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情報フラッシュ

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発表日時 表題
平成28年7月1日 日本公認会計士協会は「監査提言書」について公表しました。
平成28年7月25日 企業会計基準委員会は改正「修正国際基準(国際会計基準と企業会計基準委員会による修正会計基準によって構成される会計基準)」について公表しました。
平成28年7月27日 日本公認会計士協会は「IT委員会実務指針第4号「公認会計士業務における情報セキュリティの指針」」及び「IT委員会研究報告第34号「IT委員会実務指針第4号「公認会計士業務における情報セキュリティの指針」Q&A」」の改正について公表しました。
平成28年7月28日 日本公認会計士協会は業種別委員会実務指針第54号「金融商品取引業者における顧客資産の分別管理の法令遵守に関する保証業務に関する実務指針」について公表しました。
平成28年7月28日 日本公認会計士協会は監査・保証実務委員会研究報告第29号「専門業務実務指針4400「合意された手続業務に関する実務指針」に係るQ&A」について公表しました。
平成28年8月1日 日本公認会計士協会は法規委員会研究報告第1号「公認会計士等の法的責任について」の改正について公表しました。
平成28年8月12日 日本公認会計士協会は租税調査会研究報告第31号「国境を越える電子商取引と消費税について」を公表しました。

トピック解説

 
 

リストリクテッド・ストック

1.はじめに

「日本再興戦略」改訂2015やコーポレートガバナンス・コードにおいて『攻めの経営』を促す役員報酬として、中長期の企業価値創造を引き出すことを目的とした会社の業績と連動した報酬の設定が求められています。

日本において、役員報酬は企業の「コスト」であると認識されていたことから固定報酬が中心となっており、業績連動報酬や株式報酬の役員報酬総額に占める割合が欧米に比べて低くなっています。そのため、業績向上のインセンティブが効きにくい状況となっています。また、会社法第361条1項2号及び3号において業績連動型の報酬やインセンティブ報酬が認められていますが、具体的な内容の決定が各企業に委ねられているため業績連動報酬や株式報酬を採用している企業が多いとは言えない状況です。

そこで、欧米で一般的に利用されている株式報酬の手法の一つであるリストリクテッド・ストックの発行手続を明確化する取り組みが現在進められています。

2.リストリクテッド・ストックとは

リストリクテッド・ストックとは、役員の役務提供の対価として一定期間の譲渡制限が付された現物株式を付与するものです。株式の譲渡を制限することによりリテンション効果(企業に役員を引き留める効果)があり、株主目線の経営を促す効果があると考えられています。欧米では譲渡制限期間中に一定の勤務条件等を付し、条件が満たされない場合には株式が没収される等の設計とすることが一般的です。

我が国において、会社法上無償で株式を発行することや労務出資が認められていないため、役員に報酬として株式自体を直接交付することが出来ません。また、近年では報酬相当額を信託に拠出し、信託が当該資金を原資に市場等から株式を取得した上で、一定期間経過後に役員に株式を付与するという株式交付信託が導入されており信託の設計によっては、リストリクテッド・ストックと類似の仕組みを実現することが可能ですが、株式報酬を導入するための仕組みが十分に整備されているとは言えない状況です。

そこで、実務的に簡易な手法を用いてリストリクテッド・ストックを導入するための手続が整理されることとなりました。解釈指針において例示されている手法として、役員の会社に対する金銭報酬債権の現物出資により株式を発行し、この株式について会社と役員との契約等により一定期間の譲渡制限を付すことが例示されています。これにより、募集株式の払込金額と算定方法を明らかにすることが出来るため会社法第199条1項の規定の問題が解決できると考えられます。

3.税制の整備

法人税法第34条の役員給与の損金不算入に関する規定は固定報酬を基礎として制度設計がなされているため、これも業績連動報酬や株式報酬の導入が普及しない要因の一つになっていると考えられます。そこで、税制面からも役員給与における一定の業績連動報酬や株式報酬の導入の促進を図るための税制の整備が行われました。

リストリクテッド・ストックに関するものとして、役員に支給した一定のリストリクテッド・ストックを届出が不要になる事前確定届出給与の対象とする等の制度整備が行われ、これに併せてリストリクテッド・ストックの交付に係る経済的利益について、株式交付日ではなく譲渡制限解除日にその日における価額により課税されることの明確化等が行われました。これらの措置によりリストリクテッド・ストックが我が国においても導入が促進される効果が期待されます。

4.会計上の取扱い

法人が役員等に報酬債権を付与し、その役員等からの報酬債権の現物出資と引換えに役員等にリストリクテッド・ストックを交付した場合には、その付与した報酬債権相当額を「前払費用等の適当な科目」で資産計上するとともに、現物出資された報酬債権の額を会社法等の規定に基づき「資本金(及び資本準備金)」として計上することが原則的な会計処理であると考えられています。

リストリクテッド・ストックの交付後は、現物出資等をされた報酬債権相当額のうちその役員等が提供する役務として当期に発生したと認められる額を、対象勤務期間(=譲渡制限期間)を基礎とする方法等の合理的な方法により算定し、費用計上(前払費用等の取崩し)することとされています。

 

設例を使って上記の処理の具体例を示します。

 

<設例>

  • 払込金額及び株式数:役員から報酬債権1,500万円の現物出資を受け、リストリクテッド・ストック300株を発行する。
  • 期間:株式付与から譲渡制限解除までの期間は3年間とする。
  • 譲渡制限解除の条件:譲渡制限期間中、勤務を継続すること。

 

<勤務条件を達成し、3年後、全ての株式の譲渡制限が解除された場合>

時系列 会計処理例
報酬債権付与及び株式発行時

(借方)前払費用等 1,500/(貸方)資本金等 1,500

役務提供(1年目) (借方)株式報酬費用 500/(貸方)前払費用等 500
役務提供(2年目) (借方)株式報酬費用 500/(貸方)前払費用等 500
役務提供(3年目) (借方)株式報酬費用 500/(貸方)前払費用等 500

 

仮に、リストリクテッド・ストックの付与を新株の発行ではなく自己株式の処分によった場合には、自己株式の帳簿価額を減額し、自己株式の処分の対価(報酬債権相当額)と帳簿価額との差額である処分価額(「自己株式処分差益」又は「自己株式処分差損」)を、その他資本剰余金として処理します。また、その処理の結果、その他資本剰余金の残高が負の値となった場合には、会計期間末において、その他資本剰余金をゼロとし、その負の値をその他利益剰余金(繰越利益剰余金)から減額します。

 

また、付与した報酬債権相当額のうち譲渡制限解除の条件未達により会社が役員等から無償取得することとなった部分(役員等から役務提供を受けられなかった部分)についてはその部分に相当する前払費用等を取崩し、同額を損失処理することが想定されています。

5.おわりに

現金報酬と株式報酬及び業績連動報酬のバランスをうまく取ることにより経営者に株主目線での経営を促したり、中長期の業績向上インセンティブを与えたりすることができます。これにより我が国の企業がローリスク・ローリターン経営から脱却し、「攻めの経営」が行われることにより「稼ぐ力」が向上するとして、リストリクテッド・ストックを始めとした様々な役員報酬の仕組み作りが進められています。リストリクテッド・ストックのような株式報酬の導入は海外を含めた機関投資家からの要望に応えたものであり、彼らは経営者がもっと自社株を保有すべきであることを主張しています。経営者が自社株を多く保有しているほど、中長期的に企業価値が下落するような施策を取りづらくなると考えられるためです。現在は欧米で一般的に用いられている仕組みをそのまま日本に導入している印象がありますが、今後議論が重ねられ、より日本の経営に合った形の役員報酬の仕組みが考案されれば株式報酬や業績連動報酬の導入がさらに進むことが予想されます。これにより日本の企業の競争力が向上することを願ってやみません。

 

出典・参考文献

経済産業省産業組織課 『「攻めの経営」を促す役員報酬 ~新たな株式報酬(いわゆる「リストリクテッド・ストック」)の導入等の手引~ (平成28年6月3日時点版)』

 
執筆者:三宮 圭祐
 

 

国際会計基準(IFRS)に基づく四半期連結財務諸表の開示例の公表について

1.はじめに

金融庁は、平成22年3月期からIFRSの任意適用が開始される際、企業がIFRSに基づく連結財務諸表を作成するにあたっての実務の参考として、平成21年12月に「IFRSに基づく連結財務諸表の開示例」(以下、「年度開示例」)を、また、平成22年4月には「IFRSに基づく四半期連結財務諸表の開示例」(以下、「四半期開示例」)を公表しました。

その後、平成27年6月30日に閣議決定された「『日本再興戦略』改訂2015」において、「IFRS適用企業やIFRSへの移行を検討している企業等の実務を円滑化し、IFRSの任意適用企業の拡大促進に資するとの観点から、IFRS適用企業の実際の開示例や最近のIFRSの改訂も踏まえ、IFRSに基づく財務諸表等を作成する上で参考となる様式の充実・改訂を行う」こととされました。

これを受けて、金融庁は、IFRSに基づく連結財務諸表の作成にあたって企業の実務の参考となるものを示す観点から、平成28年3月31日に年度開示例の改訂を行い公表しました。

そして今般、年度開示例に続き、四半期開示例についても改訂を行い、「IFRSに基づく四半期連結財務諸表の開示例」(以下、「本開示例」)を公表するに至りました。

2.本開示例の特徴

[1]最新のIFRSに対応

これまでの開示例は、IFRS任意適用開始時点(平成22年3月期)の基準に基づくものでしたが、本開示例は、その後のIFRS第9号(金融商品)の改訂など、平成28年3月期までのIFRSの改訂が反映されています。

[2]IFRSの規定に基づく説明の充実

これまでの開示例は、表形式による開示例と、その根拠となるIFRSの規定を記載していましたが、本開示例は、企業がIFRSに基づく開示を検討する際の理解が深まるよう、表形式による開示例ごとに根拠となるIFRSの規定を明示するとともに、表形式による開示例とIFRSの規定とを結びつける説明を行っています。

[3]IFRS任意適用企業の実際の開示を反映

平成28年3月末までに、IFRSに基づく四半期(半期)報告書において公表された74社の実際の開示を参考に、我が国のIFRS任意適用企業の実務に即したものとして作成されています。この際、IFRSにおいて明示的に開示を求められていない項目は義務的開示であるとの誤解を避けるため、開示例に含めないとともに、IFRSにおいて明示的に開示を求められている項目であっても、多くの企業において重要性が高くない又は取引や事象の頻度が高くないと考えられる項目については開示例に含めないことで、企業の開示負担にも配慮したものとなっています。

3.本開示例の目次及び概要

目次 概要
1.はじめに 本開示例を理解するのに必要な、全般的な事項が記載されています。
  [1]本開示例利用に当たっての留意事項
[2]本開示例について
  (1)本開示例作成の経緯及び目的
(2)本開示例の特徴
(3)本開示例作成にあたっての前提
(4)本開示例の構成
[3]本開示例で取り扱っているIFRSの一覧
[4]IFRSの各基準と本開示例での取り扱い箇所の関係(索引)
2.四半期連結財務諸表本表 国際会計基準(IAS)第34号「期中財務報告」の規定を基礎としつつ、実例を参考として、四半期連結財務諸表本表のひな型が紹介されています。
  [1]要約財政状態計算書
[2]要約四半期連結損益計算書
[3]要約四半期連結包括利益計算書
[4]要約持分変動計算書
[5]要約キャッシュ・フロー計算書
3.四半期連結財務諸表注記 左記目次項目について、該当するIAS第34号「期中財務報告」の規定を明示し、説明を付してひな型が紹介されています。
  [1]報告企業
[2]作成の基礎
[3]重要な会計方針
[4]重要な会計上の見積り及び判断
[5]事業セグメント
[6]配当金
[7]金融商品
[8]後発事象
(参考)IFRS任意適用における初度適用
注)IASとは、国際会計基準審議会(IASB)の前身である国際会計基準委員会(IASC)によって設定された会計基準であり、IFRSに含まれる。
 

出典・参考文献

金融庁「国際会計基準(IFRS)に基づく四半期連結財務諸表の開示例の公表について」

 
執筆者:中澤 泰明
 

連載記事

 
 

ActiveDataによる不正監査手続はお休みさせて戴きます。

 

 

シリーズIFRSはお休みさせて戴きます。

 

 

中小企業お役立ち情報31 中小企業等経営強化法について

1.はじめに

今回は、平成28年7月1日に施行された「中小企業等経営強化法」について解説していきたいと思います。

2.中小企業等経営強化法とは

中小企業等経営強化法とは、労働力人口の減少、企業間の国際的な競争の活発化等の経済情勢の変化に対応し、中小企業・小規模事業者・中堅企業(以下「中小企業・小規模事業者等」)の経営強化を図るという趣旨のもと、中小企業・小規模事業者等を対象として①各事業所管大臣による事業分野別指針の策定や、②中小企業・小規模事業者等への固定資産税の軽減や金融支援等の特例措置を規定するものです。

3.法律の概要

中小企業等経営強化法では、中小企業・小規模事業者等を対象として以下のようなものを規定しています。

 

①事業分野の特性に応じた経営力向上のための指針の策定

事業所管大臣は、事業者が行うべき経営力向上のための取組(顧客データの分析、ITの活用、財務管理の高度化、人材育成等)について示した「事業分野別指針」を策定します。

(※)具体的には、製造、卸・小売、外食・中食、宿泊、医療、介護、保育、貨物自動車運送業船舶、自動車整備等を公表しています。

 

②中小企業・小規模事業者等による経営力向上のための取組の支援

(1)経営力向上計画の認定及び支援措置

中小企業・小規模事業者等は、事業分野別指針に沿って、人材育成、コスト管理のマネジメントの向上や設備投資等、事業者の経営力を向上させるための取組内容などを記載した事業計画(「経営力向上計画」)を作成します。計画の認定を受けた事業者は、以下に挙げたような機械及び装置の固定資産税の軽減(資本金1億円以下の会社等を対象、3年間半減)や金融支援等(低利融資、債務保証等)の特例措置等の特例・支援措置を受けることができます。

 

<固定資産税の軽減措置>

利用対象者 :資本金1億円以下の会社、個人事業主など

支援対象 :以下の要件等を満たす設備で、経営力向上計画に基づき取得されたものが対象となります。

  • 販売開始から10年以内のもの
  • 旧モデル比で生産性(単位時間当たりの生産量、精度、エネルギー効率等)が年平均1%以上向上するもの
  • 160万円以上の機械及び装置であること

内容 :固定資産税を1/2に半減(3年間)

※固定資産税は利益に関係なく支払う税金であるため、赤字企業であっても減税効果があります。

 

<その他の金融支援等>

政府金融機関の低利融資、民間金融機関の融資に対する信用保証、債務保証等により円滑な資金調達を支援するもので具体的には以下のようなものがあります。

  • 商工中金による低利融資
  • 信用保証協会による信用保証の枠の拡大
  • 中小企業投資育成株式会社法の特例
  • 独立行政法人中小企業基盤整備機構の債務保証
  • 日本政策金融公庫によるスタンドバイ・クレジット
  • 中小企業基盤整備機構による債務保証
  • 食品流通構造改善機構による債務保証

など

 

(2)認定経営革新等支援機関による支援

国による認定を受けた認定経営革新等支援機関(主に商工会議所、商工会、中央会、金融機関、士業等)による計画策定の支援を受けられます。

4. おわりに

最後に、本文では割愛しました固定資産税の軽減措置が受けられる代表的な設備、税制等、その他の金融支援策の具体的な内容及び申請方法等について詳しく知りたい方は、中小企業庁のホームページをご参照下さい。

 

出典・参考文献等

中小企業庁ホームページ

 
執筆者:竹内 史明
 


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  明誠ニュースレター vol.67
2016年9月8日発行
発行責任者:武田剛
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