明誠グループニュースレター
情報フラッシュ

[ 連載記事 ]

[ トピック解説 ]

 
 

情報フラッシュ

 
発表日時 表題
平成28年9月26日 日本公認会計士協会はIT委員会研究報告「スキャナ保存制度への対応と監査上の留意点」の公開草案について公表しました。
平成28年10月28日 中小企業の会計に関する指針作成検討委員会は 「中小企業の会計に関する指針」の改正に関する公開草案等について公表しました。

トピック解説

 
 

金融商品取引業者における顧客資産の分別管理の法令遵守に関する保証業務に関する実務指針

1.はじめに

今般、日本証券業協会において「顧客資産の分別管理に関する外部監査等のあり方検討ワーキング・グループ」における議論の取りまとめを受けて、「顧客資産の分別管理の適正な実施に関する規則」が平成28年7月19日に一部改正されました。これを受け、日本公認会計士協会は平成28年7月28日に「金融商品取引業者における顧客資産の分別管理の法令遵守に関する保証業務に関する実務指針」を公表しました。

改正前の規則による分別管理監査は、業種別委員会実務指針第40号「金融商品取引業者における顧客資産の分別管理の法令遵守に関する検証業務の取扱いについて」(以下「実務指針第40号」という)による「分別管理の法令遵守に関する検証業務」又は業種別委員会研究報告第7号「金融商品取引業者における顧客資産の分別管理に関する合意された手続業務について」を参考に「合意された手続業務」が実施されてきましたが、改正規則の施行日(平成29年3月31日)後は、分別管理監査は「分別管理の法令順守に関する保証業務」に統一されます。

2. 分別管理について

平成11年4月より金融商品取引業者について顧客から預かった有価証券や金銭について、会社自身の資産とは区別して保管する事が金融商品取引法により義務付けられています。これにより顧客資産と会社資産との管理が明確に区別し管理されるため、仮に金融商品取引業者が破産した場合であっても顧客資産は確実に返還されるようになっています。

そして顧客資産の分別管理の状況について、日本証券業協会の自主規制の定めにより毎年1回以上定期的に公認会計士等の監査を受けなければならないものとされています。

3.要求事項

分別管理における監査については以下の事項が要求されています。

①二重責任の原則に基づき経営者の主題情報が全ての重要な点において法令及び規則に準拠して記載されているかどうかについて実務指針に従い保証業務を実施しなければなりません。

②実務指針に従い保証業務を実施し、保証報告書を発行するための基礎を得たことを示す、十分かつ適切な記録を提供する調書を適時に作成しなければなりません。

③分別管理の法令遵守に関する保証業務契約を締結する場合には、会社の内部監査体制が整備されている等の条件を満たしているか判断する必要があります。

④分別管理の法令遵守に関する保証業務契約を締結する場合には以下の条項を含めた契約書を作成する必要があります。

 ・上記③における業務受託の前提条件が満たされている事の文言

 ・適用される分別管理の法令を明確化する文言

 ・公認会計士等の責任の範囲等を明確にする文言

 ・保証報告書の利用制限及び引用制限

 ・公認会計士等への協力事項

 ・弁護士等の専門家を利用する必要がある場合には、その旨の文言

⑤不正を発見した場合には経営者等に報告して適切な対応を求め、保証報告書の結論への影響を検討しなければなりません。

⑥保証業務を効果的かつ効率的に実施するための保証業務計画を策定しなければなりません。

⑦合理的な保証を得るために、保証業務リスクを許容可能な低い水準に抑える十分かつ適切な証拠を入手しなければなりません。

⑧企業及び企業環境に起因した法令非遵守や経営者報告書の虚偽表示の原因となる法令非遵守が発生する可能性等に着眼して企業及び企業環境の理解並びにリスク評価を行わなければなりません。

⑨⑥において計画した手続を実施し、分別管理の法令遵守に関する保証業務の結論の形成に足る基礎を得るための十分かつ適切な証拠を入手しなければなりません。

⑩他者の作業を利用して保証報告書を提出する場合には、他者の信頼性及び独立性の検討を行い、他者作業の妥当性の評価のための手続を実施しなければなりません。

⑪保証手続の種類、実施時期及び範囲決定を含む、保証業務の計画、実施及び結論の表明に当たっては顧客資産に与える影響を基礎とした重要性を考慮しなければなりません。

⑫分別管理の法令遵守に関する最終的な責任を有し、確認事項についての知識を有する経営者に対して、保証業務に関連すると認識している全ての情報を提供した旨及び全ての関連する事項が経営者の主張に反映されていることを含む分別管理の法令遵守の評価について署名又は記名捺印した経営者確認書を提出するように要請しなければなりません。

⑬経営者の能力、誠実性若しくは倫理観等に懸念がある場合、口頭又は書面による陳述の信頼性及び証拠全体の証明力に及ぼす影響を判断しなければなりません。

⑭経営者に対する確認を要求したにもかかわらず、全部または一部について確認が得られない場合は以下の事項を実施しなければなりません。

・経営者との協議

・経営者の評価及び口頭又は書面による陳述の信頼性及び証拠全体の証明力に及ぼす影響を評価

・結論への影響を判断する等の適切な処置を講じる

⑮日本証券業協会との意見交換

⑯保証報告書において、経営者報告書に記載された、金融商品取引業者が、保証対象日において法令を遵守して顧客資産を分別管理していたか否かに係る経営者の主張が分別管理の法令遵守性の観点から全ての重要な点において法令及び規則に準拠して記載されているかどうかについて結論を報告しなければなりません。

⑰分別管理の法令遵守の保証対象日の後、保証報告書の日までに発生した場合には、当該事象を分別管理の法令遵守に関する保証業務の後発事象として取り扱わなければなりません。特に追記情報として記載する必要があると公認会計士等が判断した重要な後発事象については経営者報告書に記載を求めなければなりません。

⑱顧客資産の分別管理に関する経営者報告書と保証報告書は併せて利用されるようにしなければなりません。また財務諸表監査とは異なり利用者は契約当事者である金融商品取引業者と日本証券業協会に限定されるべきであるため、業務委託者との契約書及び保証報告書上利用目的の制限を明記しなければなりません。

4.実務指針の改正ポイント

本実務指針の改正ポイントは以下のとおりです。

① 改正前の規則では「検証業務」と「合意された手続業務」のいずれかで分別管理監査を実施することとされていましたが、改正規則では「保証業務」(従来の「検証業務」から名称変更)に統一されることになったため実務指針第40号から全般的に実務指針の記載が見直されました。

② 規則により「経営者報告書」の作成が義務付けられ文例が示されることになったため、実務指針第40号で示していた「経営者報告書」の文例及びその添付資料「分別管理状況表」の様式が削除されました。

③ 保証業務の重要性の判断についての記載を見直すとともに、保証報告書における結論の報告との関係について整理されました。

④ 改正規則により経営者報告書の写しとともに保証報告書の写しが公表されることになったため、保証報告書の文例等の記載が見直されました(改正規則付則第1項により平成30年4月1日以後の日を基準日として実施する分別管理監査に係る公表から適用とされています。)。

⑤ 監査基準委員会報告書を参考に要求事項と適用指針に区別するなど構成等が見直されました。

⑥ 本実務指針の適用は、改正規則の施行に合わせ、平成29年3月31日以後の日を保証対象日とする保証業務からとされています(改正規則の施行前に検証業務を実施する場合は実務指針第40号が適用されます)。

 

<出典・参考文献>

日本公認会計士協会

「業種別委員会実務指針第54号「金融商品取引業者における顧客資産の分別管理の法令遵守に関する保証業務に関する実務指針」の公表について」

 
執筆者:園山 隆幸
 

 

 

租税調査会研究報告第31号 国境を超える電子商取引と消費税について

1.はじめに

日本公認会計士協会は平成28年7月25日付で、租税調査会研究報告第31号「国境を超える電子商取引と消費税について」を公表しました。これまでは、デジタルコンテンツの内外判定が、一般的にはその提供者の所在地により行われてきたために、国内事業者により提供されるこれらのコンテンツには課税され、国外事業者によって提供される場合には課税されないといった不公平な状況にありました。同報告は、このような状況の是正を狙いとして平成27年度に消費税法等の一部改正が行われたことを受けてのものです。そこで、本稿では同報告の主要なテーマである同法改正を中心にこの研究報告について紹介したいと思います。

2.平成27年度の消費税税改正の主なポイントについて

[1]電気通信利用役務の提供に係る内外判定基準の見直し

電気通信利用役務とは、今回の消費税法改正で同法に新たに定義されたもので、消費税法基本通達5-8-3には下記の例示がされています。

(1)インターネットを介した電子書籍の配信

(2)インターネットを介して音楽・映像を視聴させる役務の提供

(3)インターネットを介してソフトウエアを利用させる役務の提供

(4)インターネットのウエブサイト上に他の事業者等の商品販売の場所を提供する役務の提供

(5)インターネットのウエブサイト上に広告を掲載する役務の提供

(6)電話、電子メールによる継続的なコンサルティング

 

国税庁が公表した「国境を超えた役務の提供に係る消費税の課税の見直し等に関するQ&A」には、この点について以下の様に該当する取引が例示されています。

  • インターネット等を介して行われる電子書籍・電子新聞・音楽・映像・ソフトウエア(ゲーム などの様々なアプリケーションを含む)の配信

  • 顧客に、クラウド上のソフトウエアやデータベースを利用させるサービス
  • 顧客に、クラウド上で顧客の電子データの保存を行う場所の提供を行うサービス
  • インターネット等を通じた広告の配信・掲載
  • インターネット上のショッピングサイト・オークションサイトを利用させるサービス(商品の掲載料金等)
  • インターネット上でゲームソフト等を販売する場所を利用させるサービス
  • インターネットを介して行う宿泊予約、飲食店予約サイト(宿泊施設、飲食店等を経営する事業者から掲載料等を徴するもの)

  • インターネットを介して行う英会話教室
  •  

    このような取引の内外判定には「仕向地主義」が導入され、役務の提供を受けた者の住所等が日本国内であれば国内取引として扱われることになりました。個人であれば住所等、法人であれば本店又は主たる事務所の所在地に基づいて内外判定が行われます。内外判定のポイントは次の二つになります。

  • 電気通信利用役務の提供を受けたものの住所等が国内にあるかどうか。

  • 住所等が国内にあるかどうかの判定は、客観的かつ合理的な基準に基づき行う。
  •  

    ただし、「国境を超えた役務の提供に係る消費税の課税の見直し等に関するQ&A」には以下のような取引は電気通信利用役務の提供には該当しないとして具体例が挙げられており、内外判定の際には注意が必要です。

  • 電話、FAX、電報、データ伝送、インターネット回線の利用など、他者間の情報伝達を単に媒介するもの(いわゆる通信)

  • ソフトウエアの制作等
  • 国外に所在する資産の管理・運用等(ネットバンキングも含む)
  • 国外事業者に依頼する情報の収集・分析等
  • 国外の法務専門家等が行う国外での訴訟遂行等
  • 著作権の譲渡・貸付け
  •  

    [2]課税方式の見直し(いわゆる「リバースチャージ方式」の導入)

    今回の改正では、電気通信利用役務は「事業者向け電気通信利用役務の提供(B2B取引)」と「消費者向け電気通信利用役務の提供(B2C取引)」に区分されることになりました。本来消費税は物を売った側が納税する義務を負うものですが、事業者向け電気通信利用役務の提供については、国外事業者が国内事業者に当該役務を提供した場合には、物を買った側(国内事業者)がその申告及び納税義務を負うことになります。このような場合、国外事業者は当該役務を提供する国内事業者に対して「リバースチャージの申告対象の取引」である旨通知しなければならないとされておりますが、通知がない場合でも国内事業者の申告及び納税の義務は無くなるわけではありません。

     

    [3]国外事業者が行う消費者向け電気通信利用役務の提供に係る仕入税額控除の制限

    国内事業者が消費者向け電気通信利用役務の提供を国外事業者から受けた場合については、その国外事業者が未登録の国外事業者の場合は、提供を受けた国内事業者はその消費者向け電気通信利用役務に係る消費税について仕入税額控除を受けることができません。国外事業者が登録国外事業者である場合は、提供を受けた国内事業者は仕入税額控除を受けることができます。

     

    [4]登録国外事業者制度の創設

    国外事業者が「消費者向け電気通信利用役務の提供」を行うためには、当該国外事業者は、登録国外事業者となっておく必要があります。それには下記の要件を満たす必要があります。

    (1)消費税の課税事業者であること

    (2)消費者向け電気通信利用役務の提供を行っている、又は行う予定であること

    (3)日本国内に「消費者向け電気通信利用役務の提供」を行う事務所等があること

    (4)(3)の事務所等がない場合には、消費税に係る税務代理人を定めていること

    (5)国内に事務所等がない場合(個人事業者の場合には、住所又は居所がない場合)には納税管理人を定めておくこと

    (6)国税について滞納がないこと等(滞納状況等により登録できない場合があります。)

    3.おわりに

    今回の消費税法等改正においては、クロスボーダー役務提供取引のうち、電気通信利用役務のみが仕向地主義に変更されることとなりました。今後は本報告でも触れられているように、インボイス制や番号制の導入等制度の変更が予定されており、税制に対する継続的なチェックが必要です。

     

     

    <出典・参考文献>

    日本公認会計士協会

    租税調査会研究報告第31号「国境を越える電子商取引と消費税について」の公表について

    国税庁

    国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税の見直し等に関するQ&A

     
    執筆者:海田 泰志
     

    連載記事

     
     

    シリーズIFRSはお休みさせて戴きます。

     

     



        明誠グループ    
    明誠監査法人   明誠リサーチアンドコンサルティング
    明誠税理士法人   明誠労務管理事務所

      明誠ニュースレター vol.68
    2016年11月10日発行
    発行責任者:武田剛
    ※このニュースレターに含まれる文章、画像の無断転載はご遠慮ください。