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発表日時 表題
平成28年1月15日 日本公認会計士協会は監査実施状況調査(平成26年度)について公表しました。
平成28年1月15日 日本公認会計士協会は「公会計委員会実務指針第5号「独立行政法人監査における会計監査人の独立性の保持の取扱い」の改正」の公開草案について公表しました。
平成28年1月15日 日本公認会計士協会は「「独立行政法人会計基準」及び「独立行政法人会計基準注解」に関するQ&Aの一部改訂について」の公開草案について公表しました。
平成28年1月19日 日本公認会計士協会は監査委員会報告第66号「繰延税金資産の回収可能性の判断に関する監査上の取扱い」及び監査委員会報告第70号「その他有価証券の評価差額及び固定資産の減損損失に係る税効果会計の適用における監査上の取扱い」の廃止について公表しました。
平成28年1月26日 日本公認会計士協会は保証業務実務指針2400「財務諸表のレビュー業務」及び監査基準委員会研究報告第5号「保証業務実務指針2400に係るQ&A」について公表しました。
平成28年1月26日 日本公認会計士協会は監査基準委員会報告書810「要約財務諸表に関する報告業務」及び監査基準委員会報告書(序)「監査基準委員会報告書の体系及び用語」の一部改正について公表しました。
平成28年1月27日 日本公認会計士協会は「監査提言集(特別版)「財務諸表監査における不正への対応」」について公表しました。

トピック解説

 
 

税効果会計に適用する税率に関する適用指針(案)の公表について

1.はじめに

昨年より企業会計基準委員会は、2つの税効果会計に関する適用指針について、内容の一部を改正すべく検討を行ってきました。 これらの指針は2つとも日本公認会計士協会から公表されていましたが、これらが企業会計基準委員会の所管に移されることに合わせて、改正が検討されてきたものです。

このうち1つ目は、「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」であり、これは既に平成27年12月28日に成立し公表されています(ニュースレター vol.57、「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針(案)について」を参照)。2つ目は、「税効果会計に適用する税率に関する適用指針(案)」であり、これは平成27年12月10日に公開草案が公表されました。これが正式な適用指針として成立すると、平成28年3月31日以後に終了する年度末に係る連結・個別財務諸表から適用されることになります。

今回は、この「税効果会計に摘要する税率に関する適用指針(案)」(以下、「適用指針(案)」という。)の内容について2つのポイントを解説したいと思います。

2.適用税率の「公布日」基準から「成立日」基準への変更

適用指針(案)は、税効果会計を適用する際の税率について規定しています。今回の改正で大きく変わった1つ目のポイントは、税効果会計を適用する際に、いつの時点の税率を使用するのかという点です。

現在は、繰延税金資産や繰延税金負債を計算する際の税率は、期末日現在で「公布」されている税法の税率によることとされています(個別財務諸表における税効果会計に関する実務指針、第18項)。しかし、「適用指針(案)」では、国会において「成立」した税法の税率に変更されています。いわゆる、「公布日」基準から「成立日」基準への変更となります。

この改正は、実務に配慮した改正であると考えられます。税率を変更するための改正税法が国会で成立しても、公布日が遅れるケースもあり得るからです。成立日基準になることで、税率が変わった際にどの税率を用いて計算すべきかがより明確になります。

3.改正条例が成立していない場合の取扱い

適用指針(案)での2つ目のポイントは、地方税の取扱いについて明確化されたことです。税効果会計の計算においては、実効税率の計算等において地方税の税率を使用します。ところが、地方税の税率変更については、改正地方税法の成立と公布だけではなく、各地方自治体による条例の改正も必要となります。そのため、もし地方税法が国会で改正されたとしても、条例の改正が遅くなった場合にはどのように取り扱うべきか、ということが実務上の論点になります。

また、自治体によっては、いわゆる超過税率(各地方団体が制限税率を超えない範囲で定める超過課税による税率)を定めているところがあります。そのため、自治体ごとに地方税の税率が異なりますので、話しが複雑になります。

例えば、平成27年3月期決算においては、税効果会計に適用する税率がちょっとした話題となりました。このときは、地方税法の改正が平成27年3月31日に国会で成立し、即日公布されました。この地方税の改正を受けて、超過税率を定めている自治体のうち東京都以外は平成27年3月31日までに改正条例を公布しましたが、東京都では平成27年4月1日に改正条例を公布しました。

そのため、東京都に事業所がある会社については、平成27年3月期決算において税効果会計を適用する際には、実務上、期末日後に公布された条例の税率を使用するというような対応がとられることとなりました。ただし、この方法は適用指針等で明示されていたものではなく、あくまで実務上の取扱いとして考えられた方法になります。繰延税金資産・負債の金額が大きくない会社にとってはそれほど大きな影響はなかったと考えられますが、実務的には実効税率の算定が問題となったことも確かです。

そのため、適用指針(案)において、地方税法等を改正するための法律が国会で成立していても条例の改正が地方自治体で行われていない場合における超過税率の見積りについて取扱いを明確化しました。具体的には、例えば以下の方法があるとされています。

 

表1:条例改正が成立していない場合の超過税率の算定方法

方法1

改正後の標準税率に、改正前条例に規定されていた超過税率と旧標準税率の差を加算して、超過税率を算定する方法;

超過税率=改正後標準税率+(改正前超過税率-改正前標準税率)

方法2

改正後の標準税率に、改正前条例に規定されていた超過税率と旧標準税率の割合を乗じて、超過税率を算定する方法;

超過税率=改正後標準税率☓(改正前超過税率÷改正前標準税率)

 

ただし、繰延税金資産・負債の金額が大きくない会社にとっては、いずれの方法によってもそれほど大きな差は生じないものと考えられます。

4.今後の税率の変更について

平成28年度税制改正の大綱が平成27年12月24日に閣議決定されましたが、その中で法人税などの税率の引き下げが盛り込まれています。法人税率は、現行は23.9%ですが、平成29年3月期には23.4%になる見込みです。また、平成29年3月期をもって地方法人特別税は廃止され、平成30年3月期からは事業税へ戻される方針となっています。それに伴い、平成29年3月期の法定実効税率は29.97%になると見込まれています。

 

表2:今後の税率の見込み

  平成28年3月期 平成29年3月期 平成30年3月期 平成31年3月期
法人税率 23.9% 23.4% 23.4% 23.2%
法定実効税率 32.11% 29.97% 29.97% 29.74%

 

法人実効税率の引下げは3年連続で、これは国際的にも法人税率の引き下げが進んでいる中、企業の収益性と競争力を高めていくことが目的とされています。ただし、法人税率が低下する分、外形標準課税の拡大や減価償却制度の見直しなどによる課税ベースの拡大により財源を確保しています。税金を取り巻く環境が急速に変化する中で、適用すべき税率を明確化した今回の適用指針(案)により、よりスムーズな税効果会計の適用が期待されます。

 

参考文献

企業会計基準委員会、「税効果会計に適用する税率に関する適用指針(案)」、H27.12.10

財務省、「平成28年度税制改正の大綱」、H27.12.24

 
執筆者:公認会計士・社会保険労務士 吉田 隆伸
 

 

リスク分担型DB(仮称)~柔軟で弾力的な給付設計について

1.はじめに

厚生労働省は、2015年9月11日開催の第16回社会保障審議会企業年金部会において、確定給付企業年金制度(以下、「DB制度」)の弾力的な運営のための新たな制度設計を提案しました。1つは、積立不足を予測した掛金(以下、「リスク対応掛金」)を通常の掛金に上乗せして拠出できるようにする措置案と、もう1つは、柔軟で弾力的なハイブリッド型の給付設計として「リスク分担型DB(仮称)」の創設案が提案されました。なお、リスク分担型DBは、リスク対応掛金の設定と併せて実施することが前提になっています。提案内容については大筋で了承され、平成28年4月からの施行を目指し、関係政省令等の整備や各関係機関との調整が進められています。今回は、柔軟で弾力的な給付設計の実現を可能とするリスク分担型DB(リスク対応掛金の設定を含む。)の概要について紹介していきたいと思います。

2.現行の課題

DB制度の給付の財源は、積立金(元本の取崩及び運用収入)と掛金収入であり、あらかじめ給付の算定方法が定まっているDB制度においては、給付とその財源が等しくなるように、掛金の額を算定し財政を均衡させます(すなわち、「積立金+掛金収入現価」=「給付現価」の状態を現行において財政均衡の状態といいます)。このため、期間の経過により、想定していた前提と実績との相違により財政が悪化した場合、掛金の増加により対応するのが基本になります。財政が悪化した時に初めて掛金対応を行う仕組みでは、DBの安定的な運営に限界が生じます。また、積立状況と景気の変動は連動するのが一般的であり、景気が悪化し企業業績が悪い時ほど追加拠出が求められ企業活動にも支障が生じるおそれがあります。更に、財政状況が極度に悪化した場合には、加入者等の給付減額により対応せざるを得なくなることもあり、受給権保護の観点からも問題が生じます。これらの現行の課題に対応するために、あらかじめ負債を超える積立のための拠出をしようにも、過剰な損金算入を防ぐ観点から認められていません。

給付設計に関しても、DB制度では財政が悪化し積立不足が生じた時のリスクは事業主に偏る一方、確定拠出企業年金制度(以下、「DC制度」)では、運用のリスクが加入者に偏ることとなり、DB・DCの二者択一では、労使のどちらかにリスクが偏る構造にあることがかねてより指摘されていました。

 

そこで、上述した現行の課題に対し、景気の変動の影響を受けやすいDB制度の拠出額を一定程度平準化させて、安定的で弾力的なDBの運営を実現するため、あらかじめ「リスク対応掛金」の拠出を認め、更に、事業主が拠出する掛金を一定に保ちつつ、将来発生する資産運用リスクを事業主と加入者で分担する「リスク分担型DB」を導入することが提案されました。

3.リスク分担型DB(仮称)

現行のDBに対し、リスク対応掛金を設定するDBにおいては、不況期等の掛金増加につながらないように、あらかじめ「財政悪化時に想定される積立不足」を測定し、その水準を踏まえて、リスク対応掛金の拠出を行うことができます。すなわち、「積立金+現行の掛金収入現価+リスク対応掛金収入現価」が「給付現価+財政悪化時に想定される積立不足」を下回っていても、「財政悪化時に想定される積立不足」の範囲内に収まっていれば、財政が均衡しているものとみなすので、掛金の額が景気循環の影響を受けにくい安定的な財政運営が可能になります。

このリスク対応掛金の拠出を行う仕組みを活用し、「財政悪化時に想定される積立不足」を20年に一度の損失に耐えうる基準として測定し、労使でこの拠出部分を事業主の掛金負担により対応する部分と加入者等の給付調整により対応する部分とに分け、両者で「財政悪化時に想定される積立不足」を負担する仕組みとしてリスク分担型DBの創設が提案されています。

 

リスク分担型DBの概要

  確定拠出型企業年金
(DC)
リスク分担型DB(仮称) 確定給付型企業年金
(DB)
掛金 固定 (一定期間)固定 変動
給付 変動 変動 固定
資産運用リスク 加入者 両者 事業主

4.企業会計上の取扱い

 

現行の退職給付に関する会計基準では、退職給付制度をDC制度とDB制度に分類し、DC制度を事業主が一定の掛金の拠出以外に追加的な拠出義務を負わない制度と定義し、退職給付債務を認識せず、損益計算書において掛金を費用処理することになっています。DB制度は、DC制度以外の退職給付制度と定義し、退職給付債務を負債認識します。この負債認識が、DB制度を維持してきた企業においてもDC制度の導入が進んでいる要因になっているのではと指摘されています。

 

会計基準の考え方によれば、あらかじめ給付の算定方法が定められている制度であっても、リスク分担型DBのように事業主による拠出額が固定されており、追加的な拠出が求められない制度であれば、債務認識を要しないと考えられますが、現行の退職給付会計基準の制定時には、リスク分担型DBは考慮されていなかったため、DC制度として実務上取り扱われるかは現時点では明らかではありません。リスク分担型DBの導入が予定される2016年4月までには、企業会計基準委員会(ASBJ)からリスク分担型DBに関する何らかの指針等が公表されると思われますので、その動向を見ていく必要があるかと思われます。

5.おわりに

リスク分担型DBは、DCとDBの両制度の特徴を組み合わせたものであり、事業主はリスク対応掛金を超える掛金の追加拠出は行わず、掛金を一定に保ちつつ、積立状況に応じて加入者等の給付額を調整する制度です。このため、制度開始時及び制度実施後も加入者等が適切に意思決定に参加できる仕組みが必要になってきます。また、上述した「財政悪化時に想定される積立不足」の測定においても一定のルールを設け、過剰な損金算入を防ぐなどの政策との調整も必要になってきます。この他、リスク分担型DBにおける給付算定式は、現行のDBにおける給付算定式に「調整率」を乗じたものと定義され、この「調整率」の設定においても一定のルールが必要になります。

このように、新たな第三の給付設計としてのリスク分担型DBの導入には、いくつもの課題があり、その実現後においても理想的な給付設計・労使関係を目指し改善されていくことが望まれます。

 

参考資料

りそな年金研究所「企業年金ノート」 2015.10. No.570
第16回社会保障審議会企業年金部会「資料1 確定給付企業年金の弾力的な運営について」
企業会計基準第26号「退職給付に関する会計基準」

 
執筆者:中澤 泰明
 

連載記事

 
 

ActiveDataによる不正監査手続はお休みさせて戴きます。

 

 

シリーズIFRSの会計処理と開示例第10回 IAS第17号「リース」(前編)

1.はじめに

今回は、IAS第17号「リース」の定義・分類についての論点を紹介します。なお、基準の説明については、ニュースレターVol.10のIFRS(国際財務報告基準)第9回 IAS第17号「リース」をご確認ください。

2.定義・分類

  IAS第17号では、リースとは、貸手が1度または数回の支払いの対価として一定期間にわたって借手に特定の資産の使用権を移転する契約としています。そして、リースはファイナンス・リースとオペレーティング・リースに分類されます。ファイナンス・リースとは、所有権の移転の有無にかかわらず、資産の所有に伴うリスクと経済価値の実質的にすべてが借手に移転するものをいい、その他はオペレーティング・リースに分類されます。

リース取引がどちらのリースに分類されるかは、契約の形式よりも取引の実質により判断され、ファイナンス・リースに分類される状況の例として、以下のようなものが挙げられています。

[1]リース期間の終了までに資産の所有権が借手に移転する。

[2]借手に選択権の行使日の公正価値より十分に低い価格での当該資産の購入選択権が与えられており、当該権利の行使が合理的に確実である。

[3]リース期間が当該資産の経済的耐用年数の大部分を占める。

[4]リース開始日において最低リース料総額の現在価値が、少なくとも当該資産の公正価値のほぼすべてを占める。

[5]リース資産が特殊な性質をもっており、大きな改修を行わなければ借手以外が使用できない。

また、次のような状況も、単独または組み合わせによりファイナンス・リースとして分類する指標となりえるとしています。

[1]借手が当該リース契約を解約できても、その解約に関連する貸手の損失は借手の負担になる。

[2]残存資産の公正価値変動による利得・損失が借手に発生する。

[3]借手が市場の賃借料相場より十分に低い賃借料で、次期のリース契約を継続できる。

以下、リース取引を分類するにあたり、理解すべき用語について解説いたします。

3.リース期間

IAS第17号では、リース期間とは、借手が資産をリースする契約を締結した解約不能な期間に、借手がその資産のリースを継続する選択権を有する期間(当該選択権を借手が行使することが、リース開始日において合理的に確実視されている場合)を合計した期間としています。

合理的に確実であるか否かについてはIAS第17号では明確には規定されていないため、更新する際の費用や当該資産を継続して利用することの重要性等を勘案して、企業ごとに決定する必要があります。

4.リース開始日

IAS第17号では、リース開始日とは、リースの契約日又は当事者がリースの主要条項について確約した日のいずれか早い日としています。また、これと似た用語で、「リース期間の起算日」がありますが、これは借手がリース資産の使用する権利を取得する日のことを言います。

例えば、20×1年3月1日に機械装置をリースする契約を結び、リースする機械装置は特別仕様のため、20×1年9月1日より使用することができる場合、リース開始日は20×1年3月1日であり、リース期間の起算日は20×1年9月1日となります。

5.最低リース料総額

IAS第17号で最低リース料総額は、以下のように定義されています。

借手がリース期間にわたって支払いを要する、又は支払いを要求されうる金額(変動リース料、サービスに対する原価及び貸手が立替払して後に精算される諸税金を除く)に、次に示す金額を加算した額をいう。

[1]借手については、借手又は借手と関連があるものが支払いを保証している額

[2]貸手については、貸手に対して借手、借手の関係者又は保証による義務を履行できる財務的能力のある、貸手と関連のない第三者が保証している残存価値

また、変動リース料は、リース料のうち、金額が固定されておらず、時間の経過以外で変化する要因の将来の数量(例えば、将来の売上の一定割合、使用料、物価指数、市場金利)に基づく部分を言います。なお、日本基準においては、変動リース料をリース料総額に含めるかについては、明確な定めはありません。

6.残存価値

IAS第17号では、残存価値は以下の2種類を定義しています。

[1]保証残存価値:借手については、残存価値のうち借手又は借手と関連があるものが保証している部分。貸手については、残存価値のうち借手が保証しているか貸手と関連がない第三者が保証している部分

[2]無保証残存価値:リース資産の残存価値のうち、貸手による実現が確実でないか、または貸手と関連がある者のみが保証している部分

なお日本基準では、リース契約において、リース期間終了時に、リース物件の処分価額が契約上取り決めた保証価額に満たない場合、借手に対して、その不足額を貸手に支払う義務を残価保証としており、この取り決めがある場合には、リース料総額に含めます。貸手も、借手以外の第三者による保証がなされた場合、当該保証額をリース料総額に含めるとしております。

7.経済的耐用年数

IAS第17号で経済的耐用年数は、以下のように定義されています。

[1]1名以上の利用者によって資産が経済的に利用可能であると予想される期間

[2]1名以上の利用者が当該資産から得ると予想される生産高又はこれに類似する単位

 ここで、リース契約が土地と建物の両方を含んでいる場合、それぞれの要素についてファイナンス・リースかオペレーティング・リースかを検討しますが、土地は通常、無限の経済的耐用年数を有していることを前提に検討する必要があります。なお、土地の要素について当初認識される金額に重要性がないとされた場合は、土地と建物を一体として取り扱い、建物の経済的耐用年数が、全体としての経済的耐用年数とみなされます。

 
参考文献

IAS第17号「リース」

企業会計基準適用指針第16号「リース取引に関する会計基準の適用指針」 企業会計基準委員会

詳細解説IFRS実務適用ガイドブック 中央経済社 あずさ監査法人

 
執筆者:公認会計士 関 和輝
 

 

中小企業お役立ち情報27 経営者保証に関するガイドラインについて

1.はじめに

中小企業・小規模事業者等(以下「中小企業」という。)の経営者による個人保証(以下「経営者保証」という。)には、経営への規律付けや信用補完として資金調達の円滑化に寄与する面がある一方で、経営者による思い切った事業展開や、保証後において経営が窮境に陥った場合における早期の事業再生を阻害する要因となっているなど、企業の活力を阻害する面もあり、経営者保証の契約時及び履行時等において様々な課題が存在しています。

そこで、中小企業の経営者保証の契約時と履行時等における課題への解決策を具体化するために、経営者保証に関する中小企業、経営者及び金融機関による対応についての自主的・自立的な準則として経営者保証に関するガイドラインが取りまとめられました。

本ガイドラインでは、保証契約時等の対応として、(1)中小企業が経営者保証を提供することなく資金調達を希望する場合に必要な経営状況とそれを踏まえた債権者の対応、(2)やむを得ず保証契約を締結する際の保証の必要性等の説明や適切な保証金額の設定に関する債権者の努力義務、(3)事業承継時等における既存の保証契約の適切な見直し等などを定めることにより、経営者保証に依存しない資金調達を応援し経営者保証の弊害を解消することで、経営者による思い切った事業展開や、早期事業再生等を支援しています。

以下、本ガイドラインの各規定について簡単に紹介していきたいと思います。

2.本ガイドラインの概要

1.ガイドラインの適用対象となり得る保証契約

このガイドラインは、以下の全ての要件を充足する保証契約に関して適用されるものとされています。

(1)保証契約の主たる債務者が中小企業であること

(2)保証人が個人であり、主たる債務者である中小企業の経営者であること。ただし、以下に定める特別の事情がある場合又はこれに準じる場合については、このガイドラインの適用対象に含める。

①実質的な経営権を有している者、営業許可名義人又は経営者の配偶者(当該経営者と共に当該事業に従事する配偶者に限る。)が保証人となる場合

②経営者の健康上の理由のため、事業承継予定者が保証人となる場合

(3)主たる債務者及び保証人の双方が弁済について誠実であり、対象債権者の請求に応じ、それぞれの財産状況等(負債の状況を含む。)について適時適切に開示していること

(4)主たる債務者及び保証人が反社会的勢力ではなく、そのおそれもないこと

 

2.経営者保証に依存しない融資の一層促進

経営者保証に依存しない融資の一層促進のため、主たる債務者、保証人及び対象債権者は、それぞれ次の対応に努めるものとされています。

(1)主たる債務者及び保証人における対応

①法人と経営者との関係の明確な区分・分離

②財務基盤の強化

③財務状況の正確な把握、適時適切な情報開示等による経営の透明性確保

(2)対象債権者における対応
対象債権者は、停止条件又は解除付保証契約、ABL、金利の一定の上乗せ等の経営者保証機能を代替する融資手法のメニュー充実を図ることとされています。また、一定の要件が将来に亘って充足すると見込まれるときには、主たる債務者の経営状況、資金使途、回収可能性等を総合的に判断する中で、経営者保証を求めない可能性、上述のような代替的な融資手法を活躍する可能性について、主たる債務者の意向を踏まえたうえで検討することが求められています。

 

3.経営者保証の契約時の対象債権者の対応

対象債権者が上記2.(2)に即して検討を行った結果、経営者保証を求めることが止むを得ないと判断された場合や、中小企業における法人個人の一体性に一定の合理性や必要性が認められる場合等で、経営者と保証契約を締結する場合、対象債権者は以下の対応に努めるものとされています。

(1)主たる債務者や保証人に対する保証契約の必要性等に関する丁寧かつ具体的な説明

(2)適切な保証金額の設定

 

4.既存の保証契約の適切な見直し

保証契約の見直しの申入れ時において主たる債務者及び保証人は、既存の保証契約の解除等の申入れを対象債権者に行うに先立ち、上記2.(1)に掲げる経営状況を将来に亘って維持するよう努め、また、対象債権者は、申入れの内容に応じて、上記2.(2)または3.に即して、改めて、経営者保証の必要性や適切な保証金額等について、真摯かつ柔軟に検討を行うとともに、その検討結果について主たる債務者及び保証人に対して丁寧かつ具体的に説明することとされています。同様に、事業承継時においての、主たる債務者及び後継者、対象債権者における対応について定められています。

 

5.保証債務の整理

一定の要件の全てを充足する場合において、保証人は、当該保証人が負担する保証債務について、このガイドラインに基づく保証債務の整理を対象債権者に対して申し出ることができ、当該保証人の申し出を受けた対象債権者は、本ガイドラインに定められている経営者保証の準則(詳細についてはHPを参照ください。)に即して、誠実に対応することとされています。また、債務保証の整理の手続き、対象債権者における保証債務に関する一時停止や返済猶予の要請に対する対応、及び経営者の経営責任の在り方等について定めています。

3.おわりに

今回、割愛しました各規定の詳細な内容等については以下に記載したHPを参照ください。また、金融庁は、「経営者保証に関するガイドライン」の活用に関して、金融機関等により広く実践されることが望ましいものとして取組事例を収集し取りまとめた「経営者保証に関するガイドラインの活用に係る参考事例集」を公表していますので、興味のある方は併せて参照してください。

 

出典・参考文献等

日本商工会議所HP:http://www.jcci.or.jp/news/jcci-news/2013/1205140000.html

全国銀行協会HP: http://www.zenginkyo.or.jp/news/2013/12/05140000.html

「経営者保証に関するガイドラインの活用に係る参考事例集」: http://www.fsa.go.jp/news/27/ginkou/20150731-7/02.pdf

 
執筆者:竹内 史明
 


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  明誠ニュースレター vol.63
2016年3月31日発行
発行責任者:武田剛
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