に関する情報

次に該当する親会社の名称を、親子会社間で取引があったかどうかにかかわらず、開示しなければなりません。

(1) 直接の親会社

(2) 親会社が最終的な支配当事者と異なる場合には、最終的な支配当事者名称

(3) 上記の2社いずれも公表用連結財務諸表を作成していない場合には、連結財務諸表を作成する次順位の親会社の名称

 

【2】経営幹部の報酬

企業は経営幹部の報酬総額及び次の項目について開示しなければなりません。

(1) 短期従業員給付

(2) 退職後給付

(3) その他の長期給付

(4) 解雇給付

(5) 株式報酬

 

【3】関連当事者取引と未決済残高の開示

企業が関連当事者取引を行っていた場合には、少なくとも次の項目を開示しなければなりません。なお、関連当事者取引とは、報告企業と関連当事者との間の資源、役務又は債務の移転をいい、対価のないものも含みます。取引の例としては、物品の購入や売却、リース、保証又は担保の提供等が挙げられています。

(1) 関連当事者との関係の内容

(2) 取引の金額

(3) 未決済残高(担保の有無等の契約条件、対価の内容、保証の詳細)

(4) 未決済残高に対する貸倒引当金

(5) 関連当事者への不良債権について期中に認識した費用

なお、上記開示については、以下の関連当事者のタイプごとに開示することが要求されています。

(1) 親会社

(2) 企業に対して共同支配又は重要な影響力を有する企業

(3) 子会社

(4) 関連会社

(5) 企業が共同支配投資者となっている共同支配企業

(6) 企業又はその親会社の経営幹部

(7) その他の関連当事者

 

開示例

連結財務諸表注記

関連当事者

(1)主要な経営幹部に対する報酬

 (単位:千円)
  前連結会計年度
(自 ×1年4月1日
至 ×2年3月31日)
当連結会計年度
(自 ×2年4月1日
至 ×3年3月31日)
固定報酬 80,000 84,000
業績連動報酬 20,000 23,000
ストック・オプション 2,300 5,000
合計 102,300 112,000

 

 (2)関連当事者との取引

当連結会計年度(自 ×2年4月1日 至 ×3年3月31日)

 (単位:千円)
種類 会社の名称 関連当事者との関係 取引金額 未決済残高
親会社 〇〇販売㈱ 当社製品の販売 100,000 24,000

4.政府関連企業に関する開示

報告企業は、次の者との関連当事者との取引及び未決済残高に関する開示事項の免除が認められています。

【1】報告企業に対する支配若しくは共同支配又は重要な影響力を有している政府

【2】同一の政府が報告企業と他の企業の両方に対する支配若しくは共同支配又は重要な影響力を有しているために関連当事者となっている当該他の企業

なお、上記の免除を適用する場合には、政府の名称、政府との関係、個別に重要な各取引の内容及び金額、合計では重要であるが個別では重要でない他の取引については、それらの程度についての定性的又は定量的な指標を開示する必要があります。

 
参考文献

IAS第24号「関連当事者についての開示」

詳細解説IFRS実務適用ガイドブック 中央経済社 あずさ監査法人

 
執筆者:公認会計士 関 和輝
 

 

中小企業お役立ち情報26 所得拡大促進税制

1.所得拡大促進税制とは

所得拡大促進税制とは、青色申告書を提出している法人(または個人事業主)が、給与等支給額を規定の割合以上増加させる等の要件を満たした場合に、雇用者給与等支給増加額の10%を法人税額(または所得税額)より税額控除(税額の10%(中小企業者等は20%)が上限)できる制度です。

この税制は平成25年4月1日から平成30年3月31日までの期間内に開始する各事業年度について利用できる制度であるため、平成27年12月末に決算を迎えた法人や個人事業主、平成28年3月末に決算を迎える法人についても利用ができます。ただし、そのためにはいくつかの要件をクリアしなければなりません。そこで、以下ご説明していきます。

2.所得拡大促進税制の適用要件について

[1]はじめに

まず、「適用年度」、「基準事業年度」、「前事業年度」の3つの事業年度について確認する必要があります。

(1)適用年度
適用年度とは、実際に税制の適用を検討している事業年度をいいます。

(2)基準事業年度
基準事業年度とは、平成25年4月1日以後に開始する各事業年度のうち最も古い事業年度の直前の事業年度をいいます。

(3)前事業年度
前事業年度とは、適用年度開始の日の前日を含む事業年度をいいます。

この制度の利用に際して事前申請は必要なく、確定申告の際に申告書に明細書を添付すれば利用できます。例えば、3月締めの企業の場合には2016年3月期から適用ができます。この場合の各事業年度は、

1)適用年度    :平成27年4月~平成28年3月

2)基準事業年度:平成24年4月~平成25年3月

3)前事業年度 :平成26年4月〜平成27年3月

となります。

 

[2]雇用者給与等支給額の増加要件について

利用要件の1つ目は「雇用者給与等支給額が基準事業年度より一定割合以上増加していること」です。

ここで、「雇用者給与等支給額」とは、適用を受けようとする事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される国内雇用者(役員及びその特殊関係者を除いた、当該法人の国内の事業所に勤務する全ての雇用者)に対する給与等の支給額を指します。

雇用者給与等支給額の増加要件として平成27年4月1日から平成28年3月31日までの間に開始する事業年度の場合は3%とされていますので、3月締めの企業が平成28年3月期から適用する場合には、平成25年3月期の雇用者給与等支給額よりも3%以上増加している必要があります。

 

[3]比較雇用者給与等支給額の要件について。

利用要件の2つ目は「適用年度の雇用者給与等支給額が前事業年度以上の額であること」です。

3月締めの企業が平成28年3月期から適用する場合には、平成27年3月期の雇用者給与等の額を上回っていることが必要になります。

 

[4]平均給与等支給額の要件について

最後の利用要件は「平均給与等支給額が、前事業年度を上回っていること」です。平均給与等支給額とは、継続雇用者に対する給与等の支給額を、当該継続雇用者の月ごとの延べ人数で割った金額のことをさします。3月締めの企業が平成28年3月期から適用するためには、平成27年3月期の平均給与等支給額を上回っていることが必要です。

この平均給与等支給額の計算には(1)継続雇用者給与等支給額(2)月別支給対象者数という二つの要素が必要ですので、以下ご説明します。

 

(1) 継続雇用者給与等支給額

まず、継続雇用者とは適用年度及びその前事業年度において給与等の支給を受けた国内雇用者のことをさします。従って、適用年度に新しく入社した者や前事業年度中に退職をした者は原則として継続雇用者には含まれません。

この継続雇用者の中で雇用保険法の一般被保険者である者に係る雇用者給与等支給額を適用年度と前事業年度について計算します。その結果求められる金額で適用年度に係るものを「継続雇用者給与等支給額」といい、前事業年度に係るものを「継続雇用者比較給与等支給額」といいます。

なお、雇用保険法の一般被保険者とは、労働者のうち65歳以上で雇用されている者や、1週間の所定労働時間が20時間未満の者を除いた者で、かつ高年齢継続被保険者、短期雇用特例被保険者及び日雇労働被保険者以外の者を指します。例えば、継続雇用者の中でも、60歳で定年退職をした後に高年齢者雇用安定法に基づく継続雇用を受けた場合、継続雇用期間に対する給与は雇用者給与等支給額の計算に含まれないことになります。その他にも様々なパターンが考えられますので、詳しくは経済産業省ホームページ「所得拡大促進税制のご活用について」をご参照ください。

(2) 月別支給対象者数

各月ごとの給与等の支給の対象となる、継続雇用者給与等支給額又は継続雇用者比較給与等支給額に係る継続雇用者の数のことをいいます。

この計算にあたって注意が必要なのは、同一の継続雇用者につき、同一月に2回以上の給与や賞与等の支給があった場合においても、その月のその継続雇用者は1人と数える点です。例えば、ある人が1年間勤務をして月別給与とは別に6月と12月に賞与を受け取った場合、月別支給対象者数は14人ではなく12人となります。

 

上記の(1)で算出した金額を(2)の人数で割ることで平均給与等支給額が求められます。

 

以上、所得拡大促進税制を利用するためには、上記[2]〜[4]の要件全て満たす必要があります。

3.おわりに

この所得拡大促進税制は従業員に対する賃上げを促すためのものであり、年々利用法人数が増加してきています。しかし、計算の煩雑さから政府の想定よりは利用者が増えていないという実情があります。現行の制度は平成26年4月1日に適用要件の緩和が行われ以前よりは利用がしやすくなっていると考えられますので、これを機にご利用を検討なさってみてはいかがでしょうか。

 

参考文献

経済産業省『所得拡大促進税制のご利用の手引き』

日本経済新聞 電子版 2015年2月18日 「政策減税、企業の依存高まる 13年度利用9%増」

 
執筆者:三宮 圭祐
 


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  明誠ニュースレター vol.62
2016年1月25日発行
発行責任者:武田剛
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